銀魂:白銀ノ魂録実況プレイ 虚ルート   作:一億年間ソロプレイ

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二年ぶりだなんて信じられませんねぇ……


[信ずる道往く和尚]

 

 今目の前で、自身を見つめる鬼は地獄から現れたようだった。善に近い事も、悪に近い事もしてきた。だからといってこんな鬼を自身に差し向けるなどとんでもなく酷いものだと、朧げに感じていた。

 頭を掴まれる。そう知覚した瞬間には胴体が崩れ落ちるのが見えた。――目に留まらぬ速さの刃で首と胴体を切り分けられたのだ。アア防げる術は無い。

 切り離されたとて残る意識で見えたあの鬼は、笑っていた。木の仏の顔を踏み崩し、逃げる己らをわざと追い詰め遊び、そしてゆっくり恐怖を与えて殺す。

 これが鬼と言わずして何という。真の鬼畜生だ。濁って光の見えない汚泥の中、人を殺すことに悦びを見出して斬り潰す鬼を、人とは呼ばぬ。

 

 ――そこで意識は途切れ、鬼はまた新たに獲物を求めて戦場を漂う。

 

「死んでる癖に回想長いな……」

 

 パッタリと空木は読んでいた和綴じの本を閉じた。戦国の世を研究するにあたって数多くの武将や兵が着眼されてきた。その中でも滅多にいないが各地の伝承などで名が出る『鬼卯月』について書いた――創作本だ。

 こうして鬼卯月の御本人が目にすることになろうとは筆者も思わなかっただろう。鬼卯月と呼ばれる男は長い時代を生きる不老不死の人間である為に起きた出来事だ。

 鬼卯月と呼ばれていたその時は、無性に人への恨みが勝っていた時代。気風が後押ししたこともあって人を殺し尽くしていた。ただそれだけの話だ。

 

「おいウツゥ! いつまで蔵掃除してんだい! とっとと信長様の接待に入りなァ!」

「分かりました、女将」

 

 遠くからの声に空木は先程まで入っていた蔵から出た。創作本の他に奇妙な地図を懐へと入れて。

 ここは仙望郷。見た目は入るのも躊躇われる廃旅館であるが、その遠方に女将の所有する蔵があった。空木はたった今まで蔵掃除を命じられ、適度にやりながらサボって本を読んでいた。

 呼ばれてしまえば幽霊相手に接客するバイトに戻らねばならない。

 ここの旅館を訪ねるのは生者ではなく、基本は死者。――中には空木が斬り落とした人間やかつて上司とした人間が通い詰めていた。

 空木を鬼卯月本人だと言う訳にもいかないので子孫ということにしている。すると……。

 

「オラッ! 死ね鬼卯月ィ!」

 

 飛び出してきた亡者のパンチを少ない身のこなしで躱す。

 子孫という話にしたおかげで、当時の鬼卯月に歯が立たなかった顧客(負け犬)からの攻撃が絶えない――が、呆気なく躱すのがアルバイトになっている空木の日常である。

 

「さっさと成仏しろ」

 

 殴り込んできたのは先程の創作本にてモデルにされたナントカ武将。それとなく腹が立ったので顔に蹴りの一撃を入れたら姿が消えた。――成仏である。

 成仏させる度に女将からのお叱りを受け、減給も食らう。だからといって難癖を付けられて我慢できるラインはとうの三日で過ぎていた為、躊躇いなく空木は攻撃してきた霊をバスターしていく。

 

 ――こうして、空木は割の合わない十日間のバイトを終わらせた。

 

 帰り際、空木が数多の客に蹴りを入れて成仏させたことが女将の守護霊スタンドTAGOSAKUの密告によって発覚した為、「二度と来るなァ!」と言われた。

 紹介人のお登勢には悪いが、顔馴染みもいる此処へ二度と来たくないと思っていたので空木は喜んでお岩の言う通りにすることにした。

 

 仙望郷からの帰り道、走るよりもバスを使っての帰宅を選んだ空木はぼんやりと窓辺を見つめた。走行の為に横へ退けられた雪に、枯れ木の上に積もる雪。辺りは一面、雪無しに語れぬ景色ばかりが広がる。

 

(……今思えば、彼奴等にも、魂の輝く瞬間があったのだろうか)

 

 切り殺した兵、陣頭指揮を執る武将らに、邪魔だからと殺してきた人間たちにも。恐怖以外の顔があり、家庭があり、過去があった。

 

(いいや、知ってるだろう)

 

 その思いには意味が無い。全てが終わった事。

 諸々を承知した上で、己が私利私欲の為に人々を殺す。気まぐれに生かし、気まぐれに殺し、気まぐれに側で過ごし、今は気まぐれに人間から排斥された童子と過ごしている。

 ただそれだけだ。興味が失せたら異星に行って殺す。

 全ての行いに深い意味合いはない。

 どんな事だろうと自分がのんべんだらりと生きる間の暇を潰す為のものだ。

 

 

||

 

 

