月から聖杯戦争の勝者が来るそうですよ?(未完)   作:sahala

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 現実逃避に書いた第三章の予告。
 本腰入れて書けるのは来年かな。


第三章『そう……巨竜召喚』
第三章予告


 ―――箱庭七七五九一七五外門。“アンダーウッドの大瀑布”

 

 天へとそびえ立つ様な巨躯の水樹。

 その根元に建てられた地下都市では、老若男女と様々な住人達が忙しなく働き回っていた。

 アンダーウッドの収穫祭。

 数日後に差し迫ったその祭は、南側で屈指の大祭であると同時に十年前に魔王に襲われた“アンダーウッド”の復興記念も兼ねている。

 ある者は“アンダーウッド”の復活を願い、ある者は収穫祭でコミュニティの実力を示そうと張り切る。

 その為に大人は各々のコミュニティの出店の準備に追われ、子供は大人の使い走りとして働き回っていた。

 誰もが期待に胸を踊らせて祭の準備を進める中ーーー

 

「ちょっと。私のステージが用意されてないって、どういうこと?」

 

 “アンダーウッド”の中心。

 水樹の根元に設けれた運営本部で、一人の少女が不満そうな声を出していた。

 上質なルビーの様に紅い髪を伸ばし、頭から不釣り合いな程に大きい二本の角を生やした少女。

 彼女はスカートから伸びた爬虫類の様な尾を苛立たし気に振りながら、受付にいた木霊の少女に詰め掛けていた。

 

「そ、その・・・・・・申請はしたのですけど、どうしてもタイムテーブルが合わなくてーーー」

「言い訳は無用。私、口答えが大嫌いなの」

「ですけど、この通りステージのプログラムは一杯で、あっ!?」

 

 スケジュール表を取り出して説明しようとした木霊の少女から引ったくる様に紙を奪い取り、赤毛の少女はざっとステージの予定を眺めた。

 

「ふうん、最初はサラの開会の挨拶からなのね。それじゃ、この後に私のライブを入れなさい」

「そ、そんな!? その後は“ニ翼”のグリフィス=グライフ様や連盟のリーダーによるスピーチが、」

「キャンセルして良いから。というか、しなさい。私、あの馬肉嫌いなの」

 

 自分勝手な要求をする赤毛の少女に、木霊の少女はどう言ったものかと困った顔になる。

 

「サラは連盟の議長だからトップバッターを譲るのは仕方ないとして、後はムサい男か年寄りしかいないじゃない。そんな面子のスピーチなんて、眠くなるくらい退屈に決まってるわ」

「えっと、その・・・・・・」

「むしろここはオープニングから派手に飛ばして、観客(オーディエンス)のハートを鷲掴みにすべきよ。高まるリビドー・・・・・・サイリウムを片手に興奮する私の下僕(ファン)達・・・・・・私を知らない哀れな東や北の子豚達も収穫祭への期待が否応無しに高まるわ」

 

 ウットリと、酔いしれながら赤毛の少女は自分を抱き締める。

 提案は身勝手極まりないが、赤毛の少女も自分なりのやり方で収穫祭を成功させるという意気込みが渦巻いていた。

 少女はステージ上の役者の様に両手を広げ、高らかに宣言する。

 

「それを出来るのは・・・・・・そう! 雷鳴轟くヤーノシュ山より舞い降りた鮮血の歌姫! エリーーー」

「あらあら。冗談は貴女の歌声だけにして貰えます?」

 

 突如、赤毛の少女の後ろから冷ややかな声が響く。

 赤毛の少女が振り向くと、そこには新たに着物を着た少女が立っていた。

 歳は十三、十四といったところか。浅黄色の着物の上に白い袿を羽織り、手にした扇子で優雅に口元を隠していた。

 唯一、頭から生やした二本の角が人間と異なるが、それも少女の空色の髪を飾るアクセントとなっている。

 そんな見る目麗しい少女が、ニッコリと微笑みながら赤毛の少女に話し掛けた。

 

「貴女の歌を披露した日には、“アンダーウッド”は再び壊滅しますわ。いえ、むしろもう立ち直れないかも」

「はあ? 私の歌が分からないとか、アナタどういう耳をしてるわけ? 極東の蛇は耳が悪いのかしら?」

「ええ、全くもって救えないくらい悪いのでしょうね・・・・・・貴女の頭が」

 

 ピシッ!

 場の空気が音を立てて、ひび割れる。

 赤毛の少女は額に青筋を立て、着物の少女は目が笑ってない笑顔を浮かべ、木霊の少女はそんな二人をハラハラしながら目線を泳がせていた。

 

「へえ、言うじゃない。極東の島国は、分のわきまえ方も教わらないのかしら?」

「そちらこそ領地に引きこもってばかりだから、井の中の蛙なんじゃありません? いえ、それ以前の問題ですけど」

「私は全宇宙に輝くドラゴンアイドルよ。むしろ豚共がこぞって井戸に身投げするわね」

「ゴキブリホイホイとして?」

「私の歌を聞くために決まってるでしょ、このアオダイショウ!」

「ふん、メキシコドクトカゲ」

「ガラガラヘビ!」

「グールドモニター」

「コモチナメラ!」

「ノドジロオオトカゲ」

「ストーカーマムシ!」

「っ、ふん! ペッタンコ!」

「似たような体型じゃない!」

 

 ヒートアップした赤毛の少女の手に、マイクスタンドの様な形をした槍が現れる。

 

「どうやら教育が必要な様ね! 良いわ、下々の者を罰するのは貴族の務めよ!」

 

 対する着物の少女は、扇子を一閃させる。

 龍の彫刻が刻まれた扇子は、瞬時に鉄扇となって扇面を刃と化す。

 

「ええ、言って分からないなら力ずくで理解させてあげますわ!」

 

 二人の少女は対峙し、お互いの得物を構える。

 そしてーーー!

 

「やああああああああああああっ!!」

「シャアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「ヒイイィッ!? だ、誰かサラ様を呼んで下さい!! 二人がまた喧嘩し出しました!! お願い、誰か! 誰か来てええええぇぇぇぇっ!!」

 

 ドッカンバッキン! ボウッ!

 二人の破壊音をBGMに、木霊の少女の悲鳴が“アンダーウッド”に響き渡った。




さーばんとがふえるよ! やったね、ざびえる!

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