☆月□日 晴天
ロドスに出会った。
少し語弊がある、より正確に言うならロドスのトップの一人、ドクターと出会った。
これが記憶を失う前のドクターかと、新鮮な気持ちになった、少なくとも確かに、私の知る知識のドクターと似ているようで似ていない、不気味だ。
出会ったからと言って私に敵対する意思は無いし、それは向こうも同じだったようで私としては助かった。
「最近のレユニオンは過激な集団だと聞いたが、君は違うらしい」とはドクターの言葉だ、ドクターと会話していると思う事は➖➖➖➖➖➖(文字が潰れていて読めない、意図的に潰された様だ)
彼、或いは彼女と私の鉱石病に対しての思想はとても良く似ていた、今からでもロドスに来ないかとも誘われ、それもまた良いかもしれないと思う、だが私には背負うべき責任とやるべき責務がのしかかっている。
何より親友を一人には出来ない。
そう告げると少し残念そうにして、いつでも君を待っていると言った。
悪い気はしなかった。
☆月◯日 晴れ
パトリオットと行動を共にするのはこれが初めてだ、レユニオン幹部の中でも一番の古老で、軍人気質な彼と行動を共にするには少し緊張してしまう。
その緊張が伝わったのか、そう固くならないで良いと気を使われてしまった。
パトリオットはレユニオンの食事改善を行った私に一定の信頼があるようで、厳格な性格でもやはりレユニオンの食事は不満だったのかと少しおかしくなった。
話してみると、他の幹部の人たちとはモノの見方が変わっているようで、非感染者というより、ウルサス帝国の現状の体制を敷いている存在に対して強い敵意を抱いている印象だ。
「君はどうなんだ、何故レユニオンに居る」そう問われて、私は少し言葉に迷った、私は非感染者に対してそれほど強い憎しみがある訳でもない、パトリオットのように帝国の、国家の闇を作る人物に対しても、憎しみとまでは行かない。
感染者が平等にしっかりとした権利を持った一人の人として全世界にそれを伝える為に居る、これが私の考えだ。
……それと、タルラを一人にしてはおけない。
そう言うと、パトリオットは頷いて先を進んだ。
良かった、納得してくれたようだ。
☆月×日 豪雨
久しぶり、というかこの豪雨に外出するのは気が滅入るので自宅にいる。
レユニオン幹部になってから貰った一軒家だが寝る事と書類作成やその他諸々以外に使っていない、女の子らしいものの類が少ないのは、単に家に物を置かないからだ。
一人の時間というのも珍しい、基本的には他の幹部や、そうでなくても外出した時は高確率で誰かに会ったりする。
少し寂しい。
何かをしていない時に私は一人でいる事が嫌いのようだ、初めて知った。
誰かが玄関にやってきたようだ、扉を開けてみるとそこにはフロストノヴァがいた、どうしたのだろうと聞いてみると、遠征帰りで偶々寄ったらしい。
そういえば、フロストノヴァ好みのウィスキーを買っていたのを思い出した、家で飲まないかと誘うと快く受け入れてくれた。
こうやって誰かが会いにきてくれるのは嬉しい事だ。
この関係がいつでも続いてくれるよう、私も頑張らないとな。
☆月◇日 晴れ
サーミの伝統のログハウスの製作技術が欲しいと言われたので、私がサーミに行く事にした。
ログハウスの製作技術が欲しいというのは建前で、本当の所は飛空装置の運用テストだ、タルラ自らやると言っていたが万が一が起きても困る。
そう言うとタルラは「君に万が一が起きたらどうする」と言って、言い合いになってしまい、だが最終的にタルラが折れて私が使う事にした。
無事サーミに辿り着くことが出来たので、手頃な要塞がないか探して入る事にした。
何かいい手土産はないかと物色していると、声をかけられた。聞き覚えのある声だ、私の中の知識がこの声はサーミ出身のミステリアスな学者だと告げる。
タロット占いを最も得意とし、カードゲームにも造詣が深いギターノだ。
どうやらタロット占いをしているのだが客が来ないとの事、確かギターノのタロット占いは素晴らしいとの事なので、興味本位に占なってもらうとしよう。
……料金が割高だから客が来ないんじゃないだろうか?
