死神のヒーローアカデミア   作:icy tail

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第16話

トーナメント準決勝。

プレゼントマイクの実況にも熱が入り、会場のボルテージも上がっていく。

 

『さァて!準決勝!盛り上げていくぜェェェ!イレイザー!!!』

 

『…うるせぇ』

 

会場の熱気とは裏腹に、轟はステージに上がってくる雨梟を冷めた目でじっと見つめていた。

 

「来たか」

 

「よぉ。…本気で戦う準備はできてるかよ?」

 

「…」

 

雨梟の言葉に轟は無言で視線を鋭くした。

どうやら、答えるつもりはないようだ。

そして…

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!まさしく!両雄並び立ち今!!志波!対轟!スタート!!!』

 

試合が始まった。 

 

「だんまりかよ。まぁいい。水天逆巻け!『捩花』」

 

「…いくぞ」

 

雨梟は素早く捩花を顕現させて構える。

それに対し、轟は初っ端から最大出力で氷を生み出した。

 

「"斬雨"!残念ながら俺にはそれは通用しねぇぞ!」

 

雨梟にそんな雑な攻撃が通用する筈もなく、水の刃でフィールドを覆う氷は真っ二つになった。

 

「ちっ」

 

不機嫌そうに顔を歪める轟に向かって、割れた氷の間から火の玉の様なものが迫ってきた。

雨梟の赤火砲だ。

 

「くっ…!」

 

「自分から視界を塞ぐなんて随分と余裕じゃねぇか」

 

辛うじて避けた轟の耳元で雨梟の声が聞こえた。

赤火砲を目眩ましにして背後に回り込んでいたのだ。

 

「…おせぇ」

 

轟はとっさの判断で振り返り様に氷結を発動した。

虚をつかれたことにより、出力の調整が効かず大出力の攻撃になってしまっている。

轟の攻撃は雨梟を飲み込んだ…かに思われたが、

 

「無駄撃ちごくろーさん。破道の六十三、雷吼炮!」

 

「なっ…があぁっ!?」

 

またしても、雨梟の声は背後から聞こえた。

さらに、今度は振り返る暇もなく強力な電撃と衝撃波が轟を襲う。

地面を跳ねるように転がる轟は氷の壁を作ることによって場外は免れたが、膝をついたまま立ち上がれないでいる。

 

「はぁっ…はぁっ。くそっ…!」

 

「ちっと考えが甘すぎるんじゃねぇの?俺はそんな甘かねぇぞ!」

 

「うるせえ…!」

 

そこから、数分間の攻防が続いたが、轟は終始翻弄され続けた。

その間も轟は氷結のみで戦闘を行い徐々に霜が左腕を覆っていく。

 

「震えてんぞ?使えよ炎」

 

「うるせぇ!俺はこの力だけで勝つ!今も!これからもだ!」

 

試合開始当初のクールな轟は鳴りを潜め、感情的になっている。

そんな轟の様子を確認した雨梟は、血の呪縛から解き放つための行動を開始した。

 

(そろそろ始めるか) 

 

「そうか…。ならお前、ヒーロー諦めろ」

 

「なんでお前にそんなこと…!」

 

「責任、とれんのかよ?」

 

「何をっ!」

 

雨梟の言葉に声を荒げる轟。

だが、

 

「おめぇがその力を使わなかったせいで助けられなかったやつらの責任をとれるのかって聞いてんだ!」

 

「っ!」

 

(多分、轟が力を抑えてる原因はエンデヴァーじゃねぇ。だとしたら…)

 

雨梟に言われ言葉に詰まった轟。

雨梟は緑谷との会話から導きだした答えを正面からぶつけていった。

 

「それによぉ!お前の母親はそっちの個性を使わないでくれって頼んだのか?」

 

「っ!お母さんは…」

 

(うし!ビンゴだ!)

 

雨梟の思惑通り、母親の名前を出すと急に顔色が変わった。

轟の頭の中では色々な記憶が流れているだろう。

畳み掛けるなら今だ。

 

「ちゃんと思い出せ!そして理解しろ!お前はエンデヴァーが作った人形なんかじゃねぇ!お前は轟焦凍だ!お前の個性だ!誰の物でもねえ!」

 

「俺は…!」

 

「轟焦凍!!!いつまでもあんなやつにとらわれてんじゃねぇ!!!自分の未来くらい自分で決めろ!!!」

 

「俺はッ!!」

 

徐々に轟の声に熱が籠っていく。

轟の忘れてしまった記憶が蘇り、頭に流れてくる。

 

「そんでお前自身が見せてやれ!『お母さんが産んでくれた俺は立派なヒーローになったんだ』ってなぁ!!!」

 

「俺はッ!!俺だって!ヒーローに…!!」

 

雨梟の叫びを聞いた瞬間、轟の中に燻っていた熱は再び燃え上がる。

そして、その気持ちに連動するように、轟の半身から炎が吹き出した。

 

「やっときたか!!!『焦凍』!!!」

 

雨梟の嬉しそうな声が会場に響く。

試合は最終局面に入った。

 

 

 

 