 仙望郷のバイトを終えた空木。彼が家に帰って最初にしたことは松陽の部屋に押し入り、机の引き出しにある写真を燃やすことだった。

 松陽が咄嗟に起きた頃には写真を燃やすチャッカマンの火が空木の顔を照らしており、あっという間に写真は灰になっていた。

 燃え尽きた後、暗がりの中に空木が佇んでいるというシュールな光景が出来上がる。

 

「ちょちょちょっとどういうことですかおかえりなさい!?」

「ただいま」

「師匠! おかえりなさい!」

「随分と夜遅くの帰りでしたな」

 

 隣室から瞬足によって虚が姿を現す。そして天井から朧も姿を現す。

 いつもの余裕ある笑みが崩れたまま松陽が部屋の明かりを点けた。

 

「な、なにを……?」

「嫌な気配をする呪いのアイテムを焼却処分しただけだ」

「呪いのアイテム? そのような物がありましたかな……」

 

 ふむ、と考え込む朧に神妙な顔つきで空木が頷いた。

 

「あのままでは恐らく大変なことになっていた。俺が」

「師匠が? これだから松陽は……」

「待って下さい。なんで()()でそう……」

 

 松陽の額に火縄銃の銃口が突き付けられた。嗅ぎ慣れた火薬の臭いに体が強張るのと同時に、松陽は落ち着きを取り戻す。

 

「なるほど。それなりに信憑性のあるものでしたか」

「御託はいい。あれをどこで手に入れた」

「夢の中ですよ。剽軽な男性が現れて何やら説明をして渡してくれました」

「……」

 

 『剽軽な男性』と聞いた空木が、この場の誰もが見たことが無い程に顔を歪めた。親を殺されたかの如く憎悪に満ちた眼差しだった。

 空木は、松陽に向けていた火縄銃を自分の額に向けた。シームレスな動きに反応が遅れるも引鉄を引く前に三人が火縄銃や空木の腕にしがみつき、その動きを止めた。

 

「何やってるんですか!」

「お気を確かに!」

「離せ。俺は話をつけねばならん」

「あの男性を知っておいでなのですか?」

「…………………………………………知らん」

「明らかに知ってる間まですよねそれ」

「朧、片腕の方も」

「承知」

 

 半ば本気を出している変異体(内半変異体)三人に勝てる訳もなく、空木は畳みに押し付けられる形で取り押さえられた。しばらく離せ離せともがくもどうにもならないことに気が付いたのか、空木は項垂れた。

 

「銃を離すから、解け」

 

 言葉の通りに空木は火縄銃を手放した。朧が回収することで空木の拘束が解かれ、乱れた衣服を整えながら立ち上がる。

 

 と、共に。

 

 

 

 空木の空木の首がぽろりと落ちた。

 

 

 

 火縄銃を自らに向けたことよりも何が起きたのか分からない。奇妙な静けさの中で、黒い髪の束をばらけさせながら空木の首が地面に落ちようとした中、目を見開きながら首をキャッチしたのは虚だった。

 スライディングの態勢で首を抱え込み、動きが収まってから――虚が生首の空木と目を合わせた。

 

「師匠」

「……」

 

 いつになく真剣な眼差しに空木は内心たじろいだ。虚の赤みのある榛の目が据わっている。

 

「師匠」

「……なんだ」

 

 二度も言われれば空木の口が開いた。暗い視線から逃れる為か、空木の目は虚の目を見ない様に逸らした。

 それから重たい沈黙が降りる。戦場であっても掻いたことの無い冷や汗が滲み出るほどの緊迫感。猛獣に睨まれ身が竦んでいるかのようだった。

 

「二度と、やらないでください」

「…………分かった」

 

 ここは甘んじて非難の声を受け入れる他無かった。

 一つでも口答えをすれば何をしでかすか分からない。妙な気迫が虚にはあった。

 

 

||

 

 

「おはようございます師匠」

「……おはよう、虚」

 

 諸々の騒動が終わった後だが、深夜なこともあって寝直すことになった。

 しかしながら寝直したのは二名であり、一名は元々眠れずの体質であるし、もう一名は眠ること無く寝るフリをしている空木の傍にじっと佇んでいた。

 その為、空木が瞼を開けてすぐに見えたのは虚の顔である。きゅ、と口が引き締まった。

 

「寝ればいいものを」

「あのような事があった手前、どうして眠れるとお思いなのでしょうか」

「俺は良くともお前たちは寝なければ辛いだろう」

「これでも何百年と不規則な生活で過ごしてきましたので一晩程度はどうということはありません」

 

 いつどんな時も権力者の政敵の為に情報を収集し、時には手を下す。昼夜逆転の生活もあれば、何日と張り込んで有益な情報を得ることだってやってきた。

 何よりもあの夜の胸の騒ぎ様を思えば一晩程度寝ずに過ごすことなど虚にとっては本当に何でもないことだ。

 

「今日は私が御髪(おぐし)を梳きます」

「そうか」

 

 布団から起き上がり朝の支度を進める空木の後ろに付いていく。厨房の方からは物音が聞こえてくる。朧が朝食の支度をしているのだろう。虚がここにいるということは、松陽はその手伝いをしている。

 

