7月7日と言うこの瞬間を、今はただひたすらに祝おう。
イメージテーマソング LOVE SCENARIO
では、どうぞ!
「……」
一人の少女が、嬉しそうに笑みを浮かべながらシャワーを浴びていた。
「明日から……また
余程嬉しいのか、そう言い無意識に小さく笑う。
『さようなら、箒。』
一夏に笑顔でそう告げられ、これからもう一緒に居られなくなることを自覚させられ、少女は泣きそうになっていた。
でも、一夏は泣かずにずっと笑顔で見送ってくれた。だからこそ、少女自身も最後は笑顔で別れを告げようと考える。
『さよなら、一夏───』
そして、明日のおはようが無い別れの言葉を告げると同時に、少女は涙を堪えて今まで以上の満面な笑顔を見せ、それを最後に少女達は離れ離れとなった。
もう会えることが無いとずっと思ってた。もう諦めていたのに募り続けた想いが、あの報道を目にした瞬間に爆発しそうになった。
少女の中で、再び恋心の灯火が点いた事が分かり、少し呼吸が荒くなってしまう。
大袈裟なのかもしれないが、きっとそれだけ少女は一夏に恋い焦がれていたのだろう。
「そう考えただけでも、楽しみで仕方無い。 あぁ、早く明日にならないだろうか?」
そう言い少女は、壁に付いてる時計を見る。現在の時刻は午後の7時13分だった。
「まだ時間があるな……今日は早めに寝ようか。」
そう言い少女はシャワールームから出て、寝巻きに着替えた後寝室に戻った。
「ふふっ……一夏に会って、今度こそ───」
少女こと篠ノ之箒はそう言い、ベッドに転がり何時もより早めに明日を待ち望みながら眠る。
その日、私は小学生だった頃の夢を見ていた。
「なぁ、篠ノ之。」
「……なんだ?」
とある少年に話し掛けられて、私は少し刺々しい態度でそう返してしまう。
その少年の名前は織斑一夏。活発的で唯一クラスでまともに話し掛けてくる男子である。
私はこの通り喋り方が変だの竹刀持ってること等が災いしてクラスから孤立してしまい、一人で過ごす事が多く、男子からは男女と言う蔑称で呼ばれていた。
「これ、まだ受け取って無かったろ?」
そう言い、織斑が出したのは一枚のプリントであった。
そこにはちょっとしたアンケートの様な記述されており、これは本来昨日からクラス全員に渡される筈であったが、私にだけ渡っていなかった。
いや、配っていたのが男子だったから意図的にそうしなかったの間違いか。
「……それくらい、自分で持ってこれる。」
私はつい意地になってそう返してしまう。
折角持ってきて貰ったと言うのに、私は何てことを……
「嘘つけ。お前これの場所何処か分からなかったろ?」
「そ、そんなこと無い!そのプリントの場所など昨日の内に把握済みだ。」
織斑は私が昨日の内にプリントの場所が分からずにいた事を突いてきた。
見事に当たっていたが、ここでも私はまた意地になって嘘を吐いてしまったのだ。
「ふーん。じゃあ昨日必死に探してたのは何でだ?」
「なっ!?ま、まさか……見てた…………のか?」
私は昨日、確かにプリントが無いとずっと探していたが、まさか見られていたのだろうか?私は織斑にそう聞くと、織斑はゆっくりと縦に頷いて真剣な眼差しで此方を見つめる。
「……見てたのだな。」
「あぁ。」
「……ふんっ!じゃあなんだ?お前はそれを笑いにでも来たと言うのか?」
「な訳あるか。何で態々探してるところを笑い飛ばす必要があるんだ。」
織斑は私のひょっとしたらと言う可能性をバッサリ否定し、おかしな者を見る目で此方を見ていた。
「兎も角、プリントは渡したからな?」
「あ、あぁ……」
「んじゃまた。」
織斑はそう言い、自分の席に戻った。
「
小さくだが、私はそう呟いてプリントに目を通した。
そしてそのまま一日が終わりを告げるかと思われていたのだが……
「やーい男女~今日は木刀持ってないのかよ~?」
