銀魂:白銀ノ魂録実況プレイ 虚ルート   作:一億年間ソロプレイ

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最近あったかくて日差しが気持ち~っす


[ああ紅桜散ればこそ]

 ――ピロリン。

 最近契約した携帯からの着信に俯いていた顔を上げた。眼下に広がるは、襖を取り払って部屋を繋げ広げた広大な和紙の海。

 

(描けん……)

 

 絶賛スランプ中の空木は濡らしただけの筆を咥えながら携帯を開いた。

 

 

 

 from さぶちゃん

 sub  仕事休憩中(^^)/

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 やっほー(^_-)

 ウッチー元気かな⤵⤵⤵

 最近メールしても返信くれないし

 悲しいのでもっと送ることにしたお( *´艸`)

 これはのぶたすが差し入れてくれたドーナツ↓↓↓

 

 

 

 すぐに携帯を閉じた。人数分の携帯を契約した時、顔の長い男に絡まれ勝手に『メル友』なるものに登録されてしまった。

 一日数十件ものメールが届く。一体何の職業に就いているのか不思議な頻度である。

 

 見なかったことにして唸っている空木の耳が訪問客の足音を捉える。続いてピンポーンとインターホン。

 本日来客の予定は無し。家には朧もいる。彼が出るだろうと空木は目を閉じていた。

 

 

 ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

 

 

 いつまでも続く騒々しさに空木が出ることにした。誰が連打しているかは気配で分かる。

 

「黙れ五月蠅いぞ警察にその身柄引き渡してやろうか」

「おお! ようやく出てくださいましたか空木殿」

「出てくるまでやる気だったのか……?」

「時間が来れば止めようかと。実は話がありまして、空木殿の時間はよろしいでしょうか」

「構わないが」

 

 松陽に関する話題だろう。空木は玄関から出て門を開いて招き入れた……が、その時偶然鹿の被り物をしている割烹着姿の人物を発見する。

 さっと隠れたものの桂は隠れた人物の姿を目で追っていた。

 

(朧お前……、一体何をしている?)

(申し訳ございません、空木殿。昼餉の用意をしており、この場を離れることも出来ず……)

 

「あのぉー……、先程の人物は一体?」

「ウチで雇っている鹿だ。気にするな」

「なるほど鹿ですか。鹿も家事をする時代とは……」

 

(お前の事情は汲むが、昼餉の用意は後で良かったものを)

(今日は手打ちそばにございまして)

 

 そばを茹でている時にタイミング悪く訪問され、逃げる隙も無くした朧が取ったのは咄嗟の変装。

 茹で終わったそばを鹿がプロの手つきで締めている姿はかなりシュール。

 鹿(おぼろ)を素通りし、自室へ案内した。こちらも間が悪く客間を潰して和紙を広げていた。

 吹き抜けて広がる紙を目にして桂が「おお!」と声を上げた。

 

「大作を作る前でございましたか」

「別にこちらの事はいい。話は何だ」

「では――、こほん。先日の、我が恩師松陽先生に関することです。空木殿が○笠博士ポジションにいるのは理解しましたが……、実際問題、松陽先生はどのような立ち位置に置かれているのでしょうか」

「どのような立ち位置……?」

「工○新一ポジなのか、それとも哀○ゃんポジなのか、例のF○Iか○安なのかが気になって眠れず。俺は○BIと見ましたが」

「これ伏字の意味あるのか? 巻き込まれたか、何処かしらの組織の一員かという話……で合ってるのか?」

「ええ」

 

 しみじみと頷きながら桂は過去の事を思い返していた。

 吉田松陽(せんせい)……。

 あの、人を容易く埋めることの出来る身体能力(拳骨)。包丁の代わりに刀で食材を切り落とし、刀の鞘で鍋の中身を混ぜる。あの剛毅な――。

 

