相澤先生の指示にしたがい生徒たちはグラウンドに集まっていた。
「よし。今から個性把握テストを行う。ちゃっちゃと動けよ」
『個性把握…テストォ!?』
入学式に出席するものだと思っていたためか驚きを隠せないでいる生徒たち。
入学式やガイダンスのことを聞いている生徒もいるが適当に流されているようだ。
「中学の頃からやってる体力テストを個性ありでやる」
そう言って生徒たちを見回し誰かを探している相澤先生。
そして、雨梟で視線が止まった。
「志波。中学の時、ソフトボール投げ何mだった」
「78mです」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。思いっきりな」
相澤先生はボールを投げ渡し、少し離れたところに位置どった。
「分かりました。水天逆巻け『捩花』!」
(遠くに飛ばせばいいんだよな?なら…)
雨梟はボールを持っている方の手のひらに意識を集中させて水を圧縮させていく。
(圧縮させた水を打ち出すイメージ…!)
「
雨梟が突きだした手から圧縮されていた水が勢い良く打ち出され、ものすごいスピードでボールが飛んでいく。
ボールはやがて落ちていき、地面と接触した地点までの距離が相澤先生が持っている小型のタブレットの様なものに映し出される。
そこには…
『921.4m』
と出ていた。
その記録を生徒たちに見せながら相澤先生は言った。
「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を作る合理的な手段」
見ていた生徒たちは口々に面白そうなどと言っている。
入学初日なのだ。
少し甘い考えも仕方がないかもしれない。
だが相澤先生はそれを許さない。
「面白そう…か。よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し…除籍処分としよう」
『はぁぁぁぁぁ!!?』
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ…これが雄英高校ヒーロー科だ」
こうして波乱の個性把握テストが幕を開けた。
・
最初の種目は50メートル走。
この種目では機動力に優れた個性を持っている生徒が有利で、今の所は個性『エンジン』の飯田がトップのようだ。
次は雨梟の番。
「瞬歩が使えりゃな…まぁ、んなこと言っても仕方ないか…」
雨梟は愚痴をこぼしながらスタート位置につく。
ちなみに、捩花は最初のソフトボール投げの時に顕現させてそのままだ。
『よーい…スタート!』
「『捩花』嵐揮流!」
スタートの合図と共に嵐揮流でゴールまで一直線に飛び抜けた。
『3.26秒』
「ふぅ~。やっぱ50メートルじゃトップスピードまでいかねぇな」
飯田には勝てなかったが全体二位の記録だった。
続いて、握力。
「握力かぁ…」
(握る…圧…圧力…おおっ!水圧!キタコレ!)
雨梟は頭の中で考えを巡らせ、結果的にグリップ部分を水で覆い圧力をかけると言う発想に行き着いたようだ。
(んーと…手のひらの表面とグリップを水で覆って…)
「…ふんッ!!」
バキッ!
「あ、あれ?壊れちまったよ…」
雨梟が今できる最大限の圧力をかけると測定器が壊れてしまった。
『∞』
断トツ一位だった。
その後、立ち幅跳びでも嵐揮流で空中にとどまれると言うことで『∞』。
反復横とびと上体起こしはなにも思い付かずに普通の記録。
長座体前屈は水を手の形にしてできるだけ遠くに伸ばした。
持久走は飯田と『創造』の個性をもった八百万のバイクとデッドヒートを繰り広げた末に一位を勝ち取った。
「ふぅ。次のソフトボール投げで最後だな」
(さっきより飛ばせると思うんだよなぁ…どぉすっかね)
雨梟が一人で頭を悩ませていると緑谷がやって来て話しかけてきた。
「志波くんの水を操る個性って調節が相当難しいと思うんだけど…どうやってあんなにできるようになったの?」
「緑谷か。あー、俺は10年間ほぼ毎日のように練習してたからな…慣れみたいなもんだ」
「や、やっぱりそうだよね…」
「そう言う緑谷は個性使わねぇの?」
「い、いやっ!僕は…全然調節ができなくて…使うと体が動かなくなっちゃうって言うか…なんと言うか…」
「そうなのか…まぁそれでも使わなきゃならねぇんだったら動かなくなる部分は出来るだけ小さい方がいいよなぁ」
「っ!!?確かに壊れるならーーー」
雨梟の発言に何かを見つけたのか一人の世界に入ってぶつぶつ言い始めてしまった。
別に邪魔することもないので放っておくことにしたようだ。
そんな時。
「すげぇ!∞がでたぞ!」
誰かの声でそちらを見ると、麗日が『無重力』の個性でボールにかかる重力を無くし∞を叩き出した。
「おー。まるで風船…おおっ!?」
(閃いたッ!)
