うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
Side:クレス
ウコンの方へ急いでいると森の中で戦闘音が聞こえた。
急いでゆくとウコンに預けた自分の部下が、ボロギギリに襲われていた。
俺はすぐさまに体内の戦闘スイッチを入れ、力を脚力に変換してその際の風圧で周囲のギギリを部下の周りから離した。
「カシラぁ!」
「わりぃ、遅くなった。……ウコンはどうした?」
「普通のギギリを対処してます。俺たちは「ヤシオ」の第六感に従ってウコンから離れてその場所に行くと、あれが居ました」
ヤシオはウコンに預けた部下の一人でうちの若い連中のなかでも異彩を放つ奴だ。
第六感とでもいうべき直観に優れており、未来予知にすら匹敵すると言える。
そのヤシオを見ると、かなり消耗しておりもう言葉を話す体力さえ残っていないようだ。
「ヤシオのおかげで、攻撃をよけ続けましたが周りの連中のせいで思うように動けず……」
「かといってこのまま引けばあの村に行くと思うので困っていたところです」
なるほど、かなり頑張ったようだな。確かに現在地からあの村まではもうそれほど離れてはいない。
「よくやった。……しかし、でけぇな」
「ですが、カシラぁ。あれおかしいでっせ」
「ありゃ、ボロギギリだが南の特徴を持つボロギギリです」
部下の一人で南出身の奴がそういう。
確かにボロギギリはその気候によって甲羅の硬さ、色が変わる。
あれは動きやすくするために甲羅を体に細かく纏わせて、機動性の高い南でよくみられる黒の甲羅を持つギギリだ。
「ならば、あれはあいつが持ち込んだ奴か。まずいな……」
「どうしたんでっせ? ……まさかあれの対処は兄貴でも難しいのですかい?」
「馬鹿野郎、あんなのはどうでもいい。……いや、うるせぇな」
キシャァァッァァ!
ボロギギリが奇声を上げながら、クレスに猛スピードで突進してくる。
しかしクレスは冷静にポケットから小石を出すと人差し指を折り曲げ床を作り、その上に石を置き、ボロギギリを定めて親指を構える。
「柔剛戦闘術、剛術 基礎 飛天」
そういうと、足を踏みしめ大地をつかむ。
その瞬間に放たれた小石は亜音速でボロギギリにぶつかり、砕け散る。
しかし一方のボロギギリも脳天を一発の打撃で揺さぶられて昏睡状態になる。
「さすが、カシラだぁ!」
「テメェ等、体制を整えろ! 雑魚をさっさと片付けて、ウコンのもとに向かうぞ!」
──────
「なるほど、兄貴のほうではそんなことが……」
「ああ、あの後雑魚どもを倒していたら、目を覚ましたいたのとお前たちの大まかな場所が把握できたと聞いて、ちょいと手加減をミスってな。誰も巻き込まれなくてよかった」
「はは、相変わらず力加減がいい加減なもので……。でもこれであのボロギギリ退治も楽ってもんですね、兄貴」
「それなんだがな、ウコン。俺は参加しない」
「ど、どういうことですかい、兄貴!? 兄貴と俺でかかればあのくらい」
「それについてだが、あの男を使え」
そういって俺はハクを指さした。
「あの、アンちゃんをですかい?」
「ああ、あれはおそらく逸材だぞ。……少し話すといい。それと、これをあの男に伝えてくれ──―」
「え、それだけですかい?」
「ああ、ウコン。あの二人、たぶんお前の期待以上だ。……そういえばお前、最近都で動きずらくなってきてたな」
確かウコンという義侠人が広まりつつあり、貴族連中特にあの豚が目障りに思っているうわさを聞いた。
「え、ええ。それがなにか?」
「ふっ、まあ後で言うさ。それより先に気づくかもしれねえがな。俺は怪我した連中を連れて村に戻る。きっちり仕留めてこい、命令だ」
俺は振り返り背中越しに、そういうとウコンは張り切ったように「はい!」と返事を返す。
「……さてと、オリオンは一回消えて」
茂みに隠れ気配を限りなく消す。
その間に服装の一部と仮面を取り、皆の元に戻る。
「おーい、お前らー。生きてるか?」
「クレスの大兄貴。お疲れ様です。すいやせん、手ひどくやられまして」
「そうか……、ウコンのところに置いておいたうちの連中が、返ってくる途中でかなりやられててな。そこをあのオリオン将軍に助けられたのだが、何があった?」
「ボロギギリが出ました。それで、仲間が……」
「そうか、すまない。ところでそのボロギギリはあそこの?」
「……そういえば違いますね。まさか」
「そういうことだろうな。あのボロギギリはここらでは見ないタイプの奴だ。将軍が捕まえたという調教師の元より逃げた奴だろう。……面倒になったぞ」
「ウコンにつたえてきます」
「ああ、頼んだ。怪我してるやつ、こっちに集めてくれ。応急箱なら持ってきた」
それを聞き、何人かの重傷者が集められる。
見ると重傷者はこの場での治療は厳しいと言えた。
応急処置はできたが、このままではどうしてもできることが限られてしまう。
そこで俺は何人かを見繕い、ウコン選抜の十数名を置いてて一体することになる。
もちろん俺は先導者として撤退組に参加する。
それに紛れようとしていたハクをクオンが尻尾でつかみ、叱っているのが目についた。
なんだかその様子に、少し微笑ましさを感じ久しぶりに依然な笑みがこぼれる。
ウコンのもとにねぇちゃんやあんちゃん、マロロが加わりその他部下を集めて作戦会議をしている俺は荷運びを手伝う。
ウコンは作戦が決まったのか、俺にあいさつをすると作戦に向けてそれぞれ走り去る。
それを見て、こちらも動き出すのであった。
「さて、お手並み拝見と行こうかな。……***、いや、ハク」
俺は静かに、そして期待するようにそうつぶやくのであった。