深夜廻・廻   作:色龍一刻

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わたしとあなた、結ばれた契約。
その意味を、問い続ける。




22・えい九廻り 陽光

 

 

じゃらん。

 

 

 

 

 

懐かしい光景だった。

 

薄く拡がり、鏡のように空を写す、浅い湖。

そこに聳え立つ、真っ赤な鳥井。

 

その奥の、遠くの夜と水面が、紺から空色へと変わっていく。

夜明けは近く、しかしまだ遥か遠くのようで。

 

それは、鳥井の真下に在った。

形容しがたいガラクタの球体、

それは戒めの鎖を揺らし、脈動している。

 

鎖でがんじがらめだった。

まるで、コトワリ様の鋏のように鋭利でありながら、

錆び付き、罅が走り回り、いつでも壊せるような。

そんな鎖。

 

あれは、自分だ。

そう、■■は感じた。

 

無理矢理封じ込めているけど、それは本当じゃなくて、

ただ目覚める必要が無いから、私は私で居られているのだと。

 

もし、あれの琴線に触れるようなことがあれば、

また、私は()()()になってしまう。

 

 

██████████。

 

 

わっ。

 

 

気づいたら、隣にコトワリ様がいた。

その沢山の手に握られる鋏は、修復の途中のようで、少し先端にかけて歪みが見てとれる。

 

鋏、大丈夫?

 

 

 

 

 

.....ごめんなさい。

 

 

█████....███ッ!!

 

 

軽く、優しく吼えられた。

大丈夫と言ってくれたのだとぼんやりとわかった。

少し嬉しくなった。

 

 

そのとき、

 

 

じゃらん。

 

足元の空に、波紋が伸びた。

鎖の一部が弾けとんで、光の粒子へと綻んだ。

あれは起きようとしているのだろうか?

だから、こんな場所に私はいるのだろうか?

 

 

ど、どうしよう...。

 

 

何かしないといけないのだろうけど、わからない。

コトワリ様の力は、多分今の破損状態では意味を成さない。

自分が、なにか______

 

 

 

██████ッッッッッ!!!

 

精一杯、考えていたら、隣でコトワリ様が吼えた。

危険。警告。警戒。

意志を読みといて、はっと目の前を見ればガラクタが飛ぶように_______

 

 

ひゃっあ!

 

おもいっきりしゃがむ。

 

頭上を通過する風を切る音。

ガラクタと鎖ががらんごろんじゃらんと、

笑うように騒ぎ立てる。

 

鎖の綻んだ隙間から次々に射出されるガラクタ、否、()()()()()()()()

 

石ころが合体してでっかい岩になっていたり、

10円玉が、フリスビーのように回転しながら火花を散らしたり、

滑空してくる紙飛行機の羽が、金属質な感じで危なそうだったり、

如何せん凶悪な装いだが、忘れもしない宝物たちだ。

 

 

█████ッ█████ッッ。

 

 

振り向けば、なぜか私にまた鋏を渡そうとしているコトワリ様がいて。

気づいた。

コトワリ様の影が、薄らいでいる。

ここにいるのが限界? 

そうだ、この前から神様に無理をさせていた。

 

 

沢山の手で支えられた、赤黒い、欠けた鋏を持つ。

片手なのに、未だ不思議と支えられた。

 

色々と突然過ぎて、怖くて、心細くて、涙が出そうになるけど、

我慢だ

これを持ったからには、涙なんて流しちゃいけないのだから。

 

 

ありがとう、コトワリ様。あれは、私がなんとかしてみる!

 

█████████ッ。

 

水面の影がたち消えて、コトワリ様も綻んでいく。

 

振り向いて、呼吸を整えて、走り出す。

 

 

 

 

どうしよう、どうしよう、ああいっちゃったけどどうしたらっ!?

 

 

 

 

空の色が変わっていく度に、鎖の隙間が増えていく。

飛来する宝物が増えて、

螺旋を描いたり、

テレビで見たUFOのような変な角々移動だったり、

普通に落下してきたりと、

不思議な挙動で飛んでくる物騒な宝物たち。

 

トロフィー、ミニカー、サイコロ、ナンバープレート。

ハーモニカ、ビニールのあひる、ちょきんばこ。

 

懐かしい数々を、避けたり転がったり、鋏の腹で打ち落としたり、ホームランしたりする度に、痛むところも増えていく。

 

 

兎に角、鳥井に着いて_______

 

顔面狙いのぼうじしゃくを、濡れるのも構わず浅瀬にへばり付いてかわしたとき、

目の前の水面に大きな大きな影が射した。

 

嫌な予感。

ばっと顔を上げれば、

 

 

ぇええええええ......

