冥界にてディオドラ・アスタロトの調査を開始して、既に数日が経った。基本的には昼間は学校、夜は冥界に潜ってディオドラ・アスタロトの身辺調査をしている。
そう言えば、最近学校の方では現天界のトップである熾天使ミカエルのお付きの……転生天使?になったらしい紫藤イリナが転校してきた。これから俺と同じく悪魔では無いメンバーとしてオカ研の世話になるそうだ。
……今回の調査の際に所々休むとは言ったものの、転入してそこまで経っていない手前疎らに休むのは体裁としてどうかと思ってしまった為、仕方なくほぼ毎日学校に出てきてしまっている次第である。
「ふぁーー……あーったく眠てぇな……」
目を擦りながら授業を受けて、昼休みまで何とか耐えきった。流石に肉体を強化してるとは言え日中に授業、深夜遅く迄は諜報活動となると肉体だけでなく精神的にもクるものがある。フリーランスの万事屋として動いていたときはほぼ一日中移動しっ放しということもあったが、それはまだ所々自身の判断できちんと小休止を挟んでいたからだ。
しかし今回はより多くの情報を集める為に二つの世界を何度も行き来している為、時間流の誤差によって休む(というより寝る)時間がかなり奪われており、それももうすぐで2週間になる。意地で何とかクマは作っていないが、それでも疲労が顔から滲んでいるかもしれない。
昼休みになるのと同時に、コンビニで買ったサンドイッチとジュースを持ってユラユラと屋上に上がり、昼食をとる。
その後はチャイムまでお昼寝タイムにする、俺の限りなく削られた睡眠はここで補うことにしているのだ。屋上で寝転がった俺は泥の様に眠りについた………
……どの位の時間が経ったか知らないが、声をかけられた。その声はしきりに俺を起こそうとしている………
「……マ…輩……ユウマ先輩、もうすぐ昼休みが終わりますよ。起きて下さい」
「……んあ?ああ、小猫か。起こしてもらって悪いな」
「いえ、気にしないでください………最近お疲れですね、アスタロトの調査、難航してるんですか?」
ここ数日、屋上で寝ている俺を小猫が起こしに来てくれるようになった。最初の何回かはここ最近の疲れを取る為に泥の様に眠る事を俺の体そのものが優先したのか、脅威の気配もない為珍しく起きることが出来ず五時間目の終わりのチャイムで起床し、それ以降は仕方なくサボることにしていた。
しかし一体それを何処で知ったのか、はたまた見ていたのか小猫が良く屋上に来るようになり、昼休み終了五分前に起こしてくれるようになった……成績は別に問題ないが体裁の問題がある為、正直に言えばかなり助かっている。
「……そうだな。でもその甲斐あってか情報は粗方集まってきているよ。だからまぁ、もう起こしてもらう手間は無くなると思う」
「……私は別に……」
「…?何か言ったか?」
「……何でもないです」
……取り敢えず、午後を乗り切って冥界に行くとするか、今回の調査で無事終わればいいんだが……
―――――――――――――――――
「で……これは黒、だよな?」
「どう見ても黒だね、最初は特訓して強くなったのかな?とは思ったよ?でもどうも大会当初と比べて力の上昇具合が可笑しいのは私も感じてたしね……もしかしてとは思っていたんだけど……」
俺は今、冥界にあるバルバトス本家に足を運んでいた。
テーブルの真向かいに座っているのはバルバトス家の令嬢にして、大きな世話になった姉とも言えるアトラリア・バルバトス……俺はアリア姉さんと呼んでいる。今回俺は彼女とバルバトス本家の力を借りて調査を行い、漸く集め切った情報を整理していた。
結果から言えば、ディオドラ・アスタロトは「禍の団」と内通している、と言う結論に至った。本当に三代勢力会談の襲撃以来聞かない時はないんじゃないだろうか。
「アジュカさんも大変だろうね、これを知ったら……」
「……四代魔王の一角、アジュカ・ベルゼブブか。あの人はアスタロト家の出身なのか?」
「ええそうよ。身内がテロリストに加担なんてね……アジュカさん本人に落ち度も何も無いのだけど、周りが許すかどうかよ。私は何とも思わないけど……どうせあの人程の代役なんて立てれないだろうしね」
情報をまとめながら呟くアリア姉さん。まぁ同情はするが、悪魔社会の事は生憎俺の管轄外だ。
「と言うことは姉さん、レーティングゲームでアスタロトに負けたのか?」
「まぁ、そういうことになるわね。眷属達には悪いけど、あの試合に意味は無いと判断したわ。ここで負けたところで何もかも失うわけじゃないし、言いたい奴には言わせて次のゲームの時に倍返しにすればいいのよ」
