感染転生者の活動日記   作:ゆう31

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間に合った、本日三度目の投稿です。
ではどうぞ。


8ページ目

◆月×日 曇り (朝〜夕方)

 

日記を書いて精神を安定させる。

 

先ずあの日から四日経った、四日間も寝たきりになってしまった事に私は悔しさが込み上げるが、医療担当者は「たった四日で起きれるような容態じゃない筈」と言う。

 

一週間ぐらいは寝ているべきだと言うがそんな余裕は無い、もうすでにタルラは動いているんだろう。

 

心配するように泣きそうな目で見てくる泣き虫な彼女に、私はぽんっと頭を撫でて安心するように言った。

 

泣いてしまった……私はあやすのが得意なタイプじゃないらしい。

 

タルラが止まらないのなら、私も止まる事はない。

 

私は既にレユニオン・ムーブメントのNo.2としての責務と重責から抜け出す事は出来ないが、本格的にチェルノボーグに侵攻する前に出来る事をやる。

 

直ぐに立とうとしたところで、私の頭上に違和感を感じた……遂に常時付いてくるようになったか。

 

サンクタ族の特徴であり、本来私がアーツを使っている場合のみに出現する輪っかが頭上に出現していた。

 

医療担当者は「アーツの使用で体の変化が定着してしまった」と言う、そんな状態で動くべきじゃない、お願いだから休んでいて欲しいと再度私に言った。

 

ごめんね、でもこの足が動く限り止まる事は出来ないんだ。

 

医療室を出て直ぐ様自宅に戻る、そこに彼女はいる。

 

道行く同胞が私を見て挨拶をする、未だ何も変わっていない彼らを見るにタルラはまだチェルノボーグに対して宣戦布告をした訳ではない事を悟った。

 

ふと、同胞の一人が気になる事を言っていたので、話を聞いて見る事にした。どうやら私が倒れた直ぐ後に、Wとフロストノヴァが組んでタルラと大喧嘩したらしい。

 

途中でレユニオンから離れて地形の変わる程の戦いを繰り広げたようだ。

 

結果勝者はタルラだったが、タルラも無事とは言えないダメージを食らったし、それこそどちら側が勝つのか最後までわからなかったと言う。

 

……まさかあの二人が組むなんて、私の代わりにタルラを止めようとしてくれたのか?感謝しないといけないな、医療室に三人が居ないのは私が起きる一日前に起きたかららしく、フロストノヴァはスノーデビル小隊を連れて任務に。

 

Wも同じくなんらかの任務を受けて何処かに行ってしまったと……私が1日早く起きていれば感謝を伝えられたのに、つくづくタイミングが悪い。

 

……少なくとも怪我が満足に回復するまでは動けないか?

 

数日で回復するだろうが、その数日で私が出来る最大限の事をやる。

 

チェルノボーグ事変は起こさせない、それが止められない出来事になってしまうのならより良い結果を生み出させて見せる。

 

思案しながら歩き、自宅に着いた、玄関を開けて家に入る。

 

惰眠を貪っているヘイズがいた、毛布に包まって寝ているヘイズはまるで喧騒とは無縁だと言わんばかりに平和に寝ていた。

 

かわいい猫だ、私は叩き起こした。

 

不機嫌になるヘイズに私は仕事を言う。

 

ロドス・アイランドに向かってレユニオンの現状と、これからの動きを言いに行ってくれと、最善を尽くして止めるが、もし止められなかったら後の事はケルシーに任せると伝えてくれ。

 

それから……ヘイズ、ロドスに着いたらもうレユニオンには来なくて良い。

 

そう言うと寝ぼけ眼だったヘイズが、真面目な表情に変わり「それはやだ、私はミラーに付いていきたいと思ったから付いてきた」と言って私を睨む、その割には私が任せた仕事や、家事洗濯その他諸々他の人に任せてるけど……?

 

「それはご愛嬌!」とぷんぷんするヘイズに笑って「会えなくなる訳じゃない」と言ってみるが、ヘイズは納得した様子を見せない。

 

なあ、お願いだヘイズ、君がこのままレユニオンにいれば優秀な術アーツの使い手として戦争に駆り出されるかもしれない、死んでしまうかもしれない。

 

でもロドスに入ればその危険性は殆ど消える、私の転生者としての知識の中のドクターは指揮官として芸術すら覚える程だ、例え戦場に出ても必ず生きて帰ってこれる。

 

私はヘイズを失いたくない。

 

ヘイズはそう言われて、諦めたように溜息をついた「言ってくれればレユニオンから脱獄して二人で逃亡劇を始められるのに」と言うが、それは少し私には置いてく物が多過ぎる、ごめんね。

