これは大冒険とは程遠い、小さな小さな物語。
タグに関してはよくわからないけど後々出るかもしれないから一応15つけておきます
勢いで書いたのでいつか各所文末とか修正します。
あといくつかの作品の影響を大きく受けています。知っといて。
木々が一層生い茂る、深い深い山の中。まるで放っておいてくれと言わんばかりに緑に隠されたお城があった。外壁もなくただただ存在する裸の城は自ら傷を隠すようにひび割れにそって茨が絡みついて伸び、遠くからではその存在に気づけないようになっている。
「すいませーん。誰もいませんかー?」
そこに黄色交じりの茶けたコートを着た男が気の抜けた声で訪ねてきた。男は反応がないことを確認するともっと城に近づいた。入口の周りは赤いバラが咲き乱れ、最近まで手入れされていたようにも見える。
(誰かいるのは明白だな…)
入口は大きく開かれていた。中からは人の気配もない。外から差し込んでいる光が中を薄暗く照らしている。外からエントランスに見えるのは大きな階段と通路口くらいだが、階段の手すりや壁にも薔薇が咲いていた。
(石畳に根を張っても枯れずにいるのか)
そうして中に入ろうとしてやっと気が付く。中央で二人の人間が倒れていた。片方は中性的的な見た目をしているが服装からして男性だろう。もう片方は幼い女性のようでドレスを着ている。その様子はまるで少女が男を抱いて覆いかぶさるようだった。
床には二人を中心に色の持たない白い茨が張りめぐらされ、青い花を咲かせている。
そして、男性の腹部には、小さな長剣が刺さっていた。
(二人とも死んでいるのか…庭園を見る限り亡くなったのはのは最近だな。これ以上ここにいるのも野暮か。)
男がそこを立ち去ろうと振り返った時、
「誰だ……?」
女性の声が響いた。
振り返ると、死んだと思っていた少女が体を起こし、はっきりしない様子でこちらを伺っている。
「人間か…」
しかし、こちらの正体を見定めると目を見開きこれまた一瞬だけ殺意が膨れ上がりすぐに霧散した。
そのきれいな青い瞳は膝の上で眠る男を悲しげに見つめている。
どうしたものかと男が様子を見ていると、少女は立ち上がって階段に向かった。
すると、
「あの…お墓とか作ってみない?せっかくきれいなお庭があるんだしさ。俺、こう見えて石とかの(※)ルーリティ持ちだからさ、穴掘りから石棺作りまでできるよ?」
※この世界で言う特殊能力のこと。魔力を使わないが操るものが制限されている。
男は思わず話しかけた。あまりにも無気力に歩く姿は流石に無視できなかった。
「……できるのか?」
少女は見た目よりも低い厳かな声で訪ねてくる。
「もちろん!」
※
棺作りは男が城の一部を変形させて作った。
遺体を運ぼうと近づいたところで気が付いたが、赤黒い血が流れてる様子はなく、代わりに服が青暗く染まっていた。まるで彼女の髪が咲かせる薔薇のように。
土に埋めた後も少女は茫然としていた。理解が追い付かないのか、ただただ何も気が起きないのか。そこに立って動こうともしなかった。
「あの~、よかったら、事情を聴いてもいいかな?それか名前を~」
「……名前なぞ忘れた。人間からは茨の魔女などと呼ばれていたがな。」
少女が話したのを安心したように男は続けて話しかけた。
「そっか。そうだ、俺の名前はウィズ。一つ質問なんだけど、彼は人間だった?」
「…そのはずだ。」
「じゃあ、彼は妖魔の血に汚染されていたんだね。遅かれ早かれ亡くなっただろう。」
その言葉を聞いたとたん少女はウィズと名乗った男の胸倉に掴みかかり、バランスを崩したウィズは後ろに倒れ、馬乗りにされる形になった。
「そんな言葉が慰めになるか!あやつは、あやつだけは、最後まで私を化け物だと思わなかったのだ!あまつさえ、最期は自分が化け物だと思われていると勘違いまでして…私なぞをかばって………」
つかんで離さない拳の震えは、怒りから悲しみに変わっていった。
