うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
Sideクレス
「よぉ、お二人さん。挨拶は済んだかい?」
墓につくとハクとウコンが戻ろうとしているところだった。
「あんたは……」
「クレスの兄貴!」
ウコンは驚き、ハクは戸惑うようだった。
「何、俺も墓参りよ……。 お前さん、確かハクと言ったな?」
「あ、ああ。自分はハクという名をもらったが……」
「もらった? ……両親に、ということかい?」
「いや、自分は記憶喪失でな。ハクというのは今の同行者、クオンがつけてくれた名前だ。……やはりこの名前おかしいのか?」
「いや、そうでもないぜ。むしろ、その名前は……」
「……隣国の前皇の名前だ」
「そうなのか!? なんか、恐れおおいな……」
「そうだぜ、アンちゃん。隣国では神としてすら扱われる存在だ。……まあ、でもその話あっまりしない方がいいぞ」
「え? どういうことだウコン?」
ハクが記憶を失っているのは知っている。……そして、俺はお前を知っている。
ハクになる前のおまえを。
そしてクオン。……なぜ、コイツにその名前を付けた?
「なぜなら、一部では禍津神と忌み嫌われているからだ。……そういえば、アンちゃんは宗教について覚えていないのか」
「宗教? すまん、わからない」
「ウィツァルネミテア信仰、オンヴィタイカヤン信仰あとまあこれは現人神ということで宗教ではないのだが、ヤマトの帝が神としてあがめている人はいるかな……。隣国ではこんなところか」
「宗教対立的な……すまない。ぶしつけな質問だった」
ハクは疑問を口にして、途中で止める。
宗教の恐ろしさというのを知っているからだろう。
「いや、構わねえさ。ヤマトの民は大体が帝という神の御業を持つ存在を知っているからな。両方の信仰者は少ない。まあ、説明しておくとウィツァルネミテア信仰はオンヴィタイカヤン信仰に嫌われている。理由は、かつて繁栄したオンヴィタイカヤンの楽園を崩壊させたのがウィツァルネミテアだからだ。ウィツァルネミテアはヒトを楽園から解放し、生と死を一つの儀式として与え、常世へ導き輪廻転生させる存在となっている。ざっくりいえばこんなかんじだ」
「なんだか複雑だな……。まあ、いいや」
「おいおい、あんちゃん。聞いておいてその反応かよ」
「それしか思いようがないんだよ。神様の話なんて自分には想像もつかん……は、ハックション。すまない、そろそろ戻らせてもらっていいか?」
「ああ、足を止めさせて悪かった。……風邪をひかないように」
「──―っ」
俺が心配する言葉を言うとハクが頭を抱える。
「大丈夫か?」
「……ああ、すまない。疲れが出たようだ」
「そうか……、ウコンあと頼めるか? 墓参りをして任務に戻る」
「了解だぜ。……ほら、あんちゃん行くぞ」
「ああ、すまない」
そういって二人は帰っていく。
俺は静かに再び墓と向き合い祈りをささげ、ウコンと同じく酒を置く。
「……間に合わなくてすまなかった」
そういって俺は立ち上がり来た道を戻る。
来る時と違い、ゆっくり歩む俺を狙ってくる敵をすべて灰に変える。
「俺はどこまで力を手に入れても……弱い」
一筋だけ涙を流し、それ以上は笑う。
死したものを心配させないために。
笑って送る。それが俺たちの送り方なのだから。