 

「ミラー、死なないでよ、私が初めて認めた人」と言うヘイズが深く帽子を被り直して、部屋から出ていく。

 

ありがとう、ヘイズ。

 

これでロドスにレユニオンの現状を伝えられる、あの企業は直接的な武力行使をしないが、背景を知っていればその為の戦力を整えるだろう。

 

チェルノボーグには記憶を失ったドクターがいる筈、ドクター救出作戦とレユニオンの作戦の日時はほぼ同時期。

 

思考を加速させて、私のこれからの動きを頭の中で整えて──────ヘイズのいなくなった部屋を見渡す。

 

あぁやっぱり、寂しいな。少なくない時間を過ごしてきた仲間だ、もう二度と会えないかもしれない事実は私の心を強く痛める。

 

…いや、そうはさせない。

 

ふと、咳き込んだときの感触に嫌な物を感じた。

 

私は口に付いた血を拭き取り、決意を改めて握り締めた。

 

◆月×日 曇り (夕方〜深夜)

 

ページが尽きたので新しい日記に書き込む事にした。

 

次に私がやった事はクリスタルレンズの面々を集める事、彼、彼女らの情報伝達能力は卓越している、直ぐ様私が起きた事を知って、各々私の自宅に集まってくれた。

 

私の部隊に任せる事は大まかに決まっている、直接戦闘に適していないこの部隊を上手く使うにはやはり工作以外にない。

 

チェルノボーグの侵入だ、だからって攻撃的な工作をしてもらいたい訳ではない、前以てルートを確保してあわよくば感染者を誘導し、レユニオン、あるいはロドスに逃げる様に促す。

 

それだけじゃない、あそこに住む民間人の大半は罪もない民間人の筈だ、死ぬ理由すらないのに殺される理由なんかない、もし戦争が始まってしまった時、タルラの過激な思想に染まりきった同胞はきっとその者達を手にかける。

 

それはさせたくない、だから彼らには民間人を安全な所に誘導、レユニオンが保護出来るわけでもないのでチェルノボーグから逃げる道に向かってもらい、最小限の犠牲だけで済ませる様にする。

 

それをクリスタルレンズの者達に命令すれば、今度は「隊長はどうするの?」と訊かれたので、私は改めて考える。

 

……あの日最後まで説得できなかった私に、二度も話を聞く程タルラは悠長にしないだろう、実のところ、私はもうチェルノボーグ事変は起きてしまうと考えている。

 

それを少しでもマシにする為には、無関係な者達を手に掛ける事はさせてはいけない、そもそも制圧するだけならウルサス帝国の兵士達を倒すだけで良かったんだ。

 

……いや、待て。この行動をなんとか利用できないか?

 

チェルノボーグ事変が起きてレユニオンは他国、企業からの共通の敵になる、それが私の転生者の知識の中の流れ。

 

だが今の私達は感染者にとっての楽園と言われる程で、他国からも秘密裏に交易出来るぐらいにはなんとか信用を持っている。

 

一度災害を止めた、世界の英雄でもある。

 

……良い事を考えた。

 

「悪い顔してますよ隊長」と言われたが、そんな彼も同じような顔をしていたので私と同じ考えを模索したのだろう。

 

彼には別の作戦の工作活動を一任する事にした、そもそもウルサス帝国は他国からあまり好かれていない、この状況を使って良い方向に運べられれば、レユニオン・ムーブメントはこの窮地を抜け出せる。

 

これは誰にも知られてはならない、悟られてはならない、クリスタルレンズは影の部隊だ、決して表舞台に立つ部隊じゃない。裏で舞台を作って、彼らが気付く頃は全ての作戦が成功している時だ。

 

「ミラー隊長、一杯ぐらいやりましょうよ!」と言われ私に瓶のビールが渡される。

 

……そうだね、一杯だけ飲もう。

 

「みんな持った?ごほんっ……隊長の目指す未来に、乾杯っ!」

 

総人数17人、元同期の彼らとまた一緒にこの酒を飲む為に……次はこの輪にタルラも入れて。

 

──────始めよう、最善を尽くして。

 

 

◆月★日 晴れ

 

1日経った。

 

体調は絶好調(絶不調)、頭痛に吐き気に後はなんだ?まぁいい、体がこれ以上何か変容している様子も無い。

 

この足が止まる理由にはならない、まだ会わなければならない人はいる。

 

スカルシュレッダーを探す為、私は同胞達に彼の居場所を聞き出した。

 

タイミングが良い、丁度米の輸入から帰ってきた所のようで、早速スカルシュレッダーに会いに行った。

 