ウィズはその言葉を聞いてすべてを察した。この子が悪魔のように扱われていたこと、殺しに来た誰かの刃をあの男が庇ったこと、そしてこの青いバラは、おそらく、彼の血を吸って青く染まったのだろうか。
(妖魔の血は、魔女の血には効かなかった。彼女だけ生き延びてしまった。)
「森の中で人が死んでるのを見たよ。青い血を流していた。その人も妖魔の血を浴びたんだと思う。」
嘘だ。彼女を慰めるための方便だが、妖魔の血は道連れに感染させようと膨張してよく弾け飛ぶ。あんな短い剣で切りつけたのなら、多く浴びたのは間違いない。
それも聞いてか聞かずか、少女はウィズの上から離れ、城の中に戻っていく。
「もうここには来るな。墓を作った恩で今だけは見逃してやる。」
「そういう訳にもいかないよ。今の君を放っておくと友人に怒られちゃう。」
「私が怖くないのか。」
「きれいな瞳と薔薇を持ってるね。」
「これまで覚えてないほど人を殺した。」
「ここを守るためだったんでしょ?俺だって幾度と人を殺したことはあるよ。」
「これ以上続けるなら本気でお前を殺すぞ。」
粘るウィズについに強烈な殺意が向けられ、彼女の持つ茨が持ち上がった。
幾重にも絡んでできた茨の腕が、鋭い一本が、何本も突き付けられる。
「ここは四方が石造りだよ。俺のフィールドだ。負けるつもりはないよ。ついでに、勝っても君を
その言葉で茨たちの動きが止まった。
「まぁ万が一俺が負けちゃったら、君の薔薇は赤く染まっちゃうんだろうな。それはそれで寂しいけど。」
何があっても明るく振る舞うウィズに諦めたように茨が床に降りた。
「…勝手にしろ。」
拗ねたように少女は城の奥へと引っ込んでしまった。
(ちょっとは気分が安らいだかな?)
それから二晩ほどウィズはその城で過ごした。
一日目では彼女の気を紛らわそうといろいろな話を聞かせてあげた。遠い国の伝承、身の上のくだらない話、異世界の作り話など、たくさん話した。
その甲斐あってか途中からは少女も質問したり、どこからか紅茶を淹れてくれるようになった。
二日目にはこの城であったことも話してくれた。自分はもともと貴族の生まれだったこと、本当は自分は魔女などではなく呪いをかけられてこの姿になったこと、呪いをかけた人達ごと城にいた人間を殺したこと、そのせいで茨の魔女という噂が広がったこと。たびたび来る侵入者を返り討ちにしたこと、青い瞳をした青年が訪れてきたこと・・・
※
「じゃあ、おじゃましました。」
三日目にウィズは城を出た。少女はだいぶ落ち着いて素を見せるようになった。なるほど、大胆不遜な態度はその生まれと生きてきた年から来るものか。
来た時に開いていた門で見送ってくれている。
「そういえば、お前はなぜここに来たのだ?」
茨の魔女はもっともな疑問を投げた。本来なら茨にカモフラージュされて、城の存在自体分からないようになっている。
「ルサールカって知ってる?蛇って呼ばれてるんだけど、まぁ世界中で組織されてる治安維持部隊だと思っていいよ。やってることと言えば主に※AOEの討伐なんだけどさ。」
※巨大な怪物のこと。アストレア・オン・エネミーの略。神話級の動物や龍、魔物なんかを表す。天使や悪魔は別。
「そこで依頼があったのさ。ここには昔怪物がいて大量に人を殺して眠りについたものがいるみたいな?その調査に来たら城の近くまで来てしまってここを見つけた。あとは知っての通りだよ。」
「なるほどな。正直に言うと助かった。私自身、何をすればいいのか全く思いつかなかった。」
「力になれてうれしいよ、こっちも友人に話したときに怒られずに済む。」
「いい友人を持ったのだな。」
「うん、とっても。自慢の人たち。魔女さんも城を出てみたら?きっといつかいい人に出会えると思うよ。」
「それは楽しそうだが、私はこの城を離れるわけにもいかん。ここには私のすべてが残っている。」
茨の魔女は少しだけ寂しそうに笑った。仕方ないことだと。
「それじゃあ、知り合いの魔女達に紹介してあげるよ。彼女たち、俺にはすこぶる態度が悪いけど、人間が嫌いだから君にはよくしてくれると思うよ。同じ
「はは、楽しみにしておくとしよう。」