感染転生者の活動日記   作:ゆう31

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続きが出来ました。


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×月◯日 雪

 

北方に位置する国家。北という言葉から感じる通り雪に閉ざされた、カランド山を聖山として崇める山岳信仰を国教とした謎多き宗教国家、それがイェラグである。

 

保守的国家であるイェラグは情報が入りにくいので定期的に誰かが諜報活動をしないと情報を入手する事はほぼ不可能だ。

 

こういったことは普段はクラウンスレイヤーがやる事だが、あいにくとクラウンスレイヤーは別の任務を受けているようで、最終的に手の空いていた自分に回ってきた。

 

それにしても、閉鎖的なこの雪国でよく国家としての形を保てるなと感心している、最近ではカランド貿易がイェラグの閉鎖環境に風穴を開けたとの事だ。

 

現にこの情報を得られたのもそのカランド貿易あってこそだ、何をもってイェラグに変革をもたらすのか、張本人であるシルバーアッシュの動きにも注目していきたい所だ。

 

もし協力できる思想なら、互いに協力し合いたいものだ。

 

 

×月×日 晴れ

 

タルラが机に突っ伏して寝ていた、疲れているのだろうか、掛け布団をかけてあげようとしたら起きてしまった。

 

起こした事に謝ったが、謝らなくて良いと言われ、そのまま仕事を始めようと動いたので止める。

 

もう今日はいいだろう、私の相手をして欲しいと告げると、苦笑して「わかった」と言ってくれた。

 

今のタルラはレユニオンに来る前の性格に近い、憑物が落ちた様な印象を感じる、まるで何かに生き急いでいたかの様なあの雰囲気が消えたタルラは、君主として正しいカリスマ性を秘めた誰もが認めるレユニオンの指導者だろう。

 

それとなく、何故暴力的活動を頻繁にしていたのか聞いてみた。するとタルラは難しそうな顔で、言い渋って話さない。

 

ジッとタルラを見つめていたら根負けした様で「私や、君が生きている内に変革を成すには可及的速やかに今の情勢を変える必要があるからだ」と語った、暴力を持ってして制す事は最も単純な原始的制圧だと言う。

 

だがそれは、非感染者と感染者の溝が更に深まるだけに過ぎない事だと私が言えば、タルラはそれに何の問題がある?と問い掛けた。

 

私達感染者が、同胞が受けてきた痛みは話し合いで埋められる物じゃない、全てが話し合いで終わるなら戦争は起きないと語る。

 

……たしかに言い分はわかる、私は到底叶わない綺麗事を言っているだけに過ぎないのだろう、だがクルビアなど他と比べて感染者に対して理解のある地域や他企業国家、鉱石病を治療する機関などもある。

 

その者達と協力する為にも、暴力で制す事は極力避けるべきだ、譲り合い手を取り合えば感染者の人権も、鉱石病だっていつかは解決の糸口が見えるはずだ。

 

「君は正しい事を言ってるんだろう、ただその正しさを受け入れられない者達が居ることも理解するべきだ」

 

それがタルラの言葉だった、その時だけは、私に見せたことの無い表情で見つめていた、目は逸さなかった。

 

タルラは、その正しさを受け入れられない者のうちの一人なのか?

 

「他でもない君の声なら、納得はするさ」

 

納得はする、か。

 

なら、これから先も納得させ続けてやるさ、そして一緒に探して行こう。

 

親友だからね。

 

……照れ顔、ごちそうさまです。

 

 

×月☆日 曇り

 

このテラには私の生きてきた知識と、転生者としての知識を総動員しても理解出来ないモノが多数ある、そのうちの一つがアビサルだ。

 

遍く生命の発祥の地である海と関係がある事ぐらいしかわからず、その地域の種族性もまばらだ、何か宇宙的な、超自然の……オリジニウムとはまた別の強大なナニカが潜んでいると、考察する。

 

私の知る、行った中で海を見た事も、文献から探す事も出来なかった、私が今立っている大地と、海とでは隔離されているのではないかと思う。

 

私の知識では、アビサルの出身の彼女らは共通してオリジニウムアーツへの適正が欠落しており、また地上では普及しているオリジニウムアーツに対する知識が非常に乏しいという。

 

海はオリジニウムが存在しない場所なのだろうか?

