とある平和な世界のちょっと残念な千歌音ちゃんのお話。

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最低だよッ!? 千歌音ちゃん【一話完結】

 ある日の昼下がり。大学の講義もなく、自由な時間を過ごしていた私は、学校近くの商店街を目的もなくぶらぶらと歩いていた。丁度その時だ。風に乗って囁くような声が聞こえてきたのは。

 

「━━子。━━子」

 

 あれ? 今、誰かに呼ばれたような? 気のせいかな…。

 

 キョトンとして一瞬立ち止まったものの、すぐにまた歩き出す。『〇子』なんて名前、どこにでもありふれているからきっと勘違いしたんだろう。

 

 そう思って歩き出すと、

 

「━め子」

 

 まただ。また誰かが私を呼んだ。今度は間違いない………と思う。今度はさっきよりも長く立ち止まり、ぐるりと辺りを見回してみた。

 

 誰? 私を呼んだのは誰なの?

 

「姫子」

 

 はっきりと聞こえた声。振り返るとすれ違った青い髪の女の人が私を透き通った目で見つめていた。

 

「姫子。ああ、ようやく見つけた」

 

 もう一度、その人は私の名を口にした。古い友人に偶然再会した時のような、ノスタルジックな響きを込めながら。それにしても、ようやく見つけたってどういう意味なんだろう?

 

「あの…どちら様ですか?」

 

 怪しい人には見えないけど見覚えのない人だ。同い年くらいかな? それにしては大学でも見かけたことないしまるっきり心当たりがない。本当に初対面って感じ。

 

 だけどこの人に呼ばれた時、なんだか懐かしいような不思議な気持ちになった。

 

「私が分からないの姫子? 千歌音よ。姫宮千歌音よ」

 

 千歌音と名乗った人は私の問いかけを冗談だと思ったらしい。気さくな笑みを浮かべ、立派な二つの膨らみをユサユサと揺らしながら私の目の前まで歩いて来た。

 

(わぁ、凄いスタイル。ボンッキュッボンッだ。顔も綺麗だし芸能人か何かなのかな)

 

 でもあいにくとこんな美人さんの知り合いはいない。というかもし知り合いだったら誰かに自慢してると思う。

 

「えっと…、たしかに私は姫子ですけど、誰かとお間違えなんじゃ…」

「そんなわけないわ。あなたは来栖川姫子。そうでしょ?」

 

 自分が間違えるわけないと言いたげな口調だった。こんなに自信満々に言うんだからこの人は私を知ってるんだ、私が思い出せないだけで。どうしよう、失礼なことしちゃったかな。

 

「千歌音………さんでしたっけ。ごめんなさい。私あなたのこと思い出せなくて。もしよかったらどこで会ったか教えていただけ━━━」

「━━━本気で言っているの?」

 

 突然顔色を変えたその人は、いきなり私の肩を掴むと思い切り顔を近付けて覗き込んできた。

 

「前世で誓ったじゃない。忘れてしまったの?」

「あ、ああああ、あの~」

 

 ぜ、前世? 前世ってなに? いや、前世の意味は分かるけど、この人の言ってる前世って一体なんなの?

 

 綺麗な人のドアップな顔にあたふたするよりも先に、飛び出してきた『前世』というワードで私の小さな脳みそは一瞬でパンクしてしまった。

 

(この人、もしかして危ない人? 宗教の勧誘とか? ど、どうしよ~。変な人に捕まっちゃったよマコちゃ~ん)

 

 ギュ~~~っと肩を掴む手が力を増して、爪が皮膚にめり込みそうになる。ちょっと痛い。というか離して………。こんな時は逃げるためのとっておきのアレを使うしかない。三十六計逃げるに如かずだ。

 

「あ、あのっ!! 私待ち合わせがあるんで失礼し━━━」

「━━━姫子、愛してるッ!!」

「んんっ!?」

 

 それは突然のキスだった。人が行き交う往来のど真ん中で、その人は堂々と私に口付けをした。誰の視線も気にすることなく、堂々と。

 

 拒もうと思えば拒めたはずなのに、私はなにもしなかった。理由は分からない。名前を呼ばれた時みたく懐かしさを感じたのかもしれないし、それ以外の何かなのかもしれない。とにかく私にとって初めてのキスは、こうしてあっけなく、会ったばかりの女の人に奪われた。

 

「ごめんなさい、本当は事情を説明してあげたいけど、私は人に追われていて時間がないの。また会いましょう姫子。必ずよ、必ず」

 

 それだけ言い残して千歌音さんはどこかへ去っていってしまった。呆然と立ち尽くす私を置き去りにして。

 

 チャリッという音に気付いて胸元を見ると、いつ頃から身に着けていたか覚えていない、だけど大切な二枚貝のネックレスが風に吹かれて揺れていた。服の中にしまっていたはずなのに、一体いつ飛び出したんだろう?

