「おりゃああああっ!」
『Explosion!!』
赤龍帝の籠手に溜められていた力が増大したのが分かる。既に小猫の病室で話をして数日が経った今、俺はタンニーンと一誠の追いかけっこを見物していた。
修行を開始して最初の頃と比べるとかなり悪魔として成長したと言えるだろう。まあ元龍王直々に鍛えてもらってるんだからそりゃ成長しない方がおかしいんだが、朝昼晩危険と隣り合わせの生活はつい最近まで常人だった奴からすれば到底耐えられるストレスじゃない。
それでもこのしごきに逃げ出さず、タンニーンと俺の修行に真摯に取り組めているこいつの根性には、正直脱帽する。
その結果最初は泣き言しか言えなかったタンニーンとの追いかけっこも、丸一日続けられるようになっていた。
『Reset』
その音声と共に力が霧散し、同時に疲れ果てていた一誠は仰向けに倒れ込んだ。この数日の疲労が一気に襲ってきたのだろう。
「力の篭った、良い一撃だ。最初に出会った頃に比べると確実にドラゴンの力が高まっている。悪魔のとしての体力も申し分ないだろう。現に、今では俺から一日通して逃げ切れているではないか。」
「タンニーンの言う通りだ。俺との対人戦闘訓練も、最初よりかは随分マシになったぞ?」
今の一誠の姿はもう野生児のそれである。身に纏っていたジャージは男として大事なところを辛うじて隠す程度しか機能を発揮していない。しかし、それでも見合うだけのものをこの修行で得たと言っていい。
龍王から逃げ続け、天龍にしごかれた肉体は過不足なく鍛えられ、自然で効率良く生き抜く為の能力も獲得した。つまりはサバイバル能力も得たのである。
しごき回した側でもあった俺が言うのもなんだが……一誠、お前本当に良く頑張ったもんだよ。
「けど、無理だったか」
「そうだな。もう少し日があれば可能だったかもしれないが、明日で修行は終わりだからな…間に合わなかったか」
一誠の修行における目標は禁手に至ること。確かにこの修行で一誠は大きく成長しただろう。
しかし、禁手に至ることはなく修行を終えてしまった。目標は達成出来なかったのである。
まあ本来禁手なんて数年数十年修行した奴が至らないかって領域だからそんな数ヶ月でホイホイ簡単に至れるもんじゃない。
なのでこの結果もある意味当然ではあるんだが、コカビエルの一件から始まり、コイツは一時的な禁手と感情の爆発でヴァーリに土を付けた数少ない男だ…俺の所感だが、コイツには赤龍帝の籠手とは違う「何か」がある。
故に今回の修行次第では可能性があると思ったんだが……
本来神器が禁手に至る為には、己を変革するような大きなきっかけ…強いて言えば「想い」や「願い」が必要だ。
だが、一誠にとって己を揺るがし変革させうるだけのきっかけ……トリガーを俺は知らない。
「情けない話だぜ……」
一誠は肩を落としながら言った。心無しか少し凹んでいるように見える。
「気を落とすなよ。この修行で能力は上がったのは間違いない、慰めとかじゃなくて確実に禁手には迫っている。あとはお前自身に強い想いが芽生えさえすれば、そう遠くない未来に至れるだろうよ。胸張っていいぜ、ここまで俺とタンニーンのしごきを耐え抜いたんだからな」
「お、おう!雄真もありがとうな。ここまで鍛えてもらってよ。魔力の使い方や体術、必ず役立ててみせるぜ!」
「いや、むしろこちらの方がいい経験をさせてもらった。誰かと共に強くなる、なんて事は今まで無かったからな」
倒れている一誠に手を差し出し、一誠はそれを掴んで立ち上がる。そして自身はタンニーンに向き直り、
「じゃあ次は俺だな。タンニーン!相手、頼めるよな?」
「無論だ。アザゼルからはお前も鍛えるように言われているからな。本気で来るがいい今代の黒天龍王!!喰えるものなら俺の力、喰らって見せるがいい!!!」
龍翼を広げ、口角を吊り上げて言うタンニーン。上等…!!
「ああ、いい加減見っぱなしで腹空かしてたからな……遠慮なく喰らわせてもらうぜ、アンタの力を!
『Absorb Dragon Balance Breaker!!!!』
禁手をして対峙する。ローブを靡かせ空に舞うタンニーンを見上げる。そして、風で葉が舞うのを合図としてぶつかり合う。
先手を仕掛けたのは俺だ。ローブの上から龍翼を展開して加速、近接戦を仕掛ける。修行の序盤は打ち負けてしまったが、今回はそうはいかない!