「今不適切な使い方をしていなかったか。斬るなとは言わんが鞘で中身を混ぜるな」

「あれはたまたまお玉を銀時と高杉のケツにて使っ(刺し)ていたのでやむを得ず」

「どういう状況だ」

「昔から並大抵の方ではないと踏んでいたので、この際空木殿にぶっちゃけて貰おうかと」

「人の話を聞け。……いやぶっちゃけるも何も、俺は松陽とはそこまで長い付き合いじゃないぞ」

「なぬ?」

 

 『嘘ですよね師匠。私だって言いたかないですが虚としての記憶ありますからね――?』

 遠方にいた松陽が思念を飛ばしてきたが空木は受信できない。

 

「小さくなった時……、ぐらいからの付き合いじゃないか?」

「なんと!? では空木殿も知らないと」

「ああ」

「分かりました、ではこちらが本題です。どうか空木殿、我々と共に攘夷活「見つけたぞ桂ァ!」――なぬっ! 空木殿危ない!」

 

 閉めていた部屋の障子を突き破ってバズーカ砲の弾が飛んできた。桂は空木を庇う――ことなく身代わりの盾にした。

 

「ふぅ、危なかった。空木殿、御怪我は」

「お前人の話を聞かないのはわざとだろう。何勝手に俺を盾にしている、再三言うが人の話を聞け」

「しかしこうでもしなければ俺の艶々キューティクル長髪と空木殿の長髪とで属性が被りヌゥ!!!

 

 バズーカの弾の後にやってきた苦無が桂の頭に刺さった。開けっ広げになった部屋からは庭先で真選組を追い回す鹿の姿が見える。

 

「何故民家に鹿が!?」

「鹿の天人か!? コイツ、動くぞッ」

「あパンツ脱げた! 俺のパンツ足に引っ掛けないで!」

「すいません土方ァ、桂じゃない方に当たりました」

「お前は一般人に対して何やってんだ!!!」

 

 ――桂は穏健派攘夷志士に転向したといえど、幕府転覆を狙う攘夷志士には違いない。

 となれば、彼の行く先々には攘夷志士を取り締まる真選組もいる。

 

「ふはははは! 狙いも碌に絞れんようでは俺を捕まえる事など夢のまた夢だァ!」

『桂さん、見つかっちゃいました』

「構わんエリザベス。俺はこの通り無傷だ。逃げるぞ!」

 

 本日昼食として出される筈だったそばをちゃっかり啜りながら「ばいび~」と残し逃げていく攘夷志士。それを追う真選組であるが……。

 アフロ頭になった空木はくっちゃらくっちゃらとガムを噛んでる警察の肩を掴んだ。

 

「公僕。家の修繕費は貴様ら宛てで良いな」

「あー、ウチじゃなくてそれ攘夷志士のせいですね。そっちにツケといてくだせェ」

「では、貴様がバズーカ砲を持っているのは幻覚か」

「そりゃ幻覚っすよ。今すぐ病院行った方が良いですねーそれー。ホント土方ってやつァ、そういう他人に責任擦りつける奴なんでさァ」

「総悟テメェのせいじゃボケェ! つかお宅ん家の鹿ナニアレ、絶対カタギじゃねーだろアイツ!」

「あれはウチで雇っている鹿だ。今時鹿とて護身術を覚えている」

「ウソォ最近の鹿スゲェ! ……って、んなワケねーだろ! なんで桂がテメーの家に来たんだよ」

「そばを食い逃げされた。攘夷志士に付け加えて食い逃げと住居への不法侵入罪も加えろ」

 

 真選組からの事情聴取が終わる頃。破壊された家へと帰ってきた空木と鹿の被り物をしたまま補修作業をする朧が出迎えた。

 家は半壊、庭木も燃えて荒され、広げていた和紙は塵屑。

 きゅっぽんとアフロを取り、遠い目をした空木は長~く重い溜息を吐いた。

 

