東方酒客録   作:繊月彩夏

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序章 1、2

東方を知らない方こそ、楽しんで頂きたいと思っています。

 

 

あなたは、一生懸命生きているでしょうか。

そんなことも考える暇もなく、日々をお過ごしでしょうか。

 

きっと、これを読んでくれているあなたは、私よりも圧倒的に日々を生き抜き、研鑽し、自身の人生を力強く歩いています。

 

私は、顔を上げ、前を向くのがあまり得意ではないです。

まあ、得意か不得意かは関係なく明日はやってきますし、理不尽にも、今日もいつかは終わってしまいます。

 

さて、そんなあなたのために、この「東方酒客録」はあります。

 

多忙、苦痛、刺激ーー。

そんなものから一時でも離れられるような、そんなお品書き。

 

夜一人で飲むビールの、つまみ感覚。

休日の午後の、一口の珈琲感覚ーー。

 

そうなるように、話を細かく分けております。

 

そして。

 

鬼も目を回す朝の通勤時間に、ふと道端に咲いている花を見るような。

夜の満員電車から、ふと空の月を眺めるような。

 

そんな、雑多な日常に紛れている、「ちょっぴりの幸せ」を感じてくれたなら。

もしくは、その幸せを、あなたの生活に取り戻すきっかけになることができたなら。

 

私は、この二次創作をつくる意味があったのだと思います。

 

どうぞ、ちょっとだけでも覗いていってください。

 

 

あなたの、あったかもしれない、もうひとつの物語をーー

 

 

 

 

『常識』と『非常識』の狭間で

 

 

あなたは、目を覚ましました。

じめっとした空気に、薄暗く何処までも続く闇が周囲を満たしています。

 

「ここは……?」

 

確か、あなたは先ほどまで、実家の古い蔵で探し物をしていたはず。

それが、急に目眩がして、目が覚めたら謎の場所に……。

 

「あら、起きたのね。」

 

背後から声がしたので、あなたは驚いて振り向きます。

 

「私は、八雲紫。あなたは、村雨祐也ね?」

 

その女性は、リボンがあしらわれた、紫と白を基調とした身なりをしていました。

右手に日傘を持つ彼女は、こう続けます。

 

「まあ、混乱するのも無理はないわ。突然こんな場所に連れてこられたのだものね。」

 

紫と名乗った女性は微笑み、息をつくと、あなたにこう問いかけます。

 

「それで、探し物は見つかったの?」

 

「……っえっと、もしかして、あなたは僕の探しているものを、知っているんですか?」

 

「ふむ、知っているといれば知っているし、知らないといえば……知らないと言えるでしょうね。私が知っていることは、少なくともあの蔵にはない、ということくらいかしら。」

 

そう言って、彼女は身を翻します。

 

「それじゃあ……」

 

「あぁ、そんな悲しそうにしないで頂戴。場所の算段くらいついているわ。」

 

「じゃあ…!」

 

あなたは、とても嬉しくなりました。

なんせ、『それ』は、一年以上探し回っても見つからなかったからです。

 

「私が、その場所へ連れて行ってあげるわ。でも、条件があるの。」

 

「条件……?」

 

「ええ。と言っても、まああなたは、それを勝手にやってくれるでしょうけど。」

 

「……?」

 

どういうことでしょう。あなたは、まるで漫画のワンシーンのように首を傾げます。

 

「……まあ要するに、『条件の内容は気にしなくてもいいけれど、条件があることは常に覚えていて頂戴』ということよ。そういうわけだから、早速向こうに送っちゃうわね。」

 

彼女がそういうと、あなたはまた、目眩を感じ始めます。

 

「その眩暈の感覚を、よく覚えていて頂戴。きっと役に立つ時がくるわ。」

 

あなたは、それを聞いたら最後、ついに意識を失いました。

 

 

 

一人残った彼女は、独り言を溢す。

 

「彼がきっと、ひとときの安らぎとなり得るはず。幻想郷に貢ぐ酒の代わり、ってところかしら。」

 

「まあ、きっと悪いことにはならないわ。なんせーー」

 

叢雨蔓菜の末裔、だものねーー。

 

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