「えー以上が、学園生活の規則だ。君たちは共に過ごす仲間だから仲良くするように」
あの後、九内先生に連れられたハジメ、サトゥー、真人たちは4組の教室の席につき学園生活のルールを聞いていた。
ちなみに席は、真人たちが左前横一列、その右隣にアクとルナが横一列、後方右がサトゥーたち、そして後方左隣がハジメたち、という配置になっている。
「さて、ここまでで何か質問、もしくは異議のある者は?」
「大ありよ!」
一通り説明を終えた九内は全員に質問がないか聞くと、真っ先にルナが席を立ち上がり抗議した。
九内はまたお前かと言わんばかりのため息をつきルナの意見を聞くことにした。
「お前、さっき食堂で説明しただろ。一体何が不満だというのだ?」
「まだ全然納得してないわよ!こんな訳分かんない場所で学園生活なんて送れる訳ないじゃない!」
確かに彼女の言い分も一理ある。
いきなり別の世界へ飛ばされた挙げ句、見知らぬ連中と学園生活など無理だと言うのも致し方ないというもの。
しかしそんな事など知るかと言わんばかりに九内は淡々と答えた。
「ほう、では学園生活を送る気はないと?」
「そうよ!」
「成る程、ではその考えをこのクラスにいる者たちに正々堂々と言えるのか?」
「えっ?」
九内に言われてルナは周囲を見渡すとサトゥーたちを含め全員が彼女に注目していた。
「お前以外の全員は学園生活を送ると一致団結したところだ。なのにお前はそれを拒否するというのか?」
サトゥーたちは分からないことが多いにも拘わらず共に学園生活を送ることを決めた。
つまりルナの発言は彼らの意思の結束を否定するということになる。
「そ、それは…!」
「ルナ姉様、お気持ちは分かりますけど、取り敢えずはここにいる皆さんで共に過ごしましょう」
戸惑うルナをアクが宥めて学園生活を過ごそうと提案した。
「わ、分かったわよ!仕方ないから一緒に学園生活を過ごしてあげるわ!」
仲のいいアクから言われてとうとう観念したのかルナは学園生活を過ごすことを決めて大人しく席についた。
「あの子、一体何をそんなに怒ってるのかしら?」
「まぁ、気持ちは分からなくもないけど…」
ルナの言動に真人は同情してしまうも承諾してくれたことに少しホッとする。
「んんっ!ではまずは自己紹介からしてもらおう」
ルナが落ち着いたことを確認した九内は咳払いをして4組全員に自己紹介をしてもらうことにした。
サトゥーとハジメと真人の3人は既に自己紹介を済ませているがアクたちがまだの為必要なことである。
「ではまずアクたちから」
「はい!」
九内に促されアクとルナは立ち上がり自己紹介を始めた。
「僕の名前はアクと言います。これからよろしくお願いします」
「三聖女の1人、ルナ・エレガントよ。覚えていて頂戴」
アクの丁寧な自己紹介に続きルナはやや上から目線で自己紹介をした。
決して悪気がある訳ではないためサトゥーたちも薄々理解している。
「じゃあ次は真人くんたちだ」
「あ、はい…」
そう言って九内はアクから真人たちへと視線を移した。
次は自分たちの番かと悟った真人たちは立ち上がり自己紹介を始めた。
「ど、どうも真人です…一応勇者やってます」
「初めまして。マーくんの母親の真々子と申します。よろしくお願いします」
「ワイズよ。職業は賢者。よろしくね」
「自分はポータです!旅商人です!」
「私はメディと申します。癒術師をしています」
真人たちパーティーの一行は流れるように自己紹介をしていく。
(話には聞いていたけど、本当に母親同伴で異世界転移したのか…)
用務員部屋で真人からその事を聞いていたものの半信半疑であったサトゥーだったが自己紹介を聞いて本当だったのかと信じざるを得なかった。
「じゃあ次は、サトゥーくんたちの番だ」
「はい」
九内に促されてサトゥーたちも自己紹介を始めた。
「初めまして。私はサトゥーと申します。前の世界では彼女たちと旅をしていました。よろしくお願いします」
「燈鱗族のリザです。ご主人様の奴隷として旅に同行しています」
「タマ~?」
「ポチなのです!」
「アリサよ。滅亡したクボォーク王国出身で今はご主人様の従順な奴隷よ」