 

「千歌音さん…かぁ」

 

 彼女の事は、たった今知ったばかりの名前しか知らない。どんな人なのかも、住んでいるところも、名前以外には何も…。ううん、違う。もう一つだけ知っている事があった。

 

 感触を思い出すように、そっと唇をなぞる。

 

 桜貝のように綺麗なピンク色をした唇を、交わしたキスの感触を、なぜだか私は知っていた

 

(確かめなきゃ。あの人のこと。もしかしたら千歌音さんは………私の運命の人かもしれない)

 

 風は止んでいたのにネックレスがチャリチャリと音を立てていた。心に波打つ不思議なざわめきと響き合うように…。

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

「ええっ!? 会ったばかりの女に、道のど真ん中でキスされたぁ!?」

「ちょ、声大きいよマコちゃん」

「いや、だってさ」

 

 大学のすぐ近くのアパート。そこでルームシェアをしているマコちゃんに今日の出来事を話すと予想通りな反応が返ってきた。やっぱり驚くよね…普通。私だって自分の家に帰ってきて冷静になってみると信じられないもん。

 

「他には何かあるのか?」

「う~ん? あっ、前世が…どう…とか言ってたような」

「前世? そいつ前世って言ったのか?」

「マコちゃん何か知ってるの?」

「えっ!? いや、なんでもない。そっか~前世かぁ。ますますヤバいやつだな。次会ったらすぐに逃げた方がいいよ」

「うん…」

 

 はははっ、と笑って誤魔化されちゃったけど、なんかマコちゃんの態度が怪しい…ような。気のせい…かなぁ?

 

(本当はマコちゃんに見せようと思ってたのに…)

 

 ポケットの中に手を入れると、そこにねじ込まれた紙がクシャッと音を立てた。件(くだん)のキス魔が去り際に渡してきたものだ。さっき自分の部屋でこそっと見てみたらご丁寧に連絡先が書いてあった。それと芝居がかった愛の言葉がいくつか。ちょっと怖くなって相談しようとポケットに入れてきたけど、この様子じゃ相談は無理かな…。

 

 連絡したらマズいかな? 千歌音さんじゃなくて怖い男の人とかが出てきてお金とか要求されたりするかも。美人局って言うんだっけ? あれ? でも私も千歌音さんも女だから違うか。

 

(千歌音さん…、追われてるって言ってたな)

 

 もしかしたら今も追われていて助けを求めてるなんてこと…。

 

 そう思うと急に心配になってきて、電話したいって気持ちがじわじわと私の心の過半数を占めていった。

 

(たぶん連絡しないと後悔する)

 

 なぜかそれだけは確信し、スマホを取り出すとメモに書かれた番号へとコールした…。

 

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

 商店街にある喫茶店。そこが指定された密会場所だった。結局マコちゃんには内緒で色々決めちゃったけど今更不安になってきちゃってたり…。やっぱり相談しておけばよかったかな。

 

「まさか連絡をくれると思わなかったわ。街中でいきなりあんなことをしてしまったし」

 

 あんなこと=キスであることを思い出してつい赤面してしまう。そうだった。私この人にキスされたんだった。

 

(うぅ~~~。私のファーストキス)

 

 返してくれと言うつもりはないけど、あんなこと呼ばわりされると傷付いちゃう。

 

「それで…千歌音さん…でいいんですよね? どうして追われてるんですか?」

「それは………、ごめんなさい。言えないの。言ってしまえばあなたを面倒な事に巻き込むことになってしまうから」

 

 なにやら深い事情があるらしい。ここで謎の組織の陰謀とか思い浮かべてしまう自分の子供っぽさには笑っちゃうけど、こんな風に意味深に話されたら、誰だってそんな風に思っちゃうんじゃないかなぁ。それともやっぱり私だけなんだろうか?

 

「なら、どうして私に連絡先を?」

「二枚貝」

「え?」

「二枚貝のネックレス。身に着けていたでしょう? それも片側だけのやつ」

「う、うん…」

「姫子は考えたことないかしら? この広い世界のどこかに、たった一人、ただ一人の人が、自分の持つものとぴったりと重なり合うネックレスを持って、待っているんじゃないか…って」

「あっ」

 

 遠い遠い昔。『貝合わせ』の話を誰かに聞いたことを思い出した。誰に教えて貰ったのかまでは思い出せないけど、私はたしかにその話を聞いたことがあった。

 

 じゃあ、それが千歌音さん? やっぱり私と千歌音さんは会ったことがあるのかな?

