うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~   作:othello

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山賊

 Sideハク

 

「なあ、ウコン。なんだか昨日より人数が少なくないか?」

 

 野営地を撤収し、予定通り帝都に向かう道中。違和感を感じた。

 

「そうか?」

 

「それにクレスの奴もいねえし……」

 

「はは、よく見てるなぁあんちゃんは。兄貴は別行動だ」

 

「ああ、そういうこと」

 

「詳しく聞かないのか?」

 

「うーん、いいや。めんどくさい。それにいずれ判るだろう」

 

「……ははは!」

 

「なんだよ急に」

 

 急に笑い出したウコン。「すまん、すまん」と謝るもその声音からは悪く思っているという反省の色は見えなかった。

 

「しかし、アンちゃん。本当に兄貴と仲良くなったな」

 

「あっちが絡んでくるだけだ」

 

「そうかい? 夫、何かあったようだ。悪いなあんちゃん、先頭に行かせてもらうぜ」

 

「ほーい、頑張れよ」

 

 自分の言葉を聞くまでもなく先頭に走っていったウコンの背を見ながら自分は気の抜けた声を出す。

 

 しかし、確かにあのクレスという男。なぜか、自分は気を許してしまう。

 

「……はぁ、人がいなくなったと思ったら今度はお前たちか」

 

 気づけばあの二人組がまた現れ自分の頬を突いている。

 

「はぁ、邪魔だけはするなよ」

 

 もう慣れてしまった自分はそのまま操縦を続ける。

 

 しかし、暗いな……。

 

 すでに日は高く昇っているはずだが、生い茂った木々が遮っているせいで、周囲は薄暗い。

 

 急に前が進むのを止めたので自分もそれに従って止める。

 

 ふと、前方を見ると何かの影がチラつく。

 

 見ると道の先で、見知らぬ誰かがこっちに向かって両手を大きく手を振っていた。

 

 その隣には大きく傾いた荷車が、道をふさぐような形で止められていた。

 

 先頭のウコンが周りに奴らに指示を飛ばし、自身が女性のもとに向かう。

 

 賊を警戒してか、やや緊張した空気が流れる。

 

「すまない、助けてくれないか?」

 

 そう笑顔でウコンに駆け寄ってくる少女。

 

「ンお、どうした?」

 

「荷車が溝にはまって抜け出せなくなってしまったんだ。今仲間が助けを呼びにっているんだが、それを待っていたら日が暮れてしまう。すまないが荷車を押し出すのを手伝ってもらえないか?」

 

「ありゃま、そりゃあ災難だったな。よしテメェ等、荷車押し出すから何人か手伝え」

 

「「おうよ」」

 

 ウコンの呼びかけに何人かの男たちがいそいそと集まってくる。

 

 ……うん? ああ、そういうことか。しかしこれは伝えるべきなのか? 

 

 自分はすでに周囲を囲まれていることに気づいた。なんだか最近、感覚が研ぎ澄まされている気がする。

 

 そしてさらによく観察すると、敵はそれほど強くないことがわかる。

 

 少し迷っているとクオンと目が合う。

 

 すると、クオンは察したようで首を横に振る。

 

 ……何もしなくていいか。ルルティエの傍にはクオンがいるしいざとなれば。と考えたところでふと疑問が浮かぶ。

 

 自分はいつからこんなに見知ってそれほど立たない人物のために骨身を削れるようになったのだろう? 

 

 クオンとルルティエそれにウコン……百歩譲ってマロロにはなぜか、頼まれればむげにしたくないと思っている。

 

 そして、それと同じ気持ちをなぜかあの少女にも感じている。

 

 どうして? 自分の失っている記憶に関係があるのか? 

 

「うん?」

 

 少し観察していると視線に気が付いたのか、少女がこちらを見る。

 

「どうした? ねえちゃん」

 

「いや、本当に助かる。厚かましくて申し訳ないが、もう一つだけ頼んでもよいだろうか?」

 

「おう、言ってみな」

 

「うむ! ならばお前たちの荷物置いて行ってくれ」

 

 すると荷車にかぶせられていた布が勢い良く舞い上がり、幾人もの者たちや同じ格好の者たちが周囲の茂みなどからあらわれる。

 

 そして荷車を溝から押し出そうとしていた男たちをあっという間に組み伏せる。

 

「むぉ──―」

 

 ウコンが対処しようとするが、その前に少女によって首筋にナイフを押し当てられる。

 

「動くな」

 

 そういうも、刀から手を離さないウコンに空いている方の手を挙げる。

 

 すると囲んでいた者たちが弓を構える。

 

「ひょえ!? な……な……なにが……」

 

 マロロの狼狽する声。それに自分は少し戸惑う。

 

 これは、計画されていたことだと思ったが違うのか? 

 

 数は向こうが少し多いと言ったところだが普通ならば対処できないほどの敵ではない。

 

 問題はすでに弓が引き絞られている事。

 

 今にもこちらを狙い打たんというほどに。

 

 何かしようにもこれでは下手に動けない。

 

 その間にもウコンと少女が言葉を交わす。

 

「少女たちを危険にさらしていいのかな?」

 

 とそんな声が前から聞こえる。

 

 おそらくクオンとルルティエのことだろう。

 

 二人を見ると青ざめた様子のルルティエをクオンが抱きしめているのがちらりと見えた。

 

「……しゃあねえ」

 

 ウコンは腰の刀を外すと少女のほうに放り出した。

 

「おめえたちもだ。いいか、余計な真似はするな……」

 

 注目がウコンに集まっている間に自分は鉄扇を袖のポケットに隠す。

 

 男たちはざわめきあうが仕方ないとばかりに武装解除してゆく。

 

「おい、その二人もだ」

 

 動こうとしない俺たちを見かねた少女が投降を促してくる。

 

 俺はクレスから預かっていた小刀を腰から抜きその場に置く。

 

「お前もだ」

 

「まろは……、マロは……」

 

 明らかにてんぱっているマロ。

 

「安心しろ。こいつは何ももっていない」

 

 自分が代わりに答えるとマロロはかばわれたと思ったのか「おお、ハク殿」感動している。

 

 しかし、自分はそんなことは毛ほども考えておらず、ただ山賊を刺激しないようにしただけだ。

 

「……良いだろう、お前たち」

 

『『ハ!』』

 

 少女の声に賊の一部が縄をもってこちらを縛り付けてゆく。

 

 山賊に襲われないと言っていたウコンの言葉が見事に外れて視線で非難すると、ウコンはどかりと座り込みなされるがままになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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