 諸々の支度を終わらせた後、空木が私室に戻ると途中から姿が見えなくなっていた虚が待っていた。

 空木がその前に座ると虚は長い髪を持って手に持った櫛で梳かし始めた。櫛歯の間をするすると抜ける黒い絹糸は開けた戸から入る陽光を滑らかに反射して艶やかに輝いている。

 

 旅の日々によって師の髪を梳くのは虚たちにとってなくてはならない日課になっていた。空木自身は「洗えばいいだろ」程度の扱いだが、ここ最近髪艶が増してシャンプーのCMに出演出来るレベルになっているのは弟子たちの頑張りの賜物である。当初は誰がやるかで揉めていたが当番制にしてからは大人しくなった。

 

「今日のご予定は?」

「特には。依頼も無い」

「それはそれは。では、今日は一日私に付き合っていただきます」

「好きにしろ」

 

 内心「これは後で松陽にも付き合わねばならんフラグだな……」と空木は思いを馳せた。何かと張り合うことの多い二人、虚が空木の時間を独占したとあれば松陽も「じゃあ私にも付き合ってくれますよね」と圧のある笑顔で迫られることは想像に難くない。

 随分とご機嫌な様子の虚は、朝餉の支度を終えた朧に呼ばれるまで何度も何度も師の髪を梳いていた。

 

 

 

 

 

 江戸の街並みは随分と雑多になった。最も大きな龍穴の上に惑星間の移動を可能にするターミナルが建てられ、多様な見た目をした天人が我が物顔で歩いている。攘夷戦争に参加していた時程に激しい殺意は抱かないものの面白くは無い。

 

「そういえば松陽からバイト中にあの甘党の所で世話になったと聞いたが」

「世話になどなっておりません。あそこの眼鏡の誘いに気の迷いで乗っただけです」

「ほう、気の迷いか」

 

 何かを含んだ微笑で虚を見る視線に再度「暇でしたから」と念押しするが、少し憎たらしくなってきた目はそのままだ。

 

「で、どうだったんだ。暇は潰せたか」

「一日程度は。まったく、宗教なんてものにのめり込む人間の気など知れません」

「宗教……。ふむ」

「師匠もそうは思いませんか」

「どうしようもない時に縋りたくなるのが人というものだろう。お前もそう他所のことを言えやしないぞ」

 

 思い当たる節があったのか、ぐ、と言葉を詰まらせた虚は視線を逸らした。そして、はっと気づいたような顔をする。

 

「つまり師匠は宗教……?」

「どうしてそうなった」

 

 まるで得心がいったと神妙に頷く虚に対してやや青ざめた顔になり、「どんな祭壇がよろしいですか」と聞く弟子に対して師は弟子の頭に軽くチョップを落とした。それなりに痛い。

 

「あっ、虚さん……に空木さん?! 帰ってきてたんですね!」

「どうしたの新ちゃん。って、まぁ虚さんじゃありませんか。それに空木さんも」

 

 話をすればなんとやら。虚を万事屋の仕事へ巻き込んだ当人たちが現れた。

 

「これはどうも、新八に妙殿。どうやら留守中に虚が世話になったようで」

「いえいえ、虚さんが来てくれると新ちゃんも稽古に気が入るらしくて、とても助かってます」

「もー、姉上ってば、虚さんの前で言わないでくださいよー。空木さんもおかえりなさい! それで虚さん、今日は道場へ寄りませんか?」

 

 虚にほほほとお妙の淑やか笑みと明るい新八の笑顔を向けられている。随分と慕われている様子を見て、空木は虚の後ろで穏やかな顔を見せていた。

 

「今日は師匠との用事が……「俺との用事は後でいいだろう。先に道場で手合わせの一つでもしてきたらどうだ」…………師匠」

「え、いいんですか!」

「ただ、後回しにしろ用事はあるのでな。俺もそちらの道場へ邪魔をしてもいいだろうか」

「構いませんよ。むしろいつでも来て下さいな。恒道館はいつでも入門者を募集してます」

「いや入門目的ではないが……」

 

 予定は変更され、恒道館へと向かう中で空木はじっとりとした虚の視線を受け流していた。

 道場へ着いて新八たちが道着に着替え、寒さで乾いた朝の中で早速打ち込み稽古が始まる光景を前に彼らの保護者である二人は世間話に興じていた。

 

「それにして新ちゃんからお話を聞いていましたが随分とお若いんですね。ウチは新ちゃん一人でも大変なのに、そちらでは双子さんの面倒を見ているとか。さぞ大変でしょう」

「(若……?)まぁ、確かに大変ではあるが」

「やっぱり! 男の子ってやんちゃ盛りで大変ですよね。この前も服を泥だらけにして帰ってきたりしてお洗濯が大変で……」

 

 お妙の妙な気安さに少し疑問符が浮かぶが同意できる話ではあるので頷いていた。

 まだ二人が幼児ぐらいの年であった時はしょっちゅう着物を汚してばかりの旅で、洗濯自体も難しかったタイミングも重なっていたことをぼんやりと思い出す。

 松陽がうっかりぬかるみに嵌まり、それを嗤っていた虚の足を掴んで道連れ……。まだまだ買ったばかりだった着物を激しく汚した出来事だった。

 