 

「実はね、私も持ってるの。二枚貝のネックレス。ほら?」

「そ、それ…一体どこで?」

 

 椅子から半分立ち上がり前のめりになって尋ねる私を、千歌音さんは優しく制し、()()()()()()()()()()、こう返した。

 

「ねぇ姫子。重ねてみない?」

「え?」

「二枚貝よ。姫子のと私のをここで重ねてみるの。もしぴったり重なったら、凄くロマンチックだと思わない? 今から貝合わせしましょ? 姫子

(わわわっ。なんか千歌音さんの言い方、凄くエッチに聞こえるんだけど…)

 

 変な意味じゃないと分かっているのに点火したコンロのようにボッと赤面してしまう。もしかして千歌音さん、私のことからかってる?

 

 ひとまずネックレスを取り出そうと胸元に手を伸ばそうとした時、千歌音さんが叫んだ。

 

「まずいわね、追手が来たわ。今すぐここを出ましょう、姫子」

「えっ? 追手? どこ、どこ?」

「いいから急いで。手遅れになるわ」

 

 会計を済ませ店を飛び出すと、私は手を引かれるがままに路地裏へと連れていかれ、そこで身を潜めるためなのか、千歌音さんに抱き締められたまま息を殺して待つことに。フニフニした膨らみがエアバッグみたいで気持ちいい。

 

「ふぅっ。どうやら奴らを巻いたようね」

 

 私には何が何だかさっぱりなままだったけど、どうやら助かったらしい。でも千歌音さんの言っていることが本当なら、私の身にも危険が迫っていたということだ。路地裏から覗いていると、道を歩く人の誰もが怪しい人物のように思えてしまう。

 

「まだ記憶は戻らないの?」

「それが…はい」

「じゃあ仕方ないわね。もう一度キスしましょう」

「分かり………ふぇ? 今、なんて?」

「キスしようって言ったのよ。それが一番手っ取り早いわ」

 

 そういうもんなんだろうか? 絶対嘘っぱちのような気がするんだけど…。

 

「あなただって、私の事気になってるんでしょう? だから連絡してきた。違う?」

 

 それは…図星だけど。別にキスとかしたいわけじゃ…ないんだけどなぁ。

 

「相手の事を知れば何か思い出すかもしれないわ。姫子は私の事、知りたくない?」

「えっと、まあまあ知りたい…です」

「なら目を瞑って。ほら、早くっ! ここだっていつバレるか分からないのよ?」

 

 千歌音さんの勢いに押され、訳も分からぬままに目を瞑ってしまった私。もしや私って結構流されやすい性格なのかも…。そう思っているうちに唇が触れ私は人生二度目のキスを再びこの人とした。

 

「どう? 何か思い出した?」

「いえ、なにも…」

「ならもう一回」

「え? あっ…、んっ…、んっ」

 

 またしちゃった。これで三度目。なんかいい様に騙されてるような? でも、この人のキス凄く気持ちいいかも。記憶が流れ込んだりなんてアニメみたいな展開はないけど、やっぱり私はこのキスの味を知っている。

 

「とても可愛いわ姫子。次はちゃんと二人きりになれる場所で会いましょ。いいところを知っているの。そこなら誰にも邪魔されずお互いを深く知ることが出来るわ」

「そんな場所があるんですか?」

「今は内緒。でもきっと姫子も気に入るわ。前世のあなたも、そこがお気に入りだったから」

 

 次の約束を交わし、その人はまたいずこへと去っていった…。

 

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

「ほんとうにこっちで合ってるの?」

「ええ、そうよ」

 

 くねくねと薄暗い路地を歩く千歌音さんの後をついていく。こっちの方はいかがわしいお店とかが多くてあまり来たことがない。不安になって何度か尋ねてみても、千歌音さんはこっちで合ってるの一点張りだ。

 

「着いたわ、ここよ」

「えっと…ここって」

 

 どう見てもラブホテルなんですけど。

 

「なにかの間違いですよね?」

「どうして?」

 

 ええ~、どうしてって言われても…。

 

「追手だってまさかこんなところに女二人で入るとは思わないはずよ。だからこそ安全なの。ここなら二人っきりで誰の邪魔も入らずに過ごせるわ」

 

 一理あるような、ないような。う~ん、でも入りにくいなぁ、と私が二の足を踏んでいると━━━。

 

「30分。30分だけでもいいから? ね、入りましょ? 変な事なんてしないから、ねっ?」

 

 急にナンパがお仕事のチャラ男のような事を千歌音さんが言い出した。凛とした見た目と、セリフのギャップがとてつもない。一瞬、本当に千歌音さんの口から出た言葉なんだろうかと疑ってしまうくらいに、ちょっと信じ難いワンシーンだ。

 

「コホン。今のは忘れて頂戴」

「は、はぁ…」

「安心して。場所を借りるだけよ。変なことは何もしないわ」

「ほんとに?」

「私を信じて、姫子」

 

 湿度の高い疑いの眼差しにもへこたれず、千歌音さんはきっぱりと断言した。まだちょっと疑わしいけど、

そこまで言うなら話をするくらいならいいかな………。

 

「ってなんで脱いでるんですかーーー!?」

「お互いを理解し合うためよ」

「さっき変なことはしないって」

「別に変なことではないわ。それとも姫子は女の子同士で交わるのは変なことで、糾弾すべき異端者だとでも言うの?」

「そ、そういう難しいお話じゃなくて」

 

 今、色々と大変な世の中だし迂闊なことはあまり…。う~ん、すっごく面倒なタイプなんだけど。口喧嘩したら絶対に勝てない気がする。だいたいなんでこの人はこんなに自信満々なの? それとも私が間違ってるのかな?

