ではどうぞ
□月◇日 晴れ
チェルノボーグに侵入出来た。
転生者の知識ではレユニオンは綿密な計画を立て、天災まで計算に入れて、タルラの圧倒的実力と合わせてチェルノボーグの防衛システムを瓦解させた。
具体的な日数は分からないが、数日もすれば此処は戦場になるだろう、その前に少しでも此処にいる犠牲者を少なくさせなければ。
クリスタルレンズの隊員達も一部を除いて全て侵入済み、後は手筈通りに残っている民間人と、大勢の感染者をチェルノボーグから離脱させる。
私はクリスタルレンズの中でも二人戦闘力に優れている隊員を連れている、工作した情報に釣られて
それだけじゃない、ヘイズを逃した事をヴィクトリア王国が勘付き始めてきた、あの王国も私を狙っている。これを期に
後はなんだ?まあ何にせよ私のアーツを研究し、自らの手の内に収めたい企業や国は少ないまでも一定数いる、私は奴らにこの体を渡すつもりはない。
そうなるとどうしても私一人では出来ない、場所が場所だ。私の痕跡がレユニオンが来る前に発覚してしまったら全ての作戦が水の泡、私は彼らが来るまでアーツは使えない。
短機関銃を扱うこの腕も中々になってきたが、近距離に私は対抗できる手段が少な過ぎる、それを補う為に二人私と行動してもらう事にしたのだ。
フルフェイスで隻腕な盾使いの彼と、どこか可愛らしい双剣使いの少女はパトリオットのお墨付き、この二人がいれば近接面は安心できる。
戦闘以外の目的にも必要な二人だ。
今頃レユニオン・ムーブメントは混乱しているだろうか、その事に申し訳なさを感じるが、あのままウルサス帝国に戦争をふっかけてしまったら、他国から見た私達はただの無法者と成り下がってしまう。
統率の取れ、あくまでも平和的手段で感染者の環境を変えようとしている私たちの努力がそこで終わってしまう。
だが、私を囮にすれば少しでも『大義名分』を得た行動だと認識する筈、それにウルサス帝国は敵が多い、レユニオンでない感染者からの目もそうだが、そもそもあの帝国は他国と戦争していない時期の方が少ない。
これを期に潰したいと思う国は少なくないと踏んでいる、表舞台に上がってこないまでも、裏でレユニオン・ムーブメントを支持する国や企業は現れるだろう。
……何より
より良い未来に繋げる為に。
□月☆日 曇り (夕方)
一日たった。
潜入し潜伏し、垂らした釣り糸に魚が引っかかるのを待っている。
すると垂らした釣り糸に引っかかる前に、別のモノが引っ掛かった。
隊員の一人から「怪しい場所を見つけた」と連絡を受け、地形情報を転生者の知識と照らし合わせると、そこが『ドクター』の眠っている石棺の場所と合致した。
よく見つけてくれた、後であの子には飴ちゃんをあげよう。
今回チェルノボーグに潜入した理由の数ある内の一つに、ドクターへの接触も含んでいた、ロドス・アイランドと信頼を築き上げる為に現状は一番効果的に働く状況にあり、私はこの機を逃すつもりは毛頭無い。
すると「その人に何を見出したんですか、隊長」と双剣少女に問われた、確かにその疑問も最もだろう、他の者からしたら得体の知れない人だ。
私自身、転生者の知識で彼が記憶喪失になる事を前以て分かっていなかったらロドスと協力しようとは思わなかったと思う。
『ドクター』は確かに学者として、
ただ、Wが見たような『悪魔』としての一面は、戦場を見据える目は人としてではなく“駒”として扱う人物へと変わるという面だ、それが戦争とは無縁だった筈の彼が変貌してしまった姿なのか、元々なのかは知らないが。
しかし記憶が消失したドクターの在り方は好きだ、好ましい、人として失ってはいけないものを持っている。
そしてそれはテラの、感染者の新しい光になってくれると私は期待せずにはいられないんだ、この世界の
だから彼と手を組みに行く。
ごめんねアーミヤ、先に起こすよ。
□月☆日 曇り (夜)
遂に襲撃に遭った、私は少しでも襲撃を避ける為にシルエットを隠す外套と、フードを深くしているが何かしらの追跡能力が奴らにはあるのだろうか、すれ違い様の一撃に盾使いの彼が反応し、路地裏での戦闘は開始された。
練度はそこそこ、統一感には欠ける事からライン生命の刺客だろうか?何にせよ申し訳ないが此処で眠っていけ。