「……竹刀だ。」
私は現在、三人の男子に囲まれて馬鹿にされていた。
「へっへっ!お前みたいな男女には武器がお似合いなんだよなぁ~~?」
「喋り方も変だもんな~~~」
「やーいやーい男女~~!」
「…………」
私は内心で下らないと切り捨て、三人が飽きて帰るまで耐えようとする。
「うっせーなぁ……暇なら帰れよ。それか手伝え」
すると、後ろでたった一人教室の掃除をしていた織斑が三人に対してそう言う。
「なんだよ織斑。お前こいつの味方かよ?」
「こいつこの男女が好きなんじゃねーの?」
そう言われた三人の矛先は織斑に向いてしまう。
「掃除の邪魔なんだよ。手伝う気ねぇならどっか行けよ鬱陶しい」
僅かにだがその言葉には怒気が含まれていた。
「へっ!真面目に掃除なんかしてよ~バッカじゃねーの?」
「ッ!」
「おわっ…」
私は三人の内の一人が真面目にしてることを馬鹿にしたことに苛立ちを覚え、つい胸ぐらを掴んでしまう。
「真面目にする事の何がバカだ?少なくともお前達の様な輩よりは遥かにマシだ!」
「な…なんだよ?何ムキになってんだよ?放せっ!放せよっ!」
私は唐突に胸ぐらを掴まれ戸惑う男子を睨んでそう告げ、胸ぐらを掴んでる手に力が入っていく。
「あぁ~~やっぱりそうなんだ!コイツ等夫婦なんだよ。知ってるんだぜ俺!お前等朝っぱらからイチャイチャしてるんだろ!?」
「だよなーこの間なんかコイツリボンしてたもんな!男女の癖によぉ、笑っちまうよな!」
そうして一人がそう喚く中、残りの二人が織斑と私が朝からイチャイチャしてるなどと不埒な事を抜かした挙げ句、今度はリボンを着けていた事を馬鹿にされ始めた。
「っ……」
気紛れで着けただけなのだが、少しだけムッと表情が険しくなり、一人を睨む形で見てしまう。
「っ……何睨んでんだよ?気に入らねぇ!こんな男女なんかやっつけてやる!!」
「っ!?」
そう言い、一人の男子がその辺に立て掛けていた掃除用具を取り出して私に殴り掛かって来た。
流石に素手で相手出来る訳も無く、恐らく相手しても二人が加勢することは目に見えており、正に多勢に無勢と言った状況であったのだが……
「んぎゃっ!?」
「「「ッ!?」」」
掃除用具を持って殴り掛かってきた男子を、先程まで教室の掃除をしていた筈の織斑が突然殴り飛ばした。
勿論私を含めた全員がその状況に驚き、目を見開く。
そして私は、余りのことに胸ぐらを掴んでいた手を離して唖然としていた。
「笑う?何が面白かったって?あいつがリボンをしてたら可笑しいのかよ?」
「な、なにしやがんだよ……織斑!」
「男女がリボンしてたらおかしいだろ!?」
織斑のその声に先程より明確に怒気が含まれており、拳を握り締めていた。
「何が男女だから可笑しいだよ?すげぇ似合ってただろうが!?」
「「「ッ!?」」」
「……え?」
織斑の唐突の発言に思わず惚けた声を上げた私を置いて男子と織斑の言い合いが勃発してしまう。
「う、うっせーな!大体なんで織斑がムキになってんだよ?関係無いだろ!」
「あぁ、関係ねぇな。でもな……手伝いもしないでずっと留まって女の子に寄って集って集団で陰険なんざしてることが気に入らねぇんだよ。」
「はぁ?い、意味わかんねぇよこのっ!」
「っ!」
織斑と男子がそう言い、遂には殴り合いにまで発展してしまう。
そんな中、私は胸の鼓動が早くなり、顔が赤くなっていたのだった。
「「……」」
そしてその喧嘩が終わり、一人で三人を撃退して私を連れて帰り道を歩いていた。
沈黙が貫く中、私は思考の海に沈んで歩みを止めて立ち止まってしまう。
「何やってんだよ篠ノ之。急がないと稽古遅刻しちゃうだろ?お前んちのとーちゃん厳しいんだからさ」
「……」
「もしかして彼奴等の言葉を気にしてんのか?あんなの気にすんなって。」
私は俯いたまま黙っていて、織斑がそう聞いてくる。
