リビングに鎮座する大きな笹。
やれやれ…… と思いながらムンビは飾りを作る作業を始める。

ミーゴちゃんは良いぞ
ムンビお姉さんもいいぞ

Pixivの方にも投稿しております

1 / 1
気付いたら書いてた。
七夕、皆さんはどんな願いを短冊へ書きましたか?


短冊への願い事

「七夕ねぇ……」

織姫と彦星の出会う伝承をもとにしたお祭り、それが私。ムンビとしての認識だ。

笹に様々な飾りがつけられ、人々の願いを乗せた短冊がぶら下がるさまは綺麗だと思うし、

元になった伝承もロマンチックで素敵だとは思う。思うが……

 

「だからって、わざわざ買ってくるまでもないと思うのよねぇ……」

 

私の眼前。ごく普通の一般家庭と言っても過言ではないこの家のリビングに。

多少の包みだけが残った大きな笹が鎮座していて。

その包みの上には下手人であろうグールちゃんの書置きが残されていた。

 

ひょい。と取り上げ、口に出して読み上げる

 

「何々……?

『お友達からもらいました。七夕ですし、飾りつけして、皆で願い事でも書きませんか? Byぐーる』

いやいやいや……これ貰ったの?」

 

貰った……とするには大きめのサイズ。

おそらく買ったはいいもののうまく言い出せずにもらったとしたのだろう。

まぁいい。個々人の財布の使い道については特に何か言うつもりもない。

 

「まぁ……少しだけなら作ってあげてもいいかしらね。」

 

丁度、やることもなくなったタイミングだ。

暇を紛らわすには丁度良いものだろう。

 

思い立ったがなんとやら、部屋から折り紙とハサミ、タコ糸、鉛筆等々。

とりあえず必要そうなものを一通り持って来る。

 

「さて、この辺りでいいかしらね。」

 

並べて、笹を広げる。

やはり大きい。ならば、多少多めに飾りを作っておいてもよいだろう。

そう思い、検索結果に並ぶ飾りを眺めながら、作業を開始する。

 

 

作業が終わった。修羅場を乗り越えたのだ

 

「今のっ!ミーゴはっ!最強なのだね!あーっはっはっはっはっは!!!!」

 

がらにもない高笑いをしてしまう。

しかし修羅場を乗り越え、今は気分爽快。なんでもできそうな気分であった。気分だけは。

体は疲れを訴えているが、それを無視してリビングへと降りる。

昼過ぎで、長らくの間なにも口に入れてないのだ。

少しくらい何かをつまんでから休息へと入ろうと思う。

 

そう思って入ったリビング。そこには摩訶不思議な光景が広がっていた。

まず目に飛び込んできたのは、大きな、それは大きな笹。

そういえば今日は七夕だったか……と考える間もなく

次に飛び込んで来たのは、せっせと飾りを作っているムンビ。

その飾りはムンビの正面に山盛りになっており、一目見ただけではムンビと判断することも難しくなっていた。

 

「なっ……何やってるのだ?」

「何って、七夕の飾り作りよ、飾り作り。」

 

ムンビはこちらに顔を向けることなく折り紙に細工をしている。

作り終わったらしきそれを山の一部にして次の折り紙に手を伸ばす。

その動きは流れるようで、今日だけで何度も繰り返したのが伝わって来る。

 

「ムンビ‼こっち見るのだ‼」

 

大きな声をだし、ムンビに現実(飾りの山)を直視させる。

余りの衝撃にSANチェックでも入ればいいのだ。そんなことを思いながら反応をまつ

 

「あら?随分と作ったのね?」

 

呆れて物も言えないとはこのことか。

思わず額に手を当て天を仰ぐ。

 

「まったく、そこまでぼけぼけだと、これからが不安なのだねー」

「ぼけぼけって何よぼけぼけって。」

「なーんでもないのだよ。」

 

諦めて、コーヒーを淹れに行く。

 

「そういえば今日は七夕だったのだね」

「ねぇ……私はこう言うのに疎いから、全然覚えてなかったわ」

 

インスタントの物にミルクを混ぜる。このタイプは手軽に作れてよい。

 

「覚えてなかった……って、その笹ムンビが用意したんじゃないのだ?」

「私はこんなもの買いに来ないわよ。グールちゃんが用意したの。」

 

珈琲を持ってムンビの対面に座る。

雑に横へと飾りをずらし、空いたスペースに珈琲を置く。

 

「グールちゃんがねぇ……」

 

ずずず……と珈琲を飲む。

グールは半分人と言うだけあって、こういう”人間らしい”行事を特に好む。

まぁ、あそこまで大きな笹を買って来る位だ。楽しみにしていたのだろう。

 

「そうだ! 願い事を書くんでしょう? じゃあ、書いてみない?」

「願い事ねぇ…… ま、やってやらないこともないのだー」

 

ムンビが、ペンと綺麗に切り揃えられた短冊を差し出す。

5色の内から少々悩んで、青の短冊を取る。

ムンビも、青の短冊を取るようだ。

 

「そういえば、あんた、短冊の色に意味があるって知ってた?」

「あー、何か聞いたことあるのだねー。黒か紫で知識の向上云々みたいな話。」

「ふーん……」

 

嘘だ。5色それぞれの色と願いについては知っているし、覚えている。

ここに込める願いに合わせて、この色を選んだ。

 

「そういえば、ムンビは何を書くのだ?」

「書き上げてから見せ合えばいいじゃない。」

「それもそうなのだねー」

 

そんな風に、話をしながら互いに書き進める。

殆ど同時に書きあげ、短冊を持つ。

ムンビが真剣な面持ちで宣言する。

 

「いい?いっせーのせで見せるわよ。隠すのは無しね」

「わかってるのだ。」

「いくわよ?」

「くどいのだ」

「いっせーのせ!」

 

そうやって互いに短冊を見せ合う。

そこには────



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。