プルクローンズ・アフターライフ   作:ユトリノ・ニワカ

5 / 22
Unmanned Minimum Mobile Suit(UMMS)

『ヒト・モビルスーツ統合戦略構想』(以下、H-MS構想)は、第一次ネオ・ジオン抗争から第ニ次ネオ・ジオン抗争にかけて、連邦政府の一部の勢力が中心となって極秘に考案された、新しい戦闘教義、または連邦の有する武装組織に関する運用思想の総称である。

 モビルスーツ用のパイロットとして施術された強化人間などを、兵士または特殊作戦用の工作員向けに再調整・訓練し、そこにモビルスーツの開発で培われた様々な兵装を小型化して装着することで、人間とモビルスーツの融合を図ろうとした。

 この構想は、連邦軍やアナハイム・エレクトロニクスには、内密で進められていた。

 地球連邦と言う超国家的組織においては、官庁や部局ごとの政治的な主導権争いが日常的に起きており、こと連邦軍に関しては、モビルスーツを始めとする多くの兵器の研究・開発について巨額の資金が投じられていることから、軍と民間企業との間に、分離し難い慢性的な癒着が生じていた。

 長年に渡る戦争の継続により、物理的にもコスト的にも莫大な手間と費用がかかる巨大兵器に、1名ないしは少数のパイロットを搭乗させ、ドッグファイトで雌雄を決すると言う戦闘形態は、時として旧態依然のレッテルを貼られることもあったが、戦争体系そのものの根本的転換による、軍需産業への影響を恐れた既得権勢力により、H-MS構想は日の目を見ることなく、一度はその存在が握りつぶされてしまった。

 だが、連邦政府と連邦軍との間で、政治的・軍事的な主導権争いが続く中、H-MS構想に対する支持は途切れることがなく、むしろ部署ごとの派閥を越え、一部の有志によって研究され続けていたのであった。

 やがて、長年に渡る研究の末、彼らは具体的な運用手法を生み出す。

 それが、遺伝子技術によって、(理論上は)無制限に個体を培養でき、かつ強化人間としての兵装も施しやすいプルシリーズが、構想を担う存在として最も適している、というものであった――。

「遅い! いくらパワーがあるからって、推進力にばかりに頼るから、すぐ動きを読まれるんだ!」

 四方を鋼鉄の壁と天井に囲まれた、巨大な倉庫を思わせる空間。

 天井に据え付けられた蛍光灯を、頑丈な格子と強化プラスチックで囲い、壁には様々な威力の異なる重火器の砲塔が取り付けられた、無機質かつ禍々しい空間に、プルツーの声が反響した。

 この空間は、中央情報局によって特別に設置され、P部隊に配属される無人小型モビルスーツ、『Unmanned Minimum Mobile Suit(UMMS)』の実戦シミュレーション室。通称バトル・ルームである。

 バトル・ルームは庁舎の地下14~19階を貫く形で設置されており、その周辺を厚さ数メートルもの特殊な遮音壁で覆っているため、音が外部に漏れることはなかった。

 また、連邦軍には内密で新しい兵器を研究・開発するためのラボも設けられており、政府による極秘の研究拠点と言っても過言ではなかったのである。

「さぁ、早く立って、システムを再起動(リブート)しろ! お前らがそうやって休んでいる間に、現場ではどんどん仲間が危険な晒されていくことになるんだ!」

 プルツーが(げき)を飛ばす先には、疲労困憊の様子で床に項垂れる四人のプルシリーズと、彼女たちが操縦していた四機のUMMSが、電源を切られたように床に突っ伏している光景があった。

 ここ最近、バトル・ルームでは、プルツーによる、妹たちへの『UMMS操縦特別プログラム』が実施されており、全長約5〜6メートルの、乗用車とさほど変わらない大きさの小型モビルスーツを一人当たり一機ずつ操作することで、実戦による指導が展開されていた。

 だが、プルシリーズの中で最も優秀な個体と言われ、ネオ・ジオンの中でも指折りの優れたパイロットだったプルツーと、能力的に恵まれず、半ば必要に迫られる形で準備不足のまま出撃させられた他の妹たちとでは、生まれ変わってからも大きな能力の差があった。