そして、雨梟の番。
自信満々で開始位置に着く。
「俺のとっておきを見せてやるぜ!」
こんなこと言ってるがさっき思い付きました。はい。
雨梟は右手で輪っかを作り、そこに息を吹き掛ける。
すると、シャボン玉が出来上がり、ボールをのせて飛んでいく。
「また∞がでちまうなぁ!!」
∞が出ると確信している雨梟はボールの方を見てもいない。
その時、誰かの声が耳に入った。
「あっ…風が…」
その声がやけに鮮明に聞こえて、我にかえりボールの方に振り向くと風に流されて逆の方向に進んでいくシャボン玉が目に入った。
「…嘘だろ」
『0m』
「…いやっ!でも1人2か…」
「志波はさっき1回投げたから今ので終わりな」
「…」
相澤先生の無慈悲な言葉に雨梟は絶望し、言葉をなくしたのだった。
結局…
『921.4m』
充分な記録ではあるが少しポンコツな雨梟なのであった。
そして、全種目が終わり結果発表。
「んじゃパパッと結果発表」
相澤先生が端末を操作すると順位が映し出される。
「よっしゃ!一位!…だが緑谷が…」
雨梟は一位ではあったのだが、結果的には緑谷が最下位だった。
せっかく仲良くなれるかもしれない緑谷が除籍になってしまうのは悲しいものがある。
どうにかならないか考えていると…
「ちなみに除籍はウソな」
『!?』
相澤先生の言葉に一部の生徒が呆気にとられている。
そんなことを気にもせずに続ける。
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
ほとんどの生徒が絶叫する中、雨梟は…
「…………なん………………だと……」
何と表現したら良いか分からない顔で一番驚いていた。
・
初日の学校が終わり帰り道。
前の方に緑谷を見つけて声をかけた。
「よぉ。リカバリーガールのとこ行ったのか?」
「し、志波くん!う、うん!すぐに治るって!」
「そうか。良かったな」
緑谷はさっきの個性把握テストで痛めた指の治療でリカバリーガールの所に行っていたようだ。
「うん!さっきは志波くんのアドバイスのお陰でなんとかなったよ!」
「あれはそんな大層なもんじゃねぇよ…ん?飯田か」
二人でそんな話をしながら歩いていると、飯田が合流してきた。
「やぁ志波くん。緑谷くん。緑谷くんは指治ったのかい?」
「あっ!飯田くん…!うん、リカバリーガールのおかげで…」
「そうか。ならば安心だ。それと…先程の個性把握テスト驚いたよ志波くん!凄まじい個性だな!」
「ははっ!凄いのは個性だけじゃねぇぞ?」
雨梟は自分の力には自信を持っている。
自信を持つほどに修行をこなしてきたのだから。
3人で話しているともう1人麗日が寄ってきた。
「あー!お三方駅まで?」
「む?君は∞女子」
「おおー。まる子ちゃんじゃねぇの」
「∞女子!?まる子ちゃん!?えっ!?」
「あはは…麗日お茶子です!えっと、飯田天哉くんに志波雨梟くんに緑谷…デクくん!だよね!!」
「デク!!?」
「え?だってテストの時、爆豪って人がデクって」
話を聞くと小さい頃につけられた蔑称らしい。
「でも『デク』って…『頑張れ!!』って感じでなんか好きだ私!」
「デクです!」
「緑谷くん!!」
「あっはっは!おもしれぇなデクは!」
「志波くん!?」
「コペルニクス的転回…」
「いいのか!?蔑称なんだろ!?」
そんなこんなで4人で駅に向かって帰っていった。
初日から息の合う友人を見つけられてようである。
波乱の初日が幕を閉じここから雄英高校での生活がスタートする。
技紹介
・撃潮
手のひらに水を圧縮させて撃ち出す。
感想お待ちしてます!
評価も是非!