 

 

壁のように立ちふさがる、見知った宝物、見知らぬガラクタの山。

耳を叩く騒音が、それが私に倒れこんできていることを教えてくれて。

 

理不尽だ。なんだそれは。そもそもこれはなんなんだ。

 

駆け抜けていく思考。

硬直したままのからだ。

 

腰が抜けてしまっていた。

 

ちっとも動けないまま、私の記憶は、

 

 

そこで、終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>> 鈴の音が聞こえる。

 

 

 

>> 鈴が音を鳴らす。

 

 

 

 

 

ふわふわしている

 

ここちよい

 

ひたされている

 

じぶんがあるがままひらいているかのように

 

ねがわれるままに

 

わたしは"つながり"をむすびつづける

 

よばれている

 

ねむくて ねむくて しかたがない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■。

 

 

 

なまえ

 

わたしの むかしのなまえ

 

むかしのわたしは むかしの"つながり"とつないであげた

 

あつめられたたくさんの"いぶつ"

 

ひとのほうがよかったけど

 

"あれ"にじゃまされた

 

"あれ"のしんにゅうもきった

 

"あれ"にわたされた"いやなもの"も おくにしまった

 

もうこれで わたしはわたしのままだ

 

 

 

 

 

 

 

>> 神域の湖面に朝日が伸びる。

 

 

 

 

 

 

■■っ

 

 

うるさい

 

よばないで

 

ただしくはない

 

そうではない

 

 

 

 

 

>> 陽光は、彼女の拳を導いて。

 

 

 

■ルっ!

 

 

 

なんだ

 

 

 

 

>> ガラクタの海を掻き分け、

 

 

 

 

ハ■っ!!

 

 

 

しらない

 

その"つながり"はつないでいない

 

 

 

>> 握られるのは。

 

 

 

ハルっ!!!

 

 

 

やめて

 

その"いぶつ"にさわらないで

 

その"て"はなに

 

じゃまなもの 

 

いらないもの

 

 

 

 

 

>> 欠けた、縁切りの鋏だから。

 

 

 

()()_____

 

 

 

やめて

 

しまったはずなのに

 

いやだ

 

つかわないで

 

 

 

>> 一度の赦し。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()_______

 

 

 

 

 

 

 

 

>> 今、振るうのは、

 

 

 

もういやだっ!!!

 

 

あ___________

 

 

 

>> "縁"の意味を、冠する少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸が痛い。

 

目の前の水面が真っ赤だった。

 

痙攣と共に液体を吐き出す。

 

ああ、自分の血だ。

 

 

胸を見れば、綺麗に中心に、鋏が刺さっている。

溶け落ちていたはずの刃が、綺麗に貫いて、赤色を滴らせる。

やろうともしていないのに、その光景から(過去/経緯)を読み取れて、

 

友人の無茶に、嬉しさと、悲しさと。

自分の無力に、怒りと、悔しさと。

 

 

血が流れていく。

抜けていくのは命なはずなのに、

一向に死の気配がやってこないことに何度も気づいて。

もう、自分がヒトじゃないことに知っていたはずなのに衝撃を受けて。

打ちのめされた気がして、力が抜けて。

 

 

それでも、

諦められなかった。

もう、後悔はしたくはなかった。

もう、後悔をさせたくなかった。

 

手は私に届いて、ここまで助けてくれたんだ。

 

ならば、ならば、

あとは、自分が、やるべきことは。

 

 

 

「帰ろう。」

 

 

立ち上がる。

 

 

そうだ、帰ろう。

帰って、お礼を言おう。

ゆかりに、チャコに、パパに、お兄さんたちに、

コトワリ様に、すずなり様に、みかがみ様に。

 

そして、私自身(エニシガヒメ)に。

 

 

鋏を体から引き抜く。

痛みも薄い。

 

少し歩いて、水に溶けた血を辿る。

 