早速タロット占いが始まる、タロットカードがシャッフルされ、六芒星のように配置されていく、ヘキサグラム法でのタロット占いらしい。
何か質問して欲しいと言われたので、私は親友とうまくやれるのか、今後大きなことがあっても関係性は崩れないか聞いてみる事にした。
1枚目は逆位置の運命の輪のアルカナが出た、急速に運気が落ちて、現状が悪化していく、ただその変化はあくまで一時的なことから、変化の到来を告げる事が過去に起きた?と言われた。
たしかに、言われてみれば当てはまる、感染者になって現状が悪化したが、それは後に起きる変化の到来を告げる言葉でもあったからだ。
次に2枚目は正位置の魔術師のアルカナ、現在は起源やチャンス、創造と捉えて、新しい可能性を自ら切り開いていく、と言われた。
もう私はこの時点でギターノの占いに釘付けになってしまった、まるで年頃の少女のように次を急かしてしまう。
苦笑しつつギターノが3枚目を開く、結果は逆位置の世界のアルカナだ、このままの未来では答えにたどり着けない中途半端な状態を表し、未完成という意味合いが強まるようだ。
続いて4枚目を開く、対応策や未来に対するヒントのカードらしい、結果は正位置の力のアルカナ、自らの目標を強い意志で、達成することが出来れば3枚目の世界のカードは正位置になるはずだとギターノは言う。
5枚目は相手の気持ちを示すカードらしい、これは正位置の女帝のアルカナが出た、物質と精神面で満たされた気持ちを表しているようだ。
……嬉しいけれど、恥ずかしいな。
6枚目は相談者の願望、相談者の気持ち、つまりは私の事だ。
結果は月のアルカナ、月が欠けていくかのように、その人の心が不安になっていくようすを表し、将来が見通せない気持ちが強く出ていると言われた。
そして最後の七枚目、結果は星のアルカナ、理想や希望など、心が煌くような現実の到来。
最終的に、心の扉が開くかのように、あなたの世界が輝きだすとの事だ。
ギターノの占いが必ず100パーセント当たる訳ではないが、満足した。
ギターノも面白い占いが出来たと満足してお代は要らないと言ったがそういう訳にもいかない、少し多めにお金を置いて、ギターノに別れを告げる。
ギターノは最後に、これは現時点での占いで、状況によって変わっていく事もある、だから最後は貴女の心の持ちよう次第だと言われ、私は改めて決意する。
私の望む未来を掴むために。
先ずは手土産を探す事にした。
☆月★日 晴れ
この前の飛空装置の運用テストで分かったが、アレは私やサンクタ族でなければ扱えない事が判明した。複雑な操作を強いられる為、機械の造形に理解のある種族でなければただの鉄のガラクタだ。
量産するのは無理だろう、そのまま私が譲り受ける形となった、といってもこの飛空装置を使いながら戦闘を行なったりするのは現状難しい、移動手段にしか使えないだろう。
それでも移動面のコストを考えると遥かに楽だし、重宝するだろう。
しかし両親は何故あの都市に居たのだろうか。
両親がサンクタ族であり、私もサンクタ族なら普通はラテラーノ公民としてその地域から離れる事は無いと思うが。
私自身の謎が深まるが、自分の出身にそこまで興味がある訳ではない、結果的にタルラに出会い今に至るなら種族など問題にはならないだろう。
感染者に種族間での問題など、些細な事だからだ。
☆月△日 曇り
メフィストが歌を歌おうと頑張っている所を目撃してしまった。
彼の非感染者に対しての恨み、所業は私としてはあまり褒められたものではないが、彼が心優しい人物だという事も理解しているつもりだ。
メフィストとファウストの二人の物語を、私は知識としても本人の口から語られた話としても知っている。
全ては私の体を、メフィストを、感染者の体を蝕む鉱石病が悪い。この致死率100%の病がテラの
メフィストは気配に気付いて、「僕はまた歌えるかな」と私に問いかけた。
歌えるさ、きっと。
今は歌えなくても、生きてさえいれば歌える日が来る。
ファウストは生き続ける事に意味はないというが、私は生き続ける事にこそ意味があると、それが気休めでしかなくても言い続ける。
