銀魂:白銀ノ魂録実況プレイ 虚ルート 作:一億年間ソロプレイ
またよろしくお願いいたします。
原作突入前までのお話です。
幕間 旅絵師の書いた約半年の旅路
0日目
朧を適当な場所に下ろし、戦場で金と共に剥ぎ取った服や笠をやった。それから少しのはした金。
これで数日は何も気にせずふらふらと放浪出来るとは思う。
俺の四次元ポケットに二人の心臓があると考えると、俺の四次元ポケットは血生臭くならないのかが気になる。
それから、今日からは定期的に絵を描いていこうと思う。紙や墨は近くの里から買ったので暫くは十分な筈だ。
綺麗だと思った景色や街中の風景などを描いてみよう。
1日目
欠けていた心臓が再生し、小さい人の形の様なものへと変化していた。凄まじいスピードだ。
赤ん坊くらいになったら四次元ポケットから出しておこう。
今日は見事な紅葉の山を歩いたから、それでも描こう。
3日目
小人サイズから赤ん坊サイズになっていた。服屋などの女性にでっち上げた経緯を話して赤ん坊を育てる際の注意や古着を融通してもらった。ありがたい。
二人を抱えて歩いていれば女性に間違われた。例によって天人と貧相な人間。腹が立ったので地中に埋めておいた。
今日は二人の寝顔でも描いた。あどけなくて可愛いらしい。
8日目
今まであー、だのうー、だの手足をばたつかせることしか出来なかった二人だったが、何と今日は這いずり回ることが可能になっていた。思わず拍手をしてしまった。
歯も生えそろってきたので柔らかめの固形物を食べさせることにした。
寄った茶屋の娘らにも二人の愛らしさは好評で何だか気恥ずかしかった。
今日は百舌が早贄をしている場面を見た。それを描こう。
15日目
最近松陽が俺の食べている甘味に手を付けようとする。流石に蜂蜜は駄目だ。赤ん坊には駄目だ。
食欲も旺盛になってきたので、二人の毎日の食事を考えることが楽しくなっている気がする。
今日寄った町では天人と町の人間とで仲が良い様子だった。先日寄った町は劣悪だった。
まるで世界が核の炎に包まれて棘付きの肩パッドでも装着し始めたのかと言わんばかりに世紀末さを感じた。火炎放射器は何かに使えそうだったので没収した。
今日は町並みでも描いてみようと思う。茶屋などで描いているとよく絵を売ってくれと頼まれるようになった。
そんなに価値があるものだろうか。
23日目
二人が立った。泊まった宿の人間に赤飯を炊いてもらってしまった。醤油が香ばしく香り、絶妙な美味さだった。
今日はそこらの町で見掛けた人物を思い出しながら描いてみよう。
28日目
言葉を喋るようになった。たどたどしいが、微笑ましく感じる。
そういえば、二人はあの時の意識のままなのだろうか。二人のやり取りを見ているとそう感じる。
つまり、成人男性が赤ん坊に紛れて……いや、何も書かなかった。何も気づかなかったことにしよう。
今日は枯れ木を描いた。微妙に難しい。
34日目
冷え込むようになって寒いが子供体温の二人は湯たんぽに丁度いい感じに暖かい。
寝そうになったことは無いが、二人が熟睡している様を見るだけで十分だ。
今日は木瓜が見事に咲いていたのでそれを描こう。
35日目
おのれ天人おのれ天人おのれ天人おのれ天人おのれ天人おのれ天人
36日目
ついやってしまったが気付かれない筈だ。目撃者は皆殺った。
今日も二人は楽しく部屋の中を走り回っている。松陽が元気に虚を追いかけまわしている。
嫌になった虚が俺の方へ飛び込んできて松陽も飛び込んできたので絵が台無しになってしまったが、まぁいいだろう。
今日は月夜が綺麗だった。それを描いた。
44日目
絵を売ってくれと言われる回数が増えてきた気がする。黙っていると段々値段を上げてくるので、もうこれ以上上げられなさそうだと思ったら売ってみることを繰り返しているせいか、懐が潤ってきた。
二人とも既に幼児へと成長している。凄まじい成長スピードだ。いつ背を追い抜かされるか恐ろしい。