()()一つで双子のお子さんを育ててきたなんて……。さぞかし大変だったでしょう。隈も多くてこちらが見てるだけで不安になるくらい細いですもの。目元にもこんなにもまぁ隈を作って……」

「は、え?」

 

 ――そうか、この気安さは同性という理由に因る距離感。

 お妙の態度の理由が分かった空木の前にすっと、お妙から一枚の用紙を渡された。――スナックすまいるの募集要項だ。

 

「旅絵師って、お給料も安定しないでしょう? 良かったら夜の間ウチで働いていきません? 頑張れば給料アップも狙えますし」

「あの、俺は男」

「え、なんですって?」

「俺は正真正銘()なんだが」

「まぁ……。いえ、何も言わなくても大丈夫です。私、分かってますから。友人にも似た境遇の方を知っているので」

(なんだこの納得していない感は……!)

 

 うんうんと生暖かい目を向けられて空木の中では苛立ちよりも困惑の方が勝った。

 

「にしても着流し一枚はどうかと思うわ。今度一緒に服でも買いに行きましょう? ()()()なんですからお洒落を楽しまないと」

「いや男……」

ね?

「人の話を聞いてくれ。頼む」

 

 会話が聞こえてきた虚が慌てて稽古を終わらせて戻ってきたことによって話は終わり、二人は恒道館で新八たちと別れた。

 ギィ……と道場の扉が閉まり、空木と虚の間に沈黙が訪れる。女性に間違えた多くの天人たちを闇討ちしてきた師のいつになく萎れた姿に虚は生唾を飲み込んだ。いつ刀の斬撃が飛ぶか分からない。

 

「……虚」

「はい」

「そんなに女人に間違えられやすいか、俺は……」

 

 再び訪れる沈黙。長考の末、静かに虚は頭を縦に振った。

 男臭くない顔つきに長髪もだが、お妙と変わらぬ背丈であることも起因している気がする。ただそんな要因を口にするには勇気のパラメータが無く、虚はただ頷くだけだった。

 

「いっそ髪でも切れば違うのか」

「そんな殺生な! 毎朝御髪を梳く習慣を潰すというのですか!」

「何故俺よりも貴様が必死になってるんだ……」

 

 苛ァっとした気配を漂わせながら空木が虚を見据えた。刀を装備していれば鯉口の音すら立てずに刃が抜かれているだろう。

 流石に間抜けな理由(こんなこと)で死ぬのは御免。虚は、「いえ、いえ、違うんです。ただ本当に、私にとってはあの時間が至福で……」と空木を宥め始めた。

 

 

||

 

 

「は、良い年して師匠にべったりだなんて。それでも私の半身ですか、嘆かわしい。ちなみに師匠は私の甘味巡りに何日も付き合ってくれたこともあります」

「その言葉をそっくり返すぞ松陽。貴様こそ甘ったるいものなんぞばかり食べているから軟弱なのだ。師匠は昨日私に付き合って実に充実した時間を過ごしましたよ」

 

 同じ顔をした二人がバチバチと睨みを効かす不穏な食卓の中で、冷や汗を流す朧と話題に上がっている当人は涼しい顔をして朝食を口に運んでいた。

 

「そう言えば昨日の師匠の御髪係を私から強引に奪っていましたよね。挙句の果てに勝手に約束まで取り付けるなんて傲慢甚だしいとは思いませんか」

「元々は“私”が昔からやっていた行いを貴様が強奪したの間違いではないか。私は何百年前からやっています。たったの百年も満たない人格がマウントを取ろうだなんて文字通り百年以上早い」

「おやおや、お年寄は言うことが違いますね。古臭さが言動から滲み出ているようだ」

「お前こそ発言には青臭さが出ていて聞き苦しい」

 

 どうやら先日の髪係は松陽だったのを虚が強引に取ったのに加え、師匠の時間を独占したことが気に食わないらしかった。圧の滲む笑顔の松陽と虚は茶碗を手にしたままいがみ合うばかりだった。険悪な空気に耐えかねたのか、朧が空木の隣へやって来て耳打ちをした。

 

「その、如何(いかが)すれば……」

「放っておけ。旅を始めてからあの様子だ。……この糠漬け美味いな」

「……然様で。ちなみにその糠漬けは先生とお作りいたしました」

 

 いつの間にか茶碗を置いて庭先へ出て各々の木刀で戦い合う双子の姿を目にしながら騒がしい朝食を終え、朧に一言残して空木は屋敷を出た。このままいれば確実に飛び火するのは目に見えていたからだ。

 背後から「師匠ォォォオ!」なんて叫びが聞こえても聞こえない振りをした。念の為に耳も塞いで江戸の街並みへと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 江戸に住むにあたって馴染みになった画材店に寄り、減ってきた顔料や新品のスケッチブックなどを買い足し、歩く人々を横目で観察しながら歩くこと数時間。いつの間にかターミナルの近い都心から離れた場所にいた。

