「しきたり行事ねぇ」
翌日、俺はグレモリー領を観光しつつアザゼルに頼まれた酒やら饅頭やらの品々を買って屋敷に戻ってきた。一誠はサーゼクスの息子…ミリキャスと冥界や悪魔社会のあれこれについて勉強をしているらしい。
……元一般人から数ヶ月で苦労してんな、と思った為仕方なくアクマント饅頭を一箱アイツの為に多めに買ってやった。
「よう一誠、土産だ。朝早くからお疲れだな、勉強してたんだろ?」
「おお!サンキュー!」
心底嬉しそうに土産の饅頭を受け取る。だが、すぐに行事に行かなければならないので、食べ切る前にメイドに連れて行かれたが。
(若手悪魔の集まりか……アイツも来るのかねぇ……まぁ来てもおかしくはないか)
俺は万事屋としての初めての依頼……バルバトス家に滞在していた時を思い出す。両親を惨殺した種族である悪魔からの依頼で、尚且つ執事の仕事ときた。
経験も何も無い素人の俺に依頼し、世話になったところがバルバトス家、そしてその令嬢……いや、今考えるのはよそう。何故かは知らんが碌なことがなさそうな予感がする。
俺はグレモリーの眷属ではないから、留守である。
暇を持て余し、やることが無くなった俺は、割り当てられた部屋で久々にのんびりと横になって寝ている。
やりたいことをやっていいと言われても、今冥界で俺がすべき事って何だって話だ。観光は十分にした、一人で出来る事と言えば……歴代の黒天龍王の所有者と対話し、見識と理解を深めることくらいか。
俺は瞼を閉じ、精神世界に埋没する。
「……相変わらず辛気臭い所だな」
今、俺の目の前には歴代の所有者が集って座っている。ローブを深く被っていて顔は覗き込まないと見えない。
「君位だよ?態々そんなこと言う為だけにこんなとこまで来るの」
高校生位の少女が俺の近くまで来た。歴代の中でもかなりの才覚を持っていた人物でゼローグが特に印象深く覚えている少女だ。
「久しぶりだな、ここでまともに喋れるのなんてアンタと歴代最優様だけだしな……まあ最優様よりかは、アンタの方が話はし易いけどな」
「そう言ってくれると有難いね。残留思念と言えど私はちゃんとここに居るし、他の皆はああだし、君がこうしてきて話し相手になってくれるのは私にとっても楽しいから有難いんだよ?歴代でも下から数えたほうが早い雄真くん♪」
余計なお世話だ!
とっくに分かってんだよ、元のスペックは最弱に近いことは!相変わらず上げて落とすのが上手い人だ。
「余計なお世話だっての、とっくに知ってる。第一、神器のセの字も知らなかった七歳児に何を期待していたんだ、寧ろ土壇場で覚醒して生き残ったことを褒めて欲しい位なんだが……」
俺は肩を竦ませながら苦笑いして言う。本当に良く生き残れたもんだよ、あの時の俺。
「まぁ、良いじゃん!!君は歴代でも最速のスピードでこの領域まで来てるんだよ?禁手は最優よりも速く至ったし、覇龍だって短時間だけど完全制御が出来るんだし。私からしてみればまぁまぁいいんじゃない?」
「相変わらずの上から目線どうもありがとう!褒めるんなら褒めたまま落とすなよ!」
俺は大きく溜息をついて、背を向け歩き出す。名残惜しそうに少女は
「なんだい、もう行くの?」
「ああ、暇だから来たがずっと暇という訳でもないからな。昼寝ばっかりするわけにも行かないからな
じゃあな、また来る。」
「……まぁ適当に頑張りなよ。当代の黒き龍」
そして俺は精神を浮上させる。瞼を開けて時間を見れば、それなりに時が経っていたらしい。暇を潰す程度にはなったようだ。
「よし、とりあえず。アザゼルと合流するか」
アザゼルと合流してしばらくした後に、グレモリー眷属が帰ってきた。話を聞けば、生徒会長であるソーナ・シトリー率いるシトリー家とレーティングゲームをすることになったらしい。
リビングで事の顛末を聞き今に至る。
「人間界の時間で現在七月二十八日。対戦まで約二十日間か……」
「しゅ、修行ですか?」
一誠が聞く。まあやる事って言えばそうなるだろうな。
「当然だ、明日から開始する。既に各自のトレーニングメニューは考えてある」
「でも、俺達だけ堕天使総督のアドバイス受けてて、反則じゃないんですか?」
一誠がそのような心配をしている。
「アザゼルの事だ、他の悪魔達にも既にデータは渡しているんじゃないか?少なくともアザゼルが直に指導するのと匹敵するぐらいの支援体制もな。
それに堕天使側だけじゃない、天使側の方でも助勢の体制を整えているらしいし、あとは当人達の問題だろ」
「そういうことだ。全ては己の努力とプライド、そして心持ち次第ってな。強くなりたい、種の存続を維持したい、って心から思ってる奴等なら己の志を示す良い機会だろうよ」
俺とアザゼルの言葉に納得する一誠。
