ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います   作:寿限夢

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ホラー少女と廃屋

「えへ……また、来ちゃった……♪」

 

 昨日に引き続き、紫乃は今日も【NewWorld Online】にログインしていた。

 

「今日も、ゾンビと……いっぱい、遊ぼ……♡」

 

 昨日のゾンビを連れた行進に、紫乃は味を占めていた。

 最初はゾンビを見れるだけでよかったのだが、実際に触れ合い、抱きついたりしているうちに、もっと触れ合いたい、もっと遊びたいと思うようになっていたのだ。

 

「今日は……もっと……森の奥に、行こう……」

 

 昨日は森の表層を巡って終わりにしていた。

 ちなみに、その際ゾンビが倒したモンスターの経験値でレベルが11に上がっている。

 ステータスポイントもまだ振っておらず、というより、完全に忘れていた。

 

「……かって、うれしい、はないちもんめ……♪

 

 紫乃はのんびり歌を歌いながら、とてとてと町の外に向かった。

 

 

 

 

「【死霊術】……」

 

 そして、森に着いたら紫乃は早速ゾンビを大量召喚した。

 MPの限界ギリギリまで召喚し、昨日と同じように肩車してもらったら、行軍開始だ。

 

「進んで……」

 

 紫乃の指令に従い、ゾンビたちが森の奥へと歩きだす。

 森にいるモンスターを、紫乃のゾンビたちが襲っていく。

 

「フフッ……♡」

 

 その様子を紫乃は、微笑みながら歌を歌って眺めていた。

 薄暗い森の中に、ゾンビのうなり声と紫乃の歌声が響いていく。

 

 

 それから、しばらくして。

 

 

「わぁ……!」

 

 紫乃は森の中に佇む、一軒の小さな廃屋を見つけた。

 

「お化け……とか、殺人鬼(シリアル・キラー)とか……出そう……!」 

 

 廃屋を前に、紫乃は興奮した様子で目を輝かせていた。

 窓はひび割れ、今にも崩れ落ちそうな廃屋でも、紫乃にとってはホラーで最高なロケーションである。

 

「お邪魔、しま~す……♪」

 

 紫乃は意気揚々と扉を開け、廃屋の中へと入っていった。

 ゾンビたちも、紫乃の後に続いて入っていく。

 廃屋の中には、ボロボロの椅子とテーブル、それと箪笥などがあり、申し訳程度に薄汚れた絨毯が、テーブルの下に敷かれていた。

 

「じ、人皮のベスト……とか、デスマスクとか……ないかな……?」

 

 紫乃はガサゴソと箪笥を探るが、中身は空だった。

 というか、そんな物探してどうする気だ。

 

「隠し部屋とか……秘密の通路……」

 

 今度は部屋の壁や床に手を当て、何かギミックがないか探り出す。

 だが、何もない。

 やがて紫乃の視線は、テーブルの下の絨毯に向けられた。

 

「ここ、かな……?」

 

 紫乃はポツリと呟きながら、ゾンビと一緒にテーブルをどかし、絨毯を捲った。

 するとそこに、切れ込みが入った床があり、取っ手が付いていた。

 

「地下室……!」

 

 開けて見れば、中には地下へと続く階段があった。

 紫乃がゆっくりと階段を降りる。

 すると、階段の奥から、低い男のうめき声が聞こえてきた。

 

「……拷問中……かな……?」

 

 あるいは、ジグ●ーによるゲームの真っ最中か。

 わりと洒落にならないことを考えながら紫乃が階段を降りると、古びた扉が見えてきた。

 

「……罠、とかない……かな? 開けたら……ショットガンで……頭が挽肉(ミンチ)……とか……」

 

 紫乃の頭の中に、ホラーで培った様々な(トラップ)の知識が浮かぶ。

 こういう場合多いのは、扉を開ける動作(・・)に反応する罠だ。

 

「ん……壁にも、床にも、ない……」

 

 扉の周囲や床や壁、天井やドアノブなどを調べ、仕掛けがないことを確認する。

 あるとすれば、扉の向こう側だ。

 紫乃がドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開いていく。

 

「痛い……痛い……あぁあ……あ……」

 

