ライバーが存在する、ヒーロー世界…   作:HR-H HR-E

24 / 31
今回は短めです。
たまに戌亥とでろーんと早瀬の口調が混ざる。


19撃目 VS魔界王

ZUAAAAAAAAAAAAAA!!

 

 もはや人型の原型を留めていない魔界王はこの薄暗くも広い廊下に響き渡る重低音のある遠吠えで威嚇しながら、肥大化した肉体から植物の様に生えてきた触手や鉤爪の形に変形しながら増殖した手足で辺りを薙ぎ払う。しかし薙ぎ払う為の動作はあまりにも分かりやす過ぎる為、最低限の動きで攻撃を全てかわしてみせた上に隙あらば薙ぎ払って来た触手や鉤爪を引きちぎったりへし折ったりもしてみせた。

 

「余裕」

 

 戌亥とこは引きちぎった触手を片手に魔界王を煽り始める。先の戦闘直前で気づいたが、この魔界王は煽りに耐性が無さすぎる。魔界王という立場上舐められない様に振る舞うのは当然だが、あんな軽い煽りで激昂して暴れるのはもはや小物を通り越して子供の癇癪である。

 戦闘中に置いて激昂して、怒り狂うのはパワーを引き出してくれるが大きな隙を作りやすくなる。故に戌亥とこは魔界王の攻撃は軽く避けられるので後はひたすら彼を挑発して激昂させて搦手を使えなくさせ様としていたのだ。

 

BROOOOOOOOOOOOOO!!!

 

 

 その挑発に分かりやすく乗った魔界王は先程と変わらず鉤爪や触手を振るい続けるも、今度は何も持たぬ素手の状態の腕が数十本生えたかと思うとそこから眩い一直線の閃光を戌亥とこに向けて放出したのだ。レーザービームだ。

 予想外の攻撃に少し驚いた戌亥だが、なんて事は無かった。数十本のレーザービームはその半分程は威嚇射撃で本命の残りのレーザービームは戌亥が華麗にかわしてみせた。

 跳躍、回転、ステップ等、傍から見たらとても美しいとも言える攻撃のかわし方は感動を覚える……肝心の魔界王は更に激昂するだけだが…

 

GRUOOOOOOO!!!

 

 魔界王はもう一度重低音のある雄叫びをすると先程レーザービームを放った腕を1つに集結させ始める。もう何がしたいのか戌亥とこは一瞬で理解出来た。

 この廊下の横幅を埋め尽くす程の巨大レーザービームを放出しようとしてるのだ。確かに前には魔界王、後ろには終わり無きように見える長い廊下、左右に避ける事は不可能、戌亥とこの絶体絶命となる。しかし…何がしたいのか分かりやす過ぎるの予備動作と隙が大きい。

 戌亥とこがわざわざ魔界王がレーザービームを放つのを待つはずも無く、素早く前方に移動した戌亥は集結していく魔界王の腕達を手刀で切断する。更にそこから魔界王が反撃してくる前に魔界王から離れるのだが、直前に魔界王の大きな1つ目を抉ってから後ろに引いた。

 バカでかい目玉であった為、一部分しか抉れなかったが充分魔界王が苦しむダメージは与えられた。

 

「どうしたん?私の生意気な目を抉るんやなかったの?」

 

 戌亥は魔界王の目玉の一部を投げ捨てると、舌を出しながら自身のオッドアイを強調するかの様にあっかんべーをする。

 目が抉られた魔界王にはそれが見えていなかったが、魔界王は驚異的な再生力ですぐ様目玉が復活。そして生意気な目で更に煽ってくる戌亥を見てさらにさらに激昂する。

 

GUAAAAAAAAA!!!クソガ!本来だっタラ魔界美大生ヲ確実に仕留メる為ニ使イたくナカッたが…テめぇノ死体を使エばあル程度賄エるだロウな!苦しんデ死ね!雌犬が!!!』

