月から聖杯戦争の勝者が来るそうですよ?(未完) 作:sahala
そんな第6話。
3/19 一部文章の差し替えをしました。
“ノーネーム”の新たな指針を決めた翌朝。飛鳥、耀、十六夜、ジンくん、黒ウサギ、そして自分こと岸波白野はギフトゲームを受ける為に“フォレス・ガロ”のコミュニティを目指していた。 “六本傷”の旗が掲げられたカフェテラスの前を通ると、ウェイトレスの猫娘に声をかけられた。
「あー! 昨日のお客さん! 今から決闘ですか!?」
「君は確か………あの時のウェイトレスさんか」
昨日、ガルドにゲームを挑んだ時にその場で居合わせていた子だ。既に事情を察しているのだろう、自分達の前でペコリと一礼してくれた。
「うちのボスからもエールを頼まれました! 連中、ここいらではやりたい放題でした! 二度とあんな真似が出来ないくらいギッタンギッタンにしちゃって下さい!」
ブンブンと両手を振り回してシャドーボクシングする鉤尻尾の猫娘に苦笑しながら頷くと、一転して不安げな表情になった。
「ただ………“フォレス・ガロ”は今回のゲームを舞台区画ではなく、居住区画で行うらしいんですよ。しかも傘下のコミュニティや同士を放りだして、ガルド=ガスパー単身で!」
「舞台区画? どういう意味かしら?」
聞き慣れない単語に飛鳥が首をかしげると、黒ウサギが説明してくれた。舞台区画というのはコミュニティが保有するギフトゲームを行う為の土地だ。猫娘の話が本当なら、ガルドは誰の手も借りずに自分の寝床としている場所で決戦を臨んでいる事になる。
奇行としか言い様がないガルドの判断に一同で首を捻りながらも、情報をくれた猫娘にお礼を言って別れる。しばらく歩くと、ようやく目的地が見えた。
「ここが、“フォレス・ガロ”の居住区画です。ですが………」
黒ウサギが口をつぐんだ。他のメンバーも同様。それというのも、目の前にあるのは鬱蒼と樹木が生い茂る森林だったからだ。蔦が門にまで絡まり、木々は赤黒く変色している。これではまるで、
「………ジャングル?」
「虎の住むコミュニティだしな。可笑しくないだろ」
皆の言いたい事を代表した耀に、十六夜は何でもない事の様に呟く。そんな二人の横で、ジンくんは木々の一つに手を伸ばしていた。離れた場所にいる自分にも分かるくらい、樹皮が不気味な光を発しながら脈動していた。
「やっぱり―――“鬼化”してる。いや、まさか」
心当たりがあるのか、ブツブツと呟くジンくん。ふと、門柱を見ると一枚の羊皮紙が貼られていた。それには今回のゲーム内容が記されていた。
『ギフトゲーム名“ハンティング”
・プレイヤー一覧 久遠飛鳥
春日部耀
ジン=ラッセル
岸波白野
・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。
・クリア方法 ホスト側は指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
“フォレス・ガロ”印』
「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!? これはまずいです!」
羊皮紙―――“
「このゲームはそんなに危険なの?」
「いえ、ゲームそのものは単純です。ですが、このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで彼を傷つける事も出来ません!」
そう言われて、もう一度“契約書類”をよく読んでみる。
『ホスト側は指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“