 

 

side 轟

 

 

 

 

 

『いいのよ、おまえはーーー』

 

この先をいつの間にか忘れてしまった。

 

「それによぉ!お前の母親はお前にそっちの個性を使わないでくれって頼んだのか?」

 

『いいのよ、おまえは。強く想う未来があるならーーー』

 

いや、自分自身で閉ざしていたのかもしれない。

 

「っ!お母さんは…」

 

「ちゃんと思い出せ!そして理解しろ!お前はエンデヴァーが作った人形なんかじゃねぇ!お前は轟焦凍だ!お前の個性だ!誰の物でもねえ!」

 

『いいのよ、おまえは。血に囚われることなんかない』

 

かつて、お母さんと見たオールマイトのテレビの映像。

憧れ、ヒーローを志す気持ちに熱が灯った瞬間が蘇ってくる。

 

「俺は…!」

 

「轟焦凍!!!いつまでもあんなやつにとらわれてんじゃねぇ!!!自分の未来くれぇ自分で決めろ!!!」

 

「俺はッ!!」

 

「そんでお前自身が見せてやれ!『お母さんが産んでくれた俺は立派なヒーローになったんだ』ってなぁ!!!」

 

いつの間にか忘れてしまっていたこの気持ちが…

 

『なりたい自分に、なっていいんだよ』

 

雨梟の…ライバルの叫びがトリガーとなり、今まさに、熱を取り戻し溢れだした。 

 

「俺はッ!!俺だって!ヒーローに!」

 

 

 

 

 

 

 

『焦凍。頑張って』

 

 

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっときたか!!!『焦凍』!!!」 

 

「…あぁ。すまねぇ。随分待たせちまった。色んな人を」

 

轟は憑き物が落ちたような、どこかスッキリとした顔で言った。

 

「ふっ、そうだな!待たせた分しっかりな?」

 

「分かってる。…それと、ありがとな。『雨梟』」

 

「おぅよ!んじゃあ決着着けるか!」

 

「あぁ!本気で行く」

 

この最高に昂った状態で、全力を出さないと言う気持ちは雨梟の中にはなかった。

 

「お前にここまでさせちまったからな!俺も本気でやる!まだ制御しきれてないが…」

 

(悪ぃな、捩花。ここで使うわ)

 

(止めやしないさ。初披露なんだ、しっかりやんな) 

 

(おう!サンキューな!)

 

雨梟は捩花をステージに突き立て、霊力を高めていく。

 

「ふぅ…」

 

すると、雨梟を包み込むように渦が発生し全身を飲み込んだ。

そして、覆った渦の向こうから静かだが良く通るな声が響いた。

 

「卍解」

 

その解号と同時に雨梟を覆う渦が強まり、会場中に圧力のようなものがのし掛かる感覚が支配した。

会場が異様な空気に包まれるなか、雨梟を覆っていた渦が弾けるように消え、姿を現す。

 

 

 

 

 

捩花沁槍(れっかのしんそう)

 

 

 

 

 

雨梟の手に握られている槍は一回り大きく、長くなり、三ツ又の部分は大量の水が渦巻き、一本槍の部分には蒼い炎が揺らめいている。

これが、雨梟の現時点での全力。

轟は雨梟から感じるプレッシャーに圧されながらも、興奮したように声を上げた。

 

「っ!!!こ、これが雨梟の本当の個性かっ!」

 

「本当の個性ってよりかは、捩花の真の姿だ」

 

続けて雨梟は言った。

 

「ふぅ。お互いに制御なんてまともにできねぇだろ?1発で片を付けようぜ!」

 

「あぁ。そうだな」

 

そうして、お互いに個性を発動し全力をぶつける。

轟は氷結によって冷やされた空気を熱によって膨張させて爆風を起こす。

一方、卍解により操れる水の規模、練度が底上げされた雨梟はステージを呑み込むほどの津波を発生させた。

 

膨冷熱波(ぼうれいねっぱ)!!!」

 

波沈大蒼淙(はじんだいそうそう)!!!」

 

お互いの技がステージの中心でぶつかり合う。

一瞬の均衡、そして…

 

「ぐっ…!呑まれるっ…!」

 

「うおぉらぁ!!!」

 

雨梟の発生させた津波が轟の技ごと呑み込んだ。

轟は津波によってステージから押し出され、場外。

 

「ふぅ…!また勝負しような!焦凍!」

 

「はぁはぁ…。あぁ、次は勝つ!」

 

準決勝第一試合は雨梟の勝利で幕を閉じた。

 

 




卍解

捩花沁槍(れっかのしんそう)

能力

水を操る能力は、単純に規模が大きくなり、自然的な影響を受けなくなった。
例えば、凍らない、電気を通さない、熱によって蒸発しない等。
それに加えて、炎の力を使えるようになった。
捩花沁槍によって灯った炎は、捩花沁槍の操る水でしか消えない。



技紹介

波沈大蒼淙(はじんだいそうそう)

人工的に津波を発生させる。
やろうと思えば、1つの町を丸ごと呑み込むほどの規模の津波を起こせる。



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