「オラァ!!」
「オオォォ!!」
タンニーンも剛拳を構え突き出してくる。拳と拳がぶつかり合い衝撃で周りの木々が揺れ、多くの葉が舞う。
「うぉ!?なんつー衝撃だよ!雄真も、タンニーンのおっさんも!」
「まずは前菜、いただくぜ!」
右手を後ろに半身で構え、魔力を集める。それは巨大な魔力塊ではなく、『捕食』を成す牙となる。
「
そして右手を突き出し魔力を解放する。それは大きな龍の顎を形どり、タンニーンを喰らわんと奔る。
「面白い!!」
一誠に対して放っていたブレスとは比べ物にならない巨大な火球を放ち顎焼き尽くし相殺する。
火炎と魔力塊の衝突により轟音が響き、衝撃波が吹き荒れる。
「っ!流石は元龍王だな…!!あれ結構でかく作ったつもりだったんだが…」
「そちらもその齢で大したものだ!強き力の波動を感じたぞ!
故にこそ問う。今代の黒天龍王、逢坂雄真!!ゼローグを宿せし者よ!!お前は、何の為に戦う!!何の為に喰らう!!」
……何の為に戦うのか、か。そんな事を聞かれたのは久しぶりだな。
そんなもの、今も昔も変わってなどいない。
「生きる為だ」
「生きる、為…」
一誠の呟く声が聞こえる。そんな事には構わず言葉を紡ぐ。己の起源を再確認するように、目をつぶり力強く。
「自ら犠牲になってこの命を繋いでくれた父と母、
俺に生きる道を示し、導いてくれたアザゼル、
道こそ違えたが、俺と支えあってくれた友人達、
万事屋として出会ってきた中で助けてくれた奴等、
そして今まで苦楽を共にしてきた、俺の『相棒』ゼローグ…
これ迄の全ての出会いが、今の俺を、逢坂雄馬を作ってくれた!」
目を開いてタンニーンを見据えて言う。
「俺が死ぬ事はこれまでの出会いを、恩を、想いを裏切る事になる。だから、俺は『
その為に、この力を使う!!」
そう力強く言い放ち、前方のタンニーンを見据える。
「奪う為では無く、生きる為に、か!よくぞ言った!
ならば、これをも喰らって見せよ!!この修行の仕上げに相応しい、我が必滅の一撃を与えよう!!」
タンニーンは大きく上に口を開き、火炎を集める。隕石と同等、それ以上の大きさの火球が迫ってくる。
それはグレモリーの屋敷をも飲み込めそうな程の超巨大な火球、いや、炎の星だった。あれを全て喰らうとなると、骨が折れるどころの話じゃない。下手すれば顎にエネルギーが収まり切らず腕が灰になるかもしれない、というか間違いなくなる。
「灰塵に帰するがいい!!
…いや、だからこそ勝負!!。
「…ああ、受けて立つ!今の俺の全身全霊を賭けて……
あんたの力、貰い受けるっ!!!」
《黒天龍王の破衣》によって禁手状態の俺の両腕は巨大な黒龍の顎となる。さらにローブから魔力が溢れだし、ローブの先端が3つに分かれて伸び、黒龍の顎を形成する。その数全部で5頭、全ての顎は迫ってくる炎星へと狙いを定める。
『Carnage Eater!!!』
極炎のブレスとなった炎星と五つの顎がぶつかり合う。傍から見ればタンニーンのブレスを俺が押し留めているように見えるだろう。
だが厳密に言えば、顎がブレスを喰らっているのである。間断なく喰らい続けているのだが、押されているのは間違いなくこちらだ。
「ぐっ……ォォォォオオオオアアアアア!!!」
腹の底から吠えて、気力と魔力を更に絞り出す。新たな力を手にする為、何より生きる為にブレスを喰らい続ける。そして1分程経てブレスは、遂に俺の所に到達したが片手程のサイズとなり、俺はそれをなけなしの力で握り潰して吸収する。それと同時に禁手が解除され、膝から崩れ落ちてしまった。でも……
「はぁ…はぁ…喰らったぞ、龍王の力……!」
「……ふっ!成し遂げたか、黒天龍王の小僧よ!我が力、確かに授けたぞ!!」
俺の目を見ながらタンニーンが言う。
……俺を認めてくれたってことか、でなければあんな技撃つ筈がないよな。
「アンタの顔に、泥を塗らないように努力するよ。
……魔龍聖タンニーンの力、確かに授かった」
弱々しいながらも、しっかりと拳を突き出す。するとタンニーンは直ぐに理解したのか拳を合わせてくれた。かくして、俺の修行も無事に終了した。
――――――――――――――
「では、俺はこれで失礼する。魔王主催のパーティには俺も出席する。また会おう、兵藤一誠、逢坂雄真。それにドライグ、ゼローグよ」
俺たちはタンニーンの背に乗せてもらい、グレモリー本邸まで帰ってきた。ドラゴンの背に乗って空中旅行は快適で、早々体験出来ないものだ。だって普段は自分で飛ぶしかないからな。
「うん。おっさんありがとう!パーティでまた!」
「俺は多分警備に当たるだろうけどな……今回は色々とありがとう。」
『すまんな、タンニーン。また会おう』
『貴様の力、役立たせてもらうぞタンニーン。盟友共々世話になったな』
「ああ、俺も楽しませてもらった。あのドライグとゼローグに協力したのだからな、長生きはするものだ。そうだ、俺の背に乗ってパーティ入りするか?」
「本当?いいの?」
魔王主催のパーティがある。他勢力の人間で協力者な俺は恐らく、というか間違いなくパーティに参加するというより、主に警備をするだろう。…パーティ、ねぇ…さぞ美味いご馳走がわんさかあるんだろう……
考えると悲しくなるし、この時の自分の立場を恨めしくも思う。この際魔法でタッパーでも作って一誠に詰めてきてもらうか?