「ルルです。アリサと同じクボォーク王国の出身で同じく奴隷です」
「私はナナと申します。こちらはエルフ族のミーアです」
「ん…」
サトゥーたちの自己紹介が終わった後、ハジメが口を開いた。
「大半が奴隷って…奴隷商人でも始める気か?」
サトゥーたちの殆どのメンバーが奴隷だということを知り少し微妙な表情で質問をすると、サトゥーは即座に弁解をした。
「違う違う。奴隷って言ってもコキ使ったり酷い扱いをさせたりとかはしてないから」
奴隷を買っているとはいえサトゥーも人の子。
そんな人の道から外れた行いは決してしないのである。
その行いが良いお陰で若干ハーレムが出来上がってしまっている。
「よし、最後はハジメくんたちだ」
「…あぁ」
そしてついにハジメたちの番となり席から立ち上がり自己紹介を始めた。
「南雲ハジメだ。よろしく頼む」
「私は吸血鬼のユエ。ハジメの恋人」
「兎人族のシアです!ハジメさんの恋人です!」
「竜人族のティオじゃ。ご主人様の下僕でもあるぞ!」
「ミュウはミュウなの!パパが大好きなの!」
「白崎香織です。回復魔法が得意です」
人通り自己紹介を終えると今度はルナが口を開いた。
「ねぇ、アンタって恋人2人もいるの?」
ユエとシアが自己紹介をした時、どちらもハジメの恋人と主張したため気になってしまいハジメに質問をした。
「俺の本命はユエだけだ」
「何言ってるんですかハジメさん!ハジメさんは私から唇を奪ったではありませんか!」
「…く、唇を奪ったぁ!?」
シアの発言にルナは声を上げて驚いてしまい、女子たちの殆どが反応し顔を赤く染めてしまっている。
確かにハジメがシアにキスをしたのは事実ではあるが、あくまでそれは人工呼吸であるためキスとは言い切れない。
しかし事情を知らないルナはハジメに突っかかっていく。
「アンタ本命の恋人がいながら他の女に手を出したの!?それにそっちの小さい子がパパって言ってたけどまさか孕ませたんじゃないでしょうね!?」
「違ぇよ!ミュウと俺は血は繋がってねぇが大切なウチの子だ!」
ミュウを仲間にした時、ハジメに『パパ』と呼ばせてと駄々を捏ねたため仕方なく呼ばせていたらいつの間にか愛着が湧いてしまいユエたちからも親バカと思われてしまう程になってしまった。
「とにかく!俺はユエ一筋だ!」
「まったく!紛らわしいのよ!」
ハジメの必死の弁解によりルナは納得して渋々引き下がった。
そして4組全員の自己紹介が一通り終わり今度は九内が口を開いた。
「一癖も二癖もありそうな面子が集まったなぁ…んんっ!さて、本来なら今日は自己紹介を終えて解散だが、まだ時間に余裕があるな…」
そう言って九内が教室の時計を見ると針はまだ下校時間の1時間前を差しておりかなり余っている状況である。
「そうだな…よしっ、じゃあクラス委員でも決めてもらうか」
一通り考えた九内は余った時間で4組のクラス委員を決めることにした。
「まずはクラス委員のクラス委員長から決めてもらおうか」
「先生、クラス委員長とは何か詳細な説明を要求します」
九内が黒板にクラス委員長と書いているとナナが手を上げて質問をした。
ナナを含めユエたちも初めて聞く用語に首を傾げてしまっている。
そんな彼女たちに九内は説明を始めた。
「クラス委員長というのは各クラスの統括する役割、簡単に言えばリーダー的存在だ。クラスを引っ張っていく気持ちがなければ務まらないものだ」
「では魔王様。クラス委員長はルナ姉様がよろしいかと思います」
「ちょっ!?アク!?」
九内からクラス委員長の説明を聞いたアクは挙手をして即座にルナを推薦した。
「ほう?それはどうしてだね?」
「ルナ姉様は三聖女の1人ですから、人の上に立つことに慣れている筈です。それに、私にはルナ姉様以外にクラス委員長に相応しい人が思いつきません」
「ま、まぁね!これでも聖女だし!そこまで言うならクラス委員長になってあげてもいいわよ!」
アクから推薦の理由を聞いたルナはつい天狗になってしまいクラス委員長に立候補した。
「じゃあ他に立候補する人は?」
「それじゃあ私はマーくんを推薦します」
「はぁ!?何言ってんだよ母さん!?」