“契約書類”にそう記さている以上、ガルドを傷つけるには指定武具でないと無効という事だろう。つまりガルドは自らの命をチップに、不利だった状況を一変させて五分の勝負に持ち込んだのだ。
「すいません、僕の落ち度です。初めに“契約書類”を作った時にルールを指定していれば………!」
「悔やむのはまだ早いよ、ジンくん」
後悔する様に唇を噛むジンくんを励ましながら、再度“契約書類”を見る。
「指定武具で討伐可能………つまり、最低でも何らかのヒントを残しているはずだ。そうでないとルール違反になる」
「Yes! ルール違反をした場合、“フォレス・ガロ”の敗北は決定! この黒ウサギがいる内は不正を許しませんとも!」
「なら問題ないわ。あの外道を叩き潰すのに、これくらいハンデがあった方が丁度いいもの」
「大丈夫。黒ウサギ達もこう言ってるし、私も頑張る」
愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる飛鳥と耀。予定は狂ったけど、ガルドを倒す事に変更はない。あとはここにいる自分達四人でゲームをクリアするだけだ。
チラリと十六夜の方を見る。ここで負ければ、昨日の宣言通りに彼はコミュニティを抜けるだろう。性格はともかく、彼の戦力は失うには惜しい。自分の視線に気付いたのか、十六夜はニヤリと笑った。
刮目させて見せるさ。自分もニヤリと笑い返す。そして自分達参加者は門を潜った。
門の開閉がゲーム開始の合図なのか、太い蔦が門に絡まって退路を塞いだ。つぎにこの門を潜れるのは勝敗が明らかになった時だ。辺りを見回すと、区画内の建物は全て木々に呑まれて原型を失っていた。歩道も下から突き上げて成長した植物によってレンガがバラバラに砕けている。これでは歩く事すら困難だろう。
「………近くからは誰の臭いもしない。もしかしたら建物に隠れているのかも」
「あら? 犬にもお友達が?」
「うん。二十匹くらい」
スンスンと鼻を鳴らしながら周囲を探る耀。ギフトで動物の力を得た耀はこの場にいる誰よりも五感が優れているだろう。
「ちょっと辺りを見てくるね」
言い終わるや否や、耀はあっという間に近くにあった樹の天辺に上っていた。あの動きは猫だな。大方、いつも一緒にいる三毛猫の敏捷性を会得しているのだろう。
「春日部さんがいるなら、不意打ちされる心配は無さそうね」
「いや、油断は禁物だよ。耀の五感すら騙せる方法でガルドが隠れてるかもしれない」
楽観的な意見を出す飛鳥を
「流石に警戒し過ぎじゃないかしら? あの虎男がそんな芸当を出来る様には見えないけど」
「ガルド本人が優れてなくても、姿を隠す道具とか持っている可能性があるよ。例えば―――」
そこで、はたと気付く。例えば………。その後に自分は何を言おうとしていたのか? いやそれよりも。見たことも無いはずなのに、なぜ姿を隠せる道具なんて発想が出て来たのか?
不意に頭痛がして、頭を抑える。そしてまた脳裏にフラッシュバックの様な映像が映された。暗く、空気が毒の様に肺を抉る森。そこに潜む、緑のマントに身を包む狩人。放たれる神速の毒矢。赤い少女が辛うじて防ぐも、本命の二の矢は■■■■の腕を掠り――――――。
「………君! 岸波君!」
はっと顔を上げると、飛鳥の顔が近くにあった。どうやら返事をしない自分を不審に思い、肩を揺さぶっていたらしい。
「大丈夫なの? 顔が真っ青だったわよ」
「白野さん、体調が悪いんですか? それならどこかで休んでいた方が………」
「いや、大丈夫だ」
心配そうにこちらを見る飛鳥とジンくんを手で制しながら、深呼吸をする。すると頭痛は嘘の様に治まった。
(今のは……一体………?)
