水難ゾーンでの戦闘を終えた雨梟は空を飛びながら辺りを見渡していた。
「んー。どこか…」
あの後、無事に乗り切った4人は次の動きを話し合い、空を飛べる雨梟はフィールド全体の状況の把握を、他の3人は広場の方に向かった。
雨梟が空から観察していると少し遠くの方で大きな電撃のようなものを捉えた。
「あれは…上鳴か?…とりあえず行くか!」
電撃が上鳴の個性だと当たりをつけた雨梟は凄いスピードで向かっていった。
山岳ゾーン。
ここには、耳郎、八百万、上鳴が飛ばされていた。
今まさに、上鳴の個性で敵を一掃した所だったのだが…
「手ぇ上げろ。個性は禁止だ。使えばこいつを殺す」
「上鳴さん…!!」
「やられた…!!完全に油断してた…」
上鳴の全力の放電で敵を全滅させたと思っていた3人だが、地面に潜って隠れていた敵が上鳴の背後から現れ上鳴が人質に取られてしまっていた。
敵は慎重になっているようで、隙をついての奇襲もやる前に防がれてしまった。
「今からそっちに行く。動くなよ」
「ど、どうすれば…」
「何か方法は…」
必死に考えているが、この絶望的な状況を脱する方法が全く思い付かないでいた。
そうこうしている間にも敵は少しずつこちらに向かって歩いてくる。
なすすべもなく、諦めかけていたその時。
「縛道の六十二『
「っ!?ぐあっ!!?」
どこからか、光の棒の様なものが飛んできて上鳴を人質に取っていた敵だけを壁に磔にした。
絶望的な状況が一転、何が起きたのか分からない様子の二人を他所に耳郎はある人物を思い浮かべる。
「っ!もしかして…!」
「な、なんですの!?」
「ウェイ!?」
そして、3人が声のした上の方を見上げるとそこには…
「よぉ。助けに来たぜ」
捩花を肩に担ぎ空中にたたずむ雨梟の姿があった。
「志波ー!!」
嬉しさに思わず叫ぶ耳郎。
「大丈夫だったか?」
「うん!志波のお陰でなんとか!」
「なら良かった。そんじゃ俺はもう行くな?」
「あっ…う、うん!」
「お前らも落ち着いたら皆がいるところに行けよー!」
そう言って雨梟はまた飛んでいってしまった。
耳郎は少し寂しげに雨梟の背中を見つめている。
「はぁ…もう誤魔化せないなぁ」
ものすごい速さで鳴っている胸に手を当てて呟く。
「カッコ良すぎるって…あんなのズルい」
ピンチに颯爽と現れて助けてくれる。
しかも2度目だ。
目を瞑って先程の助けてくれた時のことを思い出す。
「…っ///こ、ここは戦場!こんなことしてる場合じゃない!」
先程の光景を振り払うかの様に頭を振って冷静さを取り戻す。
「よし!ヤオモモ!上鳴!行こう!」
「ウェーイ!」
「…」
「…あれ?」
返事が返ってこないのを不思議に思い振り返ると…
「…志波さん…私のヒーロー///」
頬に手を当て、うっとりとした表情で雨梟が飛んでいった方を見つめる八百万の姿があった。
「ヤ、ヤオモモ!?」
「ウェ、ウェイ…」
これにて山岳ゾーン決着。
・
山岳ゾーンで耳郎達の救出を終えた雨梟は、とりあえず皆がいる広場に向かって飛んでいた。
「どうなってるか分からねぇ!急ぐぞ!」
1秒でも早く到着するようにトップスピードで移動し、遂に広場に到着しする。
「っし!到着!…っ!?先生!」
着地した雨梟が目にしたものは、脳みその敵に組伏せられている相澤先生の姿だった。
(駄目だ!こう言う時こそ冷静に…助ける方法を考えろっ!)
幸い、敵はまだ雨梟に気づいていない。
相澤先生を助けるには今しかないのだ。
助ける算段を整えた雨梟は敵の前に飛び出した。
「先生!少し手荒になるけど…我慢してくださいね!」
「…なんだよ。今度はガキか」
「『捩花』!
敵が気づかれたが、阻害されるほど近くないため構わずに仕掛ける。
雨梟が技を発動させると、脳みそ敵と相澤先生の下の地面に半径1メートルほどの水の円が出来上がり、そこから勢いよく水飛沫が上がった。
そして次に…
「縛道の三十七『
投げ出された相澤先生だけを霊力で作った網のようなものでキャッチした。
「よっしゃ!成功!」
「…はぁ。なにやってんだよ脳無」
敵の呆れたような声が耳に入ったが気にせずに取り敢えず皆の所に相澤先生を避難させた。
「デク!無事だったか!」
「志波くん!…っ。ひどい…!」
雨梟が合流したことに嬉しそうに歩み寄ってきた緑谷だったが雨梟が抱えている相澤先生を見た瞬間に顔を歪ませる。
「ああ。こんなになるまで俺らの為に戦ってくれてたんだ。少し休んで貰おう…デク頼めるか?」
「う、うん!志波くんはどうするの?」
「俺は…あいつらをぶっ飛ばしてくる」
「えっ!?ちょっ!無理だよ!相澤先生でも敵わなかったのに…!」
「大丈夫だ。そんじゃ先生のこと頼んだぞ」
「あっ!し、志波くん!」
雨梟は緑谷の制止を聞かずに敵の方に向かっていった。
策があるわけではない。
だが答えは単純だ。
ただ…
「許せねぇ…!」
どんなに敵が強かろうが関係ない。
自分より強い人が負けた?