 そうした事情を考慮して、プルツーは一度に四機を相手にするハンディをつけたのだが、結果は変わらず、ものの数十秒で勝負がついてしまったことに、いたく腹を立てていたのである。

「まだ立てないのか。もういい。だったら次のメンバーだ!」

 妹たちが再起できぬことに業を煮やしたプルツーは、彼女たちをそのまま退かせ、次に待機していた別の四人組に参加を促した。

「プルツー、もう姉たちは体力の限界だ。一度休憩させてやらないと」

 広大な部屋の中に、マイクを通じてマリーダの声が聞こえてきた。

 制御室の窓から、中の様子を見守っていたマリーダは、両者の圧倒的な戦力差を見かねて、訓練の一時中断を命じたのであった。

 汗だくで、腰砕けの状態に陥っている個体たちを尻目に、プルツーは深くため息をついて、身に着けていたサイコウェアを脱ぎ捨てた。

 そして、肌に着ていたタンクトップとトレーニング用のショートパンツのまま、壁際に置いてあったタオルで顔を拭い、強化人間用のスペシャル・プロテインを飲み干した。

「ちっ。だらしのない。お前たち、いくら最新型UMMSの()()()S()-()7()を使える許可が下りたからって、遠隔操作のレスポンスまでCPUに頼り過ぎるな。訓練前にも言ったが、こいつの頭脳は処理速度は高速化されても、脳波からのイメージデータをキャッシュしておくメモリーは、旧型と変更がない。わかるか? 頭で考えたことを機体で忠実に再現できるようにはなっても、脳波から機体の各稼働域に反映されるタイムラグには、これまでと変化がないんだ。だから、一度の動作でできるだけ敵の動きを封じ込めるよう、多角的な戦術を考えなくちゃならない。第一、私の機体はわざわざハンディをつけて、アビオニクスのソフトウェアをVer.4.61に制限してやってるんだ。それを、揃いも揃って最新型のVer.7.02まで使っておきながら手も足も出ないなんて・・・さては、プログラムの比較解析も満足にできていないんだろ! そんなだからお前たちは、ネオ・ジオンの時に全員撃墜されたんだ!」

 疲労と絶望で怯える妹たちを一瞥しながら、プルツーは彼女たちによるグレミー時代の戦績にまで結び付けて、皮肉たっぷりに叱責した。

 その様子を窓から見ていたマリーダもまた、姉の言うかつての()()()()()()()()の一人だったため、遠巻きに自分も批判されたような気がして、少し気持ちが沈んでしまったが、同時にプルツーの知識と観察力に脱帽もしていた。

(さすがプルツーだ。S-7のハード面とソフト面の両面を調べつくした上で、その特性についても把握している。姉さんとは、まだ直接手合わせしたことはないが。仮に今、私が挑んだとしても勝てるかどうか・・・彼女は私が乗っていたクシャトリヤの原型とも言える、40m級モビルスーツのクィン・マンサを、年端もいかない年齢で操縦していた。クィン・マンサは、その図抜けた性能からパイロットの体力を著しく奪うだけでなく、時代的な側面から見ても、クシャトリヤに比べて多くの技術的ロスも抱えていたはず。トゥエルブ時代の私なら、全く相手にならなかっただろう。ただ、今の私は姉さんより戦闘経験は多い。同じモデルS-7を使い、脳波による遠隔操作で戦うとなれば・・・互いの才能と経験による、一瞬の隙を突いた決着になるだろうか)

 プルツーたちの操縦している『モデルS-7』と呼ばれるUMMSは、以前、P部隊がジンネマンを救出した『モデルU-19』に比べ、全てが刷新されていた。

 まず、小型・軽量ゆえ、ミノフスキーエフェクトに依存せずとも地上を飛行できることは、UMMS共通だ。S-7もU-19も、プルたちが身に着けるサイコウェア同様、音波浮揚による原理を採用しているが、推進力を生み出すためのプラズマジェットスラスターの出力は、S-7の方が35%向上している。

 大きさは、U-19が全長5.2mなのに対し、S-7は一回り大きい全長6.8m。だが、兵装が全てパイロンによる外付けだったU-19に対し、S-7はウェポンベイに格納しているため、地上における空気抵抗の軽減とステルス性、そして軽量化を確保していた。

