うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
それから、5年ほどが経った。
俺のあやふやな記憶のトゥスクルというに地ついて調べたところ、南に新しくできた国のようだった。そこで俺は客将として誰かに慕えていたらしい。
帝からしたら裏切りのようなものだが、今回は数百年前から帝とともにこのヤマトを育てた者として、ミトの友として不問にするそうだ。
第一、 勝手に離れられても困るというのが本音らしい。
俺の普段は古き時代、最初に帝に傅いたものの末柄として広まる『オリオン』であり、八中将とは違いヤマトではなく帝の目であり、足であると言われている。
それもこれも自由がなくなりそうだったために作った偽りの自分である。
『オリオン』は世襲制であり、俺が延命調整に入るたびに代替わりということになっている。
そしてオリオンは外交担当兼遺跡調査の第一人者とされているため、仮面(アクルカ)とは違う気象管理衛星アマテラスとリンクしたナビゲーション機能搭載の鍵の仮面を持ち歩いている。
管理者権限はレベル3までと低いが、それも十分すぎる機能を備えている。
オリオンとしての普段の仕事は市中の見回りと、害虫駆除である。
害虫と一概に言っても、虫だけではないが……。
だが、オリオンとして有名になりすぎたため、普段は本名であるクレスを名乗り人材派遣の会社を行っている。
職に困っているものや、やんちゃな奴を集めて身を引き受けて皆に合った仕事(雑用が多い)を割り振り、大和が少しでも暮らしやすいように日々精進している。
100年ほど前から始めたが、これがなかなかに良くてそれなりに有名で『オリオン』としての後ろ盾もあるおかげで信頼も厚いし、ちょっかいかけてくる奴は大体後ろが暗いので、『オリオン』として成敗し、その店の領分を吸収して自身の配下の者に挿げ替えた結果、帝都にかなり密な情報網を作れるようになった。
そして、その情報網を使って検非違使よりも早く動けるようにし、多少の諍い程度なら自分たちが動くようになった。民間の警備会社の真似事だ。
トゥスクルにいる間は信頼できる部下に任せていたが特にこれと言った問題はないようだが、最近できた宿屋にちょっかい出すやつがいるらしい。
そのためその宿や周辺の治安が悪くなっているらしい。
その報告を受けた俺は最近頭角を現すようになったオシュトル、ミカヅチ、ムネチカの3名を連れてその宿屋とその宿屋にちょっかいを出す者たちを調べることにした。
オシュトルとミカヅキは派遣のところの部下をつけ、妨害している奴らを。
俺とムネチカは妨害されている宿、『白楼閣』について調べることになった。
すると、オシュトル達の方では最近八中将となったデコポンポと呼ばれる男が裏ですべてを牛耳っていることが分かった。
どうやら新しく建つ宿屋の女将を自分のものにしようとして周囲のものを使って妨害しているらしい。
白楼閣もほうも女将とその友人と思われる人物がなかなかの使い手ということが分かった。
少し油断していたというものあるが、ある時監視していたら女将のカルラという人物に見つかってしまった。
その時、自分の顔を見て何か驚いたような顔をしていたがどういうことなのだろうか?
しかし、設計図や食事を見たがなかなかにいい宿のようだ。
風呂を作るようで今度水脈から水をくみ上げる準備ができたら、呼んでくれることになった。
しかし、今回の調査で困ったことが一つあった。
ムネチカが酌をしてくれたカルラさんやトウカさんに対して鼻の下を伸ばしたところ、酔った勢いで告白してきたのだ。
若さゆえの一時の恋心と思い、適当に流そうとしてかつての友の話の中にこの年頃の女子難しいと言われたことを思い出した。
そして何かいい案がないかと考えたところいいことを思いついた。
「お前はまだ若い。これから様々な経験、出会いをするだろう。だから返事はできん。だが、そうだな。帝の天子、アンジュ様がいるだろ? あれが一人前になったときまだ気持ちが変わっていなければ受け入れよう」
オシュトルとミカヅチが左右近衛大将となり、次にムネチカが八中将となることが内定している。そしてアンジュ様の教育係と知らされていたのでわかりやすく、仕事にもせいが出せるような条件にした。
十数年先になるであろうとこの時の俺は思っていた。
数か月後、白楼閣の主カルラはこのわずかな期間でヤマト有数の顔役へと昇り詰めていた。
まあ、自分たちの方でいくつかの顔役とそれに準ずる者たちを取り込んだりつぶしたりしたが……。
そして、宿が完成したが肝心の水脈がないと来た。
どうするのかと思っていると、少しの間姿が見えなかったトウカが一人の女性を連れてきた。
その瞬間、自分の頭が割れるかと思ほどの強い痛みに襲われる。
「グッ、ああ……」
俺はその痛みに思わず意識を手放してしまった。
『クレス殿!?』
『クレスさん!』
『『大兄貴!』』
『え……ク、レスさま……?』
最後に見えた、泣きそうな彼女の顔が忘れられなかった。