 

 先程まで一切人語を話していなかった魔界王だが、急に片言を混じえた人語を喋り出すと、肥大化していた身体の所々だけが膨らみ、縮みを繰り返し始める。またもや何かをするつもりの魔界王に戌亥はもう一度魔界王に近づき、攻撃の妨害を図ろうとしたが…彼女の本能が近づいてはならない事を警告し始める。

 そして戌亥とこが妨害を躊躇してすぐに、魔界王は膨らんだ箇所から紫色のガスを大量に噴出し始めた。色合いからして察しが付くが、確実に毒ガスだ。あのまま本能の警告を無視して妨害を行っていたら確実に毒ガスを身体に浴びるか嗅いでしまっていただろう。

 また、嗅覚が武器の一つである戌亥とこにとってガス攻撃は脅威となりうる厄介な代物だ。魔界王の吐いたガスは距離を取った戌亥とこに少しずつ少しずつ近づいてくる。

 

『ガスは時期に貴様ノ仲間モ苦しメる!貴様も死ヌ!』

 

 肥大化し過ぎてもはや顔なのかすら判別しにくいが、声が発せられている口らしき部分から下品じみた笑い声が響く。先程魔界王にここまで連れてこられる前に2つ反応が会った為、リゼ達はそのもう1つの反応と戦っているのだろう。そんな中、毒ガスが充満すれば確実にリゼ達は死に至るだろう…一応ガスの充満スピードは遅いので戌亥なら逃げ切れるが…

 

(仲間を見捨てるなんて出来ひん)

 

 戌亥は近づいてくる毒ガスに向かって歩を進める。

 

『グフハハハハハハ!どうシた!?コノ毒ガスの中デ俺様を殺スか!?それトも全部自分一人で吸イ込むカ!?どの道貴様は死ヌぞ!』

 

 下品じみた笑い声を響かせながら、魔界王は毒ガスを噴出している部位を一部だけ戌亥とこへと近づけて毒ガスを嗅がせようとする。しかし……そこで戌亥はとんでもない行動を取った。

 

「ガスならこれやろ。」

 

 なんと魔界王に見せ付けるように掌から炎を出現させると毒ガスが充満してる空間にゆっくりと近づけ始めたのだ。

 

『ナッ!?馬鹿ガ!』

 

 これには魔界王も度肝を抜かれて慌てて毒ガスの噴出を止めようとするが…もう遅い。というよりも今更噴出を止めた所で何も意味は無い。

 戌亥とこが取り出したは炎はガスに引火し、戌亥と肥大化した魔界王を包み込む程の爆炎を引き起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ッチ』

 

 自身にのしかかる瓦礫を退かしながら元の姿に戻り、尚且つ全く無傷である魔界王は戌亥の決死の行動に舌打ちをする。

 よもや自爆とは…

 本来の予定ではこの廊下は鈴原るるを仕留める為のエリアであった。進化王がここまで鈴原るるを連れて来て、鈴原るるの援軍や味方が居たならば博打王と魔術王が食い止め、呪王が呪術で鈴原るるを縛った後に魔界王と神兵で仕留める。

 その為にはこの廊下まで鈴原るるに怪しまれる事無く連れてこなければならなかったのだが…こんなにめちゃくちゃになってしまったのでは怪しまれる事間違いないだろう。

 こうなったら先の3人を人質に取るという手も考えたが…

 

『あの近距離の爆発なら良くてもバラバラだろうな…死んでちゃ人質として意味がねぇ…仕方ねぇ、残りの2人を使うか』

 

 元の空間よりだいぶ広くなった廊下を見渡して魔界王は戌亥とこの死体漁りを諦めて神兵とリゼ達の元へ向かおうとする。

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

「アハー↑」

『!?』

 