 しかし、両者がまったく異なる部分は、その外観だろう。

 U-19は、通常のモビルスーツをそのまま小型化したような人型をしているが、S-7は、頭部から体幹部分、そして両下肢にかけ、全体的にデフォルメされたデザインをしている。

 言うなればそれは、八頭身のモビルスーツを三頭身に短縮した、ややずんぐりとした体形で、一見すると洗練された外観とは言えなかった。

 それには理由があり、従来のモビルスーツをそのまま小型化するには関節部分など複雑な機構の大幅な簡略化が難しく、耐久性に難があった。そこで、開発者たちはS-7をこれまでとは全く異なるデザインに変更。液体を型に流し込んで、そのまま固めたかのように滑らかかつ繋ぎ目のない外見によって、大幅な可動部の削減と、耐久性の向上に成功した。

 S-7の目となるセンサーは頭部に埋め込まれていて、海中ソナーなどで用いられる反響定位(はんきょうていい)を応用したもの。これも音波を使用しているために、ミノフスキー粒子の影響を受けにくい。

 一応、カメラも搭載されているが、軍事用偵察衛星に匹敵するほどの高精細を誇りながらも、わずか15㎝四方の小型カメラを埋め込んであるだけなので、顔らしきはのっぺりとした輪郭のみという、無人航空機(UAV)の先端を連想させる。

 動力はバッテリ。中央情報局の庁舎から、大気伝導層を通じた無線送電によって充電を行う。仮に、何らかの理由で送電が困難になったとしても、地球に降り注ぐ粒子からエネルギーを取り出す装置を装備することにより、補助電源として利用が可能だ。

 このように、革新的な装備を備えているにも関わらず、製造コストは、一般的な汎用モビルスーツの1/8程度。

 上層部としては、早くこの新型をP部隊に配置したかったが、先日の件による、プルシリーズの()()()()()がクリアできなかったため、不用意に最新の兵器を渡して反乱を起こすような真似は避けたかった。

 それが、ジンネマンの隊長就任によって信任を得た形で、晴れて正式に配備することができたという訳である。

「それにしても・・・マスターから命じられて、各個体の長所と短所をリスト化してはみたものの。やっぱりプルツーと他の個体との実力差があり過ぎて、部隊としてバランスのとりようがないな」

 バトル・ルームの参加者が休憩(と言っても、全員が強化人間にも関わらず、プルツー以外は酸素吸入を必要とするほどの疲労困憊だったが)している間、マリーダはプルシリーズの12人について、それぞれの能力について自らまとめた報告書を見返しては、一人ため息をついた。

 せっかく、晴れて正式に部隊としての認可が下りたのに、メンバー全員の能力が違い過ぎて、作戦遂行のための人員配置に、考えあぐねていたのである。

「プルツーは総じて能力が高いが、他の個体を思いやる気持ちに欠け、自分と同じ精度の任務達成を他者に求めてしまう。それから、3(スリー)11(イレブン)までの個体は、どれもドングリの背比べ。どれも優しく思いやりがあるが、裏返して言えばそれは精神的に幼く、戦局に応じた合理的な判断ができないというだけで、今のところ戦闘より家事の方が得意という訓練以前の問題。そして私、マリーダ・クルスは・・・まぁ、能力的にはプルツーに近いのかもしれないけど、理不尽なことが続くと顔に出やすいから、心の内を読まれやすいこととか、使命感に捕らわれて命を粗末にする所とか、作戦遂行上のリスクとなり得るファクターはいくつもあるかな。昔のパイロット時代と違って、今は工作員(インテリジェンスオフィサー)だから、火事場の馬鹿力でゴリ押しできる場面って少ないし」