さっきの映像を思い出そうとするが、もうノイズだらけになってまともに見えなくなっていた。また白昼夢を見ていたみたいだ。もしかしたら、自分の記憶に関係あるのかもしれないが、今はゲームに集中しないと。
「見つけた。この先の一番大きい館の窓に人影が見えた」
樹から跳び下りてきた耀が、荒れた道の先を指差す。普段とは違い、眼が猛禽類の様に金色になっていた。恐らく友達となった鳥の視力で遠くを見たのだろう。
「そう。居場所も分かった事だし、さっそく行ってみましょうか」
「はい。指定武具のヒントも見当たらない以上、ガルド本人が持ってるかもしれません」
飛鳥の提案にジンくんが同意したところで、自分達は館を目指すことにした。
「それにしても………」
無造作に伸びた樹の根でガタガタになった歩道を歩きながら、さっきから気になった事を口にする。
「飛鳥の服、どうしたんだ? 昨日とはずいぶん違うけど」
「ああ、これ?」
飛鳥が自身の服の裾を詰まんで見せる。良家のお嬢様を思わせるブラウスとロングスカートといった昨日の服装から、大粒の苺の様な深紅のドレススカートに変わっていた。ここがパーティー会場なら、飛鳥を華やかな印象で包んでいただろう。
「昨日の夜に黒ウサギの審判用の衣装を貰ったの。身を守るギフトが付与されてるそうだから、今日のゲームにピッタリだと思って」
そう言ってクルリとターンをすると、ドレススカートの裾が花弁の様にフワリと膨らんだ。
「そういう岸波君は昨日と変わらない様に見えるけど?」
「ああ、俺はジンくんからこれを貰ったから」
ベルトに差した、鞘に入れられたままの六十センチくらいの長さを持った短剣を指差す。小振りながら、しっかりとした刃で、十センチ弱程の柄の頭には熟れたサクランボの様なルビーが付いていた。ジンくんの話では、これを持っているだけで物理的な加護と霊的な加護が自分に付与されるそうだ。
「へえ、随分と立派な短剣じゃない。こんなのがよくあったわね」
「はい。短い期間でしたけど、先代のコミュニティに所属していた魔術師が作った物なんですよ。その人、『宝石』なんて
「みんな、静かに。館が見えてきた」
耀の声に、弛緩しかけていた空気が引き締まる。館の扉は無残に取り払われ、窓ガラスは軒並み割れていた。かつては豪奢だった外観は見る影もなく、塗装もろとも蔦に蝕まれて剥ぎ取られていた。
「人影が見えたのは二階。入っても大丈夫」
中に入ると、そこも例外なく植物によって内装が酷く荒らされていた。ガルドの自己顕示の権化だったであろう、贅をつくした豪奢な家具もまた無残に打ち壊されている。
「この奇妙な森は、ガルドが作ったのかしら?」
「………分かりません。舞台を作るだけならば、代理を立てられますから」
飛鳥の疑問に、ジンくんは首を振って答えた。しかしそれにしたって、奇妙だ。
「代理を頼んだにしては、罠が全く無かったな」
「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため………でも無かった。それが理由なら本拠に隠れる必要がない。ううん、そもそも本拠を破壊する必要がない」
自分の疑問を耀が引き継いだ。そう、この豪奢な館はガルドの支配欲が形となった物。それほど大事な館を存亡のかかったゲームとはいえ、ここまで無残に破壊するだろうか? 嫌な予感に襲われながら、人影が見えた二階を目指す。
「ジン君と岸波君はここで待ってなさい」
「ど、どうしてですか!? 僕だってギフトを持っています。足手まといには」
「そうじゃないの。上で何が起きるか分からない以上、貴方達には退路を守って欲しいの」
飛鳥にそう言われて、一階の踊り場で待つ事にした。悔しいが、戦った事が無いジンくんと実質的にギフトが使えない自分では非常事態が起きても対処し切れないだろう。飛鳥達なら、たとえガルドに遭遇してもギフトで上手く出し抜けるはずだ。そう思って待つこと数分後、
「GEEEEEEYAAAAAAAaaaaa!!!」
突如、凄まじい咆哮が耳に響いた! 何があったか確認する為に階段に目を向けると、飛鳥が血相を変えて駆け下りて来た。
「逃げるわよ!」
「い、いったい何が? それに耀さんが、」
開口一番、有無を言わせない口調の飛鳥にジンくんが引き留めようとする。
「
途端、ジンくんの目から光が消える。飛鳥を片手で担ぎ上げ、さらに自分も通り抜けざまにもう片方の手で担ぎ上げると、一気に走り出した。
「ジ、ジンくん!?」
驚いて声をかけるが、彼は返事をせずにあっと言う間に来た道を引き返し始めた。その疾走は普段のジンくんからは考えられない様な速度だ。
「もういい、もういいから!
