感染転生者の活動日記   作:ゆう31

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六章無事終了(なお精神無事崩壊の模様)


感染転生者の活動日記

◯月◯日 晴れ

 

突然だが日記をつける事にした、というのも私が私である為に必要な事だと言われたからだ。

 

先ず最初に言おう、私は転生者だ、記憶は定かではないがこの世界が『アークナイツ 』という架空の物語に類似している事から、似た様な世界、もしくは同じ世界に転生した事になった。

 

そして私はその中でも特に物語の根本に関わる感染者になってしまったのだ。

 

その時の精神的ショックから前世の記憶がフラッシュバック、もとい人格までも影響した上、これが安定しない。

 

人格を定着させ安定する為にもこの日記は欠かさず書いていく事にする、勿論誰にも見せる事は無いだろう、何時でも手元に入れておくとしよう。

 

……感染者になってしまったが、それを私の友人は非難もせず、迫害もせず、受けていれてくれた事に涙が溢れそうになった。

 

その時、友人である少女の姿に既視感を覚えた。

 

この先レユニオン・ムーブメントを過激な組織に変貌させる指導者でありカリスマ的人物……になるかもしれない少女によく似ている。

 

その事に気付いてひどく困惑した、こんな思いやりのある優しい少女が”あの“『タルラ』と同一人物だとは思えない。

 

タルラといえば主人公であるドクターのロドスの最大の敵、ラスボスというにふさわしい存在だ、生憎と物語の全てを覚えているわけでもないが、これぐらいは覚えていた。

 

正直どうしたらいいかわからない、だけども友人関係を切るわけにもいかない、未だ少ない生だがそれでも数年間共に育って生きているのだ。

 

……もういい、めんどくさい。

 

考えるのはやめよう。

 

頑張って生きよう。

 

 

 

◯月×日 曇り

 

私のアーツが分かった、結晶の生成、対象の結晶化だ。

 

結晶化、目に見える対象を結晶に変貌させる、はっきり言って危険すぎる、ようはオリジニウムの生成を行える事と同義であり、つまり私に近付く=鉱石病を患うという事に他ならない。

 

それでも彼女は一緒に居てくれた、だから彼女が感染者になるのは必然だったのだろう。

 

いずれ何処かで何らかの形で感染者になるのは分かっていた、それでも私が原因で感染者になってしまったのを私は……ッ

 

(震えた文字でこれ以上は読み解けない)

 

 

◯月△日 曇り

 

昨日は散々だった、私は人を不幸にしてしまう事に酷く動揺し鉱石病が悪化するかと思ったが、友人である彼女の一言で救われた。

 

未だ十数年しか生きていない少女だと言うのにこんなにもカリスマ性に満ちているのは私が思い描く未来の彼女なのだろうと思う反面、一体何があったのか疑問だ。

 

そんなおかげもあって今は落ち着いている、あのまま感情が暴走してしまったら天災を起こし、そして鉱石病で死んでしまったかもしれないので本当に彼女には助けられた。

 

彼女以外の他の周りの人たちには私、ひいては彼女自身が感染者であるとバレていない、彼らは感染者を見つけ次第始末すると物騒なので、バレるわけには行かない。

 

……ただそれは、今のところうまくいっているだけであってこれから先は分からない、何かきっかけひとつで全てが変わってしまう。

 

どうにも悲観的になってしまうが、この世界に感染者の住む世界は余りにも……救いがないんだ。

 

ロドスにでも保護してもらおうかとも思ったが……何というか、それは最後の手段にしたかった、私は主人公の裏に隠れた、まるで何でも知っているかの様なケルシー先生を信用できなかった。

 

きっと悪い人じゃあないんだろう、何かされるわけでも無いんだろう。

 

……本当の理由は、近くにいる彼女を見ていたい、彼女が『タルラ』であるとは限らないが、私が付いていればレユニオンのあり方ももっと“らしく”なって行くんじゃ無いかと、そう思ってしまうのは、傲りだろうか。

 

友人の思想はシンプルだ、感染者に対する迫害を無くす事だ。夢物語を語る彼女の言葉に私は惹かれた、友人の言葉に惚れてしまったんだ。

 

その事を言ったら「私と君は親友だろ?」と笑われてしまった。

 

……照れるなあ。

 

 

◯月◇日 曇り

 

怒涛の1日だ。

 

まず最初から話そう。

 

