○月%日
俺は今日こそ告白しようと氷室冬香を屋上へと呼び出した。この日のために五反田弾と御手洗数馬の考えてくれた告白のセリフを言おうとした瞬間、なぜか最悪にも彼女のフリを頼んでしまった。
ただ、氷室さんは嫌な顔すら、ほとんど表情を変えないから怒っているのか、それも分からないけど。無言で頷いて了承してくれた。やっぱり、氷室さんを好きになって良かった。
そのことを相談するために二人を家へ招いたというのに「お前は肝心なところでヘタレるよな」とか「こう、もっと強気に攻めないとダメだな」なんて言われたけど、俺だって精一杯に頑張ってんだよ。
そう二人に言い返せば声を揃えて「いや、お前は告白でキザっぽく決めてヘタレてるよな?」と言われ、反論することも出来ず…。
どうにか氷室さんとの微妙な関係を戻す方法を考えてくれと頼んだが、今は関係を拗れない方向へ運ぶことに集中しろと言い聞かせるように言われた。
はあ、どうすれば誤解を解けるのだろうか。
そんなことを考えながらジュースのお代わりを要求してくる二人に向かって「なあ、ちゃんと考えてくれよ」と言えば「まあ、向こうも今の関係は難しいって考えてるだろうし、別れを切り出されるのは待ってれば良いんじゃないか?」と最低なことを口走りやがった。
俺は氷室さんと誠実な交際関係を築きたいって言ってるだけなのに茶化すのはやめてくれよ。それと数馬だってモテるのはイケメンの特権とか言ってた癖にアドバイスもねえじゃんか…。
○月↓日
早朝、俺は氷室さんの使ってる通学路の途中で待ち伏せするように彼女を待っていると竹刀袋を抱き締めて歩く氷室さんが見えた。
剣道を話題として使うのはダメかと思いながらも竹刀袋の椿が綺麗だと褒めると表情を変えずに喜んでいるのは分かった。
そして、なにより俺と氷室さんの関係は変わらず良好なので良しとしよう。ただ、どういう理由なのかは聞いていないけど。
なぜか氷室さんは部活動の禁止を先輩を通して教員から言い渡されたそうだ。俺は胴着を纏う氷室さんを見たいのに、この中学校の教員はバカなのか?
いや、そいつは絶対にバカのはずだ。
剣道部の中で一番の戦績を誇っている氷室さんを休ませるとかバカとしか思えない。だいたい、恨み妬みで人を貶めようとするのはクズの所業だ。
先ずは氷室さんの部活動の禁止を取り下げを願って担任に掛け合ってみよう。もしくは弾に頼んで担任の弱みを調べて脅すしか方法だけだ。
たぶん、そんなことしたら氷室さんに軽蔑されるのは確実なので最終手段として控えておこう。あとは氷室さんとデートするしかない。
しかし、こういうのは男の俺から誘った方が良いのは当然だけど、どうやって氷室さんを誘えば良いんだろうか?等と考えながら二人に相談したのに「それぐらい自分で考えろよ」と言われた。
それが分からないから相談してるんだよ。
○月±日
折角、覚悟を決めてデートに誘おうと氷室さんの家に来たのに出掛けているとおばさんに教えてもらった。まあ、
確かに事前にデートしようって話した覚えはないけど、遊びに行くなら俺も一緒に行きたかった。
そんなことを思いながら暇潰しに駅前のゲーセンで対戦を募集していると微刀"釵"という名前のテロップが横入りしてきた。
ちょうど止めようと思っていたタイミングで来るのはビックリしたけど、あんなエグいほど強化された大太刀を使用するキャラなんていたのか。
俺のキャラは打刀を主体として戦うことを前提としているため、距離を離そうとすれば一撃で倒される可能性がある。
このキャラを相手に素早く距離を詰め寄るのは難しいけど、数馬の教えてくれた撹乱ステップで翻弄してやるぜ。
なんて格好付けてたのに、あっさりと負けてキャラは「無念なり」とか呟いてる。チラリとゲーム台の向こうを覗けば眼鏡を掛けた女の子がゲーム台の前に座っていた。
ハッキリと言えば意外だけど、穏和そうな人ほど怒ると怖いって弾が言っていたことを思い出した。とりあえず、今日は氷室さんとのデートすることが出来なかった記念として記憶しておこう。
はあ、どうすれば氷室さんの誤解を解くことが出来るようになるのか。最近は、それだけを考えてるせいか、学校でも凰鈴音に怒られるし、あいつは俺のなにが気に食わないんだ?