「騒がしい場所ですな、かぶき町(ここ)は」

「ああ。前は阿呆みたいに大きなゴキブリが繁殖した。お前も慣れてくるだろうさ」

「ううむ……」

 

 裾に入れた携帯からの着信が届く。開けばメール依存症(メル友)からのだったので、本日分の返信を送ることとする。

 『警察に家の修繕費を請求することは出来るのか?』と。

 

 

 

 from さぶちゃん

 sub  御愁傷さま^_^;

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 場合に寄るお(*^^*)

 でも田舎侍組織だとバックれられる

 可能性が高いから、メル友のよしみで

 出してもいいお(・ω・)ノ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、エリートな見廻組局長なので

 

 

 

警察かよォォォ(ギザウザス)!」

 

 

||

 

 

 珍しく万事屋に依頼の電話が入っていた。だが神楽は定春の散歩へ、メガネ(新八)は買い物へ行って帰ってこないので渋々一人で出動することになった。

 銀時が依頼人が来て欲しいと言われてやって来たのは刀鍛冶屋。

 カン、カン、と一人で鎚を下ろし、熱した鉄を鍛えていた女性が顔を上げた。

 

「あのー、お電話いただいた万事屋の坂田ですけどー」

「少々……、お待ちください。その、依頼をした村田鉄子と申します」

 

 鉄子の作業が終わるのを待ってから二人が話に入った。ただ鉄子は暗い顔をしており、話す声も小さい。

 

「このご時勢に刀鍛冶とは色々と大変そうですねェ」

「依頼の件は刀というか、兄者についてです。前は兄妹で刀鍛冶をしていたのですが、最近、兄者が部屋に引き篭もってしまったんです」

「はいはいよくありますね~。引き篭もりニートになったお兄さんを連れ出せって話ですかね~」

「いや、兄者が自分の人生を賭けた発明品を壊した人物に再び会いたいと言い残してからポックリ」

「え、兄者死んでる? お兄さん亡くなられてます!?」

「部屋で臥せってしまって。勝手に殺さないで欲しい」

「生きてるんかーい! いやさっきの言い方だと死んでる様に聞こえるだろーが! 依頼としては発明を壊した犯人をお兄さんに会わせるって内容でいいワケ?」

「ああ。壊された発明品の名前は紅桜。先代……、私達の父上が鍛え上げた名刀紅桜――を越える為に絡繰を内蔵させた生きた刀。話を聞くに、どうも一瞬で量産した刀も全て破壊されたらしく」

 

 その時、坂田にティンと電流走る。紅桜、絡繰、刀……。

 高杉のいる艦隊へとやってきた人物がそのような言葉を発していなかったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『紅桜? あの絡繰と刀の融合物体か? 斬ったぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で犯人連れてきました。依頼完了ってコトでいースか?」

「なんだ急に」

「えっと、実はかくかくしかじか……」

 

 急にスクーターに乗った銀髪の男に拉致されてやってきた空木に鉄子が事情を説明する。銀時が鼻くそをほじり終わると同時に終わり、「ああ」と頷いた。

 

「それなら確かに壊した。仇討ちといったところか?」

「……ごめんなさい、銀さん。もう少しだけ付き合って欲しい。多分、兄者はあの人に恨みを持ってる……と思う」

「絡繰ぶっ壊せるコイツなら大丈夫だろ。見た目よりしぶてェかてェモルガナッ

「ひとまずそやつに会う。まぁ、そう大したことにはならないだろう」

 

 一発拳を入れた空木が村田鉄矢の伏せる部屋に入っていく。

 

 

「貴殿が紅桜を壊した当人か!よくものこのこと私の前に姿を現したな!これまでの努力も資金も、何よりあの紅桜が父の刀を越える瞬間さえ見られなかったではないか!ここで会ったが貴様の命日!その頭叩き割ってやろう!!!」 

 

 

