うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~   作:othello

7 / 31
ここ好きだからあまりスキップしたくないんだよね・・・。



お前さんは・・・

 

 

 Sideウコン

 

「ウコン殿、しゃっきから誰と話し込んでおじゃるか? ひっく……おじゃ! これは先ほどの麗しの乙女でおじゃるよ」

 

 そういって話しかけてきたのは今回の参謀役であるマロロだった。

 

 昼間は疲れていたがあの後少し眠り、すっかり元気になったようだ。

 

「もう、酔っぱらってやがるな。酒の席だ、酔うのは構わねが、迷惑はかけるもんじゃねえぜ?」

 

「にゃにを言うでおじゃる、マロはこの通り……ヒック……酔ってにゃいでおじゃるよ」

 

 やれやれ、それのどこが酔っ払ってないんだか。

 

「相変わらず酒によえなぁ」

 

「麗しの乙女よ、マロはマロロというものでおじゃるこれでも帝より拝命した学士でおじゃるよ」

 

「くふぅ──―、ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ」

 

 マロロの自己紹介に何やら咽るあんちゃん。

 

 昼間もおかしかったが、見ていて愉快な奴だと思う

 

「……すごい!」

 

「は?」

 

 クオンの驚きようにハクが目を丸くする。

 

「帝から直々に拝命されたということは、最難関と言われる殿試に及第した殿学士様ということかな」

 

「よくわからんが、それはすごいことなのか?」

 

「うん、何年かに1人受かるかどうかの最高試問なの。ものすごい難問を解いたってことだから純粋にすごいかな」

 

 この嬢ちゃん、それなりにヤマトのこと知ってるな。とウコンは酒を煽りながら感じる。

 

「にょほほほほ、もっと褒めてくれてもいいでおじゃるよ」

 

「すごいのはわかったが、そんなすごいのがなんでまたこんな辺鄙なところにいるんだ?」

 

「にょほほ、人手が足りないからと友人であるウコン殿に頼まれたのでおじゃる。マロが居れば百人力でおじゃるからな」

 

 その言葉にうさん臭いものを見るようなジト目を向けるあんちゃん。

 

 俺は、苦笑いをしながらフォローをしてやる。

 

「まぁ、見てくれはこんなんだが、強力な術氏であるのは間違えねえからなぁ」術師では

 

「信頼されているんだ、さすがは殿学士ってとこかな」

 

「にょほほ、学士の名は伊達ではないでおじゃる。にょほほ、にょほほ、……ほ……ほはぁ……」

 

 その言葉にマロロは鼻高々といった感じで胸をそらし高笑いしていた。

 

 が、しばらくするとガックリと肩を落とし、深いため息を吐く。

 

 俺は少し心当たりがあるから、どうやって切り上げようか悩んでいた。

 

「何が学士でおじゃるか…………マロなんて……マロなんて……」

 

「やれやれまたそれかい。まぁ、その辺はいろいろあるのさ、あまり追求しないでやってくんな」

 

 マロの家庭事情を知る俺からすれば、何とも言い難い。

 

 本来、親の借金の肩代わりなどする必要はないのだが、マロは優しすぎるんだ……。

 

 兄貴が今裏でいろいろ手をまわしてくれているが、危うい場面が多い。

 

 この間も、マロが殿学士になってすぐにデコポンポが借金を方に配下に加わるように画策していたようだ。

 

 マロも下級とはいえ貴族。上級貴族であるデコポンポからの圧力はそう回避できるものではない。

 

 唯一、兄貴がそのあとの褒章でマロを召し抱える許可をもらったからよかったが……。

 

「ウコン? どうしたんだ、そんな難しい顔して」

 

「うん? そんな顔してたかい? ……いやぁ、ちょいばかし考え事をな」

 

「仕事のことか?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

 あんちゃんには悪いが、まだ正体を明かすわけにはいかぬから適当に濁させてもらう。

 

「それにしても、帝都からこんな辺境の奥地へ。しかも殿学士同伴なんて、どんなお役目……あ、なんでもないから。今のは聞かなかったことにして」

 

 聡いな、この姉ちゃんは。

 