 

 うぅ~、こうしてる間にも下着まで脱いでるし…。これって私の貞操の危機なんじゃ? 逃げた方がいい? やっぱ逃げた方がいいよね。よしっ、逃げ━━━。

 

「じゃあ儀式を始めるわ」

「えっ? あれ? いつのまに…」

 

 気付くとベッドに寝かされていた挙句に、がっちりと馬乗りで押さえつけられていた。

 

「ま、待って! ストップ!」

「もう、何? セリフの途中なんだから早くして」

「あの私…初めてなんです…けど。だから、その…許してもらえませんか?」

 

 つい恥ずかしくて肝心な部分が小声でゴニョゴニョっとなってしまう。

 

「よく聞こえなかったけど、要は処女ってことね」

「しょっ━━━」

 

 口にするのはアレな気がしたのでコクコクと頷いて肯定する。

 

「むしろ安心したわ。大丈夫よ。ちゃんとこれを持ってきたから」

 

 そう言うと千歌音さんは懐から何かを………。

 

(いやいやおかしいでしょ。いくら胸大っきくてもそれは収納出来ないんじゃ? ネックレスとは次元が違うと思うんだけど…)

 

 とツッコミたくなる棒状のものを取り出し、私に見せつけた。

 

「あの~、つかぬことをお伺いしますけど…それは?」

「霊験あらたかな短刀よ。しっかりと清められているから安心して」

「何に!? 一体何に安心すればいいの?」

「嬉しいわ姫子。またあなたと一つになれる日が来るなんて」

 

 ペロリと短刀の柄に舌なめずりすると、千歌音さんはそれを私のある場所に宛がった…。

 

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

 そこがどこなのか最初は分からなかった。分かることと言えば、私と千歌音さんが互いに巫女装束に身を包み刀を携えているということ。そして私と千歌音さんが戦っているということだった。

 

 ああ、そうか。これは記憶の追体験なんだ。千歌音さんが言った通り、前世でも私たちは知り合いだったんだ。それに気付くと私の意識は見下ろしていた前世の私の身体に向かって飛んで行って、吸収されるように音もなく溶け込んだ。

 

 

 

 

 

 ビュッと鋭い風切音と共に日本刀が身体を掠めていく。通り過ぎた刃は私の身体に浅い傷跡を作り、斬られた箇所にジワリと赤い模様を描いた。もう何回斬られただろう? 両手の指じゃ数えきれない。巫女服のあちこちが裂けて、その下から血が滲んでいる。

 

 痛い。痛いよ千歌音ちゃん。どうして私と千歌音ちゃんがこんなことしなくちゃいけないの? 私はただ千歌音ちゃんと幸せに暮らしたかったのに。

 

 容赦なく振り下ろされる刃を防いだものの、続く横薙ぎの斬撃を躱し切れず、また一つ傷痕を増やしながら私は無様に地面へと転がった。

 

「千歌音ちゃ━━━うぐっ!?」

 

 すかさず飛んできた蹴りが柔らかいお腹を捉え、文字通りお腹を抱えて悶絶する。

 

「ケホッケホッ」

 

 蹴られた部分よりも身体の芯の方から痛みが湧き上がってきて呼吸さえ苦しい。口から唾液を零しながら、どうにか身体を起こした私を千歌音ちゃんは冷たい目をして見下ろしていた。

 

「どうして? どうして姫子は本気を出してくれないの? これじゃ愛し合えない。もっと全力で私を殺しにきて」

「ねぇ千歌音ちゃん。もうやめようよ。私は千歌音ちゃんのこと本気で━━━うっ、ああぁっ!?  千歌音ちゃん痛い! 髪引っ張らないで」

 

 髪を掴まれ引き摺り倒された。ドシャッと地面とぶつかった際に口の中が切れたのか、生臭い嫌な味が口いっぱいに広がっていく。

 

「もうやだ、やだよぉ」

 

 子供みたいに泣き叫ぶ私を見据えたまま、上に向かっていた切っ先がクルリと反転して下を向く。千歌音ちゃんが持った刃はお月様みたいにキラリと煌めいて私に向けられた。

 