 人通りがあるのかを疑う静けさだが、道には轍が残っていて人通りがあることを示していた。

 

「それに……子供の声?」

 

 誘われるがままに歩けば廃寺、その前に何やら屈んで様子を窺う――万事屋の三人を見つけた。

 

「お前たち、ここで何をしている?」

「げぇっ! 決して僕たち怪しい人物じゃ……って空木さん?」

「おー、ウッチーネ! 久しぶりアルな」

「どうやらバイトから帰ってきたってのは本当だったみたいだな。丁度いいや、こいつら見ててくれ」

「は?」

 

 銀時はそう言い残して補修の跡が激しい障子前まで行くとその中を覗いた。そこで見えたのは子供が元気に走り回る姿で、呆気に取られていた銀時の尻穴に「どろぼォォォ!!!」という叫び声と共に躊躇いの無い一撃(浣腸)がクリティカルヒット。

 汚い悲鳴を上げる白綿毛を他所にどういうことかと、一撃を食らわした住職が自分の指先と銀時を何度も見返していた。

 

「申し訳ない。これはすまぬことを致した。あまりにも怪しげなケツだったのでついグッサリと……」

「バカヤロー、人間にある穴は全て急所……、アレッ、ヤベッ! ケツまっ二つに割れてんじゃん!」

「銀さん落ち着いて下さい。元からです」

「まぁ、不審者よな」

 

 流れで廃寺に上がることになった万事屋と空木はこの寺の住職の男と話をすることになった。ただ神楽は興味が無いのか、わいのわいのと騒ぐ子供に紛れて遊んでいた。

 

「そうであろう、そちらにも落ち度があろう。あんな所で人の家を覗き込んでいては……」

「スイマセン、ちょっと探し人が……」

「探し人?」

 

 そう新八が切り出して和尚が聞き返す。ぼんやりとその様子を見ていた空木は「もしかしていつも事の進行を新八任せにしているのではないか?」と疑問に思い、隣で鼻をほじる銀時を訝しんだ。

 

「えぇ。和尚さんこの辺りで恐ろしい鬼の面を被った男を見かけませんでしたか?」

「鬼? これはまた面妖な。では、あなた方はさしずめ鬼を退治しに来た桃太郎というわけですかな」

「三下の鬼なんざ興味ねーよ。狙いは大将首。立派な宝でも持ってるなら別だがな」

「宝ですか……。強いて言うならあの子たちでしょうか」

 

 すっと和尚が鬼の面を被り、隣から「うぉわァァァァァァ!!!」と悲鳴が上がった。

 

「てっ……、ててててめー、どーゆうつもりだ?」

「アナタ方こそどーゆーつもですか? 闘技場から私をつけてきたでしょう」

「え!? え!? ホントに、じゃ、和尚さんが!?」

「私が煉獄関の闘士鬼道丸こと……、道信と申します」

「煉獄関……。ああ、あそこの闘士なのか」

「空木さんも知っているんですか? あの場所を……」

「仕事柄耳に入ってくるだけだ。随分と野蛮な場所だと聞いている」

 

 奈落へ潜入していた時に数多の罪人の牢を巡る天導衆の護衛をする仕事を割り振られていた者がいたことを思い出した。罪人を巡っていたのは闘技場の闘士の補充の為だったかと、今になって得心がいった。

 道信という名はその関連の話題で聞き覚えのある名前だったからだ。

 

(……天導衆。不老不死を探す天人共の集団にして、星の実権を握ろうとする厄介な者共)

 

 天導衆絡みであるならば事は簡単には行かない。何故こうも松陽の弟子共は厄介事に首を突っ込むのか……。道信と話す銀時を横目にして空木は思った。

 

「あの空木さんは何故ここに?」

「たまたま散歩していたら子供の声が聞こえ、そしてお前たちがいただけだ」

「本当に居合わせただけなんですね……。ってか子供の声が聞こえたんですか?」

「この辺りは人が通ることも少なく、民家はあるものの空き家ばかり。不審者が潜むには絶好の場所だ。そんな中で子供がもし遊んでいようものなら年長者として注意せねばと思ってな」

「ここ最近でマトモな大人を見た気がします。なんでこうもろくでなしが周りに多いんですかね」

「ろくでなしに見えて一本の筋が通っているから……、ではないのか。人が集まるのには理由があるだろう」

 

 「え」と新八が声を上げる。道信によって出された茶を飲む空木の見る方向には赤ん坊をあやす銀時がいる。

 ちゃらんぽらんに見えて――先程からの道信との話ではマトモに受け答えをしている。何か茶化す素振りも少ない、白綿毛なりに真面目に話でも聞いているのだろう。

 何かを言おうとした新八の眼鏡は突如としてやってきたやんちゃ坊主によって取られた。

 

「わっ」

「うおーなにこれすっげー、世界がぐにゃって見える!」

「オイコラ! 眼鏡返しやがれ!」

「ははははー!」

 

 やんちゃ坊主を追っかけて新八が縁側から立ち上がっていく。道信は自身を「人斬りの鬼だ」と称す割には、あまりにも人間臭く、そして子供を明るく育てている。

 