オールマイトを殺せる?
まだガキだから?
「それがどうした…」
戦う理由なんて決まってる。
それは…
「俺が…ヒーローだからだ!」
・
「おい。脳無立て」
敵の中心人物、死柄木弔の声に従い起き上がる脳無。
「あんなガキになにやられてんだよ…早く殺しに行くぞ」
「させねぇよ!」
脳無を伴って入り口の方に歩き出そうとした所で雨梟が広場に到着した。
「ああ。さっきのガキか」
「散々好き勝手やりやがって…覚悟しやがれ!」
(確実に敵は格上。長期は不利だな…)
敵を見据えながら頭で冷静に考える雨梟。
「ちっ…ムカつくガキだ。脳無やれ」
死柄木の命令を聞いた脳無は一直線に雨梟に向かっていく。
それもものすごいスピードでだ。
「っ!?はやっ…」
(受け…切れねぇ!)
想定していたものより圧倒的に早く、強い攻撃に咄嗟に受けの姿勢はとったものの後ろに吹き飛ばされる。
雨梟は壁に激突し大きく砂煙をあげた。
「…なんだよ。所詮はガキか。行くぞ脳無」
死柄木は興味を失ったかの様に視線を外し、入り口の方に向き直った。
その時…
「
背後から雨梟の声が響いた。
慌てて振り返ったがもう遅く、いきなり出現した沼に腰辺りまで沈んでいく。
「危なかったぜぇ…咄嗟に後ろに飛ばなかったら死んでたなぁ!」
煙が上がっている方に目を向けると、雨梟が服を手ではたきながら出てきた。
「くそっ!…おい!脳無!」
脳無は抜け出そうともがくが逆にどんどん沈んでいってしまうようだ。
「残念だぁ!そいつみてぇな頭使えねぇ脳筋野郎にはこう言う足止めが1番なんだよ!」
「おいおいマジかよ…」
死柄木は今の自分の状況に固まってしまっている。
雨梟は動けない二人を確認すると確実に仕留めるための行動に出る。
「全力で行くぞ…!」
雨梟は霊力を高めていき、詠唱に入る。
「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」
次第に空気が重苦しく張りつめていき、雨梟の背後に無数の光の矢が浮かび上がる。
「なんだよあれは…!おい!脳無!なにしてんだ!」
抜け出そうとするが意味がなく逃げる術は残っていない。
そして…
「破道の九十一!『
雨梟が技を発動すると、浮かび上がっていた無数の光の矢が脳無に降り注ぎ、十字の大爆発を起こした。
それにより、辺り一体に煙が舞い視界を塞ぐ。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
(これで駄目だったらマジでやべぇな)
荒く息を吐きながら敵のいた方に目を凝らす。
雨梟は煙が晴れる瞬間…なにかを見つけて力なく呟いた。
「おいおい嘘だろ…」
雨梟が見つけたものは、先程全力の攻撃を見舞った脳無だった。
「無傷…かよ」
動けずに呆けている間にも脳無の拳が迫ってきている。
だが、雨梟は防ぐこともできず、モロに攻撃をくらい吹き飛ばされてしまった。
「脳無に超再生が無かったら…危なかったよ」
雨梟は無傷だと思っているがそうではない。
実際に脳無は頭こそ庇ったものの、左半身が吹き飛んでいた。
だが、超再生により傷を負っていないように見えてしまっていた。
「少し焦ったが…今度こそ終わりだ」
脳無の渾身の一撃が直撃したのをその目で見ていた死柄木は今度こそ雨梟から視線を切ろうとした。
だが…
「…ぐっ…!はぁっ…はぁっ…まだだ…!」
「っ!?な、なんなんだよ!お前は!」
大量の血を流しながらも、立ち上がってくる雨梟。
死柄木は自然と一歩後ずさった。
「てめぇらが…俺より強かったら…俺が諦めるとでも思ってんのか…?」
雨梟の目は全く死んでいない。
むしろ先程よりも強い意思がこもっている。
(俺が…俺がここで退いちまったら!皆、死んじまう…やるしか…ねぇ!)
雨梟が覚悟を決めて、捩花を地面に突き立て霊力を最大限に高め始める。
「…卍」
そして、力を解放しようとした次の瞬間…
大きい音を立てて入り口のドアが吹き飛んだ。
「もう大丈夫…私が!来た!!」
雨梟は現れた人物が誰かを理解すると、力を緩めて座り込んだ。
緊張の糸がきれてしまったようだ。
「遅ぇよ…『オールマイト』!」
遅れていたオールマイトがやっと駆けつけた。
戦況が傾く。
決着は近い。
技紹介
・昇流泉
任意の場所に円上の水の膜を張って水飛沫をあげる。
壁などでも発動可能。
・水沼
敵を沼に嵌めて動きを封じる。
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