 内容だけ見ると、報告書と呼ぶにはあまりにお粗末で、ほとんど学校の通信簿にも近いレベルの資料。

 一枚一枚の紙面を取り換えては見比べながら、マリーダは、チームをまとめる難しさを改めて感じていた。

 しかし、この報告書を作成する上で、誰の資料を作るのが一番大変かと言われると、行き着くのは、やはり()()()()しかいなかった。

「・・・噂をすれば、来た」

 すでに、訓練が始まって40分も絶つというのに、制御室の外から、特徴的な掛け声と小走りの足音が聞こえてきた。

 そう。世に伝わる、天真爛漫という言葉を具現化したような存在であり、恐らくは感覚でしか生きたことのないであろう、プルシリーズの長姉だ――。

「プルプルプル~・・・あ、やっぱりもう訓練始まっちゃってた? マリーダ~。ごめんね、寝坊しちゃって」 

 制御室のドアが開いて、プルがひょっこりと顔を出した。

「遅いぞ、プル。訓練が始まってから、もう40分も経ってる」

 マリーダが、プルを静かに叱責した。

「あ~ん。怒っちゃ嫌だよ。これでも急いだんだからさ」

 しかしプルは悪びれた様子もなく、「急いだおかげで、40分の遅刻で済んだ」とでも言わんばかりの、清々しいまでに開き直った言い訳で、マリーダを唖然とさせた。

「それにしても、ずいぶん嬉しそうだな、プル。訓練に遅れておいて、それを帳消しにできるほどの良いことが?」

 マリーダが尋ねると、プルはにやけた表情で答えた。

「いやぁ~それがね、マリーダ。昨日、夢の中にジュドーが出てきちゃったの。それで、あたしのために大盛のチョコパフェを10個連続で丸のみしてくれたのよ! あたし、もう胸がキュンキュンしたのなんの。気付いたら8時過ぎちゃってたって話。エへへ」

 プルにとっては、訓練に遅れたことよりも、夢の中でジュドーに逢えた話を自慢することの方が、重要だったようだ。

 マリーダの呆れた様子には目もくれず、プルはまだ余韻に浸っているようで、赤く火照った顔で天井を仰ぎながら、サイコウェアを身に纏っていた。

「姉さん。それ、私のサイコウェアなんだけど」

「へ? あっちゃ~ごめんごめん。やけにお腹の辺りがブカブカだと思った」

「ひ、人聞きが悪いぞ! 胸ならまだしも、腹はそんなにブカブカじゃないはずだ!」

 制御室でプルとマリーダが緊張感に欠けるやり取りをしていると、その様子に気づいたプルツーが、窓に向かって声を上げた。

「おい、マリーダ。プルが来たのか? ちょうど良い。こっちに来るよう言ってくれ」

「え? あ、ああ。わかった」

 いつもは遅刻してきても気づかないか、プルのことなどほったらかしで訓練に集中しているはずなのに、この日のプルツーは違っていた。

 今日に限って、一体何の用があるのだろう。

 言われるがまま、マリーダはプルにバトル・ルームへ行くよう指示した。

 その様子を見ていたプルツーは、それまでふてぶてしい態度で壁に寄りかかっていた姿勢を起こし、床に脱ぎ捨ててあったサイコウェアを再び身体に装着し始めた。

 そして、妹たちが使っていたモデルS-7のうちの一機の傍へ歩いていくと、胴体部分に手をかざした。

 すると――ハッチが四方向に向かって開き、中から操縦室のような空間が現れた。

 そこは、ちょうど人一人が収まるくらいのスペースがあったが、操縦桿やレバーはなく、数本の配線がぶら下がっていた。

 元々の機体の大きさだけに、広さ的にはモビルスーツのコックピットに比べると極端に狭く、乗り込むというよりは、そのまま収まることで、機体を直接着込む感じに見えた。

「プルツー、来たよ・・・あれ? この機体って、人が乗って操縦できるようにもできてるの? モデルU-19の時は、こんなスペースなかったのに」

 バトル・ルーム内に入ってきたプルが、プルツーによって再起動されたS-7の内部を物珍しそうにのぞき込んでいる。

「そうだよ。こいつは、緊急用に有人での操縦もできるようになっている。退屈な遠隔操作だけじゃなく、自ら中から操縦できるようにもなっているんだ」

 見た目には、プルツーとプルが、和気あいあいと機体を観察している光景に見える。

 だが、この時、二人の様子を見ていたマリーダは、プルツーの口調が、それまでのうんざりしきった感じから、どことなく抑揚が生まれているのを感じていた。

 それは良い意味ではない。

 同じ身体を持つ姉妹なら感じられる、嵐の前の静けさ。

 その証拠に、プルツーの表情からは、ネオ・ジオン時代に宇宙空間を暴れ回っていた時の、冷酷で好戦的な色合いがにじみ出ていた。

 マリーダには、プルツーが何か良からぬことを考えているのではないかと、すぐに理解した。

(・・・プルツー、一体何を企んでいるんだ・・・?)

