それは突然、F市に鳴り響き。市内の市民たちを混乱と恐怖に突き落とした。
『F市のショッピングモールにて怪人発生、F市のショッピングモールにて怪人発生、災害レベルは虎。付近の方々は早急に避難を始めてください。繰り返します______』
F市の至ると所に設置されたサイレンスピーカーから、この世界の災害の化身…怪人が現れたのだ。
通常なら、人々は落ち着いて最短ルートで避難シェルターやら市外へ逃げるが…今回は違った。現れたのは人々が多く集まるショッピングモールの前、人ごみのど真ん中に現れたのだ。
無論、いきなり怪人の出現に人々はパニック。他の人を押し倒してまでも逃げようとしていた。
『グワッハッハッハッハ!私は木の棒で魔法使いの真似をしていたら本当に魔法を使えるようになってしまった【樹木魔導士】!魔法を使えるようになったならば試すしかなかろう!まずは手始めにこの町を破壊しつくしてくれるわ!!!』
【樹木魔導士 災害レベル:虎】
一方、人の形をした樹木の怪人は聞いてもないのに自身のことを話し、満足が行くと宣言通り人間で言う手のひらから緑色の光弾を撃ち出してショッピングモールの入り口、向かい側の建物、公道、様々なものを攻撃し始めて破壊し始めたのだ。
そして怪人は歩き出す。建物だけではなく、生き物にも試してみたいという想いで………
『気持ちいい……ああ、最高だ…この魔法をもっと…ん?』
ふと、自身から逃げまどう市民に対して、こちらに向かってくる女性がいるではないか。だが、怪人は特に疑問には思わない。
この世界に怪人が現れるなら、ヒーローも現れる。つまりこいつはヒーローだ。
美しい銀髪のポニーテール、高身長、整った顔立ち、豊満な胸……ルックスが最高すぎる女性…一度見たら忘れなさそうだが、怪人は彼女のようなヒーローは見たことがない。ということはたいして認知されてない下級ヒーローだ。
『丁度いい…!』
あの美しい容姿を傷つけるのは気が引けるが、それ以上に魔法を使いたくてしょうがない。怪人は左手を女性に向け光弾を………
撃ち放つ前に地面に思いっきりぶん殴りつけられた。
即死だ。
怪人には何が起こったか分からないだろう。逃げる人々も逃げるのに夢中で怪人が殴り倒される音でようやく振り替えったので気づかなかった。
銀髪の女性は怪人が認知できない速さで、怪人が耐えられないパワーで殴ったのだ。そんな彼女は下級ヒーローなどではない。かといって上級のヒーローでもない。
彼女は………
「でろーんだ!!!」
「すげぇぇ!樋口楓だ!」
「樋口楓!?」
「でろーんが怪人を倒してくれたぞ!」
先ほどまで逃げまどっていた人々から「樋口楓*1」、「でろーん*2」と呼ばれる…それが彼女の名前であり、愛称である。
彼女はライバー。ライバーとはプロヒーローとは違い怪人を倒し、人々を守るのではなく。動画配信やエンターテインメント、ライブを中心に人々を笑顔にする者達である。
中でも彼女はライバーの中でもとても戦闘力があり、こうして怪人を倒すことも少なくはない。人々を笑顔にするなら怪人退治も仕事の内だ。
最も、彼女は今回、仕事で怪人を倒したわけではない。
「……せっかく美兎ちゃんと買い物に来たのに騒ぎおって…買い物はもう出来そうにないな…ほんま腹立つわぁ、この怪人」
彼女は同級生で、同じライバーで、親友でもある。月ノ美兎*3とショッピングモールで買い物に来たのだ。そこでこの騒ぎ。少しヤンキー気質である彼女は楽しみだった買い物(兼デート)を潰されて非常に腹が立ったのだ。
そして、丁度人ごみを掻き分けて一人の男性が楓と怪人の死体に近寄る。この男性はライバーではなく先ほど言った、怪人を倒し市民を守ることを本業としているプロヒーローである。
本来なら彼が楓の代わりに怪人を倒すべきなのだが、残念ながら今回は樋口楓に先を取られて退治は叶わなかった。そのせいだろうか……はたまたライバーが現れてからだろうか……
「でろーん、サインしてくれないかな…今はオフなのかな?」
「おい、あれA級最下位のスネックじゃね?」
「本当だ~、何しに来たんだ?」
「いやw普通に怪人退治に来たんだろ、もう遅いけどw」
「なんか人気の人なんですか?見たことない人ですけど…」
「来るのが遅いぞぉ!スネック!」
「まあA級だからね…アマイ以外はさほど…ね…」
市民の声はいいものではなかった。
少し前なら例え怪人退治ではない時…パトロールの時でもA級クラスのプロヒーローなら黄色い声援や握手、サインを求めてくる者が多かった。もし、今回みたいに怪人退治に参加できずに終わった後からやって来てもこんな冷めた反応ではなく、もっとまともな声が飛びかっただろう…
