うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
仕官して、とりあえずサルもどきや害虫駆除、雑用をするようになり、次第に周囲の奴とも仲良くなり始め、仕事終わりの報告に城に戻ると女中たちの噂を耳にした。
『ハクオロ、兵力10倍差のある国にとやるんだって? 名前は、ケチり、シリぺ……』
『シケリペチムな。……それで、何の用だ?』
『うん? 力を貸そうと思ってな。依頼ならちゃんとやってるぜ。サルもどきも狩りすぎて近づきやしねえ戦争なら向こうでもいくらでもやってきた。力になるぜ』
『……友に戦場に立っては欲しくはないのだがな』
ハクオロは辛そうにそういった。
おそらくベナウィあたりは自分に助力を願うように言ってくれたのだろう。
俺としては反乱に参加したわけでもないわけだから、いまいち彼らとの絆が浅いと感じている。それに……。
『ハクオロ。今のお前はこの国の長だ。聖上として答えろ。それにな、俺も友を。友が大切にしているものたちを守りたいんだよ……』
とある日の夜。夜道を俺とハクオロは歩いていた。
『大いなる父(オンヴィタイカヤン)ね……』
『クレスは知っていたのか? 知ってるも何も、お前も……』
そこで俺は口を止めた。そのことにハクオロは不思議そうな顔をする。
『お前も?』
『いや、何でもない。それで? クンネカムン皇はどうだった?』
『頭巾で頭を隠してからな。顔の感想はいないが、尊大な男というのが第一印象だな』
『ふーん、あのゲンジマルとかいうのも普通じゃ勝てなさそうだし、一応警戒はしておこうかな』
実際、俺も川やついでに秘蔵の酒でもちょろまかそうとしてたまたま気づいただけだからな……。
あのゲンジマルという男。もし戦うならば、殺すしかない……
ある日、複数の茶の湯を運ぶエルルゥを見かけ、契約する世界樹に願いお盆を召還すると一部を自分の盆に移し替える。
こんな数の茶の湯をどうするのかと聞けば、エルルゥは困った顔でこちらを見る。
『国師(ヨモル)ね。……それでエルルゥなんでそんな困った顔してるの?』
『いや、その。国師の方がですね──―』
『おや、これはクレス様。お久しぶりでございます』
『うん? ムント殿。お久しぶりです。ウルトリィや、カミュは元気ですか?』
『はあ、まあ元気というか。元気すぎると言いますか……』
いつかのオンカミヤムカイの法師、ムントが廊下の角より姿を現した。
その顔はどこか疲れているようで、カミュに振り回されたことがよく分かった。
『はは、いいではないですか。元気がない、病にかかったなどよりはいいではありませんか』
『それはそうでありますが……』
『ふむ、そういえばオンカミヤムカイより国師が来るとのことでしたが、ムント様が?』
『いえ、その……』
言い淀むムントの代わりにエルルゥが押しててくれる。
『トゥスクルの国師となられたのはウルトリィ様とカミュ様ですよ』
『なに? ウルトリィが?』
俺はそう聞くなり速足でハクオロの部屋へ向かう。
『あ、クレス様……すみませんムント殿』
『いえ、なに。姫様にも良い方が見つかったと思うばかりです。彼女もそれほど彼のこと嫌ってはおらぬようでしたので……』
『そうですか。ハクオロさんも初対面ですげなくあしらわれたことで落ち込んだクレス様に付き合ってお酒を二人で飲んでいたので。少しは良い報告ができそうではありますね』
気づけば誰かに膝枕をされているようで、頭の下に柔らかいものがある。
少しばかり重たい瞼を開くとそこには黄金色の髪、額に翡翠の宝石のあるきれいな白い肌をした女性が子守歌のようなものをうたっていた。
「ウル、トリィ……?」
「~♪ っ、クレス様!?」
「ああ、ようやく思い出せた。……ウルトリィ。もう、5年ほどたつか?」
「……はい。もう、5年も経ちました。フミリィルも、クオンも随分と大きくなったのですよ?」
俺が名を呼ぶと、ウルトリィはすぐに歌をやめてのぞき込こんでくる。
そして、少し涙を流しながら、言葉を紡ぐ。
「そうか、子供の成長は早いな……」
俺はそういって、トゥスクルで契りを交わした最愛の女と静かに抱き占めるのだった。
ちょくちょく子守歌の時の話が出せればと思ってます。