感染者には辛い現実しかないのかも知れない、私では救えないかも知れない、それでも私は彼らには生きていて欲しい。
「ミラーの為にも生きないとね」とメフィストは言ってくれた。
私は現実から目を背けさせているだけなのかも知れない、私はタルラの様に人を導く才能は無い、寄り添えるだけの優しさもない。
ただ君に生きて欲しいと願う、私にはそれしか出来ない。
★月☆日 晴れ
東国出身の人物と出会えた、流浪の武者マトイマルだ、大量のオリジムシを一網打尽にする様は正しく鬼武者と呼ぶにふさわしいだろう。
手を貸さなくても良いかと思ったが、これを機に極東について出身者から情報を得ようと助太刀した。
と言っても大部分はマトイマルが片付けて、私は倒しきれなかった分のオリジムシを射殺するだけだったが。
マトイマルは私に感謝を告げて直ぐに去ろうとしたので慌てて引き留めた、せっかく会ったんだから話でもしようと言うとマトイマルは嬉しそうに頷いた。
……私の知識通り、なんというか、ちょろい。単純だ、騙されやすい性格なのは本当の様だ。
それとなく極東について聞いてみるが、あまり有益な情報は出てこなかった、強いて言うなら極東には米がある事がわかったので、何とか極東と交易関係を結べれば、レユニオンの新たな食事処に米料理が増える事だろう。
米料理、良い響きだ。
聞いてみると麺類なども盛んだと言うじゃないか。
レユニオンに帰ってやる事が決まったな。
★月×日 にわか雨
Wにドクターと出会った事を伝えると驚かれた、Wの知るドクターと私の出会ったドクターとでは印象が違った様だ。
一体ドクターは幾つの顔を持っているんだ、謎が深まるばかりだ。
Wによれば私の思想と彼の思想は交わる事はない、水と油だと言っていたが、どう言う意味だろうか。
それは内緒らしい、なんかむかつくな。
私が拗ねた事に苦笑しつつ、一杯奢ってくれたので許した。
そういえば、Wが珍しく高価なワインを置いて行ってくれた、何故と聞くとニヤニヤした顔で「秘密」と言われた。
むう、なんだろうこの疎外感は。
★月◯日 誕生日 晴れ
タルラ曰く、今日は私の誕生日らしい、やっとまともに祝える日が来たと珍しく笑顔で祝ってくれた。
そうだったのか……前にWが高価なワインを置いて行ったのはもしかしたら誕生日の贈り物だったのかも知れない。
思えば、私が転生したと自覚してから誕生日を祝われることはなかったし、感染者になる前の記憶は定かではないので、自覚がない。
タルラはどうやって私の誕生日を知った?と聞くと、私の口から直接聞いたと言っていた。
なら感染者になる前の、記憶が定かでない時に言ったのだろう、深くは考えない様にした。
そうと決まればとタルラは私の手を掴んで私を色々な所に連れて行く、道中同じ同胞達が祝ってくれたり、贈り物を貰ったりもした。
クリスタルレンズの最年少の同胞がこっそりと教えてくれた、かなり前からタルラが「この日はミラーの誕生日だ」と伝え回っていたそうだ。
て、照れるな。
素直に嬉しい、私もタルラが誕生日の時は同じぐらい派手にやりたいものだ。
それをタルラが聞いていた様で珍しく嬉しそうに照れていた。
それを見た同胞の一人が「”あの“タルラの姉さんが照れてるーーー!?」と大声で驚愕としていた。
……照れ隠しにその同胞をぼこぼこにしていたのを必死で止めるファウストとクラウンスレイヤーを見てなんだかおかしな気分になった。
★月☆日 曇り
最近は比較的タルラの思考も落ち着いており、当初の性格に戻ってきた。
このままなら、もしかすると過激な暴力以外での感染者を”人“たらしめる政策活動が出来るのではないか、と私はそう思わずにはいられない。
ファウストが私の存在や影響がタルラを繋ぎ止めていると語ったが、それは言い過ぎだろう。
しかし……そうと決まれば目先の問題はやはりウルサス帝国だ、他の国家や団体に比べて感染者に対しての迫害は、あの帝国に巣食う者を纏めて変えていかなければ一生変わる事は無いだろうと思える程だ。
ウルサス帝国だけではない、他国も感染者に対する軽蔑の目は私達レユニオンの活動を以てしても、変わらない現状がある。
……難しい問題だ、どうすれば非感染者と私達感染者が同じ釜の飯を食える様になる?
