うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~   作:othello

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少し長いです。


ギギリ討伐:ボロギギリ

 

 

 Side:ウコンのもとから離れた5人

 

 俺たち5人はウコンの手伝いをクレスの兄貴の命でしていた。

 

 しかし、その約束を破って俺たちは今行動していた。

 

 別にウコンのやつが嫌いになったわけでも、兄貴の命令でもない。

 

 ただ、俺たちは気づいた。ギギリたちの出てきた茂みの奥。

 

 そこから、かなりやばい雰囲気を感じ取った。

 

 俺たちはクレスの兄貴の部下故にそれなりに高い戦闘力を持っている。

 

 ……しかし、困った。これは勝てない。

 

 俺は懐の閃光弾を使い、奴をひるませ撤退する。

 

「急げ! ウコンと合流して、数で巻き返す!」

 

 急いで引き返すも、そこには大量のギギリたち。

 

「すみません、兄貴……」

 

 

 

 

 

 Side:ウコン

 

「どうでぃ、アンちゃん。やけに不安あっていたが、大したことなかっただろ?」

 

 掃討も大体終わり、部下への指示を終えた俺は部下の一人から水筒をもらってのどを潤していたあんちゃんに声をかける。

 

「そうだぜ、ついこっちまで不安になったじゃねえか」

 

「「ワハハハ──―」」

 

 部下の奴があんちゃんを茶化すようにそう言うとみんなが笑う。

 

 その様子にあんちゃんは恥ずかしそうに苦笑いする。

 

「いや、あれは…………あれはなんてというか、勘違いというかな」

 

「勘違い?」

 

 アンちゃんの言葉に違和感を覚える。

 

「少し前に、あれよりもっともっとでかい奴に襲われたんだ。まあ、その時間一髪で助かったが。つい、その巨大な奴と勘違いしてな。こんな奴らだと知ったら、ここまで慎重にはならなかった」

 

『‥‥‥‥』

 

 アンちゃんのその言葉に不意に笑い声が止まる。

 

「なん、……だと……?」

 

 俺はあんちゃんの言葉に動きが固まる。

 

 話を聞き、特徴を教えてもらえばもらうほど、いやな予想のものに近づいていく。

 

「おい、だとしたらやべえぞ!」

 

 Sideハク

 

 その瞬間、背後の木々が吹き飛ばされる。

 

 そのまま部下2人ほどの首が飛び、何人かが巨大ななにかにぶつかって軽いけがをする。

 

 ハクは見てしまった。即死した二人のうち一人は自分を茶化しながらも優しくしてくれていた、自分の今持っている水筒を貸してくれた人だと。

 

「きひぃぃぃぃぃぃ!」

 

 金切り声のようなマロロの声に全員がわれに帰り、混乱した。

 

 ウコンの部下全員がくもの子を散らすように逃げ惑う。

 

「あ、まちやがれ! 今個別に逃げたら……」

 

「うわ! 小さいのも来るぞ!」

 

 部下数人が小さい個体に気づくも不意を突かれ少しけがをする。

 

「距離を取れ! 体勢を立て直してから、全員で一斉にかかるぞ!」

 

 ウコンの号令に、何人かの男が武器を取る。

 

 だが、あたりから次から次へとギギリが出てくる。

 

 何人かかが武器を取る前にギギリに奇襲されて構える間もなくやられていく。

 

「ハク!」

 

 クオンの声にハッと我に返り、反射的にギギリを倒す。

 

「う、うん……なんか、ハクって意外と強いんだね。でも、あれは力ではない人を殺す技。まるで、おじさまのような」

 

「クオン?」

 

「うんん、何でもない。はぁ、でも道理でかみ合わないと思った。ハクが言っていたのはあれだったんだ」

 

 ため息をつき、こめかみを押さえるクオン。

 

 周りの焦りようなどからまずいことに気づく。

 

 そしてウコンの撤退指示に自分も動こうとすると、足を何者かにつかまれていることに気づく。

 

「は、ハク殿~」

 

「な、何してる。はなせ!」

 

「こ、腰が抜けて動けないでおじゃる……」

 

「なっ……」

 