門まであと半分くらいの距離で、ようやく飛鳥が停止の命令を出した。すると、
「わ、わ!」
「きゃ!」
「うわ!」
ジンくんは突然、力が抜けた様に後ろに倒れこんだ。そして自分達もまた折り重なる様に倒れこむ。
「い、今のは飛鳥さんのギフトですか? 自分でも信じられないくらい力が溢れて………」
「わ、私はそんなつもりじゃ無かったわよ」
いち早く起き上がった自分は、二人を助け起こしながら飛鳥に尋ねる。
「かなり焦っていたみたいだけど………一体、何があったんだ? それに耀はどうしたんだ?」
「えっと………二階の一番奥の部屋に大きな虎が待ち構えていたの。部屋の奥に置かれた白銀の十字剣を守っている様だった。ガルドはどこにも居なかったわ」
飛鳥の話で大体の状況は分かった。大方、耀は殿を引き受けてくれたのだろう。しかし、虎ということは、まさか―――
「飛鳥さん。恐らく………その虎はガルドです」
自分の予想を裏付ける様に、ジンくんは断言した。
「彼はもともと、人・虎・悪魔から得た霊格、三つのギフトによるワータイガーでした。ですが、その人の霊格を鬼種に変えられたのでしょう―――吸血鬼によって」
「吸血鬼?」
首を傾げる自分達二人に、ジンくんは手近な植物を手に取る。
「この植物にも鬼種のギフトが宿っているんです。この舞台を作り上げた人物と、ガルドに鬼種のギフトを与えた人物は同一人物でしょう」
「つまり、黒幕に吸血鬼が控えているって事か?」
「はい。そう考えれば全てに説明がつきます」
「そう。どこの誰か知らないけど、余計な事をしてくれたものね」
不機嫌そうに顔を背ける飛鳥。でも確かに黒幕が吸血鬼なら、この奇妙な舞台に納得がいく。もうガルドには人としての理性が残ってないのだ。吸血鬼の力で変えられた彼は、文字通り血に飢えた獣でしかない。だから本拠地を
その時、後ろの茂みからガサガサ、と音がした。
「誰だ!」
「………私」
茂みから出て来たのは、傷だらけの耀だった。右の脇腹から酷く出血して、血の跡が歩いていた道を紅く染めていた。
「か、春日部さん! 大丈夫なの!?」
「大丈夫………じゃないかも。凄く、痛い。泣きそうかも」
言い終えると同時に、倒れこむ耀を慌てて抱き受ける。服にベットリと血がついたけど、そんなのは些細な事だ。受け止めると、耀の身体は恐ろしく軽く………そして、冷たくなってきている。
「耀、しっかりするんだ! 耀!」
「ごめん、飛鳥………本当は、一人で倒すつもりだったけど、失敗しちゃった」
うわ言の様に呟く耀の手には、十字架を象った白銀の剣が握られていた。
十字架と白銀。どちらも吸血鬼が苦手とする物だ。これがゲームの指定武具なのだろう。
「飛鳥のギフトが……効かないから………私が、やらなくちゃって。ごめ……ん………」
「春日部さん!? しっかりしなさい、春日部さん!!」
「ま、まずいです! 出血が酷い! このままでは………!」
ジンくんが何を言いたいのか、先を言わなくても分かる。このままだと耀の命が危ない! なのに、自分はこうして冷たくなっていく彼女の身体を抱きかかえる事しか出来ないのか?
(違う………そうじゃない! そうじゃない!!)