切断された、私の半()

浅瀬を染めていく血の先に、それが沈んでいて。

 

拾い上げる。

 

 

「ごめんなさい。あなたは連れていけない。」

 

『_______』

 

「あなたは権能が司る、概念的な意識(神性)。どうやったって、私が神である限り切り離せない衝動だけど。」

 

『_______あ』

 

「それはここに置いていく、たった100年だけ。そうしたらまたここに帰ってくるから。」

 

『_______』

 

「お願いします。私はまだ、私として生きていきたい。」

 

『』

 

『』

 

『』

 

『りょうしょうした ひゃくねんのときまで ねむる』

 

 

「ありがとう。」

 

 

『わたしをふのうにするえにしのちからに きょうみをもった』

 

『すこしのあいだだけ かくをかす それまですこしづつしらべよう』

 

 

「わかった。じゃあね。バイバイ。」

 

 

『________』

 

 

 

 

それは、光へと散っていく。

鳥井をくぐりその先へ。

 

その瞬間、

 

「わあ.......」

 

遂に、朝日が私に届いた。

それは、とっても綺麗で、凄くて。

どこまでも神秘的で。

 

涙が勝手に溢れて、

白く染まっていく視界の中、

 

確かに、鈴の音を聴いた。

 

 

 

 

 

 

確かな、鈴の音を知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひどい有り様だった。

右腕は炭化し、

左腕と両足は切断され、

新たに貰っていたはずの神鈴は黒くなっている。

 

縁切りの代償。

 

意識が開けた瞬間にそれを知覚し、

恩人、そして友人の命の危機に、貰い受けた権能をふりあげる。

 

 

 

生命維持不可能な未来を可能な限り剪定。

 

歯で口を噛み切り、あふれでる神血をゆかりの口に直接飲ませる。

 

これで再生能力を少しでも向上、

四肢の完全再生の可能性をミクロレベルで造りあげ、

それ以外の可能性を剪定。

 

後遺症の発生を剪定。

 

剪定。剪定。剪定っ!

 

 

神と言えど、それは運命の舗装という禁忌じみたものだ。

権能の無茶な使用に神格が悲鳴をあげる。

 

知るもんか。

 

知ってたまるか。

 

「もう二度とっ、友達を見捨てることは_____っ!」

 

 

 

 

死亡確率の大幅な減少を確認。

四肢再生確率の上昇を確認。

後遺症発生確率の減少を確認。

 

「へ.....」

 

急激に障害が取り除かれていく。

認められない未来の可能性が断ち切れていく。

 

 

 

「ひとりでやってんじゃねーよ。ハルちゃん。」

 

「こちとら歴戦の医療班だ。切断部の再生くらいなんてことないわ!」

 

「早く輸血器具持ってきて!保管エリアは崩壊してないでしょ!?」

 

「第一種警戒体制解除!ゆかり嬢ちゃんがやってくれた!暴走した神霊の鎮静化を確認!別の直轄医療区より医療班を!」

 

「凄いレベルの神力ですよ!これは記r「バカ野郎その前に被害収束だ!さっさと瓦礫運ぶ用のトラック回してこい!」

 

「この病院、崩壊の危険性が...」

 

「お得意の錬成術はどうした。壊れかけの建物くらい、補強できなきゃなあ?」

 

「人払い、認識不全の結界は安定した。病院関係者及び患者、訪問者の一時避難完了。関係者を除き、記憶処理を開始しろ。患者には医療班と当たれ、術の影響により思わぬ症状悪化があるかもしれん。」

 

「一帯の気の調整を急げ!ここまで強い神力だ、下手すりゃ霊脈が動く。細心の注意のもと影響中和を始めろ。」

 

「大丈夫か!?」

 

「大丈夫だ、ちょっと崩れた瓦礫が当たっただけだ。手持ちの礼装でなんとかなる。それより彼女たちの方に行ってくれ。」

 

「......いや、今はお前が先だ。安心しろ、軽く診たらすぐ行く。」

 

「...わかった。ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

そこは、病院だった。

崩れかけ、煙と炎が微かに昇っている。

 

みんなが一緒に入院していた病院。

そこで彼女の神性が暴走したのだろう。

 

 

 

 

「.......っ....う...ぐぅ....」

 

 