 一方のプルは、そんな雰囲気などまるで気にも留めない様子で、S-7の内部をあれこれ触っている。

 やがて、プルがS-7の内部を見ようと、更に身を乗り出した時だった。

「プル、それに乗るんだ! 乗って、私と勝負しろ!」

「え? うわわ、ちょっとプルツー! 何をす・・・!」

 プルツーが、突然、前のめりになっていたプルの背中を思い切り押した。

 プルが振り向いた時には、すでに遅かった。

 彼女は、抵抗する間もなく、コックピットに転げ落ちていった。

 その様子を見図らい、プルツーも、急いで自ら待機させていた別の機体に乗り込む。

「まさか、プルツー!? プルとやり合う気か!? おい、ちょっと! 有人操縦はまずいぞ!」

 事態を察知したマリーダが、マイクを使ってプルツーに呼び掛ける。

 すると、その声に反応したかのように、制御室のモニターに映像が映し出され、S-7の配線によって頭や胴体を接続されたプルツーの顔が現れた。

「ふふふ。心配しなくてもいいよ、マリーダ。お前も、キャプテンに提出する報告書の内容で悩んでいるんだろ? だったらいい機会だ。お前たちにも見せてやるよ。かつて殺し合いをするまでに激しく争った、プルツーとエルピー・プルの闘いを!」

 言うなり、プルツーの乗る機体からウェポンベイが開け放たれ、ビームやらミサイルやら、夥しい量の兵器が一斉に放たれた。

 直後、眩い閃光と共に、耳をつんざくような激しい爆発音がバトル・ルームを揺さぶった。

 プルツーが本気であることを知った妹たちは、一目散にバトル・ルームから出ていく。

「いたた・・・プルツー! いきなり私の事を押すなんて、ビックリするじゃない!」

 プルツーに続いて、プルの顔もモニタに映し出された。

 最初の一撃で、機体が損傷したかと思われたプルだったが、即座にバリアを展開し、第一撃を見事防いでいた。

 恐るべき反射神経。

 モニター越しに見せる彼女の顔つきもまた、ニュータイプパイロットとしての凛々しい表情が形作られていた。

「そうやってお姉ちゃんを困らせて喜ぶのなら、一度おしおきしてあげるんだから!」 

 プルツーの挑発に呼応する形で、プルも機体を正面から対峙させた。

 もはや二人とも、頭に血が上ってしまって、ここが宇宙空間と勘違いしているようだ。

「ちょっと待て! 二人とも落ち着け! このバトル・ルームは有人操縦の戦闘に耐えられるほど、頑丈にはできていないんだ!」

 マリーダが何とか二人を止めようとしたが、時すでに遅かった。

 互いに向き合う二機の機体からは、骨格部分に使用されたサイコフレームが発光し始め、プルとプルツー自身から放たれたニュータイプ特有のオーラも相まって、赤や緑、紫と言った色とりどりの光が、バトル・ルーム全体を所狭しと駆け巡っていた。

 長い冬眠から目覚めた姉妹から放たれる、葛藤と、不安と、怒りと、そして決意とが入り混じった、形容しがたいエネルギー。

 それは、愛する者を守ろうとして死んでいった時の、マリーダの思念体が放っていた聖なる光とは、似て非なる物だった。

「行くよ、プルツー!」

「殺すつもりでかかってきな、プル!」

 二機のUMMSはしばし向き合った後、互いにビームサーベルを取り出し、弾かれたようにバトル・ルームの中央で激突した。

 直後に、目も止まらぬ速さで、追いつ追われつの戦闘に発展する。

 制御室は、通常の訓練では起こりえないほどの振動と衝撃によって、激しく揺れ動いた。

 もはや、誰にも止められない、プルシリーズ最強の二人による、死の演舞。

 マリーダは動揺する他の姉たちを宥めながら、ただその状況を見守るしかなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。