程よく熟れている柿を見かけたのでそれを買って剥いて二人にあげた。
今日は柿を食う童とかいう題名でどうだろう。良い感じに描けた気がする。魂の輝く一瞬、というのが少しだけ分かってきたのかもしれない。
49日目
厄介な客に出会った。難癖をつけては絵を持って行こうとするので構って欲しい奴なのだろう。見ていた二人が同時に脛を蹴った。
夜中に処理をするのも大変だ。二人には危ないことをしないように言いつけておいた。が、素直に言って聞く様な子供ではないのでまたやらかすと思われる。
好き嫌いしてはいけないと思って天人を描いてみた。意外と描きやすい。
54日目
最近は筆では無く鉛筆という硬い筆が作られたらしい。紙に描いてみたら本当に硬く、簡単に和紙が破けてしまった。
鉛筆を使う際はスケッチブックなる紙束などの厚い紙質に描くと良いと言われたのでそれを購入してみた。
また筆とは一味違った感覚で楽しいが、やはり筆で描くのが楽しい…が、筆を取り出せない状況ではこのスケッチブックに物や人などを描いていこう。
絵を描いていると二人はじっとこちらを見つめてくる。何なのだろうか。
今日はスケッチブックを進めてくれた店員だ。鼠みたいな顔をしていた。
62日目
二人の成長が早すぎて服屋に通い詰めることになっているが、こういった面倒ごともまた幸せじゃよとどこぞの爺は言うのだろうかと思った。
今日はあの爺。
63日目
そういえば絵を売るときに名を描いていなかった。「お前にはまだまだ早いが絵を売るなら絶対に名前を描け、じゃないと面倒なことに巻き込まれる」とあの爺が言っていた。名前を何にしようか二人に提案したが、言い争いに発展してしまった。元気なことだ。
近くの海辺で鳥の鳴く声が聞こえた。確か都鳥…いや、百合鴎だったか。もう都鳥でいいか。名前なんて適当だ適当。深く考えるだけで馬鹿らしい。
今日は二人と命名記念に百合鴎。名前として都鳥と書いておこう。
68日目
雪が降ってきた。防寒具は二人には外せないものだ。厚着し過ぎて達磨っぽく見えるのがまた愛らしいと思う。
今日は雪景色でも描こう。首が痛くなって取れそうだ。確かにあの日も雪は積もっていたがなぁ…。
74日目
雪景色を描いた絵はとても売れた。かまくらとか、雪だるまを作って遊ぶ子供とか、とても輝かしくて良い物だと思う。
宿屋の縁側で絵を描いていたらそっと隣に雪兎なるものを虚が作ってくれた。それから松陽も作り始めて俺の周りは雪兎だらけになった。ちょっと寒い。
今日は雪兎と二人で決定だ。
77日目
昨日訪れた町に吹雪が来たので動くに動けない状態だ。しかし、都にいた頃にはこんな吹雪くといつも雪女だと喚く奴がいたな。嘘だと思っていたら本当に雪女が吹雪かせていたから驚いた。
雪があっても風が強くて目を開けていられないので今日は一日ずっと部屋の中だ。二人は火鉢の周りを動こうとせず、段々溶けていくのは餠みたいだ。
今日は二人の餠状態。
85日目
児童といっても差し支えない位に二人は大きくなっている。近頃は率先して絵の売り子をしている。
意外と連れてくれるのは虚だった。が、大抵何かと言っては二人に触れようとする輩ばかりなので足蹴にしてからお引き取り願っている。もう少し自分を大切にしてくれ。
男色やら稚児自体、都でも普通に横行していたからどうとも思わんが、種無しになる位の覚悟はあるんだろう。
88日目
大きく匂いもそれほど生臭くない蟹があったのでつい値切って買ってしまった。鍋を四次元ポケットから取り出して蟹鍋にすることにした。
都…京の老舗店からのものだという豆腐に、白菜、かまぼこ、えのきなどを入れて、調味料のみりんや醤油に出汁、香りつけに柚を一欠片入れて一緒に煮込む。
鍋物は煮込むだけで良いが、素材の良し悪しが鍵となるのでそこだけは気を抜いてはいけない。
鍋の〆は何が良いかと聞いたら「雑炊」に「うどん」だった。見事に分かれてしまい、二人が言い合いになったが残りの汁を半分ずつ分けて雑炊とうどんを二人に出した。自分の分はうどんも雑炊も取っておいた。うん、蟹出汁美味し。