(真の“鬼”を親に持てば、ああ育つこともあるまい)

 

 ――長い間国の暗部の頭領となり、人を殺し続けてきた童。

 ふと、ある姿が過ぎり思わずスケッチブックへと鉛筆を走らせていた。胸を焦がされる思いに急かされるように、早く、素早く。

 描いていれば「なにしてるの」と子供たちがスケッチブックを覗いていた。

 

「お姉さん、絵を描いてるの?」

()()()()だ。そう、絵を描いている」

「スッゲー! これ俺じゃね!?」

「私もこーんな美人に描かれてる! ありがとうお姉さん!」

「お兄さんだ」

「ウッチー、私の似顔絵も描いて欲しいアル」

「気が向けば。正式な依頼なら有料だ」

 

 道信からする血の臭いはまったくしない、純真な子供の気配。無防備な頭へと手が伸びたが空木はその手を引っ込めた。

 「えー」とぶすくれる神楽と子供たちの中で、「オイ帰るぞ」と銀時の声が届く。邪魔をしたなと一言残し、子供だらけの廃寺を去った。

 

 夕暮れ時で辺りを茜色の光が照らす中、なぁ、と銀時から声を掛けられた。

 いつも軟弱な素振りにはそぐわず、不思議と張り詰めたような空気がその男から流れている。

 

「……アンタ、松陽は拾ったのか?」

「まぁな」

「……ふーん。まぁ、テメェにも色々とあるだろうけどさ、子供(ガキ)の頭くらいいつだって撫でたっていいんじゃねーの。松陽のも、虚のも」

 

 この男は空木のほんのちょっとした動きを見ていたのか、隣を振り向きもせずに言葉を紡ぐ。

 なんとも不器用な姿だろう。ふ、と空木は笑った。

 

(……そうだ。俺は、未だにあの二人の頭を撫でることさえ出来ない。その資格さえ無い)

 

 引っ込めた手を見つめればいつだって手は刀を握っていて、手だけでなく体中が切り傷や返り血で塗れて酷い臭いをさせている。

 そんな手で一体何を撫でれるというのか。

 

()の頭を撫でるには、俺の手は汚れ過ぎた。昼に食べたフライドチキンバーレルの名残で」

「きったねーなオイ! ……つか、そのフライドチキンって残ってたりしない? ああいうのって意外と量が多くて残しちゃうじゃん? そーいうのってもったいないじゃん?」

「タカリはいい加減にしておけよ。やれるのは骨しかない」

「いらねーよ! くれるなら身があるやつにしてくんない!?」

 

 ほれ、と空木が食べ終わったフライドチキンの骨を銀時に渡すとノータイムで叩き落とされた。残念。

 

 

||

 

 

 最初のきっかけは何でもない。闘技場から帰る裏道で肩を寄せ、息を潜めて震える子供の姿を見た。

 たったそれだけのことだった。

 着物はボロボロで体中は汚れに塗れている。それに、こんな社会のはみ出し者の集まるような場所に来る子供というのは到底まともな親の庇護を受けることなど無かったのだろう。全てを睨むギラついた瞳が荒んだ人生を物語っていた。雪も降る様になってきた季節でもあったから、このままでは凍死するのだろうと。

 どこか遠い第三者の様に考える自分とは別に、体は何故か駕籠を止めて、その子供の前に立っていた。

 そうして口が勝手に動いた。

 

「ウチに来るか」と。

 

 最初は怪しんでいた子供も、私の事を利用しようと――生きることに足掻こうとする彼らはいつしか、その身に宿した牙を落として私に懐いた。

 『父』として慕われることに戸惑いと躊躇いはあったものの、彼らのその信頼を心地よく思う自分がいたのもまた事実。

 そして多くの孤児を引き取って住処としていた廃寺にはいつしか子供たちの笑声(しょうせい)響く、眩しい光景が広がるようになった。

 人斬りとしての腕を買われ闘技場でならず者たちを喜ばせるだけであった日々は、いつしか子供の養育費を稼ぐ為の日々になり――やがて、この血塗られた仕事から手を離れたいと考えるようにもなった。

 

 子供を引き取るだけでこの変わり様。私自身でも驚くものだった。

 人の命など軽く考えていた私はいつしかそれを重く受け止めるようになった。奪ってきた命の重さを“子”によって教わり、……そして私は彼らに疚しい事一つ無い身の上にもなりたいと。そんな欲が出るようになった。

 

 そんなある日、不思議な若者たちに出会った。闘技場から出てきた私を追いかけてやって来た彼らの名を万事屋。

 あまり見ない銀髪の男と、丁寧な言葉を発する眼鏡……の少年と、天真爛漫な少女、そして底冷えする程に寒気のする目をした笠の男。

 彼らはこんな私を肯定してくれていた。

 

『アンタ、もう立派な人の親だ』

 

 ――そんな言葉を掛けてくれるような人物に、もっと早く出会いたかったものだ。こんな私の背を押してくれる彼らの様な人に出会っていれば、私は取り返しがつかない場所まで踏み入ることは無かったのかもしれない。