 扉を開けると、そこは、薄暗い洞窟のような部屋だった。

 地面には半ばまで溶けた蝋燭が置かれており、むき出しになった土の壁を、ゆらゆらと照らしている。

 そして、その灯りに照らされるように、部屋の中央に、血まみれのまま、椅子に縛りつけられた男性の姿があった。

 

「痛い……痛い……」

「……あれ……?」

 

 

 部屋の中を見た紫乃が、こてんと小首をかしげた。

 おそるおそる部屋の中へと入り、辺りを見回す。

 

「痛い……痛っ……」

 

「……ほ、他に、ないのかな? 錆びたノコギリとか、モニターとか……そういう……」

 

 どうやら紫乃的には、血まみれの男だけでは物足りないようだった。

 部屋の中を探しても、カセットテープや三輪車に乗る人形は勿論の事、死体に偽装した犯人もいない。

 

「痛い……痛い……」

 

「……とりあえず、治して、あげよう……」

 

 ちょっと肩透かしを喰らった感になりながらも、紫乃は痛がる男性に、HPポーションを使おうとした。

 

 

 

 だが、その時、

 

 

 

 ガブッ、

 

 

 

「あっ……」

 

 

 予想外の出来事が起きた。

 紫乃が連れていたゾンビの一体が、縛られた男性の頭をかじったのだ。

 

 

「痛ァァァッ!?」

 

 縛られた男性が、暴れながら絶叫する。

 すると、その声に群がるように一体、また一体とゾンビが男性にかじりつき、その肉を貪り始めた。

 

「ひぎゃあああッ!!」

 

「……あ! た、食べちゃ、だめ……!」

 

 ゾンビの突拍子のない行動に、呆気にとられていた紫乃が、男性の悲鳴にハッとする。

 慌てて止めようとするが、それよりも早く、喰われる男性に異変が起き始めた。

 

あああっ……なん、で……なんでごんな事ずるんだぁァ……

 

「あ……えっと……」

 

「どヴじで、ごンな目にィぃィィッ!!」

 

 男性が叫ぶのと同時に、男性の身体から、黒い靄のような物が溢れ出し、ゾンビたちをはね除けた。

 口、鼻、耳からは黒い液体が流れ出し、目は眼球が腐り落ち、中から黒い涙が溢れ出す。

 

「ぁあああッッ!!」

 

 溢れ出した黒い靄が集まり、形を成していく。

 遂には黒い髑髏の顔を持った怨霊へと変貌し、紫乃の前に立ちはだかった。

 

「わぁ……!」

 

『ガァァァっ!!』

 

 突然の出来事に驚く紫乃に、黒い怨霊が、獣のような叫びをあげた。

 すると、怨霊の体から黒い小さな亡霊(ゴースト)が無数に現れ、紫乃やゾンビへ向かい、襲いかかってきた。

 

「あ……っ!」

 

 紫乃が咄嗟に避けようとするが、避けきれない。

 亡霊の方が、圧倒的に速いのだ。

 こんなところでもAGI0の弊害に足元を掬われる紫乃。

 放たれた亡霊のうち、三体が紫乃の手や足に絡みつく。

 そして――

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 

 なにも、起こらなかった。

 

 

「あれ……?」

 

『ガァっ!?』

 

 

 特に何も起こらないことに、紫乃が、小首をかしげる。

 HPやMPを見ても特に減っていることもなく、動きが抑制されるということもない。

 

 『ガァァァっ!!』

 

 怨霊がさらに亡霊を放ち、新たに2体紫乃に纏わりつくが、やはりなにも起きない。

 ステータスを確認しても、別に状態異常にかかっている訳でもない。せいぜい、触れられているところが少し冷たいくらいか。

 

「……なにが、したい……の?」

 

 紫乃が小首をかしげながら、目の前の怨霊に問いかけるが、当然返答はない。

 だが、そこで、新たな異変が起こった。

 

『ギィャァァァっ!!』

 

 突如として悲鳴を上げ、怨霊が苦しげに悶え始めた。

 当然、紫乃はなにもしていない。

 一体どうしたのかと、紫乃が疑問に思う。

 

 そして、その答えはすぐにわかった。

 

「……あっ」

 

 紫乃の視線の向こう、その先で、怨霊の出所である男性が、ゾンビにまたかじられていたのだ。

 ゾンビにも亡霊が憑いているが、紫乃と同じく、なにも効果がないらしい。

 

『アアァァァっ!!』

 