今日は鍋で言い合う二人を描いた。またそれで言い合いになった。
93日目
新年が始まった。そういえば、昔の新年はなにかと面倒だった。こうして長閑に過ごす時間はあまり無かったような。
先日蕎麦を打ったおかげが、二人が慣れないながらも雑煮を作ってくれた。出汁もへったくれも無い湯の餠だったが、何となく美味しく感じた。雑煮が不味いのはどちらの責任かで二人は揉めていたが、まずは出汁を取ることから始めろ。
今日は不格好な雑煮と二人を描いた。新年早々目出度いことばかりだ。
95日目
二人の髪を結うのはなんだか楽しいものだ。上の方で結び、歩いては揺れているのを見るのも楽しい。
目出度いことに空を鷹が飛んでいた。あれは初夢で茄子と富士を合わせて見たら縁起が良いという類のものだったか。
今日は鷹。勇ましい姿だ。
96日目
二人の背丈がぐんぐん伸びる。最近ずっと膝やら関節やらが痛いらしい。結局は俺が二人の心臓を分けた時の姿に戻るんだろうとは思うが、それはそれで癪だ。
新年とだけあって家に引き篭もっている連中が多いのか、町の人通りは少なかった。
今日は人気の無い市場だ。
97日目
最近二人が何かを歌っている様子だ。青い魔法のランプの精と盗賊の男が友人になる話に出てくる挿入歌らしい…が…。
いや待て!それ以上歌ったら消される!あの利権だらけの黒いねず―(ここで文字は途切れている)
100日目
新年から七日目ということで七草粥を作ることにした。今では無病息災やら正月の料理で弱った胃を慰めるための料理とされているらしいが、聞いた覚えでは百歳を超す親の若返りを願った話だったと思う。酉の刻から一刻順に芹、薺、御形、田平子、仏座、菘、清白を合わせて東の方から汲んでくる清水で煮て食べる…だったか。今では簡略化されて色んなアレンジがされているらしい。市場にもインスタント七草粥とやらや、七草をまとめて売っている物があった。
調理も簡単なので二人を交えながら作った。やたらと具材が大きかったが及第点としよう。
今日は七草粥を作る二人を描いた。微笑ましい。
102日目
松陽がオートマタ派ということが発覚し、更に虚がゲシュタルト派ということが発覚した。
言い争いになったが、結局三シリーズ分やってDODをやるということに落ち着いた。
だからコントローラーを離すな。まだ新宿が残っているじゃないか。
今日はエンディング前で苦しむ二人を描いた。ははは。
105日目
護身用に何か武器でも持たせて欲しいと二人から相談された。
正直そんな事態になって欲しくはないが、俺の預かり知らぬ所で危険な状況に巻き込まれて抵抗する手段が無いのもまた…。
松陽からは木刀、虚からは暗器の融通をお願いされた。
二人に人を殺すような真似はして欲しくないというのは俺の我が儘だろうか。取り合えず虚の暗器は首を横に振っておいた。確実に殺る気だろう。
今日は鴉を描いた。旅先でよく見かけるが、もしかして朧が見ているのだろうか。奈落の頭領には鴉を操る術の習得が必須とは虚の言葉だったか。
114日目
餅を買って焼いてみた。きなこ、黒蜜、抹茶粉、醤油、大根おろし、ポン酢、餡子らを用意して好きに食べさせた。
松陽は甘いほうが好きで、虚は塩辛いほうが好き。
餠というのはハレの日位でしか食べられなかったのに、今や正月となるとどこでも売っている物になっているから驚きだ。
118日目
二人の身長がとうとう俺の眼下まで迫ってきている。み、認めんぞ…。
だが感慨深い物がある。成長すること、それは喜ばしいことだ。
虚の人嫌いもマシにはなってきていると思う。人に肩をぶつけられても殴り返せるから大丈夫だ。
本日は成長した二人を描いた。段々男前になってきているな。
119日目
あれから考えたが、二人に木刀を持たせることにした。それを竹刀袋に入れて持ち運べる様にすればどこかの道場の門下生らしく見えた。