事の発端は小さな喧嘩だった、意見の食い違いがやがて暴力に発展していってしまう、良くあるケースだ。

 

それがたまたま、彼女のアーツの制御が緩まっていってしまって、とんでもない熱で殴った人間を溶かしてしまった。

 

正直言ってその人が溶けたことはどうでも良い、嫌いな考え方の人間だった、むしろ良くやったと言っても良い……流石に目の前で溶けた人間を見て動揺しなかった訳ではないが。

 

むしろ溶かした本人が困惑していたし、何より場所が悪かった、広場の中心の様な場所で分かりやすく原石製品を使用せずアーツを使った事が周りに広がってしまった。

 

私はこれから起きる逃走劇を一早く察知して彼女を連れてこの要塞から抜け出す事にした。

 

それから暫くは私につられる形だったが、混乱が収まると冷静な考えでこの要塞から抜け出すルートを考え始めたようで、私はそれに従う事にした。

 

道中、感染者を消す為の部隊に見つかり戦闘になったが、➖➖➖(潰れていて読めない)はもう人を殺す事に躊躇は無かった。

 

それがどういう意味を保つのか、私は多くを察せない。

 

ただ、だからといって彼女だけに人殺しの罪を背負わせる事は出来なかった、➖➖➖の死角を狙った一人の足を結晶化させて再起不能にした。

 

私も感染者だということが広がり、私も殺そうとした者たちを見える範囲で片っ端から結晶化させようとして。

 

彼女に止められた、その力は鉱石病を著しく悪化させると割と本気で怒りながら止められた。

 

ならばと弾丸の結晶を生成し追手の足を狙う、外れる弾丸は着弾した地面から木の結晶に変化させて相手の動きを封じる。

 

そうやって逃亡劇を続けていく内に、なんとか巻けた。彼女も私も無傷とはいかないが目立った傷は無い。

 

足が必要だ、生身の体だけでこの要塞から出る事は難しい、検問を敷かれる前に車に乗ってここから逃げる事にした。

 

それからは上手く隠れつつ、手頃な車を見つけてこの要塞から出られた。幸運だったというべきだ、もしまた見つかったとして、年端もいかない私たちでは二度同じ様に感染者殲滅部隊を退ける事は難しかっただろう。

 

車は私が運転している、何処で運転を覚えたのかと言われたがそれは秘密だ、転生者の特権ともいうべきかな?

もう後戻りは出来ない、彼女に付いていく他道は無いだろう、少なくとも今はまだ。

 

「絶対に生き抜いて行こう」と言う決意に溢れた彼女の言葉に私は頷いた。

 

 

◯月☆日 雨

 

起きたら➖➖➖と目があった。

 

唇が触れるんじゃないかぐらいに近づいてたので思わず声を出して仰け反ったのは仕方ないだろう、それを見て親友は笑っていた。

 

先日要塞から逃げ出した私たちだが、当てもなく車を移動させているわけでは無い、というのも彼女には当てがあるらしく、私はそれに従って運転している。

 

途中オリジムシや狼が襲ってきたが私が何をするまでもなく彼女が瞬殺した、さすが未来のレユニオンの指導者(おそらく)だ、現時点でとんでもなく強い。

 

私はというとアーツの使い方について試行錯誤していた、生み出す結晶の硬質はある程度自由が利いており、触れれば簡単に割れるモノも作れれば鋼鉄よりも固くする事も出来た。

 

私の目に見える範囲なら制作する事が出来るし、見える範囲の物質を持ったモノなら何でも結晶化する事が出来るようだ。

 

ただこれは、例えばフロストノヴァのような極低温で凍て付き周囲を凍らせるアーツと似て非なるモノだ。

 

私の結晶化に温度は無い。この結晶は冷たく感じる事もあればまるで熱湯にように熱く感じる事もある、細かいアレはわからないが術アーツの類である事は間違いない。

 

その様子を見ていた彼女は少し咎めるような視線を送っていた、私がアーツを使う事を余りと良しとしていないようだ。

 

このアーツは問答無用で対象を結晶化する圧倒的な力があるが、それ故に体の負担が大きい、私の中にある血中源石濃度の進行が早まるようだ。

 

私も死にたくはないので余り使わないようにするが、それはそれとして私にはこれしか今の所戦う術が無い。

 

剣でも使うかと思い結晶で作った剣で手合わせしたが、10秒も保たなかった、私に剣の才能はない様だ。

 