 

 でも、だからこそ、やり直したい。

 この子たちの“親”と、胸を張って言えるような人生を歩みたい。

 

 しかし、私の身は天導衆に買われて今の生活が保障されているもの。闘技場の闘士を辞めるとなれば追手が差し向けられ、子供たちへその魔の手が伸びることも必定。

 それに子供たちが伸び伸びと困ることなく暮らす為の資金だって底をつく。そうなれば彼らに苦労をさせてしまう。

 そう思い悩む私にまた、道を示したのは子供たちであった。

 

『先生と一緒ならどんな場所だって楽しいよ』

『そろそろ新しい家に住みたいと思ってた所だし、お引越ししようよ』

 

 なんと情けないことか。目頭が熱く、思いの丈が溢れていくのを心配させるばかりか、私のことを慮ってくれもした。

 薄々と考えていた、江戸からの逃亡への決心がついた。

 江戸ここでは私の手を汚し過ぎた。だから、せめて新しい場所で、新たに人生をやり直したい。

 

 この子たちに父親だと胸を張って言える男になりたい。

 

 出立する夜に万事屋の少年と少女が廃寺を見張っていることに気が付いて、私は頭を下げた。

 彼らは……、笑って私を送り出してくれた。同時刻にやって来た追手を引き受けてくれた。

 急いで馬を走らせた。私の気など知らず、楽し気にする子供たちの様子に胸を温かくしながら、またもや私の目は熱くなっていく。

 

(……あぁ、本当に、もっと早くに出会いたかった)

 

 ――それは、長き間薄汚れた場所に身を置いたから分かる、強者の気配だった。

 背後から迫る気配から遠ざかろうと馬に鞭を打つ。それでも、背後の気配の方が早い。

 

 

 漠然と、己の死期を悟った。

 

 

 元より人斬り。それで生計を立てていた私がまっとうな道へ戻ることなど無理だったのか、これまで殺してきた者たちの怨念が背をゆるりと撫でる。

 時がゆっくりと流れる感覚の中、ろくでもない人生が思い返された。その中でひときわ輝く、どうか子供たちだけは無事でいてくれと。

 

 馬車の上にドッスンと衝撃がした途端、――死の気配を切り裂く様に甲高い音が響いた。

 

「なになに!?」

「きゃっきゃぅ!」

「わーあ!」

 

 それと同時に私の前に折り畳まれた紙束が落ちてきた。ひららと舞うその紙は――子供たちの似顔絵。

 そして、子供たちに囲まれる私の、絵。……彼だ。子供たちの前で絵を描いて見せていたのは、恐ろしい目をした彼。

 振り向けば、一つにまとめ上げられた黒髪と、後ろの方で重たい物が投げ落とされる音が聞こえる。

 

「餞別だ。最初の風景画数枚は売りに出して路銀の足しにでもしろ」

「……あなたは、一体」

「浮世にいるだけの“鬼”だ」

 

 馬車は軽くなった。彼らが降りたのだろう。胸から込み上がる。殺してきた者の手をすり抜けて、私は――彼らに生かされた。

 生かして、くれたのだ。

 

「……この恩は、決して忘れません! ……ありがとう!

 

 声を張り上げた。暗闇の中でも聞こえる様に、遠く離れていく彼らにも聞こえる様に!

 

「先生、どーしたの?」

「また泣いてるの?」

「……そーだな。先生、また、泣いちゃってるんだ」

 

 こんなにも涙脆かっただろうか。……、こんなにも、生きていて良かったと思える日はあっただろうか。

 

 ありがとう、万事屋の皆さん。

 そして、ありがとう。子供たち。

 

 ……私は、必ず真っ当な道を歩んで、彼らの“父”として在れるように。

 そしてその道へ引き戻してくれた酔狂な方たちがいることを、生涯忘れることは無い。

 

 

||

 

 

「……行ったか」

「貴様、一体何者だ……」

 

 道信が走らせる馬車の上に一息で飛び乗った角を生やした異形――荼吉尼(だきに)族の男、鬼獅子は己を投げ捨てた男を驚愕の眼差しで見た。

 宇宙を跨ぎ、三大傭兵部族として恐れられる一角の荼吉尼族。その巨大な体格と引き締まった筋肉ばかりの塊を軽々と投げた、深編笠を被った者へむくむくと交戦の意欲が湧いていた。

 

(……笠に、袴の人物? どこかで聞いた覚えのある話だ)

 

 刀を持てば、それはきっと傭兵の中でも噂されている『村雨』という人物だろうが、今目の前にいる者は金棒を背負っていた。

 そいつではないだろうと思い直し、体勢を直して鬼獅子は道信を刺そうとして目の前の男に折られた槍を投げ捨てた。

 

「貴様、鬼といったか。地球産の鬼とこの俺とで力比べといこうじゃないか」

「児戯に付き合う暇はない。疾く終わらせてやろう」

 

 鬼獅子は横薙ぎに振るわれた金棒を受け止めた。大したダメージが入っている様子は無く、逆に鬼獅子は相手から金棒を奪おうと掴んだ矢先から引っこ抜こうと力を込めていた。

 相手も武器というアドバンテージは手放し難い。拮抗する力の中、突然相手が力を抜いたことで勢いよく鬼獅子は後退した。

 

