深夜廻・廻   作:色龍一刻

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悔いを受け取って、
過去をしまいこんで、
今は前を見よう。
目の前に、手を伸ばしているものがあるのだから。




14・もう一廻り 喚の音

 

 

 

いいか、ゆかり。

 

縁切りは悪いもんじゃねえ。

 

元々縁結びと縁切りは表裏一体。

 

今は俗世の悪意に歪められた力が増えてきちまっているが.....縁切りは根源的な「拒絶」概念だった。

 

確固たる、純粋な、己と己のものを守るためのな。

 

切っただけでは駄目だ。

 

その先もその選択も人が決めるもんだった。

 

機会なんだ。それすら縁なんだ。

 

運命なんてねえんだよ。

 

全て人が無意識でも決めたことだ。

 

敵意(怒り)はいらない。

 

害意(恐怖)もいらない。

 

ただ覚悟をもって、

 

新たな道を、敷き直せ。

 

 

 

表の担手として、

 

それが遺された教訓ってヤツだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________

 

 

 

 

 

ずりゅ

 

 

「いたっ」

 

 

捕まるのも時間の問題だった。

 

 

生霊から逃げる中で、縁は、

足を深く捻ってしまっていた。

 

場所は光届かぬ高湿度の坑道。

 

地面は水の侵食でなめらかに削られきった硬い岩盤である。

 

高い身体能力と体重の軽い彼女だからこそ、

今もこの悪路を時に転び(滑り)そうになりながらも走れているが、

 

肉体的にも精神的にも苦痛と疲労が顕著に表れ、

それは今も振り絞り続ける集中力に響いてしまう。

 

 

故に。

 

 

がっ

 

 

「あっ」

 

 

その転倒は、仕方のないことでもあった。

 

 

 

 

 

ばしゃん

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

 

ハルは焦っていた。

鈴から伸びる薄紅の糸が少しずつ少しずつ黒く染まっている。

遠くから、耳鳴りのような鈴の音に、

心が、きゅうと締め付けられる。

 

縁の場所は解る。

縁の状況、状態も解る。

 

だけど、そこへの道が拓かない。

 

洞窟はハルと縁を隔絶し、

空間を捻じ曲げてるかのように捻れくるっていた。

糸を辿り走れど走れど曲がり角。

最早方向感覚は無い。

時間も時計が無ければ曖昧になっていたところだ。

 

糸が染まり始めて約4分。まだ。まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

 

 

足が地から離れ、

 

横倒しに体が転がっていく。

 

皮膚が破け、血が溢れる。

 

 

 

どずん

 

びしゃん

 

 

 

「ぐうぅ.....」

 

 

 

坑道の壁にぶつかって、

痛みに息が漏れる。

 

腰あたりまでの水溜り、とても冷たくて冷たくて。

 

それ以上の冷たさが。

 

目の前に、生霊に溢れている。

 

 

血が水溜りに溶け、満ち、流れていく。

 

 

ぐるぐると ぐるぐると

 

 

 

 

カカカカカカカカカカカカカ

 

 

 

抱きしめて抱きしめてしめてしめてシメイェシメテ締めてシメテシメテェッ!

 

 

 

ああやっと出会えたねそうだね会いたかったよそうだねそうだねもう離さないずっとずっとずっとずっと一緒だ一緒に一緒に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、

 

 

 

 

 

 

 

 

縁結びってのは結構気難しいもんでな?

 

良い縁あれば悪い縁もある。

 

良い縁の中に悪い縁があったり、

 

悪い縁の中に良い縁がある。

 

様々な()()人生(繋継り)を編んでいく。紡いでいく。

 

そういうのを助けてくれるもんだ。

 

当たり外れは大きいし、それは未来に影響する。

 

良い縁は大切にしろ。

それはお前を助けてくれるからな。

 

一つの縁は数多の縁を内包する。

 

それは良い縁なほど多いってもんだ。

 

俺たちが考えてる以上に繋がりは強く、重い。

 

一人で引っ張らなくていい。いいか? 皆でだ。

 

呼んでやれよ。友を。

 

その音は、ゆかり()の手を強く、

 

 

 

 

 

握ってくれるんだろうさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、

 

 

ちょっと悔しいんだけど。

 

 

 

 

 

は、

 

 

 

 

ハル__________ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名は、強力な言霊。

 

最古の合言葉。

 

彼女らは例外的ながら、

 

神器を携え、神の意を識る。

 

神の巫女ともいえるモノ。

 

 

その名は、その言の葉は。

 

その銀は、その音は。

 

その血は。その縁喚の契約は。

 

その縁結びは神をも喚び寄せる、

 

絶対的な(神威)となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうか、どうか、私の友達を_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

承知した__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう(てを)いやだ(のばす)

 

 

 

銀光()(爆ぜ)る。

 

 