 

では知識の中のスカジやスペクターのような、圧倒的な戦闘能力は何と戦い手に入れたものなのだろうか?

 

もし海に行く機会があるなら、是非探索してみたいモノだ。

 

 

×月□日 曇り

 

対空装置で移動していた所、気になる事が起きていたので降下した。

 

するとそこにはめちゃくちゃに破損した車の前で無防備に睡眠をとっていた青髪のサンクタ族が居た、あぁいや、サンクタ族でありそうではないのだったか?よくわからないな、ただ純粋なサンクタ族ではなかった気がする。

 

それは私もか、そもそもサンクタは生まれて知能が芽生えた瞬間から頭上に輪っかが現れるそうだ、私の場合はアーツを解放する時だけ輪っかが現れる。

 

……もしやと思うが。

 

そこまで考えて青髪の堕天使、神出鬼没の謎多きトランスポーターことモスティマが起き上がったので思考を閉ざす事にした。

 

レユニオンのナンバー2が何でここに?と問われたので、ただの興味本位で来たと告げると、この車を壊したのも貴女の仕業?と敵意をもって聞かれた。

 

いや、いやいや、私が来る前にはもう壊れていたが。

 

あわや戦闘になるか否か、といったところでモスティマが気を落として「どうやって帰ろう……」と落ち込んだ。

 

どうやら龍門に帰る最中だったようだ、そういえばモスティマはペンギン急便の従業員だったな、なら私が連れて行ってあげようと提案すると良いの?!と言われた。

 

と言っていて気付いたが、私に近付き過ぎると鉱石病に罹る恐れがある、どうしたものかと思ったが「私なら大丈夫だよ」とどこか誇らしげに話すモスティマに、少しだけ救われた。

 

私の飛行装置『EXIT2A』は改良を重ね、人一人分ぐらいなら乗せられるようになった、飛空用バイクの様なものだ、最もコスト的に量産は厳しいが。

 

モスティマを背後に乗せて運転する、その際モスティマと色々な事を話した。

 

話してみるとたしかに、微笑み続け冷静に会話するその様子はまるで空気に近い、ただ感情が無いわけではない、少し考えている事が分かりづらいだけだ。

 

そう言う私に「君は不思議な人だね」と言われたが、それがどういう意味で言ったのかはわからなかった。

 

それとなく、アーツを使った時にだけ輪っかが出現したり、輪っかが無い天使が居るかと聞くが、見たことも聞いたこともないらしい。

 

……ならば私は?

 

自分の出身や種族に特に興味は無いと前は思っていたが、段々と自分の体が不気味に感じる。

 

モスティマは私の様子に「心当たりが無いわけでもないんだけどね」とだけ言ってそれ以上は教えてくれなかった。

 

教えてくれたら嬉しかったが、知らなくていい事だとモスティマは変わらぬ表情で言う。

 

龍門に近づいて来たので、付近で下ろす。

 

また会える時もあるだろう、その時は教えてと言ったら微笑みながら「会えたらね」とだけ言われた。

 

不思議な女性だった、初めてのサンクタ族との邂逅は更に私の体の謎を生むだけだった。

 

 

×月⁂日 曇り

 

レム・ビリトン、国家ないし国営の鉱山採掘場。私の二丁のサブマシンガンを改良させる為に此処で取れる鉱石が必要で、私はそれを回収しにレム・ビリトンに来ていた。

 

とても寒くて、街の空気からも錆臭い臭いが漂う場所と転生者の知識として知っていたが、実際に目の当たりにするとここまでとは、長居は出来ないな。

 

それに感染者に対しての扱いもあまり見ていられない、それとなくレユニオンに来るよう促しておこう。

 

しかし……そう遠くない未来のロドスのトップの一人、アーミヤはこんな所で過ごしていたのか。

 

どうやって暮らしていたのだろうか、当然だが私は彼女達について“知識”以上の事柄は知らない。

 