それから、松陽には無暗に人を殺すようなことは止める様に諭された。以前やった天人の船での殺戮が効いてしまったようだ。珍しく虚も松陽と同意見だった。
好き好んで殺している訳ではないが、二人の言葉を無視するのも苦しい。
…ので、約束をした。必要以上に殺さないこと。こんな年になってまで約束とはな。一体この約束はいつまで持つのだろうか。二人が生きている間は守って生きていたい。
125日目
節分だった。鬼は外、福は内と豆を投げている様子が見えた。
こっちは鬼も福も内に呼んでやるという意気込みで鬼が人を食べている絵を描いた。普通に間違えた。
案の定「それ人食べてるから駄目じゃないですか」と指摘されて、人と鬼が互いに豆を投げ合ってぐるぐる回っている絵を描けば二人が笑った。
お前たちは人だから、豆まきなどで苦しむことはない。
128日目
山の道端で福寿草が咲いていたので描こうと思ってスケッチブックを開けば、それが最後の頁だった。後で買っておかねば。半分ほど二人の似顔絵だったり立ち姿だったので見られたくないと思ったが虚に持って行かれた!松陽にも見られたので終わった。
今日は…、星を見つめる魚のパイを描いた。遠い西洋の国ではこれが食べられているらしい。何という名の魔境なのだろうか。
136日目
そう言えばよく春画を描いてくれないかと言われることがある。描けないことは無いが、あまり描こうという気力も無いので言われたら描く程度にしてはいる。金払いの良い客が鼻血を出しながら帰って行った。奥方にバレて没収されないようにな。
今日は美人画を描いた。そう言えばあの爺も美人画と春画は喜んで描いてたな。
139日目
今日も雪が降っていた。やっぱり首が痛い。年か?いや、そんな生易しいものではない気がする。戦場にいた時は思わなかったのに。
今日は雪景色を背にだらける二人を描いた。幸せそうで何より。
143日目
変な天人に絡まれた。薬でもやっているのか、正常に話せていない様子だった。最近天人による犯罪も増えてきている様だし、やはり天人は殺すべき。
だが、人間に良い奴悪い奴がいる様に、天人にもその区別はあるらしい。経営主に叩かれながら、町中で鼻を赤くしながらマッチを売っている天人を見たらそう思った。折角なのでマッチを一つ買った。
今日はマッチ棒がくねくねと踊る絵を描いた。二人に病気にでもなったんじゃないかと心配された。失礼な。
147日目
黒い塊を売る祭りとやらがあった。その名もチョコレイト。チョコレートかもしれない。
松陽が片っ端から食べようとするので制限を付けてから送り出した。
今日はバレンタインデェ?らしく、このチョコレイトを買っては好きな人、ひいては世話になった人に送るという趣旨の祭りだったらしい。俺も二つ買って二人に贈ったら贈り返された。考えていることは同じだったようだ。
今日はチョコレイトを頬張る二人を描いた。
151日目
もう弥生か。寒かった冬から段々と気候が暖かくなり、植物も花開く時期だ。通りがかった里では見事に桃が咲いていた。それから流し雛をやっていた。誰でも参加できるようなのでやっておいた。この程度の形代では俺の穢れは払えんだろうが気休めだ。
今日は流し雛をする町並みを描いた。着色していないが、速攻で売れてしまった。
154日目
最近絵師だと言う奴らが難癖を付けにくる。何となく気配を察知して二人に町中を歩かせて会わせない様にしてはいるが、今回の奴は中々に粘っていた。途中から流し流し聞いているとどうやらあの爺の弟子の一人らしい。
絵柄をパクっただの複製しやがっただの抜かしおった時に二人は戻ってきた。そいつは強制的に退場させられた。
あの爺は弟子同士で争うことなんて望んでなかっただろうに。その意図すら汲んでやれないのか。
今日は木蓮を描いた。
159日目
絵を売ってはいるが絶対に非売品にしているのは二人の絵だった。何となく他人に見られるのは無理だ。