「君は何もしなくて良い、私が守る」と言ってくれるのは嬉しいが、私だって役に立ちたい、足手まといにはなりたくないんだ。

 

 

その時の照れ顔は大変可愛かったです。

 

 

◯月★日 曇り

 

ようやく目的地に辿り着いた、予想していたがやはりレユニオン・ムーブメントの拠点のようだ、どうやってそれを知ったのか、タルラが私を転生者だと知らない様に、タルラもまた私に隠している事があるのだろう。

 

……彼女はここに着いてからタルラで呼ぶ様にしてくれと言った。

 

その事について何か思う事が無いわけでもない、それでも目の前の少女は私の親友であり、行動を共にするパートナーだ。

 

信頼を置いているモノ同士、タルラが私に言わないならそれでも良い、隠し事の1つや2つ、私とタルラの間に何の問題にもなり得ない。

 

ここからタルラがレユニオンの指導者になると思うと、なんだか上手く説明はつかないが、ワクワクしてきた。

 

「感染者は自らの立場に誇りを持ち、積極的に力をつけ、そしてそれを行使すべきだ」

 

この文言がレユニオンの信念である、出来る限り暴力以外の方法を模索出来る様に、私はタルラについていくつもりだ。

 

私が間違えないとは思わない、もしかしたら私の知識通りに容赦無用の過激な集団になるのかもしれない、それでも私は不思議とタルラと共になら出来ると思ってしまった。

 

これが良いか悪いかは分からない、それでも確固たる決意を持った彼女のカリスマ性は、私の心を掴んで離さない。

 

……とりあえず、今日の宿から決めようか。

 

 

□月◯日 晴れ

 

日記を書く暇もなかった……本当に忙しかった、前に日記を書いてから数年は経過した。

 

やっと落ち着いたので、出来事をまとめようと思う。

 

まず最初に言うべき事はレユニオンの指導者がタルラになった、ありとあらゆる手段を使ってトップになる彼女は末恐ろしいものを感じたが、タルラらしくもありなんだか誇らしい気分にもなった。

 

それと同時ぐらいに私もレユニオンの幹部になった、主にタルラの秘書的な役割をしているが、私が運用する部隊も出来つつある。

 

それからタルラに紹介される形で、他レユニオンの幹部とも顔合わせをした、リュドミラやパトリオット、エレーナ、それからーーーああいや、誰にも見せない日記とはいえ本名を書くのは少しまずいか。

 

ふとした時に言ってしまいそうだ、それで怒られたくはない。

 

中でもフロストノヴァとは話が合う、アーツの能力の使い方も似ているので時折こうした方が良いとか教授している。

 

……といっても、私もフロストノヴァも理由なくアーツを使うと寿命が縮むので、意見交換だけだが。

 

後は時折メフィストとファウストと食事をしたりする事もある、このレユニオンに入った当初は散々だったご飯は私が全ての労力を持ってして”マシ“なモノとした、その事にこの二人は感謝をしているらしい。

 

二人だけではないが、知識では飯がまずい理由でレユニオンから抜け出す人も居たので、そういう者達には慕われてしまった。

 

……美味しいとは言えないまでのマシな料理を提供できるようにしただけでも、私がレユニオンに与えた功績は大きい様だ。

 

話が脱線してしまった。

 

まあ兎に角、紆余曲折とあれレユニオンに属する感染者も多くなり、1つの組織として纏まってきている。感染者にも正統な権利はあると言う事を、どうやって示していくか。

 

その事でタルラと少しだけ揉めてしまった、タルラは私の考えを「何百年と掛かる計画」と揶揄するが、それではダメなのか?

 

……結局は、ウルサス帝国のような感染者に対して排他的な姿勢を持つ国家がある限り、私の目指している未来には辿り着かないのだろうか。

 

 

□月★日 曇り

 

最近、タルラの様子がおかしい。

 

私に隠し事をしているには今更なのだが、思想が過激になっているように思う。

 

何があったのか問いただしても、「知らなくても良い」の一点張りだ。

 

……それは、なんというか。

 

悲しいよ。

 

□月□日 雪

 

Wと一緒に傭兵として一部隊を殲滅させた。

 

思えば彼女はタルラと同じぐらいに謎が多い、敵部隊に対して何処か楽しそうに殲滅する彼女は少し苦手だが、ファッションで気が合うので仲は悪くないと思う。

 

傭兵として得たお金は後々に必要になると言っていたが、それはやはり……そういうことなのだろうか。

 

やはり私一人では物語の流れは変えられないのだろうか?

