うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
久しぶりになってすみません。
Side???
「おい……こいつを始末しておけ」
「はっ!」
男から指示を受けた部下は下げた頭があげられなかった。
彼の放つ怒気に脂汗が止まらなかった。
彼は顔を上げる。
そこには大量の蟲といくつかの破られた檻のついた車たち。
そして洞窟の奥にはいくつかのヒトの死体。
吐き気をこらえ、男は術を詠唱する。
これは男からの指示だ。
遺品としての物をいくつか回収してあとはすべて穴ごと全て埋める。中には男が特別に作った爆弾『たいなまいと』があり、それにつけられた導線に着火させればいい。
彼は詠唱を終え、線に火をつけるとその場から急いで離れる。
そして少しして、派手な爆発音があたりに響き渡る。
それを背に男は眼下の部下10名ほどに向けて言い放った。
「野郎ども、蟲狩りだ! ヤマトに仇をなす虫、いやいかなる害虫(……)全てを抹殺する」
「おう!」
「散会!」
そういうと彼らは素早く散らばる。
「……っち、向こうは例のギギリ駆除依頼の山の方か」
男はそうつぶやくと、走り出した。
Sideウコン
「テメェ等、配置についたな? そろそろ来るぜ」
罠を仕掛けて、岩陰や茂みに隠れる俺たち。
俺の声に野郎どもは元気よく返事をする。
「マロロ、具合のほうはもう問題なねぇんだな?」
「にょほほほ、心配かけてしまったでおじゃるな。この通り、気分爽快、完全復活でおじゃるよ。我が秘術、とくとご覧あれ」
元気になったマロロはいいとして、アンちゃんの顔がやはり晴れない。
何か声を書けようか迷っていると、ねえちゃんがあんちゃんに好きな食べ物を聞く。
アンちゃんは不思議そうな顔をするが、ねえちゃんが真剣にもう一度聞くと呆れたように「いきなりなんだ?」と返す。
「帰ったら、ハクが好きな食べ物を食べさせてあげる。だから、大丈夫かな?」
ねえちゃんのその言葉に、アンちゃんも少しはまともな顔になった。
なんでぇい、できてるんじゃねえかよ。
けど、なんだ? この安心したような気持ちは?
まるで、懐かしむようなこの感覚。
ふしぎな感覚に少し思考していると、茂みが揺れる音がする。
すると、6つの脚に細いからだ、鎌のような2本の手に鋭い尻尾を持った蟲が現れる。
「おお、結構でけぇな」
思った異常だ。人と同じか、少しでけぇくらいのがいる。
確かにあれは脅威だな。
うん? ……何であんちゃんは戸惑っている?
「うへぇ、すげぇ数ですね」
部下の一人が現れたギギリの数を見てそういう。
確かに、少し多すぎやする。繁殖期、大移動、いろいろ考えられるが予想よりも少しばかり多い気がする。
まあ、だからマロロの手を貸してもらうのだが。
「かかったぜ、マロロ!」
「任されたでおじゃるよ」
マロロは胸を張って一歩前へ出ると、体をよじりながら何やらブツブツ言いだした。
「オンポコポコ、オンコロコロ……」
そんな様子に不安な顔をするあんちゃん。
「……なぁ、クオン」
「どうしたのかな?」
「なんだ、あの不気味な踊りは?」
おや、アンちゃんは呪法を見たことがないのかな?
「不気味な踊り? ああ、あれは踊りではなく術法……あ、こちらでは呪法って言われてるかな」
「呪法?」
「印を結び、想念を力に変えるの。比較的、弱くて根暗な人に向いているかな」
……おいおい、ねえちゃん。説明としては間違ってはいないが。
「う……、マロの繊細な心はグサッっときたでおじゃるよ」
「ねぇちゃん、何気に辛辣だな」
部下たちもねぇちゃんの言葉に苦笑いをしている。
「にょほーん」
するとマロロの術が完成し、腐肉を中心として小爆発が起きる。
それによってギギリの何匹かが死ぬ。生き残った八の動きも鈍い。
「よっしゃ、よくやった!」
マロロは疲れたのかあとは任せるでおじゃると言って座り込む。
「テメェ等、残りの奴を片付けるぞ! 続けぇ!」
自分の号令に続き、部下たちがギギリに襲い掛かる。
やや遅れてあんちゃんやねぇちゃんたちも参加し、順調に駆除していった。
俺が最後の一匹を倒すと、周囲に緊張は解けて皆が一息つく。
とりあえず俺は全員の人数を数えると、少し足りない。
誰が足りないか確認すると、兄貴の部下数名が見当たらないようだった。
また少し、ギギリが奥の茂みから顔を出してきた。
まだ体力も余っているし、兄貴の部下がいなくなったってのも気になる。
ここは自分がもう少し働こう。
そう思い、部下に控えと変わり、仕留めた奴の回収をするように指示を出す。
少し下がってあんちゃんたちにも声をかける。
「ま、へとへとみてぇだし、後は俺たちに任せてあんちゃん達は休んでな。こういったのは初めてだったんだろ? それくれえは大目に見るさ」
すると、少し前までの不安は消えたようで苦笑いで「すまない」と言って木陰に二人は移動する。
少し戦って落ち着いたころに二人を確認すると、ねぇちゃんに治療されていた。
毒を吸い出していたのか、腕に吸い付いたねぇちゃんに対してあんちゃんは悲鳴を上げていた。
どうやらさっきの戦いで怪我をしていたようだ。
……ふむ、さっきの戦い。あんちゃんの戦い方は悪くなかったが、自分のしたい動きに自身の肉体が追い付いていないといった感じだった。
「不思議な、アンちゃんだぜ」
おれはそうつぶやき、最後にマロロがあんちゃんの名を呼びながら近づくのを横目に再びギギリの残りを始末していった。