是非、読んでください!
雨梟と緑谷の試合は雨梟に軍配が上がった。
試合を終えた緑谷はリカバリーガールの保健所で治療を受けた後、椅子に座り壊れていない右手をじっと見つめている。
そんな時、オールマイトが入ってきた。
「あっ!オールマイト!」
「やあ。残念だったね緑谷少年」
「はい…強かったです。正直、最後の勝負は僕に有利な内容だった。だけど…」
「押し負けたね。でも、その右手を見る限り、力を制御してたんだろう?」
オールマイトは緑谷の右手を指差し、質問をする。
すると、少し曖昧な返事が返ってくる。
「…確かにしました。けど…あの時僕は志波くんに引っ張られるかのように最大出力が引き上がっていた…と思うんです」
「そうか…。あの極限状態で一時的に体が着いてきた…とでも言うべきか。まぁ、スポーツで言うところのゾーンの様なものだね」
緑谷は先程の最後の一撃の時、無意識のうちに最大出力を上回る力を発揮していたようだ。
それでも、負けた。
「はい。それで合っていると思います。あの時、30…いや、40%位の出力は出てました」
「ハハッ。志波少年は凄まじいな」
「はい。…僕、もっと強くなりたいです…!」
「分かっているさ。まずはライバル達の奮闘を目に焼き付けないとね。ほら、行くよ」
「は、はい!リカバリーガール!ありがとうございました!」
「はいよ。あんまり無理するんじゃないよ」
自分の土俵でも及ばなかった相手。
普通にあのまま戦っていたらすぐにやられていたであろうことは分かっている。
緑谷は決意を秘めてオールマイトを追いかけて部屋を出ていった。
一方で雨梟は、体のメンテナンスをした後に一旦客席の方に戻っていた。
「おーう!志波!お前あんなことまでできたのかよ!」
「おーす!すげぇだろ?水の力は無限大ってなもんよ!」
A組の面々と軽くこんな会話をして、空いている席につく。
すると、一緒に観戦していたらしい耳郎と八百万が雨梟の元にやってきた。
「志波!おつかれ!」
「志波さん!お疲れ様です!」
2人は流れるように雨梟を挟むように座った。
特に気にした様子もなく、雨梟は話し始める。
「おう!おつかれさん」
「ビックリしたよ!志波があんな力比べみたいな戦法とるなんて!」
「私も驚きましたわ!それに、増強系の緑谷さんに勝ってしまうんですもの!」
「それがよぉ…案外喜んでられねぇんだよな」
2人とも雨梟の緑谷戦で見せた最後の一撃には驚いているらしく少し興奮した様子でいる。
そんな2人とは打って変わって、雨梟は自分の右手を軽く握りながら言った。
「未だに右手が痺れてやがる。正直、デクが右手ぶっ壊れんのお構いなしに殴ってたら、負けてたのは俺だった。ほんっとに面白ぇヤツだぜ…!」
真面目なトーンで言う雨梟だが、好戦的な笑みを浮かべている。
そんな雨梟の横顔を見て、両サイドの2人が顔を赤くして悶えていたのはご愛嬌。
その後、2試合ほど一緒に観戦してから雨梟は席を立った。
・
雨梟は爆豪と切島の試合が始まったのを確認して、控え室に向かう。
例のごとく、精神統一を始めた雨梟は数分後ゆっくりと目を開ける。
「ふぅ~。是非とも全力でやり合いたいもんだぜ…轟」
雨梟の頭の中には、偶然聞いてしまった轟と緑谷の会話が頭の中を流れている。
聞いてしまった話は根っからのヒーロー気質の雨梟の頭を悩ませる問題としては充分だった。
ぼんやりとモニターを眺めながら考えていた雨梟は、爆豪の勝利を確認するとゆっくりと立ち上がる。
「………うしっ!言ってても仕方ねぇか!」
控え室から出て会場までの通路を歩いていると、曲がり角から誰か出てきた。
「おっいたいた」
その人物とは…
「エンデヴァー…僕に何か用ですか」
現No.2ヒーローで、轟の父親であるエンデヴァーだった。
どうやら、ここに来たのは偶然ではなく雨梟に用があるらしい。
雨梟は少し警戒するような姿勢をとりながら用件を聞いた。
「君の活躍見せてもらった。素晴らしい個性だね。強いし、多彩だ」
「それはどうも。…それで、結局何が言いたいんですか」
エンデヴァー自身、本心を隠すつもりはないのだろうが、薄っぺらい言葉に雨梟は苛立ちを覚える。
不快さを隠そうともせずに本題を聞く雨梟。
すると…
「ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる」
(こいつッ…!)
雨梟はすぐにでも叫びたくなる気持ちを抑えて、冷静に聞き返した。
「はぁ…。轟はそれを望んでいるんですか?」
そして、返ってきた言葉は…
「そんなことは関係ない。俺はオールマイトを超えるためにあいつを作ったんだからな!」
(もう…我慢ならねぇ!)
エンデヴァーは誇らしげに、笑みを浮かべながら言った。
この男は自分の野望のために息子を使っていると、自分から公言したのだ。
それを聞いた瞬間、雨梟の中で何かが弾けた。
「てめぇふざけんなよ…」
「…なんだ?聞こえなかったが」
「ふざけんなって言ったんだ!作っただぁ?轟は物じゃねえよ!お前みたいなクソに轟が翻弄されてるってだけで腹が立つ!」
「…」
人気の無い通路に雨梟の怒号が響く。
エンデヴァーは一瞬、面食らったような顔をしたが、今は睨み付けるように雨梟に視線を向けている。
雨梟は、そんなことお構いなしに続けて言った。
「確かに轟は強くなるだろうよ!もしかしたら本当にオールマイトを超えるかもしれねぇ!だけどなぁ!その時に隣にいるのはお前じゃねぇよ!」
親であったとしても、それは紛れもない悪意。
いや、親であるからこそエンデヴァーの諸行を許すことができない。
今ここに雨梟のやるべき事が決まった。
「轟をお前の下らない野望のための道具には絶対にさせねぇ!だから俺はこの試合で轟をお前の呪縛から解放させる!」
「…ふん。話にならんな」
話にならないと、雨梟に背を向けて歩き出すエンデヴァー。
その背中に向けて雨梟は吠える。
「おい!1つだけ覚えとけ…轟の未来は轟のもんだ!」
エンデヴァーが去った後、轟が待っているステージに視線を向けた雨梟は力強く踏み出した。
雨梟の目には明確な意志が宿っている。
(轟が踏み出すための1歩目を俺が…!!)
雨梟が雨梟であるための…そして、轟が轟でいれるための戦いが始まろうとしている。
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