「う、うそ…だよね? 千歌音ちゃんがそんなことするはずないもんね? ね、ねぇ千歌音ちゃん…?」

素敵よ姫子。貴方が好きなの。

 傷だらけの貴女が好き。滲んだ血が美しく咲き誇るキャンパスのような白い肌が好き。

 泣き叫ぶ貴女が好き。大きな瞳から溢れるどんな宝石よりも光り輝いて見える涙が好き。

 懇願する貴女が好き。歌うような旋律が空気だけじゃなくて私の心も震わせて、満たしてくれるいじらしい姿が好き。

 そして…絶望する貴女が好き。私を止めるためにはその刃を突き立てるしか方法がないと、薄々気付いてるその悲しみが好き。

 でも一番好きなのは貴女の心。これだけの事をされてなお、私を信じてくれている貴女の心が好き。

 好きよ。大好き。貴女の全てが愛おしくてたまらないの、姫子。

「ち、千歌音ちゃ━━━」

 

 勢いよく真下に向かって突き立てられた日本刀が、私の足の間に刺さり、ビィンッとその刀身を震わせた。

 

「あ………あっ………」

 

 身体は斬られていなかった。めくれた袴から見えたのは、鋭い刃物がショーツに触れるか触れないかのギリギリのところで地面に突き刺さっている姿。でも私は薄い布越しに宛がわれた刃の感触を想像してしまって………。

 

 恐怖に怯え弛緩した身体から液体が溢れ出した。

 

「あら? ダメよ姫子。いくら姫子が綺麗だからといっても、刀を清める聖水の代わりにはならないのよ? 悪い子には躾けが必要ね」

「ひっ…。ご、ごめん…なさ…」

 

 無機質で冷たい刃がじわりとショーツを濡らしていく生温い液体によって温まっていく。蛇口の壊れた水道みたいに調節できなくなったそれは、ショーツと袴だけじゃなく地面にも大きな水溜まりを作っていた。

 

「ふふふ、こんなにお漏らししちゃって。この刀を揺らしたら、姫子の大切な部分に傷がついちゃうかしら?」

 

 クイッと刀を動かす真似をされただけで心臓が止まりそうになる。私の方へと向けられているのは間違いなく刃の方だった。無様にずりずりと後退しながら「許して」と叫んでも、千歌音ちゃんの目は冷たいままだ。それでもとにかく刃から逃れようと、私は必死に身体を後ろへと運んでいく。

 

 しかし━━━。

 

「あっ」

「ふぇ?」

 

 いかにも不注意です、といった声と共に地面に刺さっていた刀身が抜け、滑るように私の大事な場所へと向かってきた。

 

「あ、ああああああああああ」

 

 斬られる。最悪の事態を想像し私はみっともなく悲鳴を上げた。恐怖から目を背けるように目を瞑り終わりの時を待つ。

 

 けれど触れたのは刃ではなく峰の方だった。直前で刀が返され、グニュッとショーツに食い込んだそれは、私の肌を傷つけることなくピタリと急停止する。

 

「うっ、ぐすっ…。千歌音ちゃ…。千歌音ちゃん」

 

 せっかく収まったというのに再びチョロチョロと零れだした液体が地面に染み込んでいく。

 

「分かったでしょう姫子? 私は本気よ。一生懸命頑張らないと次は死んでしまうかもしれないわよ」

 

 泣きべそをかきながら立ち上がり刀を構える。でもその切っ先はカタカタと震えていて、どう見ても頼りなさげだった。

 

「どうしたの姫子! ほらっ、ほらっ!!」

 

 一振り、また一振りと襲いくる斬撃に、身体が半ば反射的に動き致命傷を逃れる。幾度もの鍔迫り合いを繰り返すなか、身に迫る死を感じ取った私は大声で叫ぶとがむしゃらに刀を振るった。

 

「うわぁあああああああああ!!」

 

 ガキンッガキンッと真上から叩きつける度に火花が散る。防がれたってお構いなしに何度も刀を振るった。

そのうち少しずつ千歌音ちゃんを後退させることに成功した私は、切り結んだ日本刀を強引に押し込み、その首筋を狙う。

 

 カチャカチャと音を立てる刃が自分に迫ってもなお、千歌音ちゃんは瞳を輝かせていた。

 

「そうよ、それでいいのよ姫子。私たちは今愛し合ってるの。世界中の誰よりもずっと深く。ベッドの上でのまぐわいよりも。だから刻んで! もっと私に刻んで姫子。私があなたを忘れないように」

 

 刀を傾けて私の力を受け流し、後ろに飛んで距離を取った千歌音ちゃんを追うように私も前に出る。

 

 単純な斬り合いじゃ私は一生かかったって千歌音ちゃんに敵いっこない。だったら出来ることはこれしかない。この身を全て、刃に乗せて。

 

「やぁあああああああああああああああああああ!!」

 

