スカージが統治した時代が戦争と共に終わり、セイバートロン星は混乱にあった。サイバトロンとデストロンは手を取り合い、建設的な歴史を刻もうと歩み始めていた……

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失われた叡智

 セイバートロン星にはプラズマエネルギーが満ち溢れ、永遠の繁栄が約束されてから久しい。自然と、この惑星から引き金が引かれる音が聞こえなくなったのだ。戦争を想起させるハイブシティはその忌まれた過去と共に葬られ、これからクリスタルシティが再建されるのだという。

 

「エー今日はアセニアで人間たちとのセレモニー、次にザモジン星の平和条約締結、そしたらジャールで慰問……まったく一息つきたいもんだわい」

 

 我々の労力は、主に外交へと移行していた。かつて敵を憎み敵を破壊していたこの手は、握手を交わすのに忙しくなっていた。

 

「サイクロナス、お前さんにもセレモニーに参加してもらうんだぞ。ま、せいぜい礼儀とユーモアを身に着けるこった」

 

「チッ、何度も言わせるんじゃねえ。だいいち、人間のような連中と関わったって一利もない」

 

 サイクロナスはワシを一瞥すると、鹿爪らしい表情をして腕を組んだ。

 

「お前さんには何の得もなかろうな。だがねえ、『我々のリーダー』には遥かに遠大な考えがおありだったようじゃよ。それを遵守するべきじゃないかね?」

 

「……分かったからその口を閉じていろ! 減らず口を叩きやがって、ここが戦場だったら──」

 

 かつての武人は、ハッとなって口をつぐんだ。恐らく、己の血の気の濃さを恥じているのだと推察できる。

 

「ここが戦場だったら? どうするつもりかね」

 

「俺はこんな未来は望んでいなかった……! 戦いが、戦争こそが俺の生きる場所だった」

 

 元デストロンの航空参謀は死ねない今を憂い、基地の壁面に拳を打ち付けた。彼のような武人にこそ、生きる理由が必要だったのだ。

 

「殺し合いをする場所が生きがいだって? ワシも昔はベッドの上で死ぬつもりはなかったよ」

 

「黙れチャー! 貴様の老いにむせた言葉など聞くセンサーなど俺には付いていない!」

 

 サイクロナスの激昂には、どこか疲弊があったように思えた。だが、ワシが関与すべきものではない。

 

「スカージの奴も急にどっかにいなくなっちまって、ユニクロンのせいで俺はまた狂わされた! あの戦争で多大な犠牲を払ったという傷を共有した『仲間たち』と一緒にのうのうと生きろだア? クソッ」

 

 あの日、マトリクスに択ばれたデストロン軍団のスカージは、トランスフォーマーたちに平和をもたらした。彼の振る舞いや口調からは、どこかコンボイ司令官を感じたが、それよりも粗暴だったアイツの変貌に驚いたものだ。

 

 しかし、マトリクスを持ちながらもユニクロンが再び襲来した時に彼は姿を消した。我々は死力を尽くして戦わざるを得なかった。彼の言う傷とは、その事でしかない。

 

「何より、お前さんの好敵手は先の戦いで──」

 

「黙れと言ったろう!」

 

 ウルトラマグナスは襲撃されたアイアコンで指揮を執っていたが、ユニクロンの眷属共の魔手に掛かって命を落とした。

 

「ハッハッハッ、スマンスマン……まぁそう怒るでない、そろそろ時間になるからテイルゲイトたちを呼んできなさい」

 

「次にその皮肉を俺に浴びせたら、お前の頭を胴体から切り離してやる」

 

 荒々しい排気音をワシに聞かせて、サイクロナスは司令室を後にした。

 

「デストロンはどいつもこいつも血の気が多くてたまらんわい……ふう」

 

 皮肉にも我々が和解してから、一体何ステラサイクルが経過したろうか。

 

 これから我々トランスフォーマーは、悠久の戦争について深く悔いる時間が与えられる。同時に、失われた穴を別のなにかで埋めなくてはならなくなった。

 

「そうじゃろう、ロディマス……」

 

  ワシらは、何をしてきたのだろうか。そして、これから何をすべきなのだろうか……




スカージがアクシオム・ネクサスへと導かれた後の世界について妄想しました。
参考
『コンボイ』というチームに加わったスカージ:http://nekobaba532.blog7.fc2.com/blog-entry-593.html

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