>月⌒日
たぶん、昼頃だと思う。
この前、いきなり練習試合へ乱入してきた織斑君の話を聞くために彼の家を訪ねることにした。あの怖そうなお姉さんは居ないって言ってたけど、どこかに隠れているとかありそうなんだよね。
そんなことを考えながらインターホンを押しているのに誰も出てこない。買い物にでも行ってるのかな?等と思っていると通り掛かったオバサンに「織斑さんなら旅行に行ったわよ?」と教えて貰った。
むう、一応は彼女なのに旅行することも教えてくれないのは酷いと思うけど。彼女の真似事だから家庭の行事を教える必要はないと思われたのかな?
私が「はあ…」と深い溜め息を吐き出しながらガックリと肩を落として道の端を歩いていると織斑君と仲良くしている男の子が見えた。
えっと、あの人の名前は五反田君だよね。
ちょっとだけ織斑君の旅行先でも聞こうかな。これで五反田君が知ってたら私は友達の定義の外側にいるってことなんだけど、その時は諦めて部活にも遊びにも行かずに夏休みの間は引き籠ろう。
>月∧日
今朝、五反田君が遊びに行こうと誘ってくれたので着いていこうと思う。べつに、これは浮気って訳じゃないはすだし、なにより織斑君はお姉さんと二人っきりで旅行なのだ。
私だって男の子と遊んでも文句は言わないよね?なんて思いながら五反田君の行きつけらしいゲーセンでクレーンゲームで瓜坊の見た目をしたにゃんこ先生を取ってくれた。
とりあえず、ありがとうございます。あんまりクレーンゲームは得意じゃないので欲しかったキャラを取って貰えて嬉しい…。
そんなことを言えば何故か五反田君は顔を赤くしてタイムクライシスを眺めている。もしかして、シューティングしたいのかな?なんて思いながら一緒にする?と聞けば「…うん‥」と小っちゃい声が聴こえてきた。
成る程、この人はシャイな人なんだ。
私が一人で納得していると「氷室さんはアイツのこと、どう思ってんの?」と唐突に聴いてきた。アイツって織斑君のことで良いんだよね?
それとも別の人なのかな?
私は織斑君の彼女(仮)なので上手く言えないけど。たぶん、仲良くは出来てると思う。まあ、他の人には不釣り合いな恋人だろうけど。
それより五反田君は好きな人っていないの?と切り返すように問えば「俺は出来た時に教えてやるよ」と言ってきた。やっぱり、モテる男の子は違うんだと再確認することができた。
>月∞日
早朝、竹刀の手入れを行おうと竹刀袋から取り出したら木刀が紛れ込んでいた。たぶん、お兄ちゃんの使ってたヤツだと思うけど、なんで私の竹刀袋から出てきたんだろうか。
それと、私のお兄ちゃんは俗世で言えば中二病を患っていた哀れな患者とのことだ。あまり喋った記憶はないのに、この木刀を一生懸命に作っていたのは覚えている。
これはネット通販で購入した1mm程の竹光を鋼蜂と呼ばれる加工のために採取される珍しい蜂の集めた蜜を使って何十枚も重ね合わせたモノだ。その努力の結晶を妹の竹刀袋へ隠すのはダメだと思う。
そんなことを思いながら家を出ていったお兄ちゃんの部屋の扉を開けるとグレートマジンガーが出迎えてくれた。いや、どちらかと言えば出迎えたというより通せん坊しているんだけどね。
だいたい、織斑君は私のお兄ちゃんと似ているような気がするのは何故だろうか?なんて考えながらグレートマジンガーを押し退けて部屋の真ん中に座ってコンセントの抜けたテレビを見詰める。
ここでテレビゲームを一緒にしてたのは良くも悪くも印象的だった。まあ、お祖母ちゃんはあんなに負けず嫌いな女の子を連れて帰ってきた時は卒倒しそうになってたけど。