 自分がもたもたしていると、ギギリが寄ってくるがクオンが倒してくれた。

 

 するとウコンがギギリを薙ぎ払い、肩や背中に何人もの傷ついた男たちを抱えながら駆け寄ってくる。

 

「3人とも何をしている、早く逃げろ!」

 

 俺は仕方ないので、無理やりマロロをひきづりながら逃げる。

 

 しかし、荷物を抱えている分遅い3人。

 

 あっという間に囲まれて後ろに大きなギギリが迫る。

 

 俺たちが囲まれたことに気づいた奴らが引き返そうとするが、それをウコンが止める。

 

「チッ、仕方ねえか。こうなったら……」

 

「ちょっと待ってほしいかな」

 

 ウコンが何か奥の手を出そうと懐に手を知れると、クオンが待ったをあっける。

 

 そして、腰の筒を手に取った。

 

「いいかな? これから一瞬だけ突破口を作るから、合図をしたら一瞬だけ耳をふさいで目を閉じて。そしてそのあとは全力で駆け抜ける事」

 

「それは、あの時の──―」

 

「そうか、閃光弾か」

 

「なんでおじゃる? なんでおじゃる?」

 

「やるよ。3、2、……1!」

 

 クオンは閃光弾から何かを引き抜き、放り投げる。

 

「今だ! 走れ!」

 

 目をつぶれと言ったのに俺の脚につかまって、直視していたマロロの叫びを聞きながら俺は頑張って逃げる。

 

 そうしてしばらく逃げていると、先に逃げていたやつらと合流する。

 

「お、おじゃ。助かったでおじゃるか?」

 

 そんなことをいうマロロ。いまだに俺の脚をつかんでいるので歩きにくい。

 

 いい加減にいらだってきた俺は、マロロを蹴り飛ばし、手を離させる。

 

「あんちゃん、無事だな?」

 

 声をかけてくるウコン。

 

 文句の一つでも行ってやろうかと思うが、肩、背中、それに紐で括り付けて引っ張て来た人数を見て何も言えなくなる。

 

「見当たらねえ奴が多いな……無事だといいが……」

 

 確かにここには全体の半分くらいしかいない。

 

「しっかし、アンちゃんが懸念していたのがボロギギリだったとはな」

 

「そのボロギギリってのはあのでかい奴のことか?」

 

 どうやら、あれは小さい子供でも知っている。

 

 正確には子どものしつけによく用いられるほど、恐ろしい存在のようだ。

 

 どうやらウコンとしては完全に予想外だったようで、困った顔をしていた。

 

 自分が謝ると、「その必要はない。油断していた自分の責任だ」と言って自分の左掌に右の拳を打ち付ける。

 

 その表情は自分自身に怒りをぶつけているようだった。

 

「それで、これからどうする?」

 

 自分は取り合えず、今この場を何とかすべきとお思いウコンの指示を仰ぐ。

 

 とりあえずウコンはマロロに情報求めるが、マロロは思い出せないようでうなっている。

 

「む、むむむぅ、多分でおじゃるが…………あれはきっとこのあたり一帯のギギリのの親でおじゃる」

 

 どうやら、あのギギリとかいう蟲。繁殖期には1体が急成長して、親になるらしい。

 

 親になった個体は子分を引き連れて手あたり次第に得物に襲い掛かるみたいだ。

 

 話を聞いていると、首すじのあたりがひりつく。いやな予感がした。

 

 その瞬間、今来た方と反対側から何かがこの開けた場所の中央に飛んでくる。

 

「ウコン!」

 

「ああ、全員森の方に飛べ!」

 

 飛来物はこの場所の中央に落ちて雪を周囲にまき散らす。

 

 かかる雪を振り払い、そちらを見ると目の前にあのボロギギリの顔があった。

 

「ひぃ……? あれ、これは」

 

 よく見ると、そのボロギギリは全身ぼろぼろであり、あの方そうな殻が割れている。

 

「同らやら間に合ったが、少し遅かったか」

 

 動かないボロギギリの死体の上に立つ一人の男。

 

 七つの星が施された仮面をかぶるその男は周囲を見回して、傷ついた奴らを見てそういう。

 

