うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~   作:othello

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ギギリ討伐:効率的な使い方。

 Sideハク

 

 自分の提案は簡単だ。ギギリのえさのあまりを使ってボロギギリの周りにいるギギリを釣る。

 

 それによってボロギギリ周辺のギギリは離れていくだろう。

 

 ボロギギリは硬さも厄介だが、その硬さに阻まれて手をこまねいているうちに普通のギギリに攻撃されることで攻略難易度が格段に高くなっている。

 

「おおっ、動いていくでおじゃるよ」

 

 マロロの驚いている通り、ウコンの部下に腐肉をしみこませた布のにおい袋を持ってもらい、ギギリを誘導してもらった。

 

 いい具合にギギリを釣れたが、本命は……。いた、いい具合雑魚たちと離れているな。

 

 そして、本命のボロギギリを釣りだす作戦だが……。

 

「マロロ、あいつに一発ぶちかませ」

 

「ほにょ?」

 

 自分の隣に控えてもらっていたマロロは間抜けた声でこちらを見返す。

 

「あの呪術ってやつを全力でボロギギリにぶちかませ。上手くいけばあいつだけを釣りだすことができる」

 

「ま、マロがでおじゃるか?」

 

「ああ、あのオリオン? とか言う男の助言だ。マロロの術を使えだとよ。期待されているみたいだぜ?」

 

「にょほ! あのオリオン殿にか!? ……しかし、そんなことしたらマロに向かってくるのではおじゃらぬか?」

 

 くっ、やはりクオンの言う通り根暗で、気が弱いか。……ならば。

 

「心配するな。そのために自分たちがいる」

 

「ハク殿……」

 

「自分たちを信じろ」

 

 そう、力強く言う。

 

「そう……そうでおじゃるよ。親友を信じずして何を信じるというのでおじゃるか。判ったでおじゃるよ!」

 

 ……まあ、いるだけだが。

 

 自分は心の中でそうつぶやく。

 

 事実、あんなのと戦って勝てる気は少しもしない。

 

 まあ、何かあったらウコンが助けてくれるだろう。

 

 それにあのオリオンとか言う男からの伝言。

 

『マロロを効率的に使え』

 

 これはおそらく、マロロの持つ呪術を効率的……つまり、目的遂行のために使えということだろう。

 

 だが、あの男はなぜ自分がギギリに追われていたことを知っている? 

 

 その後、そのギギリがタタリに食われたことを知っている? 

 

 謎が多い。それに自分を知っているようでもあった。

 

 

 

『いいか、**。仲間っていうのはいいぞ! 一人で戦っている時よりも心に余裕ができる。余裕ができるってことは、できることが増えるってことだ』

 

『……おいおい、男と男で喧嘩してんだぞ? 効率なんてくそくらえだよ』

 

『仲間は効率的使う。……それ以上に地形を利用するがな』

 

 

 

 また、あの男だ。……多分、あの男の話し相手は自分だと思う。

 

「行くでおじゃる!」

 

 マロロが数歩前に出て、詠唱を始める。

 

 それを見て自分も気を引き締める。

 

 しかし、どうしても気になってしまう。

 

 一人であのすべてを溶かすスライムのような生き物、タタリのもとに行ったクオンが。

 

 どうしてだろう、ろくに話もしていないのになんで守りたくなって、しまうのだろう……。

 

 

 

 Sideクオン

 

 私が例の洞穴に行くと、その前には一人のとこが立っていた。

 

「クオンか。さすが、ハク。数少ない経験を生かして瞬時にこの策を思いつくか。やはり天才だな……」

 

「オリオン、将軍……」

 

 クオンはその姿を見て戸惑う。どうしても重なるのだ。

 

 幼いころ、最も大切な母がいなくなったと同時期に消えた親友の父親。

 

 最後に見た姿は全身ぼろぼろで、……もう死んだと思っていた。

 

「あなたは……」

 

「それは、後で答えてやる。いまはこの先にいるやつを連れて行かなければならないだろう」

 

 そういうと、洞穴からタタリが飛び出してくる。

 

 ──―ドゴォン! 

 

 タタリがダイブしたところの雪は跳ね上がり周囲にまき散らされる。

 

 つい先日も見たとはいえ、大きさに圧倒されるクオン。

 

「何を呆けている! 行くぞ!」

 

 オリオンの言葉にはっとしたクオンは駆け出した。

 

 タタリは予定通り二人を追いかけてくる。

 

 この世でもかなり恐れるべき存在を前にクオンは笑っていた。

 

 こんな状況なのに楽しい。

 

 こんな作戦、私は思いつかなかった。

 

 彼を見つけたのは偶然だった。彼とともにいるのは義務の側面が強い。

 

 でも、なんだか彼となら楽しく生きていけそうな気がした。

 

 私の立場、血筋、体質、それらを一時でも忘れられるこの旅、夢だとしても私は最後まで楽しむつもりだ。

 

 そのために今は走る。

 

 向こうで頑張る、どこかほっておけない記憶喪失の男のために。

 

 

 

 Sideハク

 

 

 

「にょほぉ──ん!」

 

 術の掛け声は何とかならないのか? 

 

 そんな場違いなことを考えながら、詠唱を見守ると巨大な爆発がボロギギリの頭部を包み込む。

 

 煙がはれ、ボロギギリは自分たちにターゲット決めたようだ。まっすくこちらに向かってくる。

 

 しかし何匹か巻き込んだようだ。一緒についてきてしまう。

 

 だが、あれ位ならいける。

 

「みんな、無理しない限りで攻め込んでくれ!」

 

 そういうとウコンの部下たちが茂みから飛び出し、ギギリたちをつぶしていく。ボロギギリには手を出さず、とりあえず取り巻きだけでも駆除した。そうしてやがてボロギギリだけになると、例のポイント上の崖の上にやってくる。

 

 見るとちょうどいいタイミングのようだ。クオンが走ってくるのが見えた。

 

 一瞬でアイコンタクトを取り、共に囮を引き受けてくれた二人に指示を出す。

 

「今だ、マロロ、ウコン!」

 

「了解でおじゃる! にょほぉーん」

 

「おうとも! 剛剣戦闘術 基礎 飛剣」

 

 マロロが爆発で崩した足場をウコンの斬撃によって一気に崩れさせる。

 

 ボロギギリの叫び声が響き渡る。

 

「やった……」

 

「待て、アンちゃん。あれを見ろ」

 

「なっ……」

 

 よく見ると、ボロギギリは崖に落ちる途中で爪を使って登ってこようとしていた。

 

「なんてしぶといでおじゃる」

 

「くそ、これ以上時間を空けてしまえば、クオンが……」

 

「大丈夫かな、むしろいい土台だよ」

 

 その声は下からした。

 

 丁度合流したクオンがボロギギリを足場にして崖を上ってくる。

 

「来たか! よくやった、クオン」

 

「っ!?」

 

 とてもうれしそうに、そして純粋な賞賛にクオンは顔を赤くする。

 

 自分はクオンの様子が少し様子がおかしいことに気づき訪ねようとすると、下で断末魔が聞こえてくる。

 

 見ればボロギギリがタタリに捕食された。

 

さすが、全国区で恐れられるタタリ。ボロギギリなんて一瞬だったな・・・。

 

俺は改めてその恐ろしさを確認したのであった。

 

 




オリオンのマスクには生体スキャンが組み込まれており、アマテラスの監視映像を照らし合わせて確認しております。
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