妹が悪の組織を作って俺をそのトップにしてきました。どうしよう? 作:百燈 結人
「まず1っぴきぃいいいっ!」
「逃がさないよぉおお!?」
「ぐわぁあああ」
「やめてくれぇ…たすけてぇ…」
私がお兄ちゃんからアイテムを貰って仲間達の元へと向かうと、既に戦闘が始まっていた。
「…なんで私が来るまで待てなかったの?」
「面目ない。少し目を離した隙にあいつらが飛び出していってしまったんだ。」
はぁ…。まぁ、あの子達が暴走するのはいつもの事だし仕方ないけど。
「ところで、兄上殿に頼んでいたものは出来ていたのかい?」
「もちろん。これで奴らを根絶やしにできるよ。」
今までは追い詰めても逃げられていたが、今回はそうはさせない。
今日でこの戦いを終わらせてみせる。
「あ!福ちゃんっ!見て見てこんなに倒したよっ!」
「
「うんうん。二人とも頑張ったね。」
血まみれになりながらも笑顔で近づいてきた二人を撫でてあげる。いつもなら少しお説教をする場面だが、敵を引きつける事には成功しているようだし、結果オーライだ。
「さぁ、みんな!!今日が決戦だ!私達の力を見せつける時だよっ!」
この戦いで私達は支配から解き放たれる。
その思いのままに仲間達も大きく声をあげる。
「よく我慢した!だけど、それも今日までだ!」
皆の声が力強くなる。
「準備は整った!後は殲滅するだけっ!」
さぁ、始めよう。
「
戦いの幕が開けた。
ーー◇ーー◇ーー◇ーー◇ーー◇ーー◇ーー◇ーー
私達と宇宙人の戦いはつい一月前から始まった。
奴らが侵略してきたことで平和な日常は崩れ去ったのだ。
副会長である私は生徒会の仕事もあって朝早くから学校に向かっていた。
幼なじみで生徒会長の
空で何かが光った気がしたんだ。
キュィィイイイイン
光ったのは一瞬だったので気のせいかと思った。
でも、気のせいじゃなかった。
一緒に歩いていた寧々ちゃんがどこか虚ろな目をして上を見ていたのだ。
それだけじゃない。早朝だから人は少ないが、寧々ちゃん以外の人も心ここにあらずといった感じであった。
何かおかしなことが起こっていると確信した私は寧々ちゃんの手を引いて家に引き返すことにした。
家に帰りさえすればお兄ちゃんがいる。お兄ちゃんならばこんな危機的状況でもどうにかしてくれるはずだ。
そう信じて帰路につく。
走り出してから5分ほど経った頃、ボーッとしていた寧々ちゃん突然声をあげて騒ぎ出した。
その声の調子はいつも通りの寧々ちゃんで、少し安心した。安心してしまった。
「おい待て!どこに行こうとしている!?そっちは学校じゃないぞ。」
「寧々ちゃんっ!よかった…。目を覚ましたんだね…。」
「何を泣いているんだ…。はぁ、今日のお前はどこかおかしいぞ。まぁいい。急いで学校に行くぞ。」
あまりにもいつも通りなので、私の方がおかしくなったのではないかと思った。
でも……、やっぱり違った。
「まったく…今日は何よりも大事な日なんだぞ。そのために昨日から準備してきたんじゃないか。私とお前は生徒会長と副会長なんだ。他の生徒の見本となるようにしないとな。」
「あはは…ごめんね、寧々ちゃん。今日が入学式だからかな?緊張でパニックになっちゃった「ちょっと待て。」…のかなって…え、何?」
「入学式?何を言ってるんだ。」
「何を言ってる…って、入学式!今日は新入生が入ってくる日でしょ!」
「ははっ。福。お前も面白い冗談を言うんだな。
今日は私達の真の支配者であるノリトリ星人様達の降臨祭を行う日じゃないか。」
そう寧々ちゃんが言った直後、上空に複数の円盤が飛び交った。
「おお!見ろっ!ノリトリ星人様の乗っているUFOだ。我々を支配してくださる方々が乗っていると考えると少しワクワクしてくるな…って、おい引っ張るな!だからどこに行こうとしてるんだ。」
私が思っている以上に事態は深刻だった。
早く手を打たないと手遅れになる。
自分だけが正気を保っていられるのは、お兄ちゃんのおかげだろう。
そう。お兄ちゃんに出来ないことなんてない。お兄ちゃんなら絶対に寧々ちゃんを、人類を助けてくれる。
何が真の支配者だ。今に見ていろ。お前達などお兄ちゃんの敵ではない。
あの日から2日。町は完全に奴らに支配されてしまった。