「……やっぱ姉さんは大人だな。眷属の奴等も、姉さんが主で本当に幸運だよ」
「………もう、やめて」
顔を真っ赤にして両手を顔に当ててる、かわいい。
「それとして、アスタロトの眷属なんだが… これ見てくれよ」
「……!!これは……」
俺が出したのはここ数日の調査で何とか引き摺り出せたディオドラ・アスタロトの眷属達の経歴を纏めた書類だった。
「殆どの眷属、というより女性が元シスターじゃない。アイツ、やけに身なり整えた娘達を侍らせてるって思ってたけど……」
「……多分だけどアーシアを狙って求婚してきた今回の一件、結婚とかではなく、是が非でもアーシアを自分のコレクションにしたいんだと俺は踏んでる。それこそ禍の団の力で部長さん達を皆殺しにしてでも、な」
「……語るに落ちたわね、ディオドラ」
姉さんは侮蔑の表情を隠そうともしていない。そりゃそうだ、ただでさえ異種族を無理矢理殺してでも眷属にしてきた悪魔が少なくない冥界の歴史の中でも、こんな趣味は引いて然るべきだろう。ましてや己の欲望でしか動いていない。
「で、これは魔王サーゼクスとかにはすぐに突き出せるのか?」
「今検挙されてもトカゲの尻尾切りの如くで禍の団にダメージは無いでしょ?だから、こっちはこっちで話を合わせるわ。そっちもアザゼル総督に報告して動けるように仕向けなさいな」
「そのつもりだよ、……悪い姉さん、忙しいのに手伝ってもらって……」
俺が軽く頭を下げると、姉さんは俺の顔を上げてデコピンをした、っていったい!?
「こーら、言いっこなしよ。こっちも久々に会えて楽しめたわ。リアスちゃん達グレモリー眷属、ちゃんと守ってあげなさいな。それが今の貴方の仕事なんでしょ?」
「まぁ、な……数日間ありがとう、姉さん。本当に助かった」
「私も優秀な執事、いや弟が頼ってきてくれて嬉しかったわ♪」
悪戯娘っぽく言うアリア姉さん……執事は前の話依頼の話だったろ。
「次は遊びに来る。その時はお茶位入れさせてもらうよ」
「今度来る時は、彼女の一人くらい連れて来なさいな」
「……出来たなら、ね」
「興味が無い訳では無いでしょ?ムッツリドラゴンさん?」
「うっさいなぁ!!!またな!!!」
ったく!!言葉じゃ彼女には一生勝てない気がする。頼りになるけど揶揄いが過ぎる時があるからなぁ……質の悪い女性というのはこういうのを言うのだろう。
俺は得た情報をグレモリー眷属とアザゼルに報告する為に、冥界から立ち去る。報告したら暫くは休めるだろう……
――――――――――――――
「で、ディオドラ・アスタロトがオカ研に来訪して試合は五日後に決まり、ディオドラが一誠を倒してアーシアを戴くと宣言した、ねぇ」
「はい、それもユウマ先輩が帰ってくる二時間前のことです」
俺はオカ研の部室に足を運んでいた。後日の報告でもいいんだが、早い内に耳に入れさせた方がいいだろう。にしても、薄汚いドラゴンか……苛立ちがない訳ではないが、俺はその場に居なかったし他人からの評価等どうだっていいことだ。
「それでユウマ、貴方が久々に部室に顔を出したということは、そういう事でいいという訳ね?」
部長さんが尋ねてきた、俺は鷹揚に頷く。
「ああ、そこそこ苦労はしたが情報は中々に集まった。一先ず報告といきますか」
俺はディオドラ・アスタロトが禍の団と内通している事、加担している禍の団の派閥は旧魔王派だろうという事を掻い摘んで報告した。
「あの野郎……!禍の団と繋がっていたのか!!!」
「けど、今は手は出せないわね」
部長さんが少し難しそうに呟く。一誠は
「何でですか部長!!雄真の集めてきた情報があればアイツなんか!」
「ええ、確かな情報よ。バルバトス家のアトラリアさんも一緒に調べたというのであれば信憑性は高いわ」
「だったら……!!」
「今ディオドラを捕まえても、極論それだけで終わっちまうからな。禍の団にとってはディオドラ・アスタロトを失っても何の痛手にもならないんだよ。
しかし、この情報を事前に知れた事は大きいぜ。分かっているのなら対策は立てられる。リアス、お前はサーゼクスに伝えておけ、俺はシェムハザとミカエルに伝える。ゲームの対策を立てながら出来る事はするぞ。何かしらしでかしてくるだろうからな」
アザゼルがそう言い、オカ研は動き出した。俺の仕事は取り敢えずここまでだ…っと忘れてた。
「アザゼル、部長さん。後で部室に残ってくれ、渡すものがある」
「……?ええ、わかったわ」
「ああ、わかった」
そして部員の消えた部室に部長さんとアザゼル、そして俺が残った。
悪魔のバルバトスに関しては本作はオリ設定となっています。