50m走
(飯田って奴、速いなぁ。脚から見て『エンジン』ってとこかな。蛙吹さんは見た目からして『蛙』かな。青山は…何だあれ?へそからレーザーが出てるな…芦戸さんは『酸』だな。
自身の番が来るまでの間、勝矢はクラスメイト達の個性を予測していた。相手の個性の特徴を自身が過去に出たことのある個性の特徴と結びつけての予測のため、その的中率はかなりのものである。
やがて自分の番がやってきて、勝矢はスタートラインに立つ。スタートと同時に隣にいた爆豪の起こした爆風に煽られふらついたがすぐに体勢を立て直しバネの弾力及び張力を活かして跳ねるように駆けていった結果、5秒ジャストの記録を出した。
(爆風なければもう少し早く行けたかもな…)
握力
これに関しては普通に行ったが、元々様々な個性が出ても対応出来るように鍛えていたため、82kgの記録を出した。ふと勝矢がみると、ポニーテールの少女が万力を創り出して桁違いの記録を出していた。
(アレはアリなのか…というより、あの個性は…)
勝矢はその少女に近づき、話しかけた。
「えーと、八百万さんだっけ?その個性『創造』?中々に便利だよねそれ」
「ええ、そうですが…その言い方だと、以前に出たことがあるので?」
「まぁね。数えるくらいしか出たことないからあまり複雑なもの創れないけどね」
「そうですわね、私も正確なものを創るのにはだいぶ苦労しましたわ…」
同じ個性が出たという親近感からか、楽しそうに話し合ってる二人をやたら背の小さな男子、峰田が恨めしそうな目で見ていたのは勝矢は知る由もなかった。
立ち幅跳び
「(このまま跳んでもいいけど、一応確認に…)相澤先生。これ、個性の範囲内で地面に足つかなければ何してもいいという認識でよろしいですか?」
「あぁ、その認識でいい」
「わかりました」
その後勝矢は足のバネの強さを上げたうえで縮ませ、それを一気に開放して高く跳び上がる。この時点で砂場をかなり飛び越しているが、あと数mで地に足がつくという瞬間
(今だ!)
勝矢はガチャマシンを呼び出し、それを足場にして再び跳躍した。
『ええぇ⁉︎』
「ガチャ回したあとでも出せんのか⁉︎」
「あれアリなんですか⁉︎」
「個性で出したものだ。問題はない」
クラスメイトと相澤のやり取りを他所に勝矢は再び着地寸前にガチャマシンを出し、足場にするを繰り返す。やがてグラウンドの端に着き、Uターンして戻ってきたところで相澤に呼び止められる。
「真和須。それいつまで出来る?」
「えっと!召喚っ!自体にっ!体力はっ!あまり使いませんから!午前中っ!いっぱいはっ!続けられっ!ますっ!」
「ならいい、これ以上は時間の無駄だ。真和須、記録∞な」
勝矢はガチャマシンの上で飛び跳ねながら答えると相澤は気怠そうに呟き、タブレットに∞と出した。それを見たクラスメイト達はどよめいた。
「マジか、無限なんてあるんだ…!」
「これなら反復横跳びも好成績だせんじゃね?」
瀬呂の言葉とは裏腹に、その反復横跳びではバネの強さをうまく調整できず無駄に飛び越してしまい、あまり良い成績は出せなかった。上体起こしも個性が発揮できないため普通の記録になった。
しかし、長座体前屈では腕を思いっきり伸ばし、14mという記録を生み出した。
「真和須だっけか?14mってスゲェな!俺、切島鋭次郎。よろしくな!」
「あぁ。真和須勝矢だ。よろしく」
「でも、アレもう少し伸ばせそうな気がしたんだが、なんで出来なかったんだ?」
「アレ以上伸ばすと腕がつるんだ。次がハンドボール投げだから、影響すると不味いし」
「そっか、そういう事か」
ハンドボール投げでは麗日という女子がボールを投げるとボールはフワフワと浮かぶように飛んでいき、いつまで経っても落ちてこず本日二度目の無限が出た。
(うーん、あれは『無重力』か。アレ意外と強い個性なんだよな)
そんなことを考えていると勝矢の番がやってきた。勝矢は左腕にボールを当ててそのまま右手でパチンコのように引っ張った。
