うたわれるもの~大いなる父にうたわれしもの~ 作:othello
Sideウコン
朝早くに旗小屋の一回に降りると、大きなあくびが聞こえた。
『ふぁ……あぁぁ……ねむい……』
『ふふん、大きな欠伸』
聞き覚えのある声に顔を出してみればあんちゃんと嬢ちゃんが飯を食べていた。
『ハク、何日も歩くことになるんだから、しっかり食べておかないとばてちゃうかな』
へぇ、あんちゃんたちもう帝都に向かうのか。
それなら相談するなら急がねえとな。
「よう、お二人さん。随分と早いじゃねえか」
すると二人ともこちらを向き、挨拶を返してくる。
「おはよう、そちらこそこんな朝早くにどうかしたの?」
「ああ、大したことじゃねえんだがよ。ここの村長にギギリの駆除を頼まれちまってな」
元々話は聞いていたが、昨日の件を受けて早急に動いた方がいいと感じていたウコンは昨晩のうちに村長と詳しい話を詰めておいた。
「このまま放置していたら、またヒトが襲われかねないからな。何とかしてほしいとさ。報酬も払うっていうし、ここの連中にも世話になってるからな。こっちの都合がつくまでの間ならってことで引き受けたわけだ。そろそろほかの野郎どもも起きてくるはずだぜ」
そういうと、あんちゃんの表情が曇る。
「なぁ、ちょっといいか?」
「んお?」
「駆除って言ったが、本当にあんなのを相手にするつもりなのか?」
「ああ、何が言いてえのかよくわからねえが、そのつもりだぜ?」
ギギリは危険だが、毒も致死性のものではない。
それに今回は兄貴の助言通り、マロロを効率的に使うつもりだから比較的、安全に駆除できるはずだ。
「いや、いくら何でも危険すぎないか? あんなのを相手にしていたら、命がいくつあっても足りないと思うがな」
「いやいや、んなことはねえさ。それりゃあ毒も持ってるし、数も多いらしいから、多少の危険があるのは違いねえ。とはいえ、一匹一匹は大したことのねえし、うちの連中は腕の覚えのあるやつらばかりだ。この程度、物の数ではねえだろうってな」
「お……おいおい、あれが物の数ではないだと? しかもあんなのが群れで襲ってくるってのにか?」
「えっと、……あのねハク。言いにくいんだけど、大の大人なら群れに襲われたりしなければギギリくらい駆除できるんだ」
嬢ちゃんの言葉にあんちゃんはとても驚いた表情をする。
その表情に俺は嬢ちゃんと顔を合わせて苦笑いをする。
そしてそのまま二人の方を向く。ここからは提案だ。
「とはいえ、あの毒が厄介なことにかわりねえし、急な頼まれごとだ。その対策も万全じゃねえ」
俺は食卓に肘をつき、ぐっと身を乗り出す。
「んなわけでだ。薬師のネェさんの腕を見込んで頼む。その力、貸してくんねえか?」
「…………」
「報酬はほかの奴の3倍出す。どうでえ、悪い話じゃねえだろ?」
その言葉に嬢ちゃんは何かを考えるようにアマム巻きをもぐもぐと咀嚼し、こくりと飲み込んだ。
「そういうことなら、私たちも協力させてもらおうかな」
お、嬢ちゃん意外と肝が据わってんな。この間も聞いたが随分と二人旅なんてことしてるんだから随分と腕が立つんだろう。……こりゃあ、いいとこ嬢ちゃんと思わずネェちゃんと呼ぶか……。
そう俺が考えていると隣であんちゃんが気づき叫ぶ。
「…………って、ちょっと待て。今、私『たち』って言わなかった!?」
「それがどうかした?」
「『どうかした?』じゃない! こっちを殺す気か!? あんなのを相手にしていたら、命がいくつあっても足りんだろうが!」
「大丈夫だよ。いくらハクでも、あれ位なら相手にできるから」
「いやいやいやいや、無理無理無理無理だから」
「そういうわけで、一緒にハクもつれていくこと。それがこちらの条件かな」
「話を聞け!」
へぇ、このあんちゃんをね。……面白そうなあんちゃんとは思っていたが、せっかくだからな。
「そりゃあ、構わねえがいいのか? なにか納得してねえみてえだがよ。同行するからには、身の安全の保障なんてしねえぜ?」
「うん、かまわないかな」
「構えよ、死ぬだろうが、なんでそんなににこやかなんだよ!?」
「ハクは記憶を失っているせいか、世の理について何も知らないと言ってもいいと思うんだ。それに、たぶんだけどハクは荒事を経験したこともないんじゃないかな。このままだとね、ちょっとマズイんだ。遠くない先、本当に命を落とすことになりかねないくらいに。だから早いうちにこう言った荒事を経験してもらおうと思ったんだ」
へえ、あんちゃん。記憶がないのか。
となると、二人の関係が気になるが……。それは野暮ってもんが。
「もちろん、ハクがどうしても行きたくないというのなら無理強いはしないよ」
「うぐ……」
「どうする?」
「……判った、一緒に行かせてもらう」
「うん。それでは、そういうことで」
あんちゃんは少し渋ったがねぇちゃんの思いが伝わったのか承諾した。
面白いコンビだな……。
少し楽しそうなねぇちゃんとため息をつくあんちゃんに俺は思わず笑みがこぼれた。
sideクレス
「クレス様、この先で例の者たちを見つけました」
「・・・今は護衛中だ。始末しろ」
「はっ。ただ、虫使いのようでして、いくつかの降りも確認しており、例の8中将の紋章が・・・」
「構わない。蟲の始末を優先しろ」
「了解しました」
「まて、蟲を少し調べろ。最悪私が出る」
「かしこまりました。それでは」
「・・・」
「クレス様、先ほどの方は?」
「部下が少し好戦的な野生の動物を見つけたようで。詳しいことを調べに行ってもらいました」
「そうですか。・・・何か温かいものを用意しておきますね」
「ありがとうございます。あの者も喜ぶでしょう」