押し寄せる感情の波。言葉にできない恐怖。

飲み込まれそうなほどのそれに、

 

「大丈夫だ。」

 

「そうだ、ハルちゃんのせいじゃない。神様が気まぐれに悪さをしたまでさ。」

 

「気にするなとは言わんが、今は、友達のことを気にしてやんな。」

 

そうだ、また、間違えるところだった。

 

気を張る、想いを強く、力を練り上げる。

 

一瞬で増えていく可能性の枝を見極め、

 

最適を選択していく。

 

ガリガリと削れていく、神力の源泉。

 

 

「.......。」

 

 

突然、エネルギーラインが繋がれる。

回復をみせる神力の残量。

ぎょっとして接続先を辿れば....みかがみ様!?

 

ばっと振り向けば、担架に乗せられたままこちらに笑いかける紡ちゃ「いやまあ、憑依状態だけどね?」....みかがみ様。

 

「ありがとう。あなたもギリギリだと思うのに。」

 

「いや、レイラインだけ残して憑依状態はすぐ解除するから負担は少ないさ。恩人たちに死なれては困るしね。さて、紡のお願いも聞いて、やることはやったし。あとは頑張れ。」

 

そういうと、かれは帰っていった。

 

 

 

 

 

いろんな人が、存在が、助けてくれていることに。

 

嬉しくて、

 

嬉しくて、

 

私は、もう大丈夫だから。

 

 

無限の可能性の先、理想の未来。

 

 

それを遂に、

 

 

捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう暴走の心配はないのかね?

 

ええ、実体化した神霊の快諾もあり、慎重な調査が行われました。

解析結果によれば、神格を形造る基盤構成に、強固な契約が刻み込まれているようで。

向こう100年間は神格の大規模変動は起こり得ないと結論づけられました。

 

ふむ、権能の制限は?

 

限定的ではありますが、契約により制限をもうけられました。

まあ、彼女の性格上、あまり関係のない最低限のものなのですが。

詳細はこちらを。

 

あとで読もう。

では最後に、かの神、エニシガヒメとの協力関係は?

 

問題なく。神格の変動が発生したとしても、この関係は維持されるでしょう。

聞く限り、休眠中の第二神格は純粋に産まれたての神らしい性格と言えるでしょう。

だからこそ、丁重に祀り続ければ、問題はないかと。

 

わかった。

十分な成果だ。君の働きに感謝を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





新年ということで、久しぶりにデータ整理してたら、奇跡的に発掘できた21話の続きです。お前どこに行ってたんや.....


書いた時期のまま修整していないので、そのままの私の書き方です。懐かしい....

神を慰める、鎮める、祀りあげる、言の葉を請う。
たった4つの事だけがゆかりの初期設定の役割だったのですが、何故かここまで話が膨らみ(捏造され)ました。

エニシガヒメは産まれてての赤ちゃんなので、最初から対話よりは力で懲らしめてから対話を持ち込んだほうが効きます。
普通に癇癪地味た大暴れをしますのでなんとか抑え込みましょう。(これで現実世界の病院が半分崩壊。直属の病院だったので情報封鎖、隊員派遣が間に合い最悪は免れた。)
特にコトワリ様の鋏は特効なのでヤダ....ハサミコワイ....となって交渉成功率がアップします。


ハル/エニシガヒメの神域
初めて見知った光景である、みかがみ様の神域が強く影響。
第一層
 ありふれた神社。
 境内を参考に生成した、簡易空間。
 基本的に現実の境内と重ね合わせるように、第一層が展開されている。
第二層
 彼方まで広がる、ウユニ塩湖のように空を反射する浅い湖。
 至るところに突き刺さる、沢山の赤い鳥井。
 鳥井同士を、鈴で装飾された赤い糸で結んでいる。
 常に、朝を迎える一歩手前の時間帯で停止している。
第三層
 鳥井をくぐれば、そこは夜の町。
 ハルの記憶と想念より形作られた、心象領域が広がっている。
 人も、お化けも神様もいない、ただのハリボテ。
 だけど、これは、友達と見た景色だから。


ハル達がいる街を含む、この世界のオカルトへの関心を掲示板形式で書きたくなったのだが需要ある?

  • ある
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  • そんなことより続きはよ
  • ハルちゃんprpr
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