「どうやら力比べは俺の勝ち――」

「どうだか」

「なにっ!?」

 

 頭上から声がすると思いきや、鬼獅子の角が握られる感覚。荼枳尼族にとって角とは魂と誇りを象徴する。

 それをぽっきり、菓子を折るかのように軽く折られた。――あまりの事で鬼獅子は一瞬気を取られた。それが戦いにとっては命取りだった。

 奪った筈の金棒はあっさりと奪い返され、無防備な顔に一撃を食らう。ごっごっごっ、と幾つかの木々を倒しながら鬼獅子は吹き飛ばされた。

 

「まっ、へぶ」

「待たない」

 

「ゆっ、うぐ」

「許さぬ」

 

「どぼじ」

「理由など無い」

 

「はな」

「話したとて貴様に未来は無い」

 

 そこからは反撃を許さぬ残虐な限りを尽くした攻撃の数々。笠を被る下の顔に血潮を飛び散らせながらも蹂躙の手を止めない。

 

「あぁそうだ。吐け。貴様を買った男の名を」

 

 思い出したかのように相手――空木が攻撃の手を止めた時、鬼獅子は口も聞けない程に殴り倒されていた。ピク、と指先が反応しているので辛うじて生きてはいた。

 

「……天を、敵にしゅる気か」

「天? お前は随分と安っぽい肉の塊を天と称するのだな」

「……は?」

「我が身焦がすが(まこと)の天。故に、貴様ら天人が仰ぐ天など、今を生きる者が仰ぐ存在など“天”とは呼ばず――ただの肉塊よな」

 

 何を言っているのか分からない。そんな目をして空木を見つめ返す鬼獅子に苛立ったのか、空木の持っていた金棒は思わず股間を垂直に攻撃した。

 チン! という音共に「ヒギュォォォォォォオォ」と人とは呼べない悲鳴を上げて鬼獅子は白目になりながら泡を吹いて気絶してしまった。

 

「……あ、話を聞く前に気絶させてしまった」

 

 ついでだからもう何度か攻撃しておこう。金棒による無慈悲な攻撃が鬼獅子の何ら罪のない玉を何度も甚振った。

 

 

||

 

 

「……なんと、またであるか」

「これで二度目だぞ。一体、あの星に何があるというのか……!」

 

 とある宇宙船、高く聳える塔の上に座す存在たちの中で激震が走った。

 天導衆。その一角が()()()()地球で殺害されたとの報せが入ったのであった。

 

 殿上人の娯楽にして天導衆の収入を担っていた煉獄関。その様子を見に行っていた一人が殺害され、煉獄関自体も運営をする地球人の団体が何故か警察組織に連行されて取り潰しとなった。

 

「やはり、いるのか。地球には」

「あぁ。これは我々への宣戦布告と受け取ってもいいだろう」

「――不老不死なる存在からの」

 

 一部の種族を除き、多くの種族には限られた寿命が定められている。その定められた枠を飛び越え永遠に若さを保ち生き続けられる『不老不死』という夢もまた、地球だけではなく他の星にとっても喉から手が出る程に欲しい奇跡。

 

「して、調査はどうなっている。当代奈落首領、(ひつぎ)よ」

「は。現在手の者に探らせておりますが、行方は掴めてはおりませぬ」

「調査を急がせろ。――我らの一角を崩した者こそ、恐らく“ソレ”よ」

 

 円の中心に頭を垂れる男へと天導衆は指示を飛ばす。柩は元より奈落三羽の一角であるが、朧が奈落を抜け(死を偽装し)た際に次代の首領となった。

 かつて憧れた()、そして羨望を抱いた同期()のいる立場に己がいる。天の重圧を受け止めながら柩は退室していく。

 

「不老不死……か」

 

 そんな存在がいるのならば聞いてみたいものだとは思う。何を思って長き時を生きているのか。何を楽しみにして生きているのか。

 暗殺稼業に手を染めた己は甘味処を巡ることを糧として生きている。そうせざるを得なかったにせよ、甘味を口にした時ばかりは何もかもを忘れ、しばらくの幸せを感じることが出来るのだから。

 烏の一羽がふらりと闇へ消えていく。

 

 




空木…まだ桂ぐらいタッパがあれば間違われることも無かった。
虚…目を離した隙にまた師匠がお出かけしていたので目が据わりながら探してる。チェイスBGMが流れる。
松陽…一番弟子と糠床を作った。楽しい。
朧…先生と糠床を作った。嬉しい。
万事屋…道信が無事に逃げれて良かったけど何故か煉獄関潰れてた。ラッキー。
真選組…ドSが突っ込んだ案件の手柄が急に転がって来て驚いた。
道信たち…色々と大変だけど江戸から出て生活してる。
鬼獅子…結局玉潰されて女の子になっちゃった。場末のオカマバー(notかまっ娘倶楽部)で拾われて働いている。

松陽先生おたおめッス
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