 

レユニオンは居心地が良いし、幹部のみんなも、私の部隊も、それ以外の人達も皆好ましいし、私はこの空間が続いていくならそれでも良いと思っている。

 

その事をWに言ったら、軽く笑って「そういう所、私は好きよ」と言われた。

 

どういう意味だろうか?

 

 

△月□日 晴れ

 

感染者に対する迫害が深刻化してきた。

 

何故?非感染者も感染者も、同じ人類だ。

 

……本当に、暴力以外で解決出来ないのか?

 

△月△日 晴れ

 

私の部隊【クリスタルレンズ】は主に工作と情報収集を得意とする部隊だ、直接戦闘するケースは極めて稀で、今回はその極めて稀なケースにぶつかった。

 

感染者を迫害する集団的殲滅部隊とかち合い、そのまま戦闘。

 

スノーデビル小隊程ではないにしても、私の部隊は直接戦闘でもそこそこやりあえる、それでも苦戦を強いられてしまったのは、向こうの指揮官が私よりも策略を練るのが上手かったからだ。

 

一人も死なせる訳にはいかない、私は長らく使っていなかったアーツを解放して、周囲の地形を結晶化させた。

 

結果的に被害はゼロ、私は足元がぐらつき意識を失ってしまったが、それ以外は何も問題はない。

 

心配する部下達に「君達が死ぬよりマシだ」と言ったが尚更心配されてしまった。

 

……大丈夫だ、私は死なない。

 

タルラを一人にはさせないよ。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

p.m 3:52 曇り レユニオン本拠地。

 

ある一人の工作員から見た彼女について。

 

一言で語るのは難しいな、タルラと同期にレユニオンに入ってあっという間にタルラはトップ、彼女───『ミラー』は幹部になった。

 

ミラーはなんというか、このレユニオンでは珍しいタイプの奴だ、別段非感染者に恨みがある訳じゃないようだし、このレユニオンに入った理由もタルラについていく為だって言っていた。

 

だからって俺たちを下に見るわけじゃないし、分け隔てなく平等に接してくれる、ああそれとこのレユニオンの食事情を改革した人物でもあるな。

 

あんまり感情を表に出さないタイプなんだか、あの時ばかりは珍しくキレてたね、「こんな不味いものが飯と言えるか!」だってよ、笑えるだろ?俺らはそれでも良いと思ってた飯を一口口に入れた瞬間料理ごと結晶化させちまったんだよ。

 

それからは早かったな、どこからそんな知識を得たんだって疑問に思うほどの土地開発、農業や水産業の構築、まるで新しい文明だったよ。

 

……戦闘力について聞きたい?

 

圧巻だよ、アレは。

 

一度だけ、彼女と、その小隊の『クリスタルレンズ』に助けてもらった事がある。

 

まるで一つの災害だ、今まさに斬りかかろうとしてきた敵兵士を瞬く間に結晶化させて、俺とその他のレユニオンの兵士以外の周辺を結晶世界に変えちまった。

 

銀世界ってのはああいう事を言うんだろうな。

 

それ故に使い過ぎると体が崩壊するって欠点もある、だから普段はサブマシンガンの二丁持ちだな、特製品らしい。銃の使い手としても一級品でよくファウストと競い合ってたりしてるよ。

 

それとタルラは勿論、幹部全員と仲が良いな、ほど良い関係を保ってるよ。

 

彼女のお陰でレユニオンの雰囲気も良いし……タルラが道を切り開く者なら、ミラーは道を整える者って印象だ。

 

ミラーが居るから付いて行ってる奴も多いぜ?実際。

 

俺もその一人だしな……久しぶりだったんだよ、美味い飯食うのは。

 

ああでも、あんまりミラーを困らすなよ?ミラーが可愛いからって告白とかするなよ?

 

ああ別にミラーは怒らないけど、剣持ったタルラが追いかけて半殺しに来る。

 

……わかる、怖いよな。その気持ちわかるぞ。

 

まあ、こんな所だな、じゃあ仕事に戻るか。

 




勢いだけで書いてるので誤字等々多いかも、続きはまだ無い。多分また書く、なんか感想くれたら嬉しいで〜す。

で、フロストノヴァはどこ……?ここ……?

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