「うん? どうやら知らないか、お……な、なんでここに?」

 

「え?」

 

 男は自分とクオンを見て驚いた顔をする。

 

「そうか、そういうことか。ミトめ、そういうことか!」

 

 男はどこか嬉しそうだった。

 

「あに……ううん、オリオン将軍。加勢でありましょうか?」

 

「うん? ……あ、つけっぱなしだった。ごほん! その通り、盟友よりの連絡と害虫の手先を追ってきた結果に過ぎないが、助けられたようで何より。しかし、何があった?」

 

「はっ、それが……」

 

 ウコンはこんなに冷たいというのに片膝をつき、男に礼を尽くし説明する。

 

 よく見れば周りの連中もだ。

 

 それを見ていた男は姿勢を崩し周りの物も先にけがをした者の応急手当に努めるよう指示する。

 

 その間にウコンはオリオン将軍とやらに説明を行う。

 

 俺は気になってマロロに彼の素性を訪ねる。

 

「マロロ、あの男は何ものだ? 見たところウコンとそれほど年が変わらないように見えるが……」

 

「私も気になるかな?」

 

 きづけばクオンも隣で訪ねている。

 

「は、ハク殿はあの方を知らないでおじゃるか!?」

 

 マロロは信じられないと言わんばかりに目を見開き驚く。

 

 よく見ると、汗で少し化粧が落ちて不気味になっている。

 

「そ、そんなに驚くことなのか?」

 

「あの方はヤマトだけではなく周辺諸国にも名をとどろかせる大将軍にして、ヤマトに属さず帝との盟友の儀を結びし一族の末柄、第28代目オリオン将軍でおじゃるよ!」

 

「そんな、でも、あの姿、声……でも……」

 

 マロロの説明にクオンが混乱したように何かをつぶやいている。

 

「クオン?」

 

「……フミリィルになんて説明すれば」

 

「クオン? クオン!」

 

「! ……ごめん。ハク、取り乱した、かな」

 

「痴話喧嘩か? 相変わらずモテるな、お前は」

 

 そういって声をかけてきたのは先ほどのオリオンと呼ばれた男だった。

 

「……もしかして、自分に行ったのか?」

 

「そうだが? 他に誰がいるという?」

 

 その瞬間頭のなかで一瞬、何かかがフラッシュバックする。

 

「くっ……」

 

「……少し顔を良く見せろ」

 

 男はそういうと、自分の顔をつかみのぞき込む。

 

 仮面の瞳が少し光ったような気がし、キィーンという音が少し聞こえる。

 

「チッ……そういうことか」

 

 男は何か苦虫を噛み潰したような顔をすると、自分の顔を話す。

 

「すまんな、兄ちゃん。どうやら人違いのようだ」

 

「は、はぁ。ひとちがい……?」

 

「ああ、そういうことだ。そっちの嬢ちゃん、コイツの恋人かい?」

 

「いや、私は……」

 

「俺は記憶がない中雪山にいたようで、それを助けて面倒を見てくれている」

 

「そうか、優しいんだな。……さすがあいつらの娘ってところか」

 

「今、なんて……?」

 

「うん? 優しいんだなっていたんだよ。ちがうのか?」

 

「いえ、違わない、かな……」

 

 なんだか、クオンの様子がおかしい。

 

 声を掛けようとする前に男が自分たちに丸い何かを渡してくる。

 

「俺特性の丸薬、『飴玉』だ。これが疲れたときにはちょうどいい。口の中で溶かすように食べろ。それじゃあ、俺はウコンと少し話してくる。後で手を借りると思うから休んでおいてくれ」

 

 男はクオンの持ち物などを見てそういうと、ウコンのほうに行く。

 

 飴玉をなめたその瞬間、また何かがフラッシュバックする。

 

 

 

『疲れたときには甘いもの! ということで飴玉、分けてやるよ』

 

『助かる。ありがたくいただいておく』

 

 

 

 あれは自分と……誰だ? 

 

「あ、これ……おいしい」

 

 確かにあの男からもらった飴玉はおいしく、少し疲れが吹き飛んだような気がした。

 

 

 

 

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