感染転生者の活動日記   作:ゆう31

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●月●日 晴れ

 

やっと万全に動ける様になった、さて早速何かしようとした所タルラに止められた。

 

もう少し安静にしていろと言うタルラに心配性だなと苦笑する、もう残る様な痛みもない、大丈夫だと告げても怒る様な、心配する様な顔で私を見つめてくる。

 

仕方ないので、遠くには行かない事を伝えると溜息をひとつ吐いて「レユニオンから出るなよ」と忠告し、タルラは病室を後にした。

 

むう、折角なら一緒にお昼でも共にしようと思ったのに。つれないな。

 

入れ替わる様にメフィストとファウストがやってきた、もう体は大丈夫なのかと言われたのでこの通り問題は無いと安心させる。

 

 

「無理をさせてしまった」とファウストが謝るが、謝る事じゃない、全力を出していなかったら負けていただろうし、何よりアレは生かしてはいけない存在だ、結果的に後の災害を未然に防いだ事でレユニオン・ムーブメントとして次のステージに進んだ事を喜ぶべきだろう。

 

そういうとファウストは複雑そうな顔をしたので、気分転換に食事でもしようと誘った。

 

メフィストは了承し、ファウストも付いていく形で同行してくれるようだ、「聞いてよミラー、この前ね」と他愛のない会話を繰り広げるメフィストに、彼らを守れて良かったと思わずにはいられなかった。

 

●月×日 晴れ

 

久々に私の部隊『クリスタルレンズ』の構成員全員が集まった、誰一人欠けていない事に安堵を覚える。

 

彼、彼女らは実を言うと私やタルラと同期に近いような関係であり、年齢は疎らだがレユニオンに入ってからの月日は同じ年月を得ている。

 

私が幹部になった時に、自主的に着いてきてくれた信頼出来る同胞達だ。クリスタルレンズの最大の利点であり最強の力でもあるのは皆一概にレユニオン内部でしか存在を知られていないという事。

 

有名になってしまった私とは違い無名な者だからこそ、やれる事は多くある。クリスタルレンズが持ち帰る情報は貴重かつ重宝するモノが多い、いつも助かっている。

 

そんな彼ら彼女らだが、各々好きにやるスタンスなので私自ら指揮をとって部隊を動かす事は滅多に無い。

 

なので何故集まったのか聴いてみると「退院祝いです!」と元気よく構成員の少女が言った。

 

私一人のために?と言うと、さも当たり前の様に勿論と言う、それはなんと言うか、嬉しくなった。

 

こうして全員で集まるのも久しぶりだ、今日は私が奢ってあげよう。

 

(以降文字が崩れている、読み解けない文字が続くが楽しげな感情で書いた様だ)

 

●月◇日 曇り

 

あまり記憶が無い、飲み過ぎた、あたまいたい。

 

何故か私の家には何人かの同胞達がいるし、私は何をしたんだ。

 

いつかにWに「その酒癖直した方が良いわ」と言われ、余計なお世話だと言ったが、もう少し自覚した方が良いかもしれない。

 

彼女達を起こしてとりあえず朝食を一緒に食べて、私が何をしたのか聞いた。

 

「べろべろに酔っ払って介抱しただけですよ」

 

……露骨に目を逸らしている、本当にそれだけか?

 

まあいいや、さてどうするかといった所で、改めて今のレユニオン・ムーブメントの立ち位置を考える。

 

一つの災害を止めただけで感染者の蟠りが消えた訳じゃない、ただ少なくとも『その猛威がもし此方に及んだら?』と考える国家は増えた。

 

結果的に外交が円滑に進みやすくなった、人的被害を出さないでこの結果を出せたのなら、まあ頑張った甲斐もある。

 

ただ、武力を見せつけそれを利用する事になっては本末転倒だ、これを機に感染者に対する偏見の目を無くしていき、鉱石病そのものをどうにかする考え方にシフトさせる必要がある。

 

どうやってそれを実現させるか……悩ましい、少なくとも二日酔いの頭で考えられる事ではない。

 

差し当たって私は水を飲む所から始める事にした、お水が一番。

 

●月★日 晴れ

 

私は数人のクリスタルレンズの構成員を連れてヴィクトリア王国の首都、ロンディニウム市に来ていた。

 

勿論密入国だ、ヴィクトリアは龍門の検問ほど厳しくない、隊員の独自の潜入ルートで簡単に市内に入る事ができた。

 