「……織斑は馬鹿だな。」
「は?何がだよ?馬鹿じゃねぇよ馬鹿。」
漸く開いた一言が馬鹿発言と言うのも中々酷いが今の私にはそれくらいしか言葉が出なかった。
「あんなことをすれば後から面倒なことになると考えないのか?ましてやあの時馬鹿にされてたのは私だ。織斑には無関係ことだったじゃないか」
「んん?あぁ、考えねーな。手伝わねーで何時までも留まってるのも気に入らねぇし変な理由で笑い者にしようとするのも気に入らねぇ。でもなぁ……俺が一番気に入らねぇのはそれを複数でやって寄って集って集団で陰険なんざしてることだ。あんなの男として……いや、もう人として屑だ。」
「……織斑。」
織斑はそう言い、俯いたまま拳を握り締めたが、直ぐにポケットに手を入れて視線を私に戻した。
「だからさ、さっきも言ったけどお前も気にすんなよ。前にしてたリボン、似合ってたぞ?またしろよ。」
「…………っ」
私は簡単にそんな事を言ってくる織斑の言葉に恥ずかしくなってきて顔を赤くしてしまう。
「ふ、ふんっ……私は誰の指図も受けない。」
私は織斑の顔を見れずにそっぽを向いて強気になってそう言うが、その声が分かりやすいと自分でも理解させられるほど震えていた。
「ふーん……?まぁ良いや。急ごうぜ篠ノ之」
そう言い、織斑は駆け出そうとする。
しかし、私はどうしてだか篠ノ之と他人行儀で呼ばれる事に何故か胸が苦しくなるようなもどかしさを覚えてしまう。
「……私の名前は箒だ。」
「うん?」
私は小さい声でそう言うが、織斑は聞こえなかったのかそう返されてしまう。
……ダメだ。もっと大きな声でハッキリと伝えなければ!
「私の名前は箒だ!いい加減に覚えろ。大体道場は父も母も姉も篠ノ之なのだから紛らわしいだろう?次から名前で呼べ。良いな?」
私は織斑に、次から名前で呼ぶ様にハッキリとそう言い切った。
「───じゃあ一夏な?織斑は二人いるから俺のことも一夏って呼べよな。」
そう言い、織斑は……
確かに私だけ下の名前で呼べとと言うのも可笑しいしな。
うん、故に正当だ。決して不埒な意味など無い!断じて……
「俺は正しいことをした。先生に怒られたことなんて気にしてねぇから」
そう考えていると、一夏は私の手を強く掴んで連れ去るように私の手を引いていく。
「……ほら早く、行くぞ箒。」
そう言い、そのまま手を繋いだ状態で道場まで向かっていったのだった。
「……う、うぅん……んん?」
目を開けると、そこには何時も見る天井が見え、目が覚めた事が分かった。
「……何だか、懐かしい夢を見ていた気がする。」
私は自分の手を見つめてそうぼやいた。
『……ほら早く、行くぞ箒。』
「っ……」
私はあの言葉を未だに覚えており、思い出す度に会いたいと願望が大きくなっていったのを良く覚えている。
そして今も、それを聞いて胸の奥が熱くなり、鼓動が早くなったのが分かる。
今、私の顔は恐らく赤くなってるのかもしれないな……
それから少しして、私は我に返って時計を見てまだ余裕があったのだが、早く一夏に会いたいと言う欲求が出てきて急いで支度を始めた。
鏡を見てあのリボンを着け、何度も鏡を見直して可笑しな所が無いか細かくチェックし、IS学園の制服に着替えて簡単な朝食を作って食し、玄関の扉を開けて出ようとする。
「あ……行ってきます。」
私はそこで留まって後ろへ振り返り、少しして笑みを浮かべて新たな生活へと一歩踏み出す様に家を出た。
学園に辿り着いた私は、席に着いて一夏が教室に着た。
身長も昔と比べてかなり伸びて何処か逞しくなったなと感じた。
そこまでは良い……そこまでは良いのだが───
「……っ」
急に緊張してきたのとついつい表情が緩んでしまって顔が合わせられない。
い…………いかんいかん。一夏と同じクラスで過ごせると思うと、喜びの余りつい緩んでしまう……高校生になったのだ、大人びて凛としたところを見せないと……。