湧いて出た狙撃者達をその引き金を引く前に私の短機関銃で撃ち落とす、サブマシンガンだからといって遠距離に分があると?笑わせるな、私はそこまで甘くないぞ。
近付いてくる戦闘員を私は気にしなくていい、私に近付く前に数回の斬り合いで行動不能にし、避けようのない意識外からの攻撃を重厚な盾で守り、そのまま盾で押し潰す。
二人の連携は流石だ、やっぱり一緒に来させて正解だった。
鎮圧は時間の問題だ、そう考えて少し気が緩んだのが失敗だったのか、私は次の瞬間大きく吐血し、視界がふらついた。
とても銃を扱える状態じゃない、私は地面に崩れ落ちそうになる体をなんとか踏ん張る。そうして踏ん張って気付いた。
視界がおかしい、急に変色した方の目が、左側が見えにくくなった、傷を負った覚えはない。
いや──────まさか。
私が倒れても戦闘は続いてる、二人は残った刺客を全て倒しきった後に急いで私の元にやってきて心配してくれた、双剣少女の肩を借りて立って、目の前に写った隻腕の彼が震えた声で私を呼んだ。
私は鏡を取り出して自分の顔を見る……なるほど、こうなったか。
左目が結晶に覆われていた、左側の視界は完全に閉ざされたといってもいいだろう。
私は持って来ていた眼帯を着けて左目を隠す、双剣少女が悲しそうに私を見つめるが、眼帯姿の私はどうだ?かっこいいだろ?と言ってみると私から顔を逸らして、表情を隠して「そうですね」とだけ言う。
……ごめんね。
このタイミングでこうなることは読めなかったが、いずれそうなるんだろうとは思っていた、目で良かった。これが腕や、足だとしたら身体機能に影響する、歩けなくなるのが一番の問題だ、それだけは避けたい。
片目ぐらいくれてやる、まだ視界は閉ざされていないぞ。
私は力強く意識を保って、足を踏み出した。
□月◆日 ???
辿り着いた、チェルノボーグの中核エリア、彼の眠っているその施設に。
周りの安全を確認した後、直ぐに私の医療知識と助手に隻腕の彼を使い、ドクターの治療を開始する。
私はこの日の為に医療についてしっかりと学習し、一定レベルでの医療行為を問題なく出来る様にしている。
というより私が何をするまでもなく隻腕の彼の言う通りにやれば良い。
彼は盾を持つ前は医者を夢見る好青年だったらしい。鉱石病で虐げられ、片腕と共にその夢を潰されてしまったが。それでも知識を失ったわけでは無い。
彼の助言と私の知識を総動員してドクターのオペを開始する、目に見える傷などはないが、長い眠りから起きるには些か体温が低い、健康に保たせる必要がある。
此処で私がやることは至って単純、ドクターを起こして、ロドスの面々が到着するまで話す、私の時間が許す限り彼に私の知る全てを教えよう。
自分が何者なのか、此処は何処なのか、何をすべきなのか、私が出来る範囲で助言しよう。
到着してからはアーミヤ達と行動するのがベストだろうか?レユニオンとロドスが衝突しない為にも付いていくべきだ、ロドスが同胞達と接触する時に私がいるといないとでは、いた方が遥かに良い。
だが此処にドクターがいる事を私が知ってしまっている異常性は彼女達からすれば異質そのもの、何か言い訳を考えないといけないか?
とはいえ妙に簡単に潜入できたな、そもそもチェルノボーグ、ウルサス帝国はなぜロドスのドクターを此処に?
驚異たり得ると判断したのだろうか?ドクターの動きは読めないと思ったのか、それとも……これはただの考察、私の取るに足らない考えに過ぎないが。
ドクター自ら記憶を消しに此処に来たのかも知れない。
正気で生きるにはこの世界は残酷過ぎる、誰かが皆何かに固執してないと、簡単に自分を保てなくなる。
私だって➖➖➖➖➖➖➖➖(塗り潰されている)
だけど前に進む足を止めることは私には出来ない、立ち止まる事を私は知らない。この体は進むしかない、進み続けて歩み続けて、やっと手に入れるモノがそこにあるから。
君もそうなんだろう?ドクター
休む時間はそろそろ終わりだよ、君には待ってる人がいるんだから。
さぁ、起きて。
dr.➖➖➖
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
??月??日 ??