まあなんて事はない国家調査と、それからヴァレリーというケーキ屋に用があった。

 

少し早いが、もう直ぐ誕生日だからね。

 

ヴァレリーに着き、なんのケーキを頼もうかと物色していると、記憶にある人物が目に見えた。

 

後にロドスで常勤の後方支援スタッフを務めながら、戦場でサポートを行うオペレーター、ムースだ。

 

裏でケーキの製作、パンの焼き方や茶菓子の組み合わせなどを専門的に学んでいるのだろう、平和そのものの暮らしを行う彼女も、そう遠くない未来に感染者になってしまうのかと憂いてしまう。

 

願わくば彼女の手が異貌の手にならない事を願う。

 

未だに鉱石病そのものを治す手立てはどの企業も進展していない。

 

 

●月☆日 曇り

 

まさか私がきっかけで彼女の脱獄の手助けをするとは思わなかった。

 

最初から話そう、一人にケーキをレユニオンに持ち帰らせて、他数人をロンディニウムの調査で置いていき、単独でヴィクトリアの感染者隔離エリアに潜入していた。

 

この国の感染者に対する偏見はまるでウルサス帝国を彷彿とさせる、組織としてレユニオンの立ち位置が確固たるものになりつつあるが、感染者そのものはなんら変わらないとこの現状が著している。

 

虐げられ、石を投げられる。もはや当たり前の光景だ。

 

悔しい、だが悔やんでも仕方ない、どうにかしてこの現状を変えなければならない。

 

彼らをここで解放するのは簡単だ、私が今すぐにでもタルラに連絡し、私の知識の中にあるチェルノボーグ事変の様に武力を持ってして鎮圧する事は容易い。

 

でもそれではダメなんだ、他の方法を探さないといけない。

 

ただその他の方法と言う道が、限り無くゼロに近い、まるで暗闇に手を伸ばしている様で……はっきり言うと、疲れてしまうな。

 

だが私はこの先死ななくても(・・・・・・)良かった者達(・・・・・・)の為にもこの道を決して諦めない。

 

と改めて決意した所で、近くで爆発が起きた、アレは……監獄だ。監獄で爆発が起きたのだ。

 

監獄と隔離区に施された高い壁、感染者の犯罪者を収監する特別な監獄と、思考を巡らせてピンと来た。

 

私の転生者としての知識の一つに、現状を説明出来る一人の人物が思い当たる、爆発が起きたであろう場所へ向かう途中、倒れている者を発見した。

 

その人物こそ恐らくこの騒動を起こした張本人、ヘイズだ。

 

これが何度目かの脱獄の一つなのだろうか、如何にせよ無視はできない。

 

彼女を抱えて、すぐにその場から走り去る、道中見つかりそうになったので仕方なくアーツを展開した。

 

使うなと口煩く言われているが、数秒ぐらいなら大丈夫だろう。

 

鉱石病が悪化したという事は即ち、私のアーツがより強力になった事に他ならない。

 

事象の歪曲。

 

結晶の力の派生で、空間の認識を書き換えまるで自分が鏡の前に立っているかの様に錯覚させる。

 

数秒程度続くその状態を追手に掛けて、安全なところまでヘイズを匿う。

 

途中から起きていた様で「なんで助けるの」と問われた、君が倒れている以上に理由なんてない、そう言うと怪訝そうに、ただ満更でもない様で深く帽子を被った。

 

追手も捌き、これからどうするんだとヘイズに問うと「付いていっちゃダメなの?」と逆に問われた。

 

問われて言葉が詰まった、私の転生者としての知識として、彼女は脱獄後にロドスに加入すると決まっている。

 

現に私が今回ヴィクトリア王国に来なければ、今回か、また別の脱獄で抜け出し、ロドスへ向かったのだろう。

 

その流れを私が変えていいのか、彼女をレユニオンに連れていっていいのか?

 

私は迷い、私に付いていく事は君にとって必ずしも良い結果であるとは限らない、それでも良いのかと言った。

 

返事は早かった。

 

直ぐロンディニウムに残っている構成員達に連絡を入れて、ヴィクトリアから脱出する事にする。

 

これは私が初めて、本来の史実を変えた1日になった。

 

 

▲月☆日 晴れ

 

ヘイズは私の助手として行動する事になった。

 

というのは建前で、彼女はのんびり自由にどこかにいったり急に私の家で寝ていたりと、まるで猫みたいだ。

 

まあ、それで何か悪いのかと言われるとそうではない、伸び伸びとする彼女は好ましい。

 

その事にタルラはなんだか怒ってるような雰囲気だったが、理由は教えてくれなかった。

 

▲月★日 曇り

 

気分が優れない、この前のアーツ使用がいけなかったのだろうか?咳が多くなったように感じる、たまに目眩もする。

 

こんな姿、タルラに見せられないな、もうアーツは使いたくない。

 

まだ倒れる訳にはいかないのだから。

 

▲月◯日 晴れ

 

フロストノヴァが何故か怒った様子で私に「ヘイズはどこだ」と聞いてくる、何かあったのだろうか?