 大声に混ざってパタリと体が倒れる音がした。鉄子と銀時が見合い、即座に部屋に入った。

 そこにはあまりの声のデカさに鼓膜が破れ、耳から血を流す空木の姿があった……。

 

「おいどーすんだよ! 仇討ち成功してんじゃん! 図らずともキル成功してんじゃん!」

「銀さんはその人を部屋から出して介抱を! 私は兄者を落ち着かせてから行く」

 

 病身ながら突然大声を出してしまったせいか、鉄矢は鉄矢で咳き込み口からごぱぁ!と出てはいけないものが出てしまっている。鉄子がぎゅぎゅっと押し戻しながら銀時は空木を背に負って先程話していた部屋へ戻った。

 

「み、み。耳が、聞こえん……」

「っち、鼓膜敗れちまってんのか」

「何喋ってるんだ……。聞こえない、何も……。波○陽区の切味……。初めて辻斬りに遭った……」

「誰もギターで弾き語りしてねーっての! 意識の方は大丈夫だな、ってなると……」

「何故人の身体からティ○レックスの咆哮が出てくるんだ。こうなると知っていたなら高級耳栓で無効化するものを……」

「いや普通にジャンプ回避しろよ」

「それもそうか」

「おい通じてんじゃねーか!」

 

 

||

 

 

 父のことは尊敬している。だが、いつまで経ってもその威光と比べられ続けられた。

 紅桜。父の生涯における随一の逸品にして名作。

 どの刀とて初めは単なる鋼。それが叩き上げた末に薄らと赤味を帯びて、人を妖しく惑わす魅力を宿していた。そう、私もあの刀に魅入られた一人だ。

 

 己の全てを投げ打って、絡繰の知識をも学んで父を超える紅桜を造った。倫理など、良心など捨て去った所業の末に生まれた私の逸品。

 使い手の力量に寄らず、凡人に装備しても達人級の剣の腕を振るうことが可能。誰もが剣豪となり、艦隊さえも撃ち落とせる究極の兵器。

 ――人の手を離れて成長する刀。これを作り出した私は、ようやく父親を越えられる。

 その為に刀に命を賭してきた、評判も倫理も誇りも、何もかもを捨ててきた。

 

 それが一夜にして破壊された。

 深編笠で顔を隠した剣士が全て無に帰してしまった!

 

 妖刀紅桜を移植した人斬り以蔵も対するが腕……、電ぱく自体を切り離されてしまえば紅桜は成長しようが無い。人離れした業によって紅桜(わたし)は壊れてしまった。

 月の光輝く夜、見事電ぱくのみを狙い斬られた剣の閃き。培養していた紅桜たちが壊れる音が今でも耳にこびりつき眠れぬ日々を過ごす内、とうとう病をも得た。

 

 壊した犯人がいる内に、口が開く元気がある内に聞きたかったのだ。

 

「わた、しは……、究極の剣を、造った筈なんだ。全てを込めた、わたしの精魂も心も込めた、良識さえも捨てて、鍛え上げた……」

「兄者……」

「これ以上、何を捨てればあの境地を、越えられる……」

「捨てるだの捨てないだの……。なに言ってんだオメーはよ」

 

 私の部屋へと入ってきたのは銀髪のモジャモジャ頭と、あの剣士……。

 あの姿を見るや否や、病で疲弊しきった体に活力が満ち、今に叩き斬ってやろうとするも……鉄子の抑えを振り切れない。

 そいつは私の前に座った。悠々と、浮世離れた雰囲気をさせながら。

 

「なぜだ、何故私の紅桜が、貴様に負けたのだ」

「何故って……、脆いからだろう」

「は……?」

「刀としても絡繰としても中途半端。いや、何よりも作り手の心の脆さ――よ」

 

 心の脆さ、だと?

 そんな筈は無い。わたしに脆さなど、弱さなど無い。どうなろうが構わないという心の境地に至り、妖刀紅桜を作り出したこのわたしに……!