(角度は…これくらいか?弦が真っ直ぐじゃないから軌道は不安定だが、コースアウトはしないだろう。…良し!強度最大‼︎)
「いっけぇぇ‼︎」
バネの強度を最大にし、手を離すとボールは勢いよく射出され、遠くに飛んで行った。記録は358.2mであった。
その後、今までパッとした記録を出していなかった緑谷が何かを相澤から言われた後、二投目で700m越えの記録を出し、指を腫らしてまだ動けると答えた様子を見て勝矢は考えていた。
(全力を出すと体を壊すほどのパワーか…まだ制御が上手くいってないのか。あとでアドバイスしておくか)
最後の持久走では跳ねすぎてコースアウトしないように気をつけながら進めていき、上位の記録を出した。流石に八百万が創造したバイクやエンジンの個性を持つ飯田には敵わなかったが。
結果発表する際に、最下位除籍はこちらの能力を引き出す為の合理的虚偽と相澤から言い渡され騒然となるが、勝矢は構わず順位表をみると5位であった。
「うん、まあまあかな」
────
個性把握テストが終わり、教室に戻ると勝矢の周りに何人か集まってきた。
「スッゲーな真和須!あの無限ジャンプ!」
「あれ以外にも個性があるんだろ?」
「他にはどんなのがあるの?」
「あ〜その前にちょっといいか?何人かの個性当てるから。飯田がエンジン、蛙吹さんが蛙、芦戸さんが酸で麗日さんが無重力、切島は硬化で合ってるか?」
名指しされた者たちは目を見開き、口々に当たっていると答えた。すると代表して飯田が勝矢に話しかけた。
「もしかして、ぼ…俺達の個性がそのガチャとやらで出た事があるのかい?」
「正解。お互いに気付かなかった個性の応用があるかもしれないから、あとで情報交換したいが構わないか?」
是非頼む、私も!と承諾するなか、蛙吹は勝矢にぽつりとある質問をした。
「…けろっ。真和須ちゃん、一体いくつそのガチャに個性が入ってるの?」
「あーそれ気になるな!5〜60くらいか?」
蛙吹と切島の質問に皆がうんうん、とうなずくと勝矢はこう答えた。
「個性の数か?えっと……
少なくとも400以上だな」
『400以上⁉︎』
予想外の数に一同が驚愕するなか、緑谷が彼に尋ねた。
「え、えっと…何でそれがわかったの?」
「閏年の年に、一年回して被ったのが10回くらいしかなかった事があるのと、未だに出た事ない個性が出てくる事があるから。多分だが、恐ろしく排出率の低い個性があるかガチャを回す事でガチャという個性自体が成長して中身が増えてるかのどちらか、または両方だと思う。まぁ、ほとんど似た個性だったりあればちょっと便利程度の個性があるけどな。なんせ出来るのが一日一回だから全体数がわからないんだ。ちなみに無個性もある」
「は、はぁ…」
「でもそれだけあると個性の訓練が大変ね」
「そうだよな、下手したら次その個性が来るのが来年とかかもしれないからな…」
「そういう事」
勝矢の個性のメリットデメリットを聞きながら、緑谷はある事が気になった。
(あれ?じゃあ『あの数字』は何なんだろ?出てきた種類じゃないんだ…)
────
帰宅後、勝矢は自室のベッドに寝転がりながら今日のことを振り返る。
(やっぱあの感じ、相澤先生マジで除籍する気な気がするんだよなぁ…てか、俺かも思ったけど。ガチャで決まるなんて非合理的だし。ま、何か理由があるんだろう。それにしても…ガチャの話で思ったが…)
勝矢はガチャマシンを召喚する。その中にある大量のカプセルの中にひとつだけある『禍々しい程に黒いカプセル』を見ていた。
(これ、3歳の時から見たけど
ハッキリ言って彼の個性は劣化AFO的なものですかね。与えも奪えもしませんが。ちなみに彼の総個性数は実質天井知らずです。
また、彼の中学時代のあだ名は『歩く個性図書館』です。
ではまた次回に。
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