A級最下位ながらも確かな実力と確かな人気を持っていたA級プロヒーロー「蛇咬拳のスネック」は誰にも聞こえない音で舌打ちをする。
樋口楓はもう居ない。月ノ美兎とのデートを再開するため、ファンの目から離れるためにいつの間にか消えていた。周りの市民達も元々の予定に戻っていった。
しかし、スネックだけはその場に留まっていた……先ほども言ったが、本来ならここでファンの何人かが話しかけてくるなりするだろう。だが、現実はそうはいかない。
誰もスネックに声をかけなかった…
「プロヒーローは…必要なのか?……」
スネックは薄々自分の中で芽生えた疑問を小さくつぶやく。無論、誰も答えてはくれはしない。
実力、人気、支持率。全てにおいて、ライバーはヒーローと同等もしくはそれ以上だ。もしかするとプロヒーローなんかではなく、ライバーが増えれば人類はもっと安全に、幸せに暮らせるのではないだろうか…
少なくとも分かるのはスネックがどれだけその疑問について考えても良い方向には進まないということだけ。
「ハァ……」
ため息を一つ付くと、スネックはようやっと動き始めた。中断していたパトロールを続けるのだ。今は使命を真っ向するのみだ。
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赤羽葉子*4
【半壊した家が完全に直った~!!!(^^)】
叶*5
【おめでとう】
りりむ*6
【おめでとう!!!】
グウェル・オス・ガール*7
【無事に復興してなによりです!おめでとうございます!】
「パパ、ねえやんのおうち直ったって!」
自身のスマホに映し出される専用のコミュニケーションチャット欄を確認して、オレンジ色の髪をした少女はまさしく太陽のような笑顔で今現在手を繋いでいる自身の父親に顔を向ける。
話しかけられた少女の父親…社築*8は娘の言葉を聞くと死んだ社会人のような顔がやや明るくなり、娘と顔を合わせる。
「本当か、Z市半壊はほんの少し前だったのに。復興が早くて安心したな」
気のせいか、やや声のトーンも明るい。いや、気のせいではないだろう。
彼ら、彼女らは同じ「にじさんじ*9」に所属するライバーで、みなお互いを家族のように大事に想っている…事実、社築とこの娘…本間ひまわり*10のように親子関係になることだってある。
社築はポケットからスマートフォンを取り出すと、自身も専用のコミュニケーションチャットで赤羽葉子に祝福の言葉を贈り、再びポケットに仕舞うとひまわりと買い物のためにJ市を歩く。
Z市の巨大隕石落下事件。それはつい最近の出来事である。
災害レベル竜にも及ぶ最悪な自然災害。最終的にはS級プロヒーロー三人(あとC級ヒーローが一人居たらしい)の活躍で何とか被害はZ市の住宅街半壊で収まった。赤羽葉子はZ市の…ややゴーストタウン付近に暮らしているのだが、隕石の破片が家に衝突してしまい家が半壊した。
今回の隕石は偶然だが、Z市は決して安全ではない。家が復興して早々だが赤羽葉子には引っ越しを進めたほうがいいかもしれない。社築はそう考え、今居るJ市を見渡す。
(例えばこのJ市、ショッピングモールや飲食店が多くて、海が近く、自然も多い…悪くないところだ。しかもこんな平和と来たもんだ。ココこそ引っ越し先に勧めたほうが…)
ドバッシャァァァァァァァァァァン!!!!!
その時、社築たちの後方で大きな波打つ音と…異質な声が響いた。
『我々海人族はこれより地上を支配する、逆らう者には死を!そうでない者には家畜の身分を与えてやる!!』
【海人族 災害レベル:虎】
後方に振り向くとそこにはまるでよくある神話TRPGに出てくる神話生物の様な怪人達が群れを成して進行して来たのだ。数は十匹。
せっかくの数少ない休みを娘と過ごしたかった社だが、どうやら休みと娘との時間は潰される様だ。
「オオアオ(泣)」
社築は嘆くしかなかった。
あとがきにはライバーのtwitterやYoutubeを載せておきます!ぜひ見てください、最高なんで
追記:本間ひまわりさんが活動二周年になりました。本当におめでとうございます!!!(7/6)
樋口楓
https://www.youtube.com/channel/UCsg-YqdqQ-KFF0LNk23BY4A
https://twitter.com/HiguchiKaede
本間ひまわり
https://www.youtube.com/channel/UC0g1AE0DOjBYnLhkgoRWN1w
https://twitter.com/honmahimawari
社築
https://www.youtube.com/channel/UCKMYISTJAQ8xTplUPHiABlA
https://twitter.com/846kizuQ