そう考えていると、緑色の髪の女性が来て挨拶をする。
「皆さん入学おめでとう! 私は副担任の山田真耶です。 この3年間、よろしくお願いしますね!」
そう言い、副担任の山田先生は右手を横に添えて自身の名前が表示されたスクリーンを出す。
「うぅ……」
しかし誰も返事を返さず、少しして段々先生の顔が悲しそうな表情に変わっていく。
「そ、それでは一人ずつ自己紹介をお願いします。」
そう言うと一人ずつ自己紹介し初めたのだった。
だが、私はこの後のことで頭が一杯になり殆ど聞いてなかったことは内緒である。
そして、気付けばSHRが終わりを告げており、私は即座に一夏の元へと向かった。
漸く、漸くこの時が……
「…………ちょっと良いか?」
「……箒?」
そう言い、私を見て一夏は戸惑っていたが、まぁ互いにあれから随分と成長したしそこは仕方無いか。
「話がある。廊下で良いか?」
「え?あ、あぁ。」
そう言い、一夏からの承諾も得て廊下へと出た。
周りの視線が未だに残ってるものの、私はそれを気にせず一夏を見る。
「「……」」
沈黙が広がる中一夏から話題を振った。
「そう言えば、去年の全国大会で優勝したんだってな。おめでとう!」
「……………っ!」
何故か去年の全国大会で優勝した事を知られており、私はそれに反応して困惑する。
「な、なんでそんな事を知ってるんだ!?」
「なんでって、そりゃあ新聞見たし……」
「なんで新聞なんか見てるんだ!?」
私は緊張と長らくまともにしてこなかったコミュニケーションが祟って自分でも訳が分からなくなっていた。
言いたいことが山ほどあるのに、言葉に出せずもどかしさがある。
「あーあと…」
「な、なんだ!?」
私は一つ一つの言葉に強く当たるように返してしまう。
落ち着け私……言いたいことが山ほどあるだろう!?
「久し振り。六年振りだけど、直ぐに箒だって分かったぞ?」
「……え?」
それを聞いた途端、私の胸の鼓動が早くなり覚えててくれたことに歓喜してしまい、ずっと気を引き締めてきた表情が緩んでしまう。
「ほら、髪型一緒だしさ。」
「よ、良くも覚えているものだな……?」
髪型と聞いて私はリボンに手を当て髪を弄りながら照れてしまう。
「いや、忘れないだろ?幼馴染みのことくらい。結構成長したけど……でも、直ぐに箒だって分かったぞ?」
「……っ」
一夏も私を覚えていてくれたと、私は内心で安心しつつ歓喜してまた表情が緩みそうになってしまう。
いかん。嬉しさの余りつい顔がにやけてしまう。これでは一夏にはしたない女だと思われてしまうっ!!気を引き締めねば!
「わ……私も直ぐに一夏だと分かったぞ!?」
そう考えて表情を険しくさせてそうキツめに言ってしまう。
「お、おう……あっ!そろそろ行こうぜ?休み時間も終わっちまうし。」
「わ、分かってる!」
そう言い、まともに一夏の顔が見れずに早歩きで戻ろうとして、途中で足を止めた。
「お、おい?どうしたんだよ?急に止まって……」
「い、一夏……その…………えっと……」
私は振り向かずに手を握り締めて、一番伝えたい言葉を口にしようとする。
「急がないともう時間になるぜ?」
「わ、分かっているそんなこと!」
急かされてそう返してしまうが、普通に言えてない私に非がある。
「い、一夏……!」
「お、おう!」
急いであの言葉を振り絞り、そして─────
「───
恥ずかしさや緊張を全て振り切り、あの時の様な満面な笑みを浮かべた私は、その言葉を伝えた。
「っ!───おはよう、箒。」
一夏も直ぐに察して、笑顔でおはようと返してくれた。
「あぁ!では、教室へ急ぐとしよう!」
「おう!」
そう言い、私達は急いで教室へと向かい駆けていく。
こうして私は、長きに渡る地獄のような生活から五年と十五日振りの"おはよう"を
改めて箒ちゃん!
お誕生日おめでとう!