それとも、そんな未来は鉱石病研究の進展が起きない限り、未来永劫訪れる事は無いのだろうか?
私に出来る事は何だろうか、感染者を助長させるこの体で出来る事は何か無いのだろうか。
今一度考え直さないといけないのかもしれない。
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a.m 9:29 曇り
有鱗目科の少年の独白。
最初に出会った時のことはよく覚えている、タルラから「ただ一人の親友だ」と紹介された彼女は、俺達に気付くと何故か少し悲しそうな表情で俺達を見た。
あまり深い話はしなかった気がする、だがなんとなく信用してしまいそうになるのは、タルラとはまた違った別のカリスマ性を持つ人物だからだと客観的に判断した。
タルラは俺には救いは必要ないと言った、同じくミラーも「私には救いを与える力は無い」と言っていた。
だがそれと同時に「それでも救いたい者は居る、成したい事がある。だから生き続けている」とも言った。
俺は、この世界で生き続けて良い事なんてないと思っている、ただイーノと二人で生きていける、俺はそれで良いと思ってる。
だがミラーは生き続ければ良い事はあると、信じて生きてる。
俺と思考がまるで違うが、その考えに好感を持ってしまうのは───いや、よそう。
ある時に、タルラは「彼女は私を支える精神的柱であり、彼女を脅かす全てを排除しなければならない」と言っていた、確かそれから少しずつタルラは以前のタルラから掛け離れていったのだと、後になって気づいた。
ミラーといる間にその片鱗はあまり見せない、タルラが大きな動きをする時は決まってミラーを遠征させたりしていた事から、ミラーにはあまりその深淵を見せたくない様だった。
「それで良いのか」と思わず意見してしまった、だが珍しくタルラは「わからない」と表情を隠して、そう言った。
ここで、もしミラーの気持ちを考えず独断専行で更に過激な思想に染まっていたら、俺はイーノを連れて離れていたかも知れない。
まだタルラは迷うだけの判断ができる、気晴らしでもしたらどうだと告げると、思い出したかの様に近々ミラーの誕生日があるとだけ告げた。
祝い事でもするつもりだろうか。
結果的にそれは良い方向に運ぶと思う。
ただ性分からか、悲観的な考えをしてしまう、今がよくても後は分からない、レユニオンはあの二人の関係性で大きく変わる。
ミラーは指導者にはなれない、道を切り開く強い力を彼女は持っていない。
タルラは指導者だ、だが強すぎる意思は、行き過ぎればそれはもはや狂気の所業だ。
少なくとも俺は、今のレユニオンは居心地が良いと思う。
所でメフィスト、誕生日に何を渡せば喜ぶだろうか。
酒類?いやしかし、ミラーは酒癖が悪いからな……。
これを気にアークナイツの設定を纏めているんだが情報が分散されてるせいでとても分かりにくい、主に時系列とか。
もし修正不可能な時系列になったら「これはそういうもの」として捉えて下さると嬉しいです。