うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
ハクやクレス一行はクジュウリの村を出て山道を進んでいた。
Sideハク
「ああ、いい天気だ……」
気持ちよく晴れ渡った空をのんきに眺める程度の余裕すら、今はある。
これで山賊に狙われそうな荷物と……
「うぇっぷ……」
今にも吐きそうなマロロさえいなければ。
自分が御者(なぜか、動かすことができた。この時代のウマは馬ともにつかないはずなのに)となって運ぶ荷車に乗るマロロは「貴人としてのプライドが……」とかまた行って、酔っている。
そして、先ほどからなのだが黒い布で全身隠された二人組が自分頬を突いたり、軽くつねってきたりする。
現実逃避してこの状況を無視してきたが、さすがにこれ以上は無理がある。
「お前たち……何がしたいんだ」
先ほどから奇妙な二人組が左右で自分を挟み突いてくる。
話を掛けるも反応はないし、今みたいに無言で突いてくる。
結局会話をあきらめて無視するのだが正直に言って不気味だ。
鬱陶しいなら追い払えばいいが……なぜかそれはできない。
それに先ほどから自分たちの周囲に妙な感覚がある。
……似た感覚で言うと、マロロの呪法とかいうのに近いだろう。
それに躊躇われるというか、……可哀相?
この状況を改善すべく、助けを求め周りを見渡す。
マロロは……ぐったりしていて役に立ちそうにない。
ウコンは……先頭に進むウマに乗ってクレスとかいう男と話しながら進んでいる。ここからは背中しか見えないし、こんなことで呼びつけるには憚られる距離だ。
クオンは……ココポの上でルルティエと共に話している。もう打ち解けたのか、二人とも随分と楽しそうだ。
楽しそうなのはいいが話に夢中になってこっちには気づかないか……お?
ふと、クオンが視線をこちらに向けた。こちらの視線に気が付いたのか、にっこりと微笑みかけてくる。
呼びかけようとするも、その前にルルティエのほうに向きなおると楽しそうに会話を続けた。
「ホロロ~」
代わりに巨鳥が構ってほしそうな視線と甘えた声をこちらに投げかけてきた。
……ような気がする。見なかったことにそう。
自分はそう思い前を向く。
そこでふと思う。
というかむしろ、こっちがみんなから見なかったことにされていないか?
隊列の中には当然傭兵もいる。だがその全員がそろいもそろって、こちらを見ない。
言い換えれば見ないようにふるまっている感じがする。
「……もう、いいか」
いろいろ考えていると、なんだかどうでもよくなる。
ここまで目立つのにみんな何もしないということは、危険な存在じゃないということだろう……多分。
「う……うう……」
酔っ払っているマロロが荷車の荷物の布を少しずらす。
そこにはごてごてしたいろいろな箱や円筒を無理やり付け合わせたような形。
まるで何かの……。
少し気になり手を伸ばすと……。
──―クイッ
両側の二人から袖を引っ張られる。
力はそれほど強くないが、明らかに布に手を伸ばさせまいとしていた。
「……触るな、って言いたいのか?」
コクリ……と、二人がそろってわずかにうなずいたように見えた。
「そうか」
何か知らんが、見るなというならやめておこう。どうしても見たいわけではないし。
──―ナデナデ
「んぉ?」
なぜか『いい子いい子』するように頭をなでてきたんだが……
初めて意思疎通できた気もするのだが、深く考えるのはもうよそう……。
しばらくこのまま進み、日も暮れてくるとウコンが野営指示を出す。
Side:クレス
あの双子、どうやらハクのことが気に入ったようだ。
ハクに気取られないように、様子をうかがうと双子にいじられている。
ところであいつ、何運んでるかわかっているのかな?
かなり重要なもんなんだが……。
しかし、ハクもそうだがクオンもあの術に対抗するか。
効果としては弱いとはいえ、術者はあの二人だ。
関心はするが、これは少し問題かもな。
「クレスの兄貴?」
「おっと、すまない。それで帝都に戻ったらどうするかって話だったな」
「ええ、あのふたり。特にハクのほうは職を探しているとのことなので、兄貴の言うとおり自分が雇おうかと」
「それがいい。ウコンはハクの戦闘技術は確認したか?」
「ええ、まあギギリ退治のときに。……ですがあれはおかしい感じでしたね。動きたい動きに、体がついてきていないという印象を受けました」
「まあ、そうだろうな。……ウコン帝都についたら宴席ののち、白楼閣に連れて行ってやってくれ。二人とも気に入ると思うし、交渉もしやすいだろう」
「ああ、あそこですね。わかりやしたぜ」
「ウコン、そろそろ斥候を放って野営地を偵察させていこう。この人数に荷物、人。いいころ合いだろう」
「そうですね。おい! 何人か連れて野営地の予定ポイントの偵察に行ってくれ」
「了解でっせ!」
そういうとウコンの部下が偵察に向かう。
「さて、明日は忙しくなりそうだね」
「ええ、3人には悪いですが」
「ふっ、3人でいいのか?」
「あー、まあ、あいつは演技できませんから」
「それもそうだな。……それじゃあ、改めてボロギギリの戦いの話でも聞こうか」
「判りました。最初は……」
俺は木の上より俺たちを監視する盗賊を確認していたが、あえて放置しておいた。
さて、明日は帝都帰還前にお掃除だ。