&月:日
私は剣道の県大会へ出場するために武道場の使用許可を貰うために職員室に来ているのだが、織斑君を狙っている教員は多いようだ。
どうすれば三十路を迎えそうな人が中学生の男の子と付き合えると思えたのだろうか?等と思いながらも罵詈雑言を浴びせてくる教員を見上げる。
それに、よく見れば厚化粧のせいでひび割れている箇所が遠目でも分かるほどあるし、ガミガミと怒って大きく口を開ける度に口紅や乾いた化粧の粉が床に落ちてる。
あんまり教員の話は聞いてなかったけど、なんとか武道場の使用許可を貰うことは出来たので良しとしよう。それにしても三十路間際なのに、あれほど自信を持てるのは凄い。
まあ、深く考えるのはやめよう。
こういう自意識過剰な人は怒るとモノに怒りの矛先を向けるって祖母も言っていたし、あと口臭を気にせず好かれていると考えるのはダメだと思う。
誰も残っていない武道場の真ん中で素振りを繰り返していると扉の空く音が聴こえ、素早く竹刀を構え直し、後ろに振り返ると織斑君が出入り口の段差に腰掛けながらスニーカーを脱いでいた。
いや、教室で友達と帰ろうとしてたよね?
&月\日
早朝、私は侍戦隊シンケンジャーの悪役として登場した腑破十臓の復刻版フィギュアを買うために秋葉原へとやって来た。
小学生の頃は秋葉原へ行くのはダメだと言われていたけど、それなりに背丈も伸びて剣道も強くなったので頑固な祖母を寝る間も惜しんで説得して、漸くオタクの聖地と呼ばれる秋葉原を堪能することが出来るのだ。
あんまり土地勘もないので地図を頼って特撮専門店を探さないとイケないのは辛いけど、格好良くて素敵な腑破十臓のために頑張るしかない。
のんびりとパソコンの設計図やアニメのキャラクターの衣装を模した格好で可愛く笑う女の人を遠目で眺めていると「かんちゃん、どこぉ~っ!」という声が後ろから聴こえてきた。
大きな荷物を抱えた女の子が人ごみをかき分け、キョロキョロと辺りを見ながら名探偵ピカチュウみたいな顔で歩いているのが見えた。
とりあえず、助ければいいのだろうか?
そんなことを考えながら女の子に「なにか困ってるの?」と問い掛けると「かんちゃん、迷子になっちゃったの…」と教えてくれたけど、私は迷子なのは貴女だと思うんだけどな。
いや、べつに独り言だから気にしないで…。
私の探してる特撮専門店へ行ってるとは思えないし、この子を連れて秋葉原を探し歩くのは難しいだろうし、公園を探して待機するしかないか。
&月≒日
なんとか買うことのできた腑破十臓のフィギュアを専用のショーケースに入れ、裏正を霞の構えにして写真撮影を行う。
あの時はフィギュアを買えず、帰るしかないと思ってたけど、かんちゃんさんのおかげで購入することが出来て、本当に良かった。
しかし、私達を双眼鏡で眺めたいた女の人は誰なのだろうか?あれほど凄まじい嫉妬の念を見たのは初めてだ。いや、嫉妬というより羨んでいるような視線だったような気もする。
まあ、そんなことより腑破十臓の最も格好良く見える立ち方を模索しよう。う~ん、上段の構えもカッコいいんだけど、もっと威圧感を増す立ち方にするには、どうすればいいのだろうか。
とりあえず、先ずは中段の構えは基盤として別の構えを考えるのも良いかもしれない。いや、それよりもドラマの中で使用していた構えを再現した方がカッコいいのでは…。
どうすればカッコいい姿勢を見付けることが出来るんだ。やはり、私は写真撮影の才能はないのか?等と考えながら焦点の合わない写真を見る。
もう、いっそのことかんちゃんさんに頼んでみようかな?そうすれば安心してカッコいい姿勢の腑破十臓を撮影することが出来そうな気がしてきた。