 後の事を考えない全体重を乗せた『突き』。誰の目から見ても無謀な突進だった。現に千歌音ちゃんは余裕を持って迎撃の姿勢を取り、待ち構えていたのだから。

 

 当たる()()()()()。私もそう考えていた。なのに━━━。

 

「うっ………」

 

 口からゴボリと溢れ出す鮮血。切っ先は千歌音ちゃんの身体にズブリとめり込んであっさりと貫いていた。

 

「千歌音ちゃん、どう…して?」

 

 私には見えていた。千歌音ちゃんが構えを解いて()()()()()()()()()のが。

 

「これで…いいの。前の世界で私はあなたを殺してしまった。だから今度は…私が…」

「千歌音ちゃん。千歌音ちゃんッ!!」

「あなたが忘れても…必ず…迎えに行くわ。姫子が刻んでくれたこの傷が…愛が…目印になるから。愛してる。愛しているわ、姫子」

「約束だよ。姫子のこと迎えに来てね。待ってるから。私、千歌音ちゃんのこと待ってるから」

 

 

 

 

 

 

 短刀の柄によって()()()破られる感覚。貫かれた鈍い痛みに続いて生温かいドロリとしたものが太腿を伝っていく。千歌音ちゃんの儀式。それが私の前世の記憶を呼び戻させてくれた。

 

 ほんの僅かな前世への旅行を終えて目を覚ますと、千歌音さんが…ううん、千歌音ちゃんが私の頬を優しく撫でていた。

 

「千歌音…ちゃん」

「姫子。もしかして記憶が…」

「うん。思い出したよ、全部。巫女の役割も、月で起きた出来事も、千歌音ちゃんと………愛し合ってたことも」

 

 感極まって私の名を連呼しながら胸に縋り付く千歌音ちゃんが凄く愛おしい。

 

「好きだよ千歌音ちゃん」

「私もよ。ずっと、ずっとあなたを探していたの。もう離さないわ、だって私の姫子だもの」

「うん。千歌音ちゃんの姫子だよ」

 

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

 

「この後どうしようか?」

「そうね………、っ!? まずいわ、追手よ」

 

 ホテルから出たばかりだというのにもう追手? いくらなんでも早すぎる。ということは、私たちがここに来ると予想していたのかもしれない。となると千歌音ちゃんはオロチの手先と既に戦っているのかも…。追手がオロチの手先というなら、この早さも頷ける気がした。

 

 路地の角から聞こえてくる複数人の足音。どうしよう、逃げられそうにない。覚悟を決めてそちらを睨みつけていると追手が姿を現した。

 

「見つけたわよ。この変態女」「ヤリ逃げ出来ると思ったら大間違いなんだから」「許さない。初めてだったのに」

「………………。はい……………?」

 

 出てきたのは5人ほどの、いずれも女の子。パッと見た感じでは普通の子たちだ。悪の組織とか、謎の国家機関とかですらない。ましてやもちろん私たちの宿敵のオロチ衆でもなかった。しかも口々に不穏なワードを口にしている。変態だとか、ヤリ逃げとか、あんまり女の子が公共の場で言っちゃいけないと思う…。想像していた追手とあまりにも違う人物たちの登場に、理解の追いつかない頭がオーバーヒートを起こしそうになる。

 

「どういうことなの千歌音ちゃん?」

 

 念のため振り返ると千歌音ちゃんは大真面目な顔をして追手に鋭い視線を送っていた。

 

「思ったより早かったわね」

(えぇ………。やっぱり追手ってこの子たちなんだ)

 

 なんというかこう、とても残念な気持ちになりつつ成り行きを見守っていると、突然追手の人たちから声を掛けられた。

 

「そこのあなた!」

「えっ? 私ですか?」

「ええそうよ。よかったわ、まだ未遂みたいね。早く逃げなさい」

「えっと…」

「なにグズグズしてるの。そいつはこの辺りで有名な悪質なナンパ師なのよ」

「………。ねぇ千歌音ちゃん」

「ち、違うのよ姫子。ちょっとした誤解があっただけで…」

 

 ジトッとした目で見てたら、急に慌てだした千歌音ちゃんが誤解だのなんだのと言い出した。なんか、ものすご~~~く答え合わせっぽいんだけど…。

 

「いい? その女の手口はね、まずは街中で思わせぶりなこと言いながらいきなり唇を奪うの。前世がどうとか、記憶とか言いながら」

 

 どうしよう、すごく覚えがある。っていうか私以外の子にも同じことしてたんだ。

 

「そしてこっそり渡された連絡先に連絡するとあの手この手で呼び出して少しずつ距離を詰めるの。路地裏に連れ込んでキスしたり」

 

 うわぁ、これも…記憶にある。

 

「最後はお互いのことを理解し合いましょうとかなんとか言ってホテルへGOよ。後はその女が飽きるまで弄ばれるの。わかったでしょう。女にとって不倶戴天の敵なのよ」

 

 待って待って待って!! たった今ホテルにGOしたばっかだよ? 全然未遂じゃないよぉ!?