「まぁ俺よりシェムハザのアドバイスのほうが役に立つかもな!まあいい。明日の朝、庭に集合だ。そこで各自の修行方を教える。覚悟しとけ」
『はい!』
アザゼルの言葉にグレモリー眷属が重ねて返事をした。どうやらやる気は十分みたいだな。そんなタイミングでグレイフィアさんが現れる。
「皆様、温泉のご用意が出来ました」
温泉が湧いたという報告だった。
グレモリーの庭の一角にポッツリ存在している和風の温泉、今俺は体を洗っている。
「旅ゆけば〜♪」
アザゼルは温泉に浸かりながら鼻歌交じりでご機嫌だ。
俺は体の泡を流し終えると湯船に浸かる。
「あ"〜〜いい湯だねぇ」
だらけきった言葉が自然と出てしまう。それ程までに気持ちのいい温泉なのだ。疲れが解けていくとか言うが、本当にそんな気がしてくる。
と、急に俺の頭上に影ができる。誰かが自身に向かって飛んで来ていると気づいた俺は回避行動を取り横へ移動、すると誰かの尻が俺が先程までいた場所に迫ってきていた。
ドボーンと水飛沫をあげながら誰かが入ってきた。
「いやぁぁぁぁぁああああ!あっついよぉぉぉぉ!溶けちゃうよぉぉぉぉお!イッセー先輩のエッチィィィッ!」
どうやら、降ってきたのはギャスパーのようだ。
「ったく危ねぇな!一誠の奴後で覚えとけよ……」
「アハハ……それにしても雄真君の体、大分傷痕が多いね……」
木場が俺の体を見ながらそう言う。それを皮切りに、湯船に入ってきた一誠とギャスパーの二人も見に来る。…なんだよ気持ち悪いな、野郎に見られる趣味はない!!
「傷痕なんてそこまで珍しいものか?」
「ああいや、そういう訳じゃないんだけどよ。雄真あんなに強いのに、と思ってさ。多少怪我はするだろうけど、そこまで痕に残るような」
「はい、僕も驚きました。ユウマ先輩の体の傷を見て」
まぁ、ここまで生きて強くなるのは決して楽な道のりじゃなかったし、何度も死を覚悟した。それでも弱い頃から生きながらえてきたのは、往生際が悪く足掻き続けて、強くなる度に肉体が俺を死なせてくれなかったからだろう。
「ユウマ先輩!この一際目立つ胸の大きな傷は何時のですか?」
俺の傷の中で大きいX字の胸の傷だ。それを触りながら聞いてくる。
……ギャスパーがすると何かいけないことされてる気がすんな、本当に見た目が、なぁ……
それは置いておいて話すか、すぐ終わる話だ。しかし、その手の話が最近多いが何でだろうな?
「この傷か……両親が殺された夜、俺が初めて悪魔に襲われた時の傷だよ。あの夜、俺はゼローグと出会ったんだ。」
その言葉を聞き、三人は少し暗い顔をした。そしてギャスパーは慌てて
「す、すいません!ユウマ先輩!そんな不躾に傷に触ってしまいまして!」
「気にしてねぇよ。そんなんで目くじら立てねぇし、もう終わった事だ。引き摺ってはいないからよ。
この話はここまでだ。明日から修行なのにこの程度で辛気臭い顔してんなよな?」
「そうだイッセー、こっち来い」
いきなり話に割り込むアザゼル先がひょいひょいと手で合図を出す。
「お前は……リアスの胸を揉んだことがあるか?」
「はいっ!この手でしっかりと!!」
シリアスな空気が一瞬で粉微塵になりやがった。一誠は右手を握って言う
「なら乳首を押したことは?」
「ッ!!?」
その瞬間電流が走ったような反応をする。それからも話は続き
今一誠は神器を出して、壁に穴を開けようとしている。
「ほう、覗きか。だがそれじゃあ三流もいいところだ。お前はまだまだだな」
「三流ですか!じゃあどうすればいいんですか!?どうすれば一流になれるんですか!?」
鬼気迫るようにアザゼルに聞く一誠。
そこまで大事なことなのだろうか……この話は。
「……そうだな。よし!雄真来い!」
「!?」
何故そこで俺に声が掛かる!?……嫌な予感しかしないが一先ず行く。
「なんだよアザゼル……俺に何をさせるつも」
聞こうとしたらアザゼルは肩を組んで耳打ちをしてきた。
「今から一誠を隣の温泉に投げ入れろ。アイツを一流の漢にしてやれ」
と、アザゼルは親指を立てる。ってか自分でやれば良いのに……まあやるがな。
「早く教えてください!先生!一流になるには!」
アザゼルは俺に合図を出す。
ったく、しょうがねえな!俺は一誠の腕を掴む。一誠は頭にハテナを浮かべ
「男が一流になるにはな……混浴だぞイッセー!!!今だ投げ込め!」
そのまま片手で一誠をぶん投げた。壁を越えて、無事着水したようだ……強く生きろ、一誠。あと、これで俺の怪我未遂の借りは返したことにしておいてやる。
俺は温泉から上がる事にした。これ以上居たらのぼせてしまうからな。
次回から修行パート。雄真も強化できるっぴ
ヒロイン誰にするか
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