あの山に佇む、頭や胴を砕かれたお地蔵さま。
その奥、山の神の神域で、青いリボンの少女は、かの存在と対峙した。
少女が持つ紅い両刃は、
ユイと、会った。
...イッショニキテ
...ユイのいくところには一緒にいけないよ
その言葉はハル自身にも痛かった。
町のお化けは皆、一人だった。
一緒にいきたくても、一緒にいけないのだと思った。
ハルに伸ばされたユイの手から、
するすると赤い糸が伸びて、
ハルの左手に静かに絡まっていく。
糸は増える。
赤色が深まっていく。
その色が、ユイの叫びなのだろう。
その色が、ユイの助けを求める声なのだろう。
その色が、私たちの繋がりで、離れたくないというのだろう。
わかる。わかるんだ。
ハルの本心は、ユイをこれほどにまで
糸の針金のような硬さだって、
どんなに切っても、絶えず膨れ上がっていくこの
その想いの、遺された絆の強さを無慈悲に理解させらせる。
ユイも必死だ。
ハルも泣いていた。
私は卑怯だ。
ユイも辛かったのに、いつも、私ばかり助けを求めた。
ねえ、
私のために、ユイはそんな姿になっちゃったんだよね。
私のことを想ってくれたばかりに________
それが、あの《蜘蛛のようなもの》に利用された。
私のせいだった。
私が弱かったから。
だから、だから________
本当に、
本当に。
ごめんなさい
ユイのために作った青いリボンのフェルト人形。
ユイだって助けてほしかったんだ。
毎日が辛かったんだよね。
こんな人形じゃ、ユイを救えるわけがなかった。
私じゃないと。
いつだってユイは手を伸ばしていたのに。
そんな大事なこと、人形に任せて、救った気になって、
それが自分の罪。
ユイの
一番そばにいた私が。
絶望したよね。
だから、聴いちゃったんだよね。
あの神の"声"を。
ユイの想いが膨らんでいく。
雁字搦目に、大きく、赤く。
本当は、そんなユイを、
ううん、そんなユイだからこそ、
私は受け止めないといけないのかもしれない。
でも、
でもね、
私は、
こんなユイを見るのはもう_________
いやだ!
金属音が響いた。
左手がじんじんと痛む。
その左手は、もう、ない。
ユイは消え、コトワリ様がそばにいる。
静寂。
ハルは、背を向け、歩き出す。
一歩、一歩。帰ろうと。
歩みを重ねる度に、
左手の痛みから、温かいものがこぼれ落ちていく。
どんどんこぼれていく。
そしてその分、自分は冷たくなっていく。
眠くて、
帰らなくちゃいけなくて、
眠くて、
歩かなくちゃいけなくて、
眠くて、
足を前に出さなくちゃいけなくて、
遠くって、
足がフラッとして倒れちゃって、
このまま眠ってしまいそうで、
ごめんね。ユイ。
そうしたら、
すぐそばで砂利を踏む音がしたんだ。
霞む目に写る、泥のついた赤い靴、汚れた白いソックス。
誰だろうと上げようとした視線は、向かうこともなく、
ハルの意識は途絶えた。
遠くで、自分の名を優しく呼ぶ声を、聞いた気がした。
過去の残像。
それに重なるように、ハルたちは、洞窟を出た。
出迎えたのは夜だった。
紅い朝の予感がある、群青色の空の向こうに広がる、暗い朝焼けの空。
声がする。甲高い犬の声。
もう、朝が来る。
そろそろ、その時がくる。
わたしたちは、その手を離した。
夜明けだ。
ユイは、あの木の根本に、立っている。
腕に黒い塊、ではなく、代わりのように、誰かの左腕。
ここからは、町を一望できる。
少し、この朝の空気がざわついているのは、
無事にチャコが人を呼びに行ったからだろう。
木の根本の地面を、深く掘り起こす。
とてもふかふかの腐葉土の穴は、丁度左手と同じ大きさ。
近くに落ちている、私のバックから、
左腕を軽く包めるほど大きなタオルを取り出して、穴の中に敷き詰める。
私はもうすぐ、あっちにいってしまうのだろう。
天国か、地獄かはわからないけど...
親友を巻き込もうとしたのだ。多分、地獄行きだ。
それでも、
私がハルと握った手は、
あの時間は、記憶は、
この想いは、
...この
いつか消えてしまうけど、
遺しておきたい。
私のバックと、一緒に見つかってしまうと思うけど、
今だけは、
私の最後の残り火になるから。
タオルに、左腕を包み、きつく閉める。
そして、土で蓋を。
ふう。
一息。顔を上げ、立ち上がる。
朝日は、私の体を
町からは夜のお化けは消えて、朝からいつものような日々を眺める。
そんな町の風景は、あの花火の夜のように、綺麗だった。
______ごめんなさい______
思い出して、苦笑する。
違うんだよ、
こういう時は__________
だよね。
秋、
山に村雨が降り、
その
ぴちょん
その音は、タオルを伝ったその音は、
その遺された想いが果てに、
神を呼んだ。
もう一度会えますよ?
山に一度、金属音がこだまする。
試験が終わりました。
灰になりました。
結果が出る前も、
出た後も、
胃痛で死んでいると思うので、
更新は遅れます。
クソザコメンタルを許して。
今回は結構難産でした。
試験後のメンタル的なことと、
番外編...というかエピローグのプロローグなので、
一番書きたかった部分だからです。
小説版の描写を尊重しつつ、どうにか丸写しにならないようしました。
小説版と比べハルの動きの描写が薄いのは、
ハルの心の動きを中心としたからです。
故に微かに捏造設定があったりする。
やっぱ丑の刻と夜明け、エピローグが激ヤバ過ぎて鳥になりそうでした。
やっぱユイハルは最高やな。
ハル達がいる街を含む、この世界のオカルトへの関心を掲示板形式で書きたくなったのだが需要ある?
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ある
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ない
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そんなことより続きはよ
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ハルちゃんprpr