いくら金を積まれようが非売品。そう非売品ったら非売品だ。
二人の絵を個人的に見直している最中に目を付けられてしまった。天人の星の皇子?とやらだろうが売らない。そう言ったら侮辱罪だのなんだの隣の髭が言ってきた。そもそも寄越せというのが気に入らん。何か気の抜けるような声を出しおって。
161日目
虚から何故絵を描くようになったのかと聞かれたのであの爺のことを話した。
その一瞬を切り抜く、魂を写し取るというのは描いていて本当のことだったと今なら感じる。
形容しがたく、だが確かにそこに在る物。二人に内在する輝き。これは言語化するのが難しいといった南斉の気持ちも分かる。
今日は二人。最近凛々しくなってきた。最初の頃からよく成長したものだとしみじみと思う。
176日目
今日はホワイトデェらしい。あのバレンタインデェと対になる日で、バレンタインデェで女性からチョコレイトを貰った男はこの日に返礼しなければいけないらしい。
ということなので再び二人にチョコレイト…ではなくクッキー☆なるものをあげた。喜んでいる様子で何より。
今日はホワイトデェで浮かれる町を描いた。
178日目
そう言えば今日はあの爺が俺の絵を描いて亡くなった日だ。
あの爺と会った町から今の場所は離れているから墓参りには行けないが、今日は鮮魚の塩焼きにでもしよう。
夜中に松陽がやってきた。丁度あの爺に描かれた絵を見ている途中だったがすぐさま隠した。暫くして虚もやってきて俺の部屋で寛ぎ始めた。自分の部屋でやれ。
今日は爺を描いた。食事の準備中にやっていたあの奇妙な踊りの場面だ。二人にも変な踊りだと言われてるぞ。
179日目
そろそろ旅も一旦落ち着こうと思うが、どこにしようか迷っていた。
弟子センサーとやらが働く松陽は江戸のかぶき町が良いと言う。虚も特に意見が無かったのでかぶき町に住もうと思う。
今日は二人。大きくなったが、かぶき町は歓楽街。六時になったら帰ってくる様には言っておこう。
180日目
…………
………
……
…
「師匠、いつもその本には何を書いているんですか?」
「
「セーブデータ?」
「今はその機能を使っていない。普通に書いてただけだ」
「時折不可思議なことをおっしゃいますね」
和装本を閉じた。その本には『魂録之書』と題名があり、表紙には立派に咲いている桜の木が描かれていた。
元から四次元ポケット…懐に入っていた物だった。不思議と何度書いても紙の頁は補充されている。
「メタ発言だ。さて、いくぞ」
「ここから遠い場所でしたね」
「誰かが日本家屋が良いと言うからかぶき町付近にはなったな」
「皆が同意したんですからそう言われる筋合いはないですね!」
不動産屋にて一括払いで購入したのは日本家屋だった。それなりに綺麗な場所であったし、広々とした空間であったので大きな絵も描けることだろう。
「好きに外に出ても良いが六時には家に帰ってきていること。遅くなるなら事前に言うこと。それから、危ない場所や路地裏にはあまり近付かないこと。分かったか?」
「はい!」「はい」
「よろしい」
いくら昔はブイブイ言わせていた暗殺組織の首領と言えども今は子供。危険なことに巻き込まれれば以前の様に対処できないというのは今までの旅で分かっている筈だ。
…人や天人がここまで入り乱れているのはターミナルというもののせいか。ここもここで色々と問題が起きそうだと感じる。
「師匠、甘味忘れてませんか?」
「忘れてない。何を食べたい」
「あそこの本わさびを丸ごと一本なんていかがですか?アレにはお似合いですよ」
「おや、そう言う貴方には是非ともあそこのさとうきびでも食べて欲しいですね」
昔よりは騒がしくなった旅だが、別段鬱陶しくはない。後で本わさびを松陽に、さとうきびを虚に出そうと思い財布を取り出した。
虚、松陽…何かと喧嘩が絶えないが、スケッチブックは大人しく二人で見ている。まだ返していない。
空木…熟練度ゲージと名声ゲージアゲアゲしていた半年。冬になると首が痛くなる年頃。