スカルシュレッダーは話を聞いていたようで、現状を説明する必要はなかった、ならばと私が口を開く前にスカルシュレッダーは言葉を話す。

 

「悪い、俺はタルラに付くよ。ミラーの言いたい事もわかるつもりだが、俺はそれでも奴らにやられた所業を許せる気持ちはない、戦うことが性に合っているんだ」

 

それは───私では説得出来そうにないと瞬時に判断した。

 

私はスカルシュレッダーが受けた傷と同じ傷を持っていない、彼の非感染者に対する恨みを私はどうする事も出来ない。

 

ならせめて無関係の人達の命を奪わないでくれ、やられた事をやり返す、それは簡単だ、だがそれはただの憎しみの連鎖でしかない、連鎖を断ち切るには暴力じゃ解決出来ないんだ。

 

そう言うとスカルシュレッダーは黙る、考えているのだろうか、何も言わなかった。

 

それから、死ぬ事だけはするな。

 

「それは約束する、俺にはまだやる事がある」

 

良かった。

 

私の転生者としての知識では、彼に関しての話はチェルノボーグ事変が起きた後の問題だ、レユニオンと龍門との衝突。だがこの問題はチェルノボーグには直接関わらない。

 

レユニオンと龍門の衝突はさせない、そもそもレユニオンが龍門に攻撃をしなかったら、恐らく……いや、今は良い。

 

協力は得られなかったが、だからと言って私のする行動を止める事もしないとスカルシュレッダーは約束してくれた、これだけで良い、私を尊重してくれている事に変わりはない。

 

ふと、スカルシュレッダーは呟いた、何気ない言葉の一つだったが、私も同じ事を感じ取った。

 

タルラを止める為にも私は──────。

 

◆月◯日 曇り

 

ついにこの日が来た。

 

私は深くフードをかぶり直す、まだタルラに私が起きた事を悟らせる訳には行かない。

 

近日にチェルノボーグを落とす、そうタルラが宣言する。

 

非感染者に、そしてウルサス帝国に我ら感染者の絶対的な存在を見せると言い放ち、武力を持って制す事を改めて全同胞達に告げた。

 

反応はまばらだった、賞賛の声は確かに多かったが疑問に持つ者や人知れず離れていく者もいた、そんな彼等はタルラの目にどう映って見えているのか。

 

結局、私は➖➖➖にこの選択をさせてしまった、私ができる事はやってきたつもりだがそれでも“つもり”だったのだろう。

 

早い段階で私がタルラに転生者としての知識を知らせていれば、もっと早くにケルシーにコンタクトを図れば、或いは最初からこのレユニオンに来なければ、様々な後悔が胸に残り、痛みだす。

 

過ぎ去った出来事は私の心を痛め続けるが、だからと言ってまだ終わったわけじゃない、まだ未来は変えられる。

 

ふと、いつ隣にいたのだろうか?ファウストが何かを探るように私を見つめてくる。

 

「レユニオンから抜けるのか?」そう単刀直入に問われた。

 

抜けるつもりは無いよ、と返してファウストは目を閉じて深くため息をついた後に、そうかと一言だけ言った。

 

……ああでも、そうだな。

 

ファウストには、彼には託しておこう。そうすればもしかしたら義理難く優しい彼は私の託した想いを受け継いで、生きてくれるかもしれない。

 

そう言った想いで託した言葉に、ファウストは決意を宿した瞳で頷いてくれた。

 

ありがとう、サーシャ。

 

後は任せた。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

am.7:52 晴れ ???????

そうして賽は投げられた。

 

『全国放映ニュース速報

「レユニオン・ムーブメントのNo.2 ミラーはウルサス帝国に捕まり、チェルノボーグへと輸送された。

レユニオン・ムーブメントは確かに感染者達の集団であり、危険性は少ないものの我々非感染者を脅かす者達であるのは明白な事実だ。

だが、忘れた訳では無いだろう、百獣王討伐災害事変を、彼女はもう一人の片割れと共に一度世界を救った事を。

そんな彼女に対し、ウルサス帝国はレユニオン本拠地に潜入し、無抵抗であった彼女を捕らえ、感染病の研究の為にその体を研究すると言うのだ。

感染病の研究の為と言うが、ウルサス帝国の本当の目的は重度の鉱石病感染者であり、とりわけ未知数である彼女を軍事的目的で扱うつもりのようだ。

軍事的、つまりは強大なアーツの本流、世界のバランスを変えかねない力をウルサス帝国は独自に使おうと考えているのだ。

如何に感染者とはいえ、この様な理由で彼女を研究する事は我々他国家に対する宣戦布告に他ならない。

世界を変えかねない力を手に入れると言う事はそう言う事だ。

また、近い内にレユニオン・ムーブメントは動くだろう、かの地チェルノボーグを制圧し、ミラーを取り戻そうとするだろう。

民間人は早々に避難を推奨する。

以上でニュースを終了する。また新しい情報が入るのを期待して欲しい』

 