 

「全てを投げ打つというのならお前は“兄妹”という枠を捨てなければならなかった。自分の身を案じる妹を亡き者にしてからその道は開けただろう」

「おい、テメ……」

「だがな、例えそうしてもお前はお前の望む境地へと辿り着けない。何故なら、人が“全て”を捨てた先など()()()()

 

 その者の目を、私はこの時初めて見た。戦艦においては笠に隠れ()みえなかった、その瞳を。

 

 “闇”だ。

 

 そこには奈落の底の様相が在った。見れば見る程自分が落ちていく様を思わせ、咄嗟に目を離した。

 

「捨てられることで得られるのは一時的な気の強さのみ。“ここまで捨てたのなら現実が応えてくれる”という甘い観測的希望。現実は捨てた捨てていないで変わる程優しくはない」

 

 その者が立ち上がる。笠を付け、部屋を出る前に残した。

 

「父親を越えたいならば、今一度己が身を振り返れよ。その上で全てを捨てたいと思うなら言え。()()()()()()()

 

 ――戸が閉まるまで、呼吸を止めていた。アレが出ていった。

 この事実を飲み込んだ体がようやく息を取り戻し、ぶわりと汗を吹き出した。

 

「……んじゃま、俺も出らァ」

「ありがとうございます、銀さん。兄者も、今は休んで」

 

 鉄子が碌に動かぬ私の体を布団へと戻す。だが、部屋からは出ずに顔を俯けたまま座っていた。

 

「……わたしたち刀匠は何も考えず、刀を打っていればいい。そう思っていたよ。兄者がよからぬ人たちと付き合い出してからも、それでいいんだって。刀は所詮人斬り包丁で使う相手は選べない。どんな御託を並べようと人殺しの道具を作っているのに違いない」

 

 小さい声と、ツナギを濡らす――涙。

 鉄子は静かに泣いていた。

 

「なのに……、悔しくて仕方なかった。兄者が頑張って作ったあの刀をあんな事に使われるのは……」

「鉄子……」

「止められるなら止めたかったよ。でも、どうすればいいのか、分からなかった……」

 

 妹の涙を見た時、……どうしてか、紅桜を作っている時には一度も浮かばなかった父親の記憶を思い出した。

 

『刀なんぞしょせん人斬り包丁。どんだけ魂込めて打とうがコイツは変わらねェ。だが、だからといって俺達ゃ鎚を止める訳にはいかねェよ。おまんま食いっぱぐれちまう』

『いやいや、それだけじゃねェ。俺達のつくるもんは武器だ。だからこそ打って打って打ちまくらなきゃならねェ』

 

 父が鎚を振るう姿を。

 

『鉄じゃねーよ。てめーの魂をだ』

 

 鎚の音が鳴る度に、父は己が魂を叩いていた。枯れ枝の様に細い腕でも力強く、病で倒れる晩年まで叩き続けていた。

 

『鉄を叩きながら、てめーの魂を叩き上げろ。優しく清廉な人になれ。美しく生きろ』

『お前らがちったァマシになりゃそれに答えて、剣を少しはマシに使ってくれる奴が集まってくるだろうよ』

 

 刀匠としての腕は私の方が上だったが、父はよく鉄子を見ていた。それに反骨心を抱いた時もあった。

 鉄子にあって私にないものなど無いと。

 だが、何故だろうか。今は……、父の言葉が腑に落ちる。全てが無くなった――、いや、本当に何も無き者を……見てしまったからだろうか。

 

「……昔、父に言われたことがあったな。『おめーはどんな剣が打ちたい?』と」

「うん……」

「私は、最強の剣と言った」

「わたしは、……護る剣」

 

 幼い頃、声が小せーよと父に促された。鉄子は、あの時と同じ言葉を口にする。

 

「人を、護る剣」

 

 妹は小さい頃から変わらず、その思いを胸に鉄を叩いていたのだと。

 邪道に落ちることもなく、一心不乱に(じぶん)に向かい続けたその姿は……どこか父を思わせた。

 

