東方酒客録   作:繊月彩夏

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博麗霊夢 2、3

紅白の大和撫子

 

 

日は西に傾き、薫風が肌に柔く夜の始まり。

あなたは霊夢さんと一緒に晩ご飯の支度をしていました。

 

あなたはとりあえず、ここの神社の巫女、霊夢さんに保護されました。

何も知らないあなたは、とりあえず悪い人ではなさそうな霊夢さんのことを信用せざる得ない状況。言われるがまま、衣食住を保証されたのでした。

 

「あなた、外の世界から来たから、竈門とか使い方わからないでしょ。」

 

旧文明だな、とあなたは思います。

 

「魚は、一応捌けますが……」

 

「上出来ね。じゃあ、この川魚を捌いてぶつ切り、そんでこっちの野菜も適当に切って、この鍋に全部入れて頂戴。私は竈門の火を見ているわ。」

 

「了解です。」

 

あなたは、早速包丁を手にして作業に取り掛かります。

一人暮らしをしていたあなたは、包丁の扱いなどお手の物。黙々と作業をこなします。

 

あなたは、静寂がもどかしくなり、霊夢さんに話しかけます。

 

「今日は鍋、です?」

 

「ええ、そうね。この季節になると、冷たいものが恋しくなるけれど、そんな冷たいものばっかり食べていたら夏バテしちゃうもの。この時期は意識して、あえてこういうものを食べているのよ。」

 

「なるほど……味付けは味噌ですか、美味しそうです。」

 

「日本食の基本にして秘伝の調味料よね。」

 

そう言って、霊夢さんは笑顔になります。

巫女服の上からきたエプロン、揺れるポニーテール、可憐な横顔ーー。

 

あなたはなぜか恥ずかしくなり、ですです、と頷き、すぐさま作業に戻ります。

心なしか、少し頬が熱いようです。

 

「…?、どうしたの?急に黙り込んじゃって。」

 

「あぁ、いえ、えぇと、その巫女服、珍しいなって思いまして……。」

 

「あぁ、これ?私の職業柄、普通の巫女服じゃあ動きづらいのよね。」

 

「えっ、なにか体を動かすような仕事をしているんですか?」

 

逃げるための質問でしたが、その返答の内容に、あなたは普通に驚いてしまいます。

 

「端的に言えば、ここらへん一帯の秩序と平穏を守るため、って言ったところかしら。まあ、説明は追々するわね。」

 

「はぁ、なるほど……?」

 

自警団出来ななにかだろう、きっと。そうあなたは結論づけました。

 

そうして、あなたは手を動かすのに集中力を戻しますーー。

 

 

 

晩も回り、夜の闇に包まれた幻想郷。

人里離れた、幻想郷を一望できる東端の高台に一つ。初々しい団欒の灯火が灯っていましたーー。

 

 

 

 

 

鍋と少女と幻想郷

 

 

「さてっと……。準備万端ね。」

 

「はい。完璧です。白米も我が軍が掌握しました。」

 

「うむ。苦しゅうない。」

 

あなたと霊夢さんは、座卓の上に鍋と白米とその他漬物が盛り付けられたお皿を並べ、完璧でパーフェクトでエクセレントな食卓を完成させました。

 

あなたと霊夢さんは、向き合うように座ります。

 

「「頂きます」」

 

きちんと手を合わせて、神様と作った人々に感謝を込めます。

 

あなたは箸を手に取り、器に鍋の具材を取ります。

ねぎ、にんじん、ゴボウ、ミョウガ、まいたけ、山菜類ーー。

野菜、きのこ、そして魚の旨味が、味噌と相乗効果を起こして、濃厚な香りを芳しています。

それらを白米と共に、口の中に入れます。

 

「っ……!、………っ美味しい!」

 

あなたは、とても驚きました。

野菜、魚、味噌に至るまで、全てが段違いに美味しいのです。

鮮度が違う、というやつでしょうか。

 