「やあ、イッセー君、ユウマ君」
聞き覚えのある声が聞こえた。声のするほうを見ると聖魔剣使い、グレモリーの騎士である木場が居た。様子を見るにこの数日間は充実したものとなったのだろう、前より纏う雰囲気が洗練され良いものになっている。
「……いい体になったねイッセー君」
「や、やめろ、なんだその目は……そういう目で俺を見るな!」
…一体俺は何を見せられているのだろうか?
この後はゼノヴィアが来たのだが、ミイラのように包帯にグルグル巻にされていた。…本当にどんな特訓をしたというのだろうか。
しかし見ればオーラの質は修行前とは明らかに変わっており、修行の成果が出ているのが分かる。生半可な修行では無かったのは間違いないだろう。
その後にアーシア、部長さんと合流する予定となっているが、外出組の俺と及び一誠と木場とゼノヴィアはシャワーを浴び、修行の報告会をすることになった。
グレモリー眷属が全員揃うのは二週間以上ぶりとなる。各々修行してきたということで全員どこかしら顔つきが変わったように見える。報告場所は何故か一誠の部屋である。……不思議と一誠に人が集まってくるように思えるのは気のせいでは無いだろう。
まぁ、これは一誠の問題であり俺自身に文句等ないし黙っておくか。っと修行の話が始まった。
木場は師匠との修行の顛末、ゼノヴィアも右に同じく。そして一誠と俺はタンニーンとのサバイバル。一誠はそこに俺との対人戦闘訓練と鬼ごっこが入る。
……全員が引いていた。一誠や俺のようにガチサバイバルしていた奴がいなかったためドン引きしているのだろう。アザゼルも一誠は逃げ出すだろうなと踏んでいたが、一誠は見事やり切ってみせたのだ……サバイバルの知識と経験をつけて。ドン引きされたことにショックを受けたのか
「酷い!こちとらあのお山でドラゴンと雄真に一日中追いかけ回されて生活してたのに!何度死にかけたことか!うえええええんっ!部長に会いたくて会いたくて!毎夜部長の温もりを思い出しながら葉っぱにくるまって寝てたのにぃぃぃ!辛かったよぉぉぉぉっ!」
遂に思いが決壊したのか、泣き出して辛かったことを叫ぶ。
「……タンニーン様のところにいた時、どんなふうに修行してたんだい?ユウマ君」
「ああ、タンニーンが一誠を追いかけている間は俺は休憩。その後は俺が一誠に体術や魔力の使い方を対人での実戦形式で教えて、後はタンニーンと俺が交互に一誠と戦っての繰り返しだな。…まあ俺は夜普通に寝てたし、夜に一誠の修行はしてないな。」
「それでも容赦ないぞ、ユウマ」
「……まぁ、死なないようには加減したさ。あとは知識を活かして一誠が食あたりしないように山菜類の見分けとかはしてたな」
「ユ、ユウマ先輩って冥界の植物とかにも詳しいんですか?」
「まあ、ここ10年間一人で世界を相手に仕事してきたからな。バルバトス家にいた時はいざ知らず、冥界に来る機会も何度かあったし依頼で山の中に入った事もあるから、野宿する際に必要だったんだよ」
俺との一誠の修行はこんな感じだった、とざっと木場達に話した。話は変わるが、意外だったのはアザゼルが一誠の禁手に至れなかったのをさほど残念に思っていなかったことだ。
「ま、いい。報告会は終了。明日はパーティだ。今日はもう解散するぞ」
アザゼルの一声で解散する。その後俺はアザゼルと話し合いがある為、自室に招いた。
「雄真、明日のパーティのことなんだが、軍の連中と警備に当たってもらえるか?禍の団のこともある。ただの雑兵程度なら軍の奴らでもいいんだが、神器持ちとかそこそこの力を持つやつが来た時の為にな」
やっぱりこうなったか!ご馳走…やはり諦めるしか無いというのか……
……こういう時に携われないのは、仕事人の性か。まぁ、これも仕方ないと軽く項垂れながら、
「分かった、大人しく警備に当たるとしますよ……まぁ、楽しんでこいよ」
「わかったわかった、次はお前も参加出来るようにしてやっから。楽しみにしとけ」
頷き返すと、アザゼルは鷹揚に出て行った。
アンケートは金曜日の夜21:00で打ち切ります!
ヒロイン誰にするか
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グレモリー眷属 小猫
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フェニックスの少女 レイヴェル
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ヴァルキリー ロスヴァイセ
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アーサーの妹・ルフェイ
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ハーレムにしないのか?