鋏を持った手が勝手に動く。

ズシリとした赤黒の鉄が、今は凄く軽い。

 

目の前に、生霊の大群。

手を伸ばしながら、

何故か動きがとてもゆっくり。

 

その奥。

その坑道の壁の奥。

その奥に。

 

 

 

 

 

 

 

めが あつく なって

 

いとが あかい いとが いとが

 

 

 

 

 

 

 

 

てを(もう)のばす(いやだ)

 

 

 

壁に、

切れ込みはスルリと、

糸が溢れて、

 

一直線に割けていく。

 

すごい

 

だけど

 

まずい

 

使()()()()()()()!()

 

 

遠くの鈴の音。

 

気づく。

 

 

鈍いラップ音。

 

目の前に巨大な鋏。

殺意ではない。ただ無垢。

だけど、怖い。

だけど、なんでか______

 

 

瞬間。

 

 

(ポケット)ごとちぎれ飛ぶ身代わり人形。

ソレの出現と突進に巻き込まれて消し飛んでいく生霊たち。

 

 

大きな手に包まれた黒い異形。

影のようなモヤの奥に白い歯が見える

大小様々な手に握られた一つの巨大過ぎる断ち切り鋏。

 

コトワリ様。

歪んだ縁切りの一柱。

 

 

 

██■████■■████■

 

 

 

 

 

無いはずの目から、視線を感じる。

殺意じゃない。害意でもない。

 

けれど___ッ!

 

咄嗟に横に転がり、突進を避ける。

 

丁度後ろに伸びていたパイプが切れ飛び、ベコンと何かが潰れる音がした。

 

猛っていないのに猛ってる。

 

理由は多分、この鋏。

 

だから。

 

狭い坑道にゴロゴロと転がる朽ち果てたコンテナを盾に、兎に角あの壁の奥の切断痕。その奥に、その先に。

 

確かに、ハルの気配が()()()

 

早く返す。ハルの元へ。

 

早く逢おう。大好きな友達と!

 

 

 

 

 

_________

 

 

 

 

 

 

 

あの気配。

 

疼く無き片腕。

 

一瞬で進行した銀の黒化。

 

 

多分、あの神が喚んだんだ。

 

 

 

「コトワリ様...ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まずい。まずいまずいマズイ!

 

 

()()コトワリ様は権能の多用で少なからず疲弊している。

人の狂念から取り戻しかけているとはいえ、今理性が狂気に負けたならば、彼を抑える術が無い。

 

ゆかりが、危ない。

 

使うだけならまだ良かった。

ここはあそこから距離的に次元的に遠く離れた地。

縁も薄く、力場は別の神に染め上げられている。

出でくる狂気の残滓も身代わり一つで祓えるものだった。

 

だけど、喚ばれたのは本柱。

封印していた彼自身。

 

対処できるのは__________

 

 

 

 

 

ゆかり...ッ...今行くから!

 

 

 

走る。

 

糸はまだ続いている。

 

コトワリ様の気配も強くなってきている。

 

洞窟にばら撒かれた神気も、別の神気と混じり、

揺らぎ、歪んだ空間自体が戻ろうとし始めてる。

 

 

今なら、いける。

 

 

早く、縁の元へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そうだ。

 

これ、還したかったんだ。

 

______

 

 

近い日に、使う時が来ると思う。

 

うん。私は、もう大丈夫。

 

私の遺りも、もうほとんど使いきっちゃったし。

 

 

________ッ。

 

 

ああ、もう泣かないの。

 

元気でね。

 

友達と仲良くね。

 

これから寒くなるんだから、風邪に気をつけてね。

 

 

_______

 

 

うん、うん。

 

そうだね。

 

 

_____ありがとう。ユイ。

 

 

うん。

 

こちらこそ、ありがとう。ハル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受け取ったそれは、

 

少し、土と朝露の

 

匂いがした。

 

 

 

 






ハル達は、自分の過去を、
何度も何度も言葉で刻み付けて、
力に変えていく。

何度も、何度も、
何度も、何度も、

魂すらも変わっていく。








正月以降にしか投稿できないといったな?
クリスマスプレゼントだオラァッ.....というのは建前で。
とあるお方の深夜廻作品がヤバすぎてテンションがフルスロットルになったので嘘となりました。(ステマ) 
久しぶりに評価10を付けました。
自分のと比べて泣きました。いいんだ。自分らしく書くんだ。

読んでない夜廻ファン兄貴姉貴はお気に入りか評価欄からどうぞ。




プリヤの新作映画がTwitterに告知されててパリピりましたね嬉しい。
雪誓良かったので次は映画館でみたいです。楽しみ。



ハル達がいる街を含む、この世界のオカルトへの関心を掲示板形式で書きたくなったのだが需要ある?

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  • そんなことより続きはよ
  • ハルちゃんprpr
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