うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~   作:othello

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白き霊廟

 Sideウコン

 

 兄貴と別れ、旅籠屋に向かう途中で気になるものがあったのか、ねえちゃんがに問いかけてきた。

 

「……あれは、何かな?」

 

 ねぇちゃんが指さした先には白くて平たい山のような何かがある。

 都のどこからでもわかるほど、高くて巨大に見えた。

 あの場所か……。

 

「ああ、あれは聖廟だ」

 

「セイビョウ?」

 

 アンちゃんが不思議そうな顔で聞いてくる。何と答えた物か考えて当たり障りのないように答える。

 

「この國の祭壇みたいなもんだな。政の中心になる場とか、五穀豊穣を請い願う場とか、まあそんなようなところだ」

 

「そうなんだ」

 

 そっけなく言うが、ねぇちゃんの視線はまっすぐ聖廟から外されることはなかった。

 やっぱり、このねぇちゃん……。

 

「……だな」

 

「なにかいったかな?」

 

 アンちゃんが小さく何かつぶやいたが、それが近くにいたねぇちゃんには聞こえていたようで、ジト目で見られている。

 

「いや、何も……」

 

 あんちゃん……、がんばれ。

 心の中で小さくそう応援するのだった。

 

 

※※※

 

 

 

 クオンの気にしていた聖廟。

 

 そこにはこの国の頂点である帝がいる。

 

 そしてここは謁見の間。

 

 座が3段に分かれており、宮中では武官、文官が最下層。その上に貴族。そしてその上には5人の男女とのれんの向こうに一人の影が見える。

 

「ヤマト宿将:オリオン閣下、入場」

 

 そういうと武官、文官、そして貴族までも膝をつき首を垂れる。

 

 コツ、コツ、コツ……

 

 扉が開き、圧倒的な圧力が彼らにのしかかる。

 

 そして、最上段にて見つめる者たちにはわかる。

 

 その圧力は精密に制御されており、文官には威厳を、武官には訓練を、そして貴族には怒りの思いのこめられた威圧である。

 

 貴族の一部など、すでに気を失っているものすら見受けられる。

 

 男は最上段の階段側に控える4人を超え、のれん前に立つ女性を一瞥すると、膝をつき頭を下げる。

 

「ヤマト宿将:オリオン。ただいま、任務より致しました。例の遺跡よりいくつかの採掘物を倉にすでに収めております。後で目録を作り、ご報告させていただきます」

 

「ご苦労」

 

「はっ」

 

「後に話がある故、オリオンはこのまま残り皆の者。解散とする」

 

 そういうと全員が(貴族の一部の気絶した者は周囲の者が連れて出ていく)一斉に最敬礼をとり、挨拶をして出ていく。

 

「ふぅ、相変わらず肩がこるねぇ」

 

「よければ、後で揉み解しましょうか?」

 

「ムネチカ殿。そういった睦ごとの相談は後にしてください」

 

「ウォシス殿の言うとおりだ。オリオン殿、帝の御前です」

 

「兄者の言う通りですよ、師匠。ところでオシュトルの奴はどうしたんですかい?」

 

 気の抜けた俺の言葉にムネチカは素早く近寄り、触れてくる。

 

 その様子を少し呆れたように見るウォシス。

 

 ウォシスに賛成するように同じくあきれるライコウ。

 

 そしてオシュトルを探してあたりを見渡すミカヅチ。

 

 彼らは八柱将と呼ばれ、大抵が俺を師事して育ってきたものばかりだ。

 

 聖上と同じように悠久の時を生きる自分にとって、若き意見とは斬新である。

 

 故に若き才持つものは保護し、共に研鑽してきた。

 

 その末に彼らはこの国最高峰のである八柱将へと至った。

 

 もう少し肩の力が抜けた関係がいいが、どうしても師事していたこともあってか、尊敬が抜けない。

 

「しかし、オリオン殿。あなたの貴族嫌いは知っておりましたが。今日は一段と厳しかったですね」

 

「たしかに、ウォシスの言うとおりだ。どうかしたのですか?」

 

「うーん。お前らに言うとな……」

 

「嫁である私でも駄目ですか?」

 

「う、うーん、いや……」

 

 俺がそう困っていると「ふふっ」という優しい笑いと「ははっ」という枯れながらも豪快な笑い声が響く。

 

 すると、全員がはっとして姿勢を正す。

 

「聖上の前であることを忘れ、失礼したしました」

 

 ライコウが代表してのれんの向こうにいる帝に語り掛ける。

 

「よいよい。お前たちの気の抜けた様子が見れて割れとしてもうれしい。なぁ、ほのか?」

 

「はい。やはり、オリオン殿がいるといいですね」

 

 のれんの前に立っていた女性は優しく笑う。

 

「さて、お前たちには悪いがオリオンと二人で話がしたい」

 

「……わかりました。後日、きちんとオリオン様より聞こうと思います」

 

「はは、そうだな。オリオン。みな、お前を心配している。そのことを心にとめ、詫びをするのだぞ?」

 

「なっ、……はぁ、わかりましたよ。帝」

 

 そういうと、4人から嬉しそうな感情が伝わる。

 

「それではすまないが……」

 

「はい、我らは下がります」

 

 そういって4人は部屋から出て行き扉が閉まる。

 

 すると、のれんが開き中には一人の老人が座っていた。

 

「よく帰ってきた、クレス」

 

「ああ。さて、お待ちかねの報告と行こうか。ウルゥル、サラァナ」

 

「「はい」」

 

「確定だ。弟さんだったよ。そして、ハクオロの娘が見つけた」

 

「トゥスクル王の娘か」

 

「これまた奇妙な縁だよ。しかも、相変わらず天然のたらしだった」

 

「そうか……。しかし」

 

「ああ、記憶がねえ」

 

「そうか。しかし、これでわしが最後のヒトではなくなったのだな……」

 

「……そう、だな。申し訳ないとは思っている」

 

「攻めているわけではないぞ?」

 

「判っているさ。……だが、思うところがないわけでもない」

 

「そうか。さて、ほかに報告は?」

 

「蟲の密漁を確認した」

 

「なに!?」

 

 その瞬間、帝が身を乗り出すほど驚く。

 

 無理もない。あの事件は帝としても許しがたきものであった故に。

 

「今すぐ──―「犯人の目星もついている。今は証拠集めをしている。だから、任せてほしい」

 

 俺は、まっすぐ帝を見つめてそういう。

 

 すると、彼も落ち着きを取り戻し、深く深呼吸をした。

 

「任せていいのだな?」

 

「もう詰めの段階だ。断罪は大々的に行いたい」

 

「いいだろう。あの帝都を襲った凄惨な事件と同じことを起こそうとする者にくれてやる慈悲はない」

 

「……そういってくれると、うれしいよ。あんたは優しすぎるからな」

 

「まさか……」

 

 そういって俺は帝の背を向け歩き出す。

 

「クレス」

 

「悪い。今日の口頭報告は以上だ。あとは資料読んでくれ。待たせてるやつがいるんでな。……今は、頭を落ち着かせる時間が必要だろう」

 

「そう、だな……」

 

 そういうと帝は車いすに深く座り、後悔した様子で頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

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