 

「どういうことなの千歌音ちゃん!? 説明してよ」

「そ、それは」

「まさかあなたも既にホテルに?」「ごめんなさい。私たちが力不足だったばかりに」「一緒に警察に行きましょう」

 

 皆さんの言ってることがどうにも本当っぽい。

 

 でもそうだとすると………あれ? これってまさか千歌音ちゃん、記憶が戻ってないんじゃ? だってそうだよね。姫子以外の人にも手を出してるし、しかも姫子の順番後ろの方だし…。

 

 ………………。

 

 いやいやいや。そんなはずは…。だって、もしそうなら私、単なるナンパ師にキスも処女も捧げちゃったことに………。

 

 うそぉーーーーーーーーー!? ダメダメダメ。そんなの絶対ダメ。大丈夫、千歌音ちゃんは記憶戻ってる。落ち着くの姫子。ああ、だけどそれはそれで姫子がいるのに千歌音ちゃんがあちこちで女の子つまみ食いして遊んでたことに…。

 

 どっちにしろ地獄なんですけどぉ…。まぁいいや、とにかくここはっ!!

 

「逃げよう千歌音ちゃん」

 

 手を引っ張り引き摺るようにしてその場を逃げ出した。

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

「ここならひとまず安心だよ」

 

 どうにか追手という名の被害者の会の皆様を振り切り自宅に着いたころには、私も千歌音ちゃんもヘトヘトになっていた。マコちゃんの姿が見えないけどじきに帰ってくるはずだ。

 

「ただいまーー。姫子~? 誰かお客さん来てるの? 玄関に靴あるけど」

 

 あっ、そう言ってる間に帰ってきた。千歌音ちゃんのこと説明しなきゃ。

 

「あのね、あのねマコちゃん。実はね━━━」

 

 事情を説明しようと私が出るよりも早く、玄関の近くにいた千歌音ちゃんとマコちゃんが邂逅してしまった。

 

「マコ…ト?」

「うそ………千歌音?」

 

 ドサリとマコちゃんの手から荷物が滑り落ちる。

 

 えっ!? なにこれ…。

 

「さよならも言わずに姿を消したくせになんで今更?」

「ごめんなさいマコト。違うの、あなたを捨てたわけじゃないの」

 

 うわぁ凄い臨場感! 私こういうの昼ドラで見たことある! ってそうじゃなくてぇーーー。

 

「あの、マコちゃんは千歌音ちゃんと知り合い…なの?」

 

 どうみても色々あった感じだけど聞かずにはいられなかった。

 

「な、なんでもないよ。ちょっと知り合いなだけ。千歌音とはとっくの昔に終わってるから」

 

 笑いかけてくれてるけど、マコちゃんの笑顔すっごく痛々しいよ? 見てらんないよ? マコちゃんのこんな顔初めて見たよ? っていうか千歌音って呼び捨てだし、私より仲が深そうなんだけど…。千歌音ちゃんもマコトって呼び捨てだし。むしろ私が蚊帳の外みたいな雰囲気。

 

「ちょっと二人で話してきていいかしら?」

「えっ? う、うん。どうぞ…」

 

 アパートの廊下に出て行った二人。当然私としては気になるわけで、後を追っかけて盗み聞き。

 

「さっきも言ったろ? 終わってるんだから話すことなんて…」

「だったらそんな顔しないはずだわ」

「お、おい! よせって。姫子にバレちゃ………んっ」

 

 バタバタと音がしたかと思うと急に静かになり、耳を澄ませると…。

 

(これ絶対キスしてるよね!? うそでしょマコちゃん?)

 

 マコちゃんにまで手を出してるとかやっぱ記憶が…。というか、似てるだけで全くの別人なんじゃ…。あっ、なんかそう思ったら少し気が楽になったかも。って、だから私処女捧げちゃってるんですけどーー!?

 

 来世を誓い合った最愛の人がクズになってるなんて、ほんともうどうしたらいいの。教えて前世の姫子。

 

 がっくりとうなだれてトボトボと部屋に戻った私の目に千歌音ちゃんの荷物が映った。そういえばこの中に短刀が入っていたような。

 

 荷物を物色し、思った通りに出てきた短刀を鞘から抜くと、ギラリと光る白銀の刃が顔を覗かせた。

 

「ふふ、ふふふふふ。待っててね千歌音ちゃん。姫子が目を覚まさせてあげるから」

 

 

 

 

―*―*―*―*―

 

 

 

 

「戻ったよ、姫子。………。姫子?」

 

 衣服も少し乱れていた挙句に、思いっきり頬を赤く染めてメスの顔をしたマコちゃんをやり過ごし、機会を窺う。物陰に隠れているうえに千歌音ちゃんはこの部屋の構造を知らないはず。なら間違いなく私の方が有利なはずだ。