本当の意味でわかり合うには、知識以上に縁を築かなければ、彼女達とは手を取り合えないだろう。

 

鉱石病をどうにかするには、きっと協力し合わなければならないのだ。

 

……私が持つ疑いの気持ちも抑えて、嘘偽りなくケルシーと互いに話す機会が出来れば、実現出来ない未来ではない筈だ。

 

 

×月●日 

 

フロストノヴァとWという、珍しい組み合わせにばったり遭遇した。

 

何やら話し合っていたようだが何について話していたのかは教えてくれない、気になるじゃないか。

 

周りのスノーデビル小隊の同胞達に聞こうとしたらフロストノヴァが「話せば腰にあるボトルは私のモノだ」と言ったので誰も教えてくれなかった。

 

Wが「ミラー、服でも見に行こうよ」と誘ったのでわかったと言おうとした時に、「ミラー、良い店があるんだ、行こう」とフロストノヴァが私の腕を掴んだ、つめたっ。

 

それから私を取り合うように二人が衝突しあって喧嘩になった、何してるんだ……三人で行けば良いじゃないか。

 

「ミラー姉さんは女心がわかってないっす!」とスノーデビル小隊の一人に言われた、ちょっとショックだ、私も女の子なんだけどな。

 

そしたら瞬時にWとフロストノヴァの拳がそう言った隊員に降りかかった、痛そう。派手に飛んだなあ。

 

というか二人とも本当は仲が良いんじゃないか?と言うと同じタイミングで否定した、やっぱり仲良しじゃないか。

 

仲良くやろう、三人で服を見に行き、その後に飲もう。

 

その方がきっと楽しい。

 

 

×月◇日 天災

 

歴史に残る1日だ。

 

メフィストとファウストの部隊がオリジムシや狼と交戦していると報告を受けた、それだけなら何ら問題もないが、どうやらそれらを束ねている巨大感染生物と遭遇したと報告を続けられ、即座に飛行機械を使って飛んだ。

 

私の知識には無い敵だ、だが似たような生物は知っている、野生の巨大感染生物、特殊な環境で育った変異個体。

 

アレは高温化での成長だったが、今から出会うその巨大動物は百獣の王が鉱石に感染し、異常な成長を遂げ、育った変異個体らしい。

 

それはさして重要では無い、早く助けにいかなければ。

 

メフィストとファウストの部隊と合流した時には、既に何人かの同胞が事切れていた、間に合わなかったと後悔する時間はない、今生きている同胞を助けなければならない。

 

ファウストに部隊を引く様言い、メフィストに倒れたものに対して治癒のアーツを使えと命令した、メフィストは極力ファウスト以外にその力を使わないが私やタルラの命令なら別だ。

 

一人では無茶だと言われたが、メフィストは勿論ファウストもこのスケールの化け物に大した有効打は与えられない、私がやるしかない。

 

巨大感染生物を見たのはこれが初めてだ、まるで一つの災害、大地を抉り、天空を破壊するその姿は、まるで前に見た暴風雨そのものだ。

 

一人で戦うには骨が折れるな。

 

ああいや。

 

……どうやら一人じゃないらしい。

 

いつからどうやってここに来たのかは問わない、ただ私の隣には最も信頼する世界で唯一の親友が立っていた。

 

長らく使っていなかった結晶のアーツを解放する、サンクタ族特有の天使の輪っかが出現し、私の本来のパフォーマンスが発揮されていく。

 

同時にタルラも腰に携えた剣を解放し、視界に映る空間を歪ませるほどの熱量が放たれる。

 

これが最後の日記にならなければ良いな。

 

いや、タルラと一緒ならそんな未来は古来永劫訪れないだろう。

 

 

 

後に名の付くこの戦いは、レユニオンの最大武力を全国家に知らしめ、また天災規模の巨大生物の撃破による世界貢献は、ある人物から『レユニオンは世界を一度救った』と言わしめる程であった。

 

 

 

(白紙が続く、数ヶ月以上触れていなかった様だ)

 

 

 

◯月×日 晴れ

 

数ヶ月の月日を経て漸く目が覚めた。

 