 俺はそう思いながらも、「いやまぁ、秘密にしなければならないって程でもねぇんだが」と笑って済ませる。

 

 それより俺は気になることがあった。

 

「それよりおめぇさん達。ここらじゃ見かけね衣装だが、もしかして海を渡ってきたんかい?」

 

「ご名答。ちょっと、隣のほうから物見遊山の旅ってところかな」

 

「ほほぉ、行商人には見えねえと思ったが、物見遊山の旅たぁうらやましいねぇ。……うん? 海を越えた、隣の国。って、確か兄貴が行った国があった気が」

 

「ウコンは海を越えた先の国を知っているのか?」

 

「いや、俺の兄貴分の人が海を越えたことがあるんだよ。ちと、国名は忘れたが随分と楽しかったらしい。ヤマトは平地が多いがその国は山ばかりらしくてな。生き物、食、文化、いろいろ違って楽しかったと言っていてな」

 

「へぇ、ウコンみたいな人の兄貴分ね」

 

 そういってあんちゃんは酒を煽る。それに合わせて俺も酒を一口、口に運んだ。

 

「しかし、いくらこのヤマトが安泰たぁいえ、いいとの嬢ちゃんが供と二人旅とは。随分と無茶というか大胆というか、思い切った真似をするもんだ」

 

「……あはは。お嬢様とか、別にそんなのじゃないから」

 

 嬢ちゃんがこちらを値踏みするように見てくるので意趣返しに少し仕掛けてみたら思ったより、鋭い返しがきた。

 

「んお? もしかして隠していたのか? すまねぇな、悪気はなかったんだが」

 

「どうして……そう思ったのかな?」

 

 あえて、根拠を聞いてくるか……。

 

 まあ、ごまかすほどのことでもねぇだろう。

 

「どうしても何も。一見、粗野っぽい言葉遣いと振る舞いをしているように見えるが……しぐさに気品っていうのか、育ちの良さが隠しきれてねぇっていうのかね。いいところのお嬢さん、下手すりゃどこかの豪族の姫君って感じがしてなぁ」

 

「姫君とか、口がうまいんだね。もしかして口説かれているのかな?」

 

「いんや、感じたことを言ったまでさ」

 

「……」

 

「…………」

 

「誉め言葉として受け取っておくね。つまり、あなたがただの荒くれ者のまとめ役に見えないのと同じということかな?」

 

「…………」

 

 嬢ちゃん、それは意地が悪いぜ……。

 

「……」

 

「…………」

 

 しばらく真剣ににらみ合う二人。

 

「ぬハハハハハ──―」

 

 やがて沈黙を破ったのはウコンだった。

 

「──―あはははは」

 

 

 

 Sideハク

 

 なんだこの妙な空気。

 

 二人が探り合いをし始めたのを感じ、黙って影をひそめる自分は、この空気が微妙に嫌だった。

 

「なぁ──ー」

 

 クオンとウコンの空気に耐え切れなくなり、会話に割り込もうとしたその時。

 

 

 

『てぇへんだ、女将さん!』

 

 

 

 食堂の扉が激しい勢いで開かれ、慌てたように男が飛び込んできた。

 

 突然の出来事に、今までの喧騒が嘘のような静寂が広がる。

 

「難題そんなに慌てて。外からのお客さんもいるんだよ」

 

「ンなことより、女将さん──―」

 

 男は給仕の手伝いをしていた女将に駆け寄ると、何かを訴え始める。

 

 最初は苦笑いしていた女将さんが話を聞くうちに明らかにうろたえ始めた。

 

 

 

 なんだ、妙に慌てた感じだな。もしかして厄介ごとでも起きたのか? 

 

 

 

 気づけば、にらみ合っていた二人もただならぬ状況に今は静寂を守っていた。

 

 

 

「どうすりゃいいんだい。今は薬師様が……」

 

「おい女将、どうしたんでえ? 俺でよければ事情を話してみな」

 

 さすがイケメンというべきか、当たり前のように困っている人に声をかけるウコン。

 

 きっとリア充なのだろうなと少しひがんでみたりする。

 

 

 

 




なかなか進まなくてすみません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。