 

詳しく聞いてみると、楽しみにしておいたウィスキーを盗まれたようだ……ああそういえば、窃盗癖があったな、見つけたら氷の半身浴をお見舞いしてやろうと言っていたので、相当楽しみにしておいたのだろう。

 

まあまあ、後でヘイズに言っておくから、そんなに怒らないでやってくれ。

 

そう言うと「ミラーはヘイズに甘すぎる」と言われた、うむむ、それは仕方ないよ、猫好きだし。

 

まあまあ、それなら今から飲みに行こう。これでどうだ。

 

そう言うと「仕方ないな……」と言って怒りを収めてくれた、良かった。

 

「ミラーは飲み過ぎないように」とも言われて今度は私が不機嫌になった、良いだろう別に、私のお金で飲むんだぞ。

 

因みに飲んでる途中にしれっとヘイズも参加していた、勿論フロストノヴァはヘイズに説教していた。

 

しゅんと垂れ耳になっていた、かわいい。

 

 

▲月□日  雨

 

まさか私が暗殺を受けるとは思わなかった。

 

クルビアを飛行装置で移動中に第六感がざわつき反射的に身を翻した、瞬時に衝撃音。

 

術アーツだ、私はニトロを起動して加速し、森の方へ身を隠す。

 

何処の者だ、私を狙うと言う事はレユニオンに敵対する者達、現状で一番近いのはウルサス帝国の部隊だろうか。

 

極力アーツは使わない、二丁の短機関銃を手に取り索敵する。

 

発見した、アレは──────まさか。

 

だからこそ、何故?私、そしてレユニオンはあの企業とは無干渉だったはず、私を狙う理由が見えない……考えるのは後だ、本人達に聞いてみるとする。

 

森の影と重なるように移動しつつ、一人ずつ手足を打ち抜き抵抗する力を失わせる、これが数百人と数が多かったら逃げの一手だったが、十数人程度なら問題ない。

 

最後の一人になったところを組み伏して「動けばお前を結晶化する」と脅しをかける、効果は覿面のようで抵抗をやめてくれた。

 

最初の奇襲で倒せなかった場合こうなる事は分かっていたとも言う、なら何故追いかけてきた、それだけ私に恨みがあるのか?

 

恨みは無い、ただ本部はその強大すぎる力を恐れているし、理由は教えて貰わなかったが欲している、だから襲ったのだと語る。

 

……前々からあそこは黒い噂が絶えなかった、オリジニウムを使った非人道的な実験を私は転生者としての知識で知っている。

 

ライン生命、私の体が欲しいか、この鉱石病に蝕まれた体が。

 

「なぁ……あんた、サンクタ族なんだろ、じゃあなんで輪っかが無いんだ」

 

そんな事、私に言われても知らない。それこそ═══(二重線が引かれている)

 

この話はもういい、私は拘束を解いて見逃す事にした、甘いなとも言われたが私を狙ったこの者達にどうこうしようと言う気が無いだけだ。

 

私の中での警戒先がまた一つ増えてしまった、治療と称してその実はオリジニウムを利用し、何らかのモノを作ろうとしているように思う。

 

それを私は容認するつもりはない。

 

帰って対策を練らねばな。

 

 

▽月×日

 

タルラに押し倒された。

 

事の発端を一から話そう。

 

レユニオン・ムーブメントはタルラの政策活動、それから私の食事改革で「感染者の行き場がなくなったらレユニオンに行けば良い」とまで言われる事になった。

 

全てを受け入れたいが、すべてを受け入れるだけの受け皿は用意出来ていない、領地を開拓し都市を作ろうかともタルラと意見交換したが、最大の脅威である天災が降りかかってしまったら全てが終わる。

 

新たに移動都市を持つ必要がある、これに関しては、長い計画になってしまうだろう、ただ成功すれば更に同胞たちを迎えられる。

 