「あったりまえじゃない!水と土と空気が、あんたの世界と比べて段違いに綺麗なんだもの。」

 

「よくわかりませんけど……、ここの食べ物は史上最強だってことですね!味噌も何だか、普通の味噌じゃない感じがするし……もぐもぐ」

 

あっという間に鍋を平らげ、お腹一杯になったあなたと霊夢さん。

二人とも無意識に、ぐったりと畳の上で寝っ転がります。

畳の爽やかな香りが、食事で気立った心を鎮めてくれます。

 

「何だかいろいろ、ありがとうございます。ご飯まで食べさせてもらって……」

 

「いいのいいの。私も久々に、楽しくご飯を食べれたわ。それに、私にはあなたを保護する責務があるもの。気にしないで頂戴。……まあ、家事は手伝ってもらうけれどね。」

 

そういうと、霊夢さんは身を起こして僕にこう続けました。

 

「それじゃ、後片付けしたら、『ここ』のことについて話すわよ。」

 

 

 

あなたたちは、開いた皿や鍋を片付け終えて、先ほどまで食卓だった座卓に向き合って座りました。

 

「それじゃあ、一から話すわね。」

 

冷ました玄米茶を一口飲んで、霊夢さんは口を開きます。

 

「ここは、『幻想郷』っていう場所。幻想の郷、要するに、あなたたち外来人からしてみれば『異世界』みたいなものよ。」

 

「異世界……?」

 

「そう。異なる世界と書いて異世界。そして、この異世界は、日本のどこかにあるわ。」

 

あなたは首を傾げてしまいます。

どこか、ということは、どういうことなのでしょうか。

 

「まあ、そこはあんまり重要ではないわ。この幻想郷は、二つの結界によって外と内に分断されているの。」

 

「……なるほど?」

 

「その二つの結界は、『幻と実体の境界』と、『常識と非常識の境界』。外界、つまりあなたがいた世界が『実体と常識の世界』だとしたら、この幻想郷は『幻と非常識の世界』ということになるわ。」

 

「うーん……。具体的には、どんな感じで違いがあるんですか?」

 

「まずは、幻想郷には妖怪がいるわ。そして、神、妖精、幽霊も。」

 

「全く実感が湧きませんけど……。なるほど、幻、ってそういうことですか。人が過去に捨てた存在、もしくは忘れてしまった存在……」

 

「そうそう!そんな感じよ、あんた以外と飲み込みが早いわね!」

 

なるほど、だからあなたは連れてこられたのでしょう。

むしろ、あなたはこちら側に適した人間のようです。

 

「この幻想郷は、妖怪、神、幽霊、妖精、鬼なんかもいるわ。そんでもって、もちろん人間もね。私の主な仕事は、ここの住人または外からやってきた奴がもたらす騒動を、バシッと解決することよ。」

 

「戦うんですか?」

 

あなたは霊夢さんに問いかけると、霊夢さんは首を竦めました。

 

「戦うと言っても、ルールがあるのよ。……まあ、スポーツで勝敗を決める感じ。あなたは霊力、魔力は少ないと思うから、関係ないと思うけれどね。一応説明しておくと、『弾幕ゲーム』って名前のゲームよ。互いに技を出し合って、芸術点を競い合うの。」

 

「それには、魔力とか霊力とかが必要なんですね。」

 

「そういうことになるわね。あなたもやろうと思えばやれると思うけれど、正直オススメはしないわ。すぐバテると思うから。」

 

「なるほど……、?」

 

あなたは、どんなゲームなんだろう、そもそも霊力とか魔力って……などと疑問を抱えてしまいますが、まあ、世で言う『異世界転移』のようなことが実際に起こっているわけなので、混乱してしまうのも仕方がないでしょう。

 

霊夢さんは、どっこいしょ、と少女らしからぬ掛け声を上げて立ち上がります

 

そして、目の前の繊細な少女は、腰に手をおき、ニコッと笑ってあなたに提案します。

 

「お風呂、どっちが先にいく?」

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