 

それはタルラが演説をして少し経った後の出来事だ。あの時に前以て聞かされた時は正気かと思ったが、俺に止められる訳もない。

 

それにこの行動が上手くいくなら確かに、レユニオン・ムーブメントとしての立場は失われる事なく、正当な理由としてチェルノボーグを制圧出来る。

 

ウルサス帝国は俺たち感染者だけに恨まれている訳じゃ無い、20年前に龍門とウルサス帝国は争った経歴がそれを示している、他国に敵が多い国だ。

 

利用される前に利用する、ミラーはこれを今行える最大限の行動を実行した、チェルノボーグへの侵攻が止められないのならそれを利用して、少しでも他国、他企業に「あくまでも正当防衛である」と示す。

 

後はレユニオンがどう制圧するか、ここに掛かっている。

 

「それは本当なんだな?ファウスト」

 

能面のような表情で俺を見るが、その実その目は不安に怯えているようだ、タルラはミラーの事になると途端にわかりやすく目に出やすい。

 

「事実だ、俺は言った筈だ、信用するなと」

 

「信用など最初からしてない、だが奴らは最初からこれが目的だったのか……いや、待て。まさかミラーがこの現状を利用したのか?」

 

流石に着眼点が冴えているな、俺はすかさず助言する。

 

ミラーは寝(・・・・・)ていた筈だ(・・・・・)、何者かが侵入し連れ去ったのだろう」

 

「ならこのニュースは誰が情報を得た?」

 

「俺は知らない、タルラはどうなんだ」

 

「……まさか」

 

「何方にせよチェルノボーグにミラーはいる。この情報が本当だったらどうするんだ、タルラ」

 

「愚問だ、連れ戻す。全ての戦力を持ってチェルノボーグを制圧する、その後にウルサス帝国に改めて宣戦布告をする、例え私の命(・・・・・)が尽きようとも(・・・・・・・)帝国を滅ぼす」

 

間髪入れずにそう告げるタルラの目は確固たる決意が宿っていた、そこに狂気的なモノを潜ませながらもそう告げた。

 

それだけ思う気持ちがあるのに何故タルラとミラーがすれ違ってしまったのか、俺には想像も出来ない。

 

互いに大事に思っているからこそすれ違うのだろうか。

 

ミラーに言われた事を改めて思い出す。

 

サーシャ(・・・・)、タルラを裏で操る正体を探って欲しい、ある程度見立ては付いているけど、憶測だけではまだ“足りない”んだ、君には難しい事を任せてしまう……私のお願いを聞いてくれないか?」

 

そうミラーに命令───いや、お願いされた。あくまで一人の人として俺に頼んだミラーに対して俺は悩む事もしなかった。

 

ファウストではなく、一人の人として頼んだミラーの決意を、俺は受け取った。

 

「直ぐに準備をするぞ、真偽はどうあれ、チェルノボーグを陥落させる事に変わりはない」

 

俺は頷いて部屋から出る。

 

チェルノボーグにミラーが居るのは事実だ、それがどれだけ危険な行為であろうとも、タルラはミラーが起きるまでの一週間で全ての準備を済ませ、ミラーが動く前にチェルノボーグを制圧しようとしていた。

 

ミラーが起きたのはそれこそ誤算だっただろう、ブレない、強力な精神力がミラーを突き動かす動力源なのだろうか?

 

何よりミラーに天運が傾いたのは、ミラーが起きている間にタルラはレユニオンに居なかった事だろう。

 

その間にミラーを見た同胞達は少なからず居るが、クリスタルレンズの情報規制は流石の一言に尽きる。この分野に於いてあの部隊を超える者達を見た事がない。

 

敵はウルサス帝国だけじゃないとミラーは言っていた、この情報を全世界に流すことでごたごたに紛れて出てくる企業と国家が必ず居ると。

 

俺のやる事はわかっている。

 

信頼に応える為にもこの足を動かした。

 

 




絶望の後には希望がってね?
いえまあ、最終的にどっちに傾くのかは……

さて、感想評価、誤字報告ここすき等々ありがとう!書き終えたから感想返しするゾ〜?
次投稿は未定、気長に待ってね。
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