プロローグ。
「さぁ、起きて」
その言葉が私の意識を徐々に覚醒させていく。
声のした方に振り向いて見れば、眼帯を付けた彼女はそこに存在していた。
天使のような輪っかを光らせた彼女は、触れたら壊れてしまいような姿のように見えるのに決意を宿した黄昏色の瞳がそれを感じさせない、所々が灰色な黒い髪で、背丈は高くも低くもなく、白色の外套を身に纏っていた。
「おはよう」
お、おはよう。
「自分の名前は分かるか?」
そう言われて私は自分の名前を言う、自分の名前を忘れる筈がない。
「では他の事は?」
そう言われて思い出そうとして、何も思い出せない事に気付く、自分の名前以外の、自分が何者なのか、そもそも此処は何処なのか、なぜ此処にいるのか、全てがわからない。
記憶喪失、という事だろうか。
「先ずは君自身の事を教えてあげよう」
そう言って彼女は私が何者であったのかを告げる、曰くロドス・アイランドという企業のトップ3の一人だったらしい、神経学者でありながらロドスの黎明期からリーダーとして軍事的な指揮官をも務めていた人物。
それが私のようだ。
「いまいち実感が湧かないか?」
当たり前だ、本当にそれが自分なのか?君が嘘を言っている可能性だってあるじゃないか。
「む……信用出来ないか?まあそうか、今の君は何も分かっていない、いきなりこんな事を言われても何が何やらだろうな」
ところで君は?そのロドスという企業の一人なのか?
「違うよ、そうだな、君は私をどう見る?ロドスの一員か?友人か?それとも無関係の人物か?或いは君の命を狙いにきた刺客だったり?……ああ、恋仲の類では無いよ」
質問を質問で返された……。
少し考え、そのロドスの企業の一人ではないと思う、だからと言って自分に関わりのない人物ではないだろう、命を狙いにきた者とは思えない。
友人、だろうか。
「ふふっ……ではそうしよう、君が記憶を失って初めての友人は私になってしまったな?」
少し嬉しそうに言う少女は場所が場所じゃなかったらまるで年頃の少女の様だ、しかし本当に此処は何処だろうか?疑問が疑問を呼ぶ。
「隊長、侵入者だ……あのロゴはロドスじゃない、レユニオンでもない、ウルサスだ」
双剣を手にした少女は事務的に私と話していた彼女にそう告げた、すると先ほど自分に見せた表情を消す。
「帝国が何故、つけられてたか?……まあいい、此処で殲滅する」
「分かった、作戦は?」
「そうだな……」
悩んだ様子で彼女が私に振り向いた、そして私を見ると頷き、柔らかい表情で私を見つめる、何だ?
「なぁ君、記憶を失ったとはいえ、指揮官としての腕は失ってない筈だ、私を使ってみろ、これから来る敵に対して適切な指示をして欲しい」
それは──────無理だろう、自分は記憶喪失で、これからどうするかも分からない、何も分からない状態の自分に何を期待しているんだ。
「出来るさ。君なら」
何を根拠にそんな事を?
「信用しているからさ」
──────信用、か。
「改めて名乗ろう、ロドスの指導者。私の名前はミラー、今はそれだけ分かっていれば良い」
ミラー、初めて聞いたと言うのにまるで何処かで聞いたような響きだ、記憶を失う前の私は彼女に会った事があるのだろうか。
他二人も私の指揮に従ってくれるようだ、そこにミラーのような信用はないが、どこか自分が試されているような感覚がする、私を見極めようとしているのだろう。
未だに右も左もわからないが、私を信用していると口に出す彼女を蔑ろにする訳にもいかない、思考を切り替えて、今の状況を確認して──────頭に展開した戦術を引き出す。
正面の扉が強引に開かれ、武装した兵士達がこの場所に進入してきたと同時にこの場を切り抜ける最適解を瞬時に思い付き、ミラーとその部下であろう二人に指示を出す。
「良い指示だ、ドクター」
今この瞬間だけは、自分がどうすれば良いか理解できた。
感想評価、誤字報告ここすき等々ありがとう〜モチベになります〜。
CEOちゃん……。
ランキング乗ったみたいっすね、感謝!アークナイツの新イベも予定決まったし育成しないとなあ。
次は週末あたりに投稿できたら良いなーって感じ。