企業、国家との外交面は相変わらずだ、幾らタルラが『テラの英雄』だからといって、そもそも感染者であるというただ一点で進展しない。

 

ロドス・アイランドはどうだ?と言ってみた、私達と同じ思想、協力出来るんじゃないかと言ってみる。

 

「得体の知れない製薬会社に、同胞を送れと?」と鼻で笑われてしまったが私は冗談で言った訳じゃない、そう言うと沈黙した後、「他は」と促した。

 

ライン生命はこの前の事から目指している目的は相容れないモノだとわかる、国家で言うならシエスタなどは良いんじゃないかと思ったが……感染者集団と手を組んだと揶揄され、苦境に立たされるリスクを抱えるとは思えなかった。

 

「自分が考えている以上に、感染者を受け入れる者は居ない事実を君は再認識するべきだ」と、タルラは言う。

 

その言葉に私は「それでも今のレユニオンがこのまま成長していけば必ず未来はある」と返した。

 

こうなった私達はイタチごっこだ、ああいえばこう言うし、お互い譲らないし、どちらも譲れない。

 

言い合いを続けていくうちに私もタルラもヒートアップして、互いに止められない所まで言い合ってしまった、最近では珍しい事だった。

 

言い合い、押し問答を繰り返して、遂にタルラが立ち上がり「何故分かってくれない?」と言いながら、ゆらゆらと近付いてくる。

 

私は逃げなかった、何をされたって私の決意は、意思は固いぞ。

 

そのままタルラは倒れ込むように、私を押し倒した、その行動に痛みは無かった。

 

「私が、何より君が生きている時間で、その願いは本当に叶うのか?私達感染者の限られた時間で、理想に手が届くと本当に思うのか?君が死んでしまった後の話をしているんじゃない、私は今を話している、今のこの現状を見て言っているんだ」

 

タルラの綺麗な銀色の髪が私の頬にかかる、銀色の中に燃える黄金色の様な瞳に目が合う、私は場違いに美しいと感じてしまった。

 

互いに無言になる、タルラが目を逸らすまで私も目を逸らせない。

 

タルラと言い合うのももう何度目だが、こんな事は初めてだ、少しドキドキしてきた。

 

そんな私達の均衡を崩したのはシャッター音だった。

 

音のした方へ向いてみると、ニヤニヤと今まで見た中で一番なんじゃないかといった顔で、カメラを持ったWが立っていた。

 

「お楽しみに〜」とフェードアウトしていくWに数秒固まって、私とタルラは互いに同じ事を思ったのだろう、互いに顔を見合わせて頷いた。

 

全力を以ってWを探し捕まえなければならない。

 

生きている内に叶わない願い、か。

 

それはやってみないとわからないよ、タルラ。

 

それに➖➖➖➖➖➖(不自然に消された跡がある)

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

p.m7:20 曇り ??????

泥棒猫、信頼度MAX会話。

 

 

自由を求めて飛び出した、そのままヴィクトリアから逃げ出すだけだという所で力尽きて倒れた所を私とそう変わらない印象を受ける少女に助けてもらった。

 

黒い、所々が灰色な髪。背丈は高くも低くもなく、特別目立った格好ではないまでも白が目立つ服装で、何より決意に満ちた黄昏色の瞳が印象的だった。

 

不思議な少女だった、あの時は聞けなかったが、なんで私の名前を知っていたのか、不思議だ。

 

脱獄者である私をなんで助けたのか聞くと、「君が倒れていたから以上の理由なんてない」ときっぱりと言われ、少しなんとなく怖くなって、それ以上に嬉しくもあった。

 

ここまで来ればといった所で、これからどうするんだと聞かれて、私は何か考えるより前に「付いていっちゃダメなの?」と問い掛けた。

 

驚いた、私が人に付いていきたいなんて思う日が来るとは思わなかった。

 

その少女は少し迷って、こう言った。

 

「私に付いていく事はヘイズ、君にとって必ずしも良い結果であるとは限らないよ、それでも良いなら私は君の手を取る。それが嫌でも、ヴィクトリアから離れるまでは面倒を見るよ」

 

そう言われて、あくまでも私の意思を尊重するその在り方に、付いていってみようと決めた。

 

今でも私の大事な思い出だなぁ。




月曜日が始まってしまうので次の話が出来るのは遠くなるぞい。

最後にミラーちゃんの容姿が初公開されましたが……挿絵とか、描いてもいいっすよ?()

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