「鉄子らしい。美しく、清廉な答えだ。私は……、刀匠と名乗るには道を違え過ぎた。鎚を振るうことは許されないだろう」

 

 父の教えを見失い、己が為に刀を打った私にあの鎚を握る事はもう許されない。

 ――私の造った紅桜は“最強の剣”足り得なかった。きっと、鉄子の刀と打ち合えば負ける程に。

 あの剣士の言う通りに()()()()だったのだ。

 

 ではどうしたら“最強の剣”となる。どうすれば父を越えられるのか?

 

 紅桜を造る前は非常に重たく圧し掛かってきた自問が、今では何故か、軽く感じる。

 

「だが、……刀匠ではなくとも、自身の魂とやらを、今一度叩き上げたい。剣さえも無いこの身で、もう一度」

「兄者、それは――」

「鉄子、鍛冶屋(ここ)は頼んだ……。私は、父と、お前と異なる道で己が願いを遂げてみせる。――今度は何も捨てずに」

 

 私が笑って見せれば、鉄子も「うん」と頷き返し、涙ながらに微笑んだ。

 ……ああ、このように目映(まばゆ)いものを捨てられる筈も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある団子屋の危機を救った糖分王銀時と、たまたま会場にやって来た空木が神社の階段を降りていた。

 

「そういや前オメーにシャウトかました刀鍛冶の野郎がよォ、源外のジジイんとこ来てうっせーのなんの」

「ほお」

「礼が言いたいから一度顔見せに来いとよ……うぷ」

「ほおほお」

「今隣で団子食うの止めてもらっていい? 銀さん吐きそ……」

「知らん。勝手に吐け。今の時代罰金貰うぞ」

「この話が連載された年代いつだと思ってんだオメー! オロロロロロ

 

 ほんのりとした甘みの団子を食べ終えて空木が耳を澄ます。

 いつでも騒がしいかぶき町。その中でも特段騒がしい場所で捨ててはならぬものを見つけた男の、嫌に大きな声が届く。

 

「ふん、行けばまた鼓膜が破れるだろうが」

 

 何とはなしに絵の構図が浮かび上がり、手元のスケッチブックに描き起こした。

 筆を入れるには遠いが、いつかは描けそうな気もする。

 神社から零れた桜の花弁に似つかわしくない嘔吐音の発生源を残し、彼は去っていく。




空木…結局自費と自力+朧とで家を直した。事情聴取の際、提供された土方スペシャルカツ丼のおかげで暫くマヨネーズを見ると胃もたれする様になった。あとこの団子どっかで食べた事あるような味だなって。
松陽…立場的には工○新一がいいなと思ってる。「真実はいつも一つ!」(MI6)
虚…真実はいつも一つ。お前は私が買った肴を食うという、揺るがぬ真実がな。
鹿()…そば打ち、牡蠣打ち、騙し討ちまで大体出来る。最近カレースパイスの調合に目覚め始めている。
村田鉄矢…刀匠の道から外れ、源外ラボで絡繰の研究をするようになった。憑き物が落ちた顔でウキウキと絡繰を作り爆発させる日々。
村田鉄子…サッパリした顔で刀を打てるようになった。
平賀源外…声がデケェのがアレだがスジは良い、という評価。絡繰いじりの楽しさが増した。
顔の長いメル友…貴方が忘れていようが私は知っていますよ。メル友なので。
魂平糖の主人…「旦那知ってるかィ。昔、人を殺し物を略奪していた鬼がいた。俺の祖先もソイツに狙われちまったが、抵抗とばかりに作っていた団子を投げるとぱくっと食っちまってな。『甘い』とか言って帰っていったんだ。あ?そんな話を団子食ってる時にするな?なら節分の豆も今頃団子だろって?ヨソは知らんが、ウチは豆の代わりにいつも団子作ってらァ」
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