 ゾンビが男性をかじる度に、怨霊は悶え苦しみ、HPを減らしていく。

 その様子を見るに、どうやらあの男性が、怨霊の急所になっているらしい。

 

「それなら……」

 

 紫乃が杖を掲げ、男性を指す。

 その動きに部屋中のゾンビたちが反応する。

 

「……やっちゃえ♡」

 

 紫乃の合図と共に、ゾンビたちが、一斉に男性へと殺到する。

 手や足、顔や腹などに食らい付き、くちゃりくちゃりと音をたてながら、男性の体をかじり、咀嚼していく。

 

『『ゴアアァァァっ!?』』

 

 怨霊と男性、両方の喉から、悲鳴のような声があがる。

 怨霊が腕を振り、ゾンビを払い除けようとするが、

 

「【ダークウォール】……」

 

 紫乃が闇色の壁を展開し、それを阻止する。

 怨霊が叩いて壁を壊そうとするが、壊れない。

 そうこうしている間にも男性は喰われ、貪られていく。

 手足は骨が見え、顔の肉は噛み千切られ、(はらわた)を引きずり出された。

 

 かつん、こつん、ごりごり、くちゃくちゃ、ぐちゃぐちゃ……

 

『『ガ……アッ、ァ……アッ……』』

 

 ぶつん、

 

 やがて、悲鳴も収まり、文字通り首の皮一枚で繋がっていた男性の首が地面に転がるの同時に、怨霊も霧散して消えていった。

 男性の遺骸(食べ残し)も粒子となって消えていく。

 後には男性の座っていた椅子に、ひとつの巻物(スクロール)だけが残っていた。

 

『レベルが15に上がりました』

 

「み、みんな……ご苦労、さま……」

 

 一息ついた紫乃は、大活躍したゾンビたちを労う。

 

「それで……これは……?」

 

 残された巻物を手にし、紫乃が、中身を確認すべくその場で広げる。

 すると描かれていた文字が光り輝き、その光が消えていくのに合わせて巻物も崩れ、光となって消えていった。

 

『スキル【呪い】を取得しました』

 

「呪い……?」

 

 紫乃はステータスを開き、スキルの説明を確認する。

 

 

 【呪い】

 MPを消費して亡霊を召喚、意のままに操ることが出来る。

 召喚可能数は一回に十体。

 触れた相手の【AGI】を10%減らし鈍くし、その数値分を、使用者の【MP】へと変換することができる。

 

 

「……」

 

 どうやらあの亡霊は、相手のAGIを吸収し、自身のMPに変換するものだったらしい。

 本来、普通に戦えば狭い室内+数の暴力でAGIを奪われ、かなり苦戦するのだろうが、あいにくと紫乃のAGIは0。そもそも吸収するものがなかった為、何も効果がなかったのだ。

 

「……」

 

 亡霊に触れられていたゾンビたちも、紫乃と同じくAGI値は0。だからゾンビたちも平気だったのである。

 

 ……だが、今の紫乃には、そんなことはどうでもよかった。

 

「【呪い】……っ……【呪い】で“(のろ)くなる”から、【呪い(鈍い)】……ッ!」

 

 紫乃の小さな肩が、小刻みに揺れる。

 やがて口元に手をやり、クスクスと笑い出した。

 

「フフッ……フフフフフッ……!」

 

 紫乃の笑い声が、室内に響き渡る。

 かなり不思議な笑い方だが、紫乃的には大爆笑である。

 

 ちなみに、この明らかに余分なスキル強化説明文の一文(親父ギャグ)は、無論、運営の悪ふざけの一環である。

 付け足した【呪い】の発案者自体は、ほぼ全員から“寒い”“つまらない”とブーイングを受けたのだが、紫乃のツボには、見事にはまったようである。

 

「フ、フフフッ……フフッ……!」

 

 遂にはその場にうずくまり、紫乃はお腹を抱えて笑い出した。

 その周りを、ゾンビたちはグルグルと回っている。

 

 

 

 

 結局、その後笑いすぎてお腹が痛くなった紫乃は、今日はそのまま、ログアウトした。

 

 




 投稿時間……夕方と深夜、どっちがいいですかね?
 逢魔ヶ時か午前0時か……

サービス回……いる?

  • いりゅううう!!(ホラー)
  • いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
  • 要らぬ!!
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