 独特な笑い声が背後から聞こえ、慌てて魔界王は後方へ振り向いて攻撃を仕掛けようとするがそれよりも早く、戌亥とこの手刀が魔界王の身体を貫く。貫いた際に戌亥は魔界王の身体を焼こうとするも、それよりも早く傷が再生を始める。

 

「再生力だけならるるはんより凄そうやな〜」

『てめぇ…生きて…!』

 

 貫かれた魔界王は戌亥の手刀から逃れようとするもビクともしない。身体から触手を伸ばして戌亥に攻撃を図ろうとするも戌亥のもう片方の手で全て弾かれる。

 

「この技はとても危険やけど…あんさんには相応しい最期を渡せるから特別に使ってあげる♪」

 

 戌亥とこは地獄の番犬ケルベロスである為、ケルベロスや地獄に由来する技ならいくつか使える。技の多さは地獄の女神の信者として恩恵を受けた魔界王よりも多い。その技の中でも魔界王には使えず、更には戌亥とこすら扱いがとても困難な超危険な技を魔界王を貫いてる方の手から発動させる。

 

「…地獄の業火…」

 

 戌亥がポツリと呟くと、彼女の掌からから先程出したただの炎ではなくドス黒い禍々しい炎が出てきた。禍々しき炎は戌亥とこの手からゆっくりと魔界王の身体へと移って行く。

 

『…がっ!…じ、地獄の業火だと…!?何故貴様の様な雌犬に使え…!!』

 

 地獄の業火から少しでも離れようともがく魔界王だが意味は無い。決して消えることのない地獄の業火は魔界王の身体の一部から全身に渡って燃え映っていく。そのタイミングで戌亥とこは手刀を引き抜く。地獄の業火が自身に燃え移らない様にだ。

 

「…終わりや」

 

 やがて地獄の業火は魔界王の全身を包み込む。

 戌亥とこがこの技の扱いが難しいというのはこの炎は対象を燃やし尽くすまで絶対に消える事は無いのだ。その為、使い所を間違えれば大惨事になりかねないし自分や味方をも巻き込んでしまいかねない。

 

『ぎえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』

 

 戌亥とこが地獄の業火に苦しみ絶叫を挙げる魔界王から距離取る。あまりの苦しさに考える暇も無いだろうが、道連れを考慮して距離を取ったのだ。一方魔界王は地獄の業火に身を焼かれながらも中々身体が燃え尽きる事は無い。

 

「……再生力が仇となったか…」

 

 そう、先程の戦闘で目を抉り取られても顎を砕かれても瞬時に回復した鈴原るるすら超える再生力が地獄の業火に焼かれた部分をすぐ様再生してしまっているのである。故に一生終わる事の無い炎の苦しみと死ぬまで死なない身体が魔界王を更なる地獄へと突き落としているのだ。

 しかし戌亥とこは一切同情しない。むしろ、こうなる事を少し期待したから期待通りで嬉しいくらいだ。

 

『うぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!あぁぁぁ!!ぅぎぃあ!あ!!アァァァァァァァ!!!!!!』

 

「私を殺す?私の仲間も同じ目に合わせる?あんさん見たいな満足に死ぬ事も出来ないゴミクズが図に乗らんで…一生そこで苦しんどき…」

 

 聞こえてるかどうか分からないが戌亥とこは同期すら見た事の無い恐ろしい眼光で何も出来ず死ぬ事も出来ない魔界王と呼ばれた燃え続けるゴミクズを睨み、その場を去っていく。

 戌亥とこが去った後もそこには燃え続ける業火と絶えぬ醜い絶叫が響き渡るが…もはや彼女には関係の無い事だった。

 

 

 

 




前々から言ってたにじさんじとホロライブの小説が完成してますよ、宣伝し忘れてました。
https://syosetu.org/novel/253517/


戌亥とこ
https://www.nijisanji.jp/members/toko-inui

そろそろギバラのアカウントが全て消えるそうです。アーカイブを見返したい方は今月中に見返してくださいね!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。