道行く人達は皆、揃いの服を着ている。ピチピチのスーツに身を包んだ彼らは特撮に出てくる戦闘員のような出で立ちだった。
宇宙人の侵略のスピードがあまりにも早かった。
寧々ちゃんは家に連れて帰ってからは暴れていたので縛り付けていたのだが、お兄ちゃんが作ってくれた装置を使うことで正気に戻ってくれた。
寧々ちゃんはすぐにこの状況を理解して、お兄ちゃんに戦える力を求めていた。
私にだけ負担をかけたく無いんだって。うれしかった。
とりあえず私に戦闘を任せて自分は相手を見極める力、解析能力を手に入れることにしたようだ。
でも寧々ちゃんと私は二人だけでは奴らを倒すには戦力が足りないので一緒に洗脳された人々を解放していき、人類救済戦線を組織することにした。
宇宙人に対抗するための武器は、私の護身用のためと称して作ってくれた物が大量にあるので戦う準備はばっちりだ。
ただ、私達が洗脳されていないことは出来るだけ奴らにばれないように潜伏しながら解放していく。奴らの動きを寧々ちゃんが解析して予測することで見つかることなく多くの人を解放していった。
途中で奴らに見つかって罠に嵌められたりしたが、特に問題にはならなかった。
そうして順調に解放していたのだが、問題が起こった。
戦闘服を着ているだけの人達は装置を使えば簡単に元に戻すことが出来た、出来たのだが元に戻せない子達もいたのだ。
宇宙人に体を改造されてしまって体を戻すことが出来ない。動物と合体させられて精神がぐちゃぐちゃになってしまい、洗脳が解けないらしいのだ。
寧々ちゃんが言うには動物と精神まで強く融合されてしまって、分離するのは難しいそうだ。
どうにかして救い出せないか。お兄ちゃんに相談してみたのだが……すぐに解決した。
動物の精神が洗脳解除の邪魔になっていると伝えると、すぐに動物の感情を沈めてくれる装置を作ってくれた。
この装置の効果はばつぐんで、すぐに洗脳を解除することが出来た。
そうして洗脳を解除された双子の姉妹の実と咲は、わんぱくだった。
獣の本能というものなのだろうか?敵を見つけたら私達の言うことを聞いてくれずに突っ込んでいくぐらいだ。
しかしこの二人、戦闘力でいえば私達の組織の中では私の次に強い。
敵のアジトに突撃した結果、全滅させたということも多くあった。
そうしてまぁ、重要な作戦以外は彼女達の好きにさせようということになった。
長い戦いだった。いろんな戦いがあった。
でも大丈夫。勝算はある。
お兄ちゃんがいれば負けるなんてありえないけどね。
お兄ちゃんと私の夢…よりよい世界を作るっていう夢を邪魔するあいつらだけは許せない。
絶対に倒す。
待っててね、お兄ちゃん。勝って人類の平和を取り戻してみせるよ。
登場人物紹介
・明野 亮
悪の組織の首領…ではない。
侵略された星を取り戻すレジスタンスのリーダーというのが正しいだろう。
妹がかつての自分の考えに感化されて悪の組織を組織したと勘違いしているが、
妹自身は兄の夢が世界征服ではなく、人々にとってよりよい世界を作ることだと思っているので、兄の考えているようなことになることはなかっただろう。
・明野 福
精神を支配する類の物は改造手術により克服されている。兄も同様。
兄を心酔しているので、宇宙人が攻めてきていることも当然把握していると思っている。
身体能力が異常に高く、宇宙人では倒すことが出来ない。
兄に渡された洗脳装置がなぜ問題なく作動したかというと、自ら洗脳にかかりたいという意思があれば洗脳されるので、人々に宇宙人の洗脳から解放されたい意思があったおかげである。
・保坂 寧々
洗脳を解除してくれた兄上のことを尊敬している。
解析能力を用いて宇宙人の隙をついていた。
双子の姉妹の洗脳が解けないと解析能力を持っていたせいで知ってしまい、絶望したりしたがそれでも容易く洗脳を解除する兄上を見て尊敬度が増した。
・徳井 咲と実
猫と混ざりあってしまった結果、獣の本能を抑えられないようになっているが洗脳前から結構わんぱくであるようだ。
猫耳は頭部から直接生えている。尻尾も直接生えている。
2人の装備はハンマーで、振り回しているだけでも敵が簡単に吹き飛んでいく。