天と地を分け、私とタルラで再起不能にしたライオンの様なあの巨大生物は後々に専門家が調べた所、動く天災となり得た非常に危険な生物だったようだ。

 

それを再起不能に破壊し尽くした私とタルラ……というよりレユニオン・ムーブメントは他国家から一定のレベルまで認められる様になった。

 

それが結果的に圧倒的な武力を周りに示した事で得た結果だとしても、認められる様になったことは大きい。

 

私は喜んだが、私の体を診た医療担当者は深刻な顔を崩さない。

 

何となくわかる、私はあの日、全力を以ってアーツを発動した、鉱石病が悪化したのだろう。

 

「もう二度とアーツを使う事はお勧め出来ません、軽いアーツの使用ならまだ目を瞑りますが、あれ程の大規模なアーツの使用は命を削ります」と、医療担当の彼女は少し涙目で語る。

 

私も死にたいわけじゃない、極力使わないようにするよ。

 

そこまで言って医療室の扉が乱雑に開いた、息を切らしたタルラがそこにいた、心配してくれていたようだ。

 

抱き付かれた、少し息苦しい。

 

「ミラー、一人にしないでくれ」

 

……勿論だよ、➖➖➖。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

p.m 5:14 ??? ロドス・アイランド

【殲滅記録】

 

これは巨大感染生物、歩く災害である百獣王『ビースト』をたった2人で殲滅したという恐るべき、誇るべき偉業をその目で目撃した元レユニオン構成員の情報を元に記した【殲滅記録】である。

 

大地を崩し、崩した大地の岩屑を暴風のように操るビーストに対してその全てを結晶化させた後に、霧散させ物質を消滅させる、それは『結晶世界』という二つ名に恥じない、強力かつ広大な規模のアーツ術だ。

 

そうして出来た隙を『生きる怪物』は爆発的な熱を持ってしてビーストを融解させていく、暴風が効かないと判断したのかその巨体を翻し、生きる怪物と対峙するビースト。

 

しかしビーストは受けた傷を体内のオリジニウムで癒し構成組織を再構築していく事でその傷を治していき、時間が経っていくうちに生きる怪物が不利になっていく。

 

そこで結晶世界がビーストの手足を結晶化させ、破壊した。

 

体制を崩したビーストの再生が追い付く前に生きる怪物は瞬く間にビーストを融解していき、そこでビーストが最後の力を出すかのように、大地が裂き、雨雲が生成される。

 

強大な落雷が生きる怪物に対して、いやテラに対して衝突する、直撃するその寸前に、結晶となりその動きを完全に止め、崩れた結晶がビーストの体に突き刺さり動きを封じて行く。

 

これで最後だと言わんばかりの生きる怪物による最後の一振りが巨大生物を切り裂き、その生命活動を停止したのだ。

 

そして直ぐに生きる怪物も結晶世界も横たわった、限界を超えた力を使ったのだろう、倒れ力尽きたが、その後の適切な治療で重傷が残る事もなく、今も生命活動を続けている。

 

死体をそのままにしては甚大な鉱石病を促す発端になりかねない、レユニオンのみならず他国までもが迅速に処理したようだ、それでも戦闘の跡はテラの大地にくっきりと刻まれている。

 

後にこれらの英雄的行動は『百獣王討伐災害事変』と名付けられる事になった。

 

レユニオンの体制がどうあれ、感染者の有り様がどうであれ、レユニオン・ムーブメントに感謝をせねばならないだろう。

 

歩く災害である件の生物が彼女らによって討伐されなければ、歩く災害により世界の均衡は崩れ、先民(エーシェンツ)はこのテラにいなかったかもしれない。

 

少なくとも私➖➖➖➖➖➖➖(不自然に黒く塗りつぶされている)は彼女達を評価する。

 

世界の英雄として感染者が時代の上に立つ、それは新しい時代の改革なのかもしれない。

 

以上で報告を終了する。




強すぎィ!て思ったそこの人、多分マジでこれかこれ以上に強いと思うよ、ロドスの救出部隊全員+制限解放したアーミヤに圧倒する実力って化け物でしょ。

ミラーちゃん?まあ寿命削ってるし多少はね?
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