頭に浮かんだ最悪の未来を否定する。そうだ、岸波白野。お前が予測する未来は正しい。そう、完全に忘却している事を除けば。お前は
瞬間、自分の頭の中で脈絡の無い様々な映像が流れていく。
沈没船の上で、クラシカルな拳銃を乱れ撃ちする女性と斬り合う紅い少女を見守る自分。
氷の城で、双子の様にそっくりな白と黒の少女に立ち向かう狐耳の少女を見守る自分。
サンゴ礁が咲く海底で、青い槍兵の攻撃を二本の剣で捌く赤い背中を見守る自分。
誰かの心の中で、炎を纏った槍使いの槍を余裕の笑みで止める金色の背中を見守る自分。
一つ一つの映像を見る度に、頭が割れそうに痛む。この映像が何なのか、自分は
「………白野さん?」
ジンくんが自分を不思議そうに見るのを他人事の様に思いながら、耀の傷に手をかざす。
「コード―――」
かざした手に魔力を込める。式は整った。あとは、実行するだけだ――――――!
「heal()、実行!」
手から温かな光が零れる。光は耀の傷へ吸い込まれていき………彼女の傷を塞いでいく。
「これは………治療のギフト!? そんな、これ程の重傷を治せるギフトなんて………!」
横でジンくんが何か騒いでいるが、意識を耀の傷へ集中させる。そして傷が完全に塞がり、出血が治まると顔色の良くなった耀が静かに寝息を立てていた。
「ふう………」
峠を越えたのを見て、ようやく一息漏らした。あとは安静にしていれば、大丈夫だろう。
「岸波君………こんな凄いギフトを持っていたのね」
飛鳥が感歎した様に呟くのを聞き、どうにか笑ってみせる。
「自分でも驚いているよ。こんな力が眠っていたなんて」
「春日部さんは、もう大丈夫なの?」
「ああ。しばらく横になっていれば、回復するはずだよ」
「良かった………」
ほう、と安堵を漏らす飛鳥。ここで耀が死んでしまったら、たとえゲームに勝っても後味の悪い結果になっただろう。何はともあれ、最悪の結末だけは防げた。
「さて、と。春日部さんの無事を確認できた事だし………二人とも、春日部さんを看ててあげて」
飛鳥は白銀の剣を手に取ると、まるで散歩に行くかの様な気軽さで立ち上がった。
「あ、飛鳥さん? まさか一人で向かう気ですか!? 無茶です!」
ジンくんの言う通りだ。この中で最も身体能力が優れた耀がここまでやられたのだ。加えて、“
「大丈夫よ。どんなに強くても知性の無い獣に負けないわ。―――それに、悔しいじゃない。春日部さんは私達じゃ勝てないと思って一人で戦ったのよ?」
「しかし、」
「そうだな。飛鳥一人じゃ難しいだろうな」
なおも言い募ろうとするジンくんを遮って、耀を静かに地面へ横たえらせる。
「俺もいく。二人で協力すれば、ガルドを倒せるはずだ」
「岸波君………。でも、貴方のギフトは傷を回復させるものでしょう? それだとガルドには意味がないんじゃ、」
「大丈夫だ。他の手段もある」
心配そうに呟く飛鳥を遮り、自分の手の平を見る。今なら思い出せる、自分は他にも様々な力を行使できる。この力が何なのか、まだ思い出せていない。でもやり方だけは鮮明に思い出せていた。まるで長年乗っていなかった自転車に乗り、運転を思い出せた様な感覚だ。
コード・キャスト。それが自分の行使する力の名前だ。
「そう。なら、期待してるわよ」
強気に微笑む飛鳥と一緒に、自分は館を目指して歩き出した。
はい、そんなワケで第6話終了です。
予定ならガルドと決着をつける所まで書く気でしたが、どうしても書きたいシーンを書いていたら一話分の文章になりました。やれやれ………。
読者からの指摘を受け、白野のコード・キャストを原作に近い表記にさせて貰います。ご了承下さい。