九内が他に委員長に立候補する人がいないか聞くと真々子が真人を推薦した。
突然の真々子の行動に当然真人は驚いてしまう。
「大丈夫よ。だってマーくん勇者だもの。きっとすぐに慣れるわ」
「自分も賛成です!真人さんがいいと思います!」
「少しは勇者らしいトコ見せなさいよね」
「私も真人くんが勇者なら安心できますわ」
「……はぁ、分かった。そこまで言うなら立候補してやるよ」
真々子に便乗してポータとワイズとメディが背中を押したため真人は渋々クラス委員長に立候補することを決めた。
するとハジメたちの方からも1人立候補者が出た。
「パパー!クラス委員長やってみたいの!」
「はっ!?ミュウ!?」
なんとミュウがクラス委員長になりたいと言い流石のハジメも驚いてしまう。
「ミ、ミュウちゃんには難しいと思うよ…?」
「そんなことないの!ミュウもクラス委員長やりたいの!」
「ミュウ。我が儘はダメ」
「やりたいやりたいやりたいやりたい!」
ユエたちが説得するも一向に聞く耳持たずで駄々を捏ねてしまった。
どうしたものかとハジメが悩んでいると九内に質問をした。
「先生。もしミュウがクラス委員長になったら俺もクラス委員になっていいか?」
「別に構いはしないが」
「そうか…ミュウ、お前が委員長になったら俺も一緒になるがそれでいいか?」
「うん!パパと一緒なら嬉しいの!」
ミュウが委員長になったら困って泣いてしまうのは目に見えるためハジメがクラス委員になってサポートすれば問題はない筈。
それなら大丈夫だと思いハジメはミュウの立候補を許した。
次々に立候補者が出る中、アリサはサトゥーを推薦しようとした。
「だったらこっちはウチのご主人様を!」
「あ、あの!」
その時だった。
アリサの言葉を遮りルルが手を上げてこう言った。
「私も…クラス委員長に立候補します!」
「ルル…?」
なんと自らクラス委員長になりたいと申し出たのであった。
突然のルルの行動にサトゥーも目を丸くしてしまう。
「珍しいわねルル。貴方が率先して立候補するなんて」
「どうして立候補したいんだ?」
少し驚いているアリサに続きサトゥーは優しくルルに訳を聞いた。
「私は、ご主人様やリザさんのような武術もアリサのような魔法も使えません…ですから戦闘になった時はいつも隠れてばかり…だから私も!ご主人様のお役に立ちたいのです!」
どうやらルルは戦えないことを申し訳なく思っていたらしくせめてサトゥーたちのために頑張りたいと思い立候補したようである。
「…そっか、よく分かった。じゃあ俺はルルを推薦するよ」
「ッ!よろしいのですか!?」
「あぁ。自分でそう決めたなら俺は応援するよ」
「ありがとうございます!」
「頑張ってくださいね」
「頑張る~?」
「応援するのです!」
「頑張って…」
「今回は仕方ないわね…それにルル。貴女は料理の手伝いで十分役に立ってるわよ」
「片付けや掃除なども率先して行っていると補足します」
ルルの気持ちを汲み取り、サトゥーはルルを推薦してリザたちも応援した。
そして最終的に立候補者は、ルナ、真人、ミュウ、ルルの4人となった。
「さて、じゃあこの中から誰をクラス委員長にするかだが…投票で決めようと思う。但し、身内に投票するのは禁止だ」
投票方法の原則として身内に票を入れてはならない。
例えばアクがルナに投票した場合、その票は無効になってしまうということである。
「4人にはそれぞれキャッチコピーを言ってもらいその上で誰がクラスに委員長に相応しいか決めてもらう。それでいいかね?」
九内のルールに誰も異議を唱えず全員が頷いた。
「では、始めようか…クラス委員選挙」
という訳で選挙を開催しますので、皆さんの清き一票をお待ちしております!
クラス委員長に相応しいのは?
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私について来なさい!ルナ!
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マーくんを応援してあげて!真人!
-
可愛いは正義!ミュウ!
-
ご主人様のお役に立ちたい!ルル!