 

「ッ! そこね姫子!!」

「なっ!? どうして」

 

 そんな私の思惑を打ち破り、いつの間にか手にした包丁を構え応戦する意志を見せる千歌音ちゃん。奇しくも前世のように、私と千歌音ちゃんは刃物を手に対峙することになってしまった。

 

「やっぱりこれが陽の巫女と月の巫女の宿命なのかな、千歌音ちゃん」

「待って。話せば分かるわ。だからお互い一旦落ち着きましょう。それから言っておくけど、私はちゃんと記憶が戻ってるから安心して」

 

 とっても大事なことなのにさらりと言ったなぁ。

 

「じゃあ千歌音ちゃんにクイズです。前世で私に刺された箇所は?」

「ここよ。心臓のすぐ近く。最後のやり取りだって覚えているわ」

 

 う~ん、まぁ…ギリセーフ。

 

「記憶があるならなんで姫子以外の女の人に手を出しまくってたの? 約束したよね? 待ってるって言ったよね?」

「だって…だって仕方ないじゃない。この世界平和過ぎるんだもの。警戒してたのにオロチ衆はさっぱり襲ってこないし。それであまりにも暇だからメイドの乙羽に手を出したのよ。私のこと好きなの知ってたから。そしたら優しく受け入れてくれたの。ついでに屋敷のメイドに片っ端から手を出したらみんなすっごい喜んでくれて」

 

 千歌音ちゃんの手から滑り落ちた包丁が床に当たってカラランと音を立て、当の本人は手で顔を覆いながら懺悔し出した。

 

 待って。これ本当に私が誓った千歌音ちゃん? もしかして別の世界の人とか混ざってない? そう言いたくなってしまう。

 

「それで調子に乗って一般の人にも手を出したんだけどそっちも上手くいったから、それで次々…」

「マコちゃんにまで手を出さなくてもよくない?」

「あなたがマコトと付き合ってる世界線もあるから気になって試したかったの」

 

 前世でもエッチ好きだったけど、ここまで節操なしじゃなかったはずなんだけどなぁ。どこで間違えたんだろう。

 

「あの…、なんで私は後回しだったの? もしかして姫子のことあんまり好きじゃない…とか?」

「違うわ。それだけは違う。出会ってしまったら私と姫子は日本刀で刺すか刺されるか、そればっかりじゃない。姫子を傷付けないために、会うのを我慢していたの。それになにが世界のためよ。いつも犠牲になってばかりで嫌にもなるわ」

 

 最後のところで違う本音が漏れてる…。色々ストレスとか溜まってたのは分かるけどそこは頑張って欲しかったなぁ。

 

「一応確認しておくけど、姫子の一番は千歌音ちゃんで、千歌音ちゃんの一番は姫子でいいんだよね?」

「当たり前じゃない。姫子がいれば他には何もいらないわ。だから姫子、私と━━━」

 

 ようやく良い感じになりつつあったその時、何者かが部屋へと侵入してくる気配に気付いた。どうも玄関の鍵を閉め忘れていたっぽい。これはあれなのかな。オロチ衆が登場して私と千歌音ちゃんが斬り合う展開に無理くり繋がるのかな?って思っていると、中へ入ってきたのは制服を着た、いわゆるおまわりさんだった。

 

「動くな! 警察だ。連続婦女暴行事件の犯人として姫宮千歌音を逮捕する」

「ま、待って。誤解よ。私はそんなことしてないわ」

「いいから大人しくしろ」

「姫子! 姫子ッ!!」

 

 呆然とする私とマコちゃんの目の前で、千歌音ちゃんの手首にカチリと手錠が掛けられた。どうやら被害者の誰かが本当に通報してしまったみたい。ん~、助けたいけどこれはどうにもならないような…。自業自得だし。

 

「お二人は彼女の知り合い? ちょっと署でお話を…」

「えっと…、その~」

「知り合いっ! 知り合いです。さっき腕組んでニコニコしながらホテルに入りました。防犯カメラにも映ってます!」

 

 つい言葉を濁し掛けたら尋常ではない勢いで千歌音ちゃんのフォローが飛んできた。どうあっても私を逃がさないつもりらしい。

 

「姫子。私待ってるから。姫子のこと待ってるから。必ず迎えに来て姫子! きっと、きっとよ!」

「そのセリフは月の社で言ってよ! 千歌音ちゃんのバカァーーーーーー!!」

 

 私の絶叫に、まだ見えていないはずのお月様が笑った気がした…。

 

 

~~~Fin~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 というわけで神無月の巫女でした。いかがでしたでしょうか?
スピンオフ作品の『姫神の巫女』が連載されてるので、これはぜひ